著者
片岡 祐子 内藤 智之 假谷 伸 菅谷 明子 前田 幸英 福島 邦博 西﨑 和則
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.120, no.5, pp.727-732, 2017-05-20 (Released:2017-06-20)
参考文献数
12

近年の人工内耳は, 1.5T までの磁場であればインプラント磁石を取り出すことなく MRI 検査を行うことができる. ただ疼痛や皮膚発赤, 減磁や脱磁, 磁石の変位などの合併症が起こり得る. 今回われわれは MRI 後に人工内耳インプラントの磁石の反転を来した2症例を経験した. 2例とも磁石は180度反転してシリコンフランジ内に格納されており, 1例は極性を逆にした体外磁石を特注し, もう1例はインプラント磁石の入れ替え手術を行った. 人工内耳は適応の拡大, 高齢化などに伴い, 今後も装用者は増加すると見込まれる. 医療者として, 人工内耳患者が MRI を受ける上での留意点, 合併症が生じた場合の検査, 対応などを認識する必要がある.
著者
前田 亜紀子 山崎 和彦 野尻 佳代子 栃原 裕
出版者
Japanese Society of Biometeorology
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.103-112, 2006

本研究の目的は,濡れた衣服を着用したときの体温調節反応について観察することであった.被験者は健康な成人女子11名であった.人工気候室は,気温30,25,20℃(相対湿度は80%一定)に制御された.衣服の様式は,スウェット上下(様式 S)と T シャツおよび短パン(様式 T)とし,気温と衣服の条件より 5 種条件(30S, 30T, 25S, 25T, 20S)を設定した.衣服の濡れ条件は,D(乾燥),W1(湿った),W2(びしょ濡れ)の 3 種とした.条件 D, W1, W2 における全衣服重量の平均は,様式 S では各々819, 1238, 2596 g,様式 T では各々356, 501, 759 g であった.各濡れ条件において,安静期と作業期を設けた.作業期における踏み台昇降作業のエネルギー代謝率は2.7であった.測定項目は,酸素摂取量,直腸温(Tr),平均皮膚温(Tsk),および主観申告値とした.酸素摂取量は,衣服重量および寒冷ストレスの影響を受けて変化した.Tr の値は,条件 25T と 20S では漸減した.Tsk は環境温に依存して漸減し,特に条件 20S においては著しく低下した.本研究の要点は次の通りである.1)濡れた衣服を着用した場合,気温30℃では着衣の工夫により温熱ストレスは最小に止めることができる.2)気温25℃以下では,軽装の場合,寒冷ストレスが生じ得る.3)衣類が乾燥状態であれ濡れた状態であれ,全身温冷感が中立であるとき,Tsk は約33℃であった.4)濡れた衣服条件における特色は,全身温冷感が「冷たい」側へシフトするとき,平均皮膚温が著しく低下することである.<br>
著者
前田 潤 齋藤 和樹 槇島 敏治
出版者
室蘭工業大学
雑誌
室蘭工業大学紀要 (ISSN:13442708)
巻号頁・発行日
no.59, pp.11-20, 2010-03

Psychosocial support is a significant issue in emergency settings for effective and efficient support activities not only to affected people but also to aid worker themselves.We presented the field research report on one month after Abruzzo Earthquake in 2009 as a case of psychosocial support activities in emergency settings.It was found that Italy has an unique system called 'Protezione Civile' and it was constituted by many types of organizations like Italian Red Cross police, water service and scientists etc.We pointed out that this system is conformed with psychosocial support system on IASC guideline. And Dr.Clown in Italian Red Cross was a special psychological aid worker suitable with cultural context in Italian Red Cross.Various national system have to be investigated.学術論文
著者
御前 明洋
出版者
北九州市立自然史・歴史博物館
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

白亜紀の軟体動物殻表面には付着生物化石が普通に見られることがわかった.ノストセラス科アンモノイドPravitocerasやDidymocerasの殻表面に高い頻度でナミマガシワ科二枚貝が付着していたことを明らかにし,その産状の解析から,これらのノストセラス科異常巻アンモノイドの古生態の推定を行った.大型アンモノイドに付着するベッコウガキ科二枚貝の産状より詳細な埋没過程を復元した.
著者
野崎 慎 前島 一博
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.177-182, 2013-03-01 (Released:2014-03-01)
参考文献数
20

1細胞あたり全長2 mにも及ぶヒトゲノムDNAは「人体の設計図」であり,直径約10~20 µmの「細胞核」や直径0.7 µmの「染色体」の中に収納されている.本稿ではゲノムDNAの収納原理とその柔軟性について,最近の筆者らの知見を紹介したい.
著者
友岡 史沙 前田 ひとみ
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.5_869-5_875, 2020-12-20 (Released:2020-12-20)
参考文献数
48

目的:国内外の文献から医療事故後の当事者サポートについて考察し,日本における効果的な当事者サポート体制への示唆を得る。方法:医中誌Web版を用い「医療事故」「サポート」「対応」をキーワードに抽出した和文献16件,CINAHL,MEDLINE,PubMedを用い「second victim」「support」「medical error」をキーワードに抽出した英文献26件を分析した。結果:当事者は同僚や先輩によるインフォーマルなサポートを求めており,当事者の安寧や成長に繋がっていた。欧米では同僚によるサポートプログラムの研究が進んでいたが,日本では管理者によるサポート研究が主であった。結論:医療事故後のサポートとともに組織の文化的背景が当事者に与える影響も大きかった。同僚であるスタッフへの当事者サポート教育や,組織の文化背景へアプローチするサポート体制が求められる。
著者
前田 巌 松島 裕康 坂地 泰紀 和泉 潔 ディグロー デビッド 加藤 惇雄 北野 道春
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第34回全国大会(2020)
巻号頁・発行日
pp.2L4GS1304, 2020 (Released:2020-06-19)

高度な複雑系として知られる金融市場は,影響を与える要素の膨大さ,内部構造の非定常性,マーケットインパクトの存在といった要因により,予測が非常に難しい.これは近年目覚ましい発展を遂げた機械学習・深層学習手法を用いた場合でも同様で,金融市場予測は必ず不確かさを含んでしまい,不確かな予測に基づく投資判断は大きな損失や市場の不安定化の原因となる.本研究では,人工市場シミュレーションと深層強化学習の組み合わせにより,学習データの不足を補うとともにマーケットインパクトを考慮した学習を可能とし,上記の問題の解決を図った.基本的な単一市場のシミュレーション環境において実験を行い,提案手法の有効性が確認された.
著者
窪木 拓男 前川 賢治
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.117-125, 2021 (Released:2021-04-29)
参考文献数
32

われわれ歯科医は補綴治療を毎日患者に施しているが,その治療がどのような効果を患者に及ぼしているかを十分認識していない.たとえば,自立した地域在住高齢者においては,補綴治療の主目的は,口腔関連QOLの向上に加えて,介護予防,フレイル予防,認知機能低下予防であり,補綴治療による口腔機能の維持は多様な食物や栄養素を摂取するという観点から重要な意味があると言われている.本論説では,近年発表された質の高いシステマティックレビューと原著論文を精読し,地域在住高齢者においては,現在歯数が多いほど,生命予後が良好であること,また,現在歯数よりも機能歯数の方が生命予後に強く関連するという日本補綴歯科学会と東京都健康長寿医療センターの共同研究結果を紹介した.一方,日常生活動作がまだまだ保たれている前期要支援・要介護高齢者においては,歯列欠損の修復に加えて,栄養摂取強化と広義の摂食嚥下リハビリテーションが重要な意味を持つ.また,日常生活動作が著しく低下する後期要介護高齢者においては,食環境や食形態の調整,栄養補助食品の利用,多様な栄養摂取ルートの活用などが必要になる.これらの臨床エビデンスをライフステージに合わせて読み解くことにより,われわれ補綴歯科医の医学的,社会的な責務が,どのライフステージにおいても甚大であることを訴えたい.
著者
渡辺 力夫 冨田 信之 竹前 俊昭
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会論文集 (ISSN:13446460)
巻号頁・発行日
vol.51, no.593, pp.314-320, 2003 (Released:2003-09-26)
参考文献数
17
被引用文献数
2 2

The propulsive characteristics of water rockets are analyzed theoretically and experimentally. The unsteady thrust force acting on a PET bottle and the air pressure inside the bottle are measured simultaneously by the thrust test stand we have developed. The semi-empirical thrust history is obtained utilizing the air pressure history and it is compared with the measured thrust history. The results show qualitative agreement. The observation of the flow inside bottle by a high-speed video camera shows that the air precedes water when it is about to be discharged entirely. We have developed a flow regulator attached to the nozzle cap to reduce the precursor air discharge that is considered as a result of the swirling flow inside the bottle. The experimental results show that the air discharge and the body vibration are suppressed effectively.
著者
橋爪 正樹 前島 渉 田中 淳
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.99, no.9, pp.755-758, 1993-09-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
14
被引用文献数
4 4
著者
鈴木 裕之 中野 実 蓮池 俊和 仲村 佳彦 畠山 淳司 庭前 野菊 清水 尚
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.297-302, 2011-06-15 (Released:2011-08-19)
参考文献数
17
被引用文献数
2 1

症例は70歳の女性。自宅で呼吸苦を自覚し自ら119番通報をした。救急車内収容時に無脈性電気活動(pulseless electrical activity; PEA)となり,救急隊員による約1分間の心肺蘇生術で心拍再開し当院へ搬送された。当院到着時に再びPEAとなり,アドレナリン1mgを投与し,気管挿管,当院スタッフによる約8分間の心肺蘇生術で心拍は再開した。心エコーで著明な右心負荷所見,胸部造影CTで左右の肺動脈に血栓を認め,肺塞栓と診断した。へパリン3,000単位静注後,肺動脈造影を施行したところ,肺動脈主幹部の血栓は既に溶解しており,造影欠損像を末梢に認めるのみであった。循環動態,呼吸状態ともに安定したため,抗凝固療法のみ行う方針でICUに入室させた。しかし,ICU入室4時間後から徐々に血圧が下がり始め,入室6時間後にはショック状態となった。心エコーで右心負荷所見は改善傾向にあり,肺塞栓による閉塞性ショックは否定的だった。腹部エコーで大量の腹水を認め,腹部造影CTでは血性腹水と肝裂傷を認め,胸骨圧迫による肝損傷から出血性ショックに至ったと診断した。硫酸プロタミンでへパリンを拮抗し,大量輸血で循環を安定させ塞栓術による止血を試みた。しかし,肝動脈と門脈からの血管外漏出は認められず,塞栓術による止血は不可能であった。静脈性出血の自然止血を期待し腹腔内圧をモニターしながら,腹部コンパートメント症候群に注意しつつ経過観察した。第2病日循環動態は安定し,第9病日抗凝固療法を再開した。第10病日人工呼吸器離脱し,第40病日独歩退院した。心肺蘇生術後の患者では,蘇生術に伴う合併症の発生を常に念頭に置きながら,原疾患の治療にあたることが重要である。
著者
前浦 菜央 中山 真孝 内田 由紀子
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.262-279, 2020-09-01 (Released:2020-09-15)
参考文献数
26

This study focused on two similar but potentially distinctive emotions, awe and being moved. Although these emotions have been studied independently, they have commonalities both in cognition and emotion. For example, both have been shown to influence cognitive frameworks (Tokaji, 2004), such as need for accommodation (Keltner & Haidt, 2003). In addition, when instructed to write about being moved, Japanese descriptions resembled descriptions about awe in Western descriptions (Hashimoto & Ogura, 2002; Shiota, Keltner, & Mossman, 2007). In this study, we hypothesized that these two emotions overlap in linguistic labeling and in perceived emotional states. To test this hypothesis, we conducted two survey studies in Japan. Study1 examined how people labeled emotional states caused in various awe-inducing and being-movedinducing situations. Study1 indicated that some of typical awe experiences were likely to be labeled as being-moved experiences. Study2 showed that the experience of awe was more similar to an emotional state of being deeply moved by a life event, than being normally moved by a daily event. Therefore the present studies suggest that being moved and awe are more likely to overlap when the situation is a deeply moving life event.
著者
前川 京子 佐井 君江
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.669-673, 2014 (Released:2016-09-17)
参考文献数
17
被引用文献数
1

医薬品開発においては,副作用発現や有効性の変動要因となり得る薬物相互作用の有無について,適正に試験し評価することが求められている.近年,薬物代謝酵素のみならずトランスポーターに関する研究の進展に伴い,被験薬の薬物動態に対する,これらの分子の影響を定量的に評価するための検討方法を提示した薬物相互作用ガイドラインの改定が欧州,米国および我が国の規制当局で進められている.一方,薬物動態関連分子の中には,活性変化をもたらす遺伝子多型が存在し,患者の遺伝的要因が薬物相互作用を増強する事例も報告されている.さらに一部の遺伝子多型には,その頻度に大きな人種差・民族差が認められることから,今後加速する医薬品の国際共同開発においても,特に遺伝子多型の人種差を考慮した適正な薬物相互作用の評価が重要となる.本稿では,人種差が注目されている薬物動態関連分子の遺伝子多型を取り上げ,これらの薬物相互作用への影響について事例を含めて概説する.
著者
湯田 厚司 小川 由起子 荻原 仁美 神前 英明 清水 猛史
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.121, no.12, pp.1493-1498, 2018-12-20 (Released:2019-01-16)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

スギ花粉はトマトと共通抗原を有する. 口腔内に抗原投与する舌下免疫療法 (SLIT) ではトマト抗原陽性例への影響も考えられる. スギ花粉 SLIT 220例でトマト IgE 抗体 (s-IgE) 陽性例の1年目副反応を検討した. 107例の s-IgE 変化を2年間追跡した. 2例のトマト口腔アレルギー症候群 (OAS) の経過を観察した. 治療前トマト s-IgE でクラス2 (20例) と1 (18例) では, クラス0 (182例) と比べて副反応の増加がなかった. トマト s-IgE は治療前0.29±1.08, 1年後0.34±0.89, 2年後0.27±0.87UA/mL であった. 治療前クラス0 (92例) は1年後に10例でクラス1に, 4例でクラス2になった. クラス0でも55例中12例で検出閾値未満から検出可能になり, 37%に多少の変化を認めた. トマトとスギ s-IgE 変化は連動し, 交叉抗原の影響を示唆した. トマト OAS の2例は問題なく治療を継続できた. トマトアレルゲン陽性例でも安全に SLIT を行えた.