著者
前川 喜久雄 斎藤 純男 藤本 雅子 竹本 浩典 北村 達也 菊池 英明 籠宮 隆之
出版者
大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

東京方言16名分、近畿方言5名分、モンゴル語3名の調音運動を記録したリアルタイムMRI動画を1名あたり約1時間収集した。データのブラウジング環境を構築し、音声器官(舌、唇、口蓋、咽頭壁など)の輪郭を自動抽出する技術を開発した。このデータを利用して、①モンゴル語母音調和に関する舌根位置の関与を示した論文、②日本語発話末に生じる撥音の調音位置が直前母音によって決まっていることを示した論文、③日本語ワ行子音の調音が定説となっている二重調音ではなく、主に両唇の接近によって行われていることを示した論文を発表した。さらに日本語のラ行子音に関する分析も発表した。
著者
笹田 耕一 松本 行弘 前田 敦司 並木 美太郎
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.48, no.SIG10(PRO33), pp.1-16, 2007-06-15

本論文ではスクリプト言語Ruby 用仮想マシンYARV: Yet Another RubyVM における並列実行スレッド処理機構の実装について述べる.Ruby はその使いやすさから世界中で広く利用されているプログラム言語である.Ruby の特徴の1 つにマルチスレッドプログラミングに対応しているという点があるが,現在広く利用されているRuby 処理系は移植性を高めるため,すべてユーザレベルでスレッド制御を行っている.しかし,このスレッド実現手法では,実行がブロックしてしまう処理がC 言語レベルで記述できない,並列計算機において複数スレッドの並列実行による性能向上ができないなどの問題がある.そこで,現在筆者らが開発中のRuby 処理系YARV において,OS やライブラリなどによって提供されるネイティブスレッドを利用するスレッド処理機構を実装し,複数スレッドの並列実行を実現した.並列化にあたっては,適切な同期の追加が必要であるが,特に並列実行を考慮しないC 言語で記述したRuby 用拡張ライブラリを安全に実行するための仕組みが必要であった.また,同期の回数を減らす工夫についても検討した.本論文では,これらの仕組みと実装についての詳細を述べ,スレッドの並列実行によって得られた性能向上について評価した結果を述べる.
著者
久芳 昭一 古市 格 村田 雅和 宮田 倫明 穂積 晃 前田 和政 松村 陽介
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.368-371, 2010-03-25 (Released:2010-05-25)
参考文献数
6
被引用文献数
1

胸腰椎圧迫骨折の臨床経過と予後予測について検討を行った.過去2年間で受傷早期に来院し入院治療を行った43例50椎体(男性15例,女性28例)を対象とした.3カ月以上の疼痛持続の有無とX線学的に椎体圧潰率,局所後弯を受傷時と最終観察時に計測し,受傷時MRI(T1強調像),年齢,性別,受傷時椎体圧潰率,受傷時後弯度,損傷部位,受傷機転との関連を検討した.疼痛持続,椎体圧潰進行はMRI像の後壁損傷と男性症例に関連を認めた.後弯進行はMRI像の後壁損傷に関連を認めた.胸腰椎移行部の損傷は有意に椎体圧潰が進行していた.
著者
清枝 希帆 前川 昌子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.165-171, 2011-03-15 (Released:2013-08-01)
参考文献数
26

We dyed cellulose and nylon films with onionskin extraction, quercetin and rutin. Then we measured their absorption spectra and compared them. We also evaluated their ultraviolet protection effect on nylon films which were dyed well. It was found that the absorption spectra of quercetin and rutin solution had absorption maxima (λmax ) at about 370, 260 and 200nm. The absorption spectrum of onionskin extraction had λmax at about 300nm, as well as at about 370, 260 and 200nm. In addition, spectrum of onionskin extraction had weak absorption at more than 410nm. It was similar to the absorption spectra of dyed nylon films. Concerning the ultraviolet protection effects, nylon films dyed with quercetin showed UPF50+ when the amount of dye uptake was more than 0.05mol/kg. On the other hand, nylon films dyed with onionskin extraction showed UPF50+ when the estimated uptake assumed as quercetin was more than 0.015mol/kg. In conclusion, nylon films dyed with onionskin extraction showed higher ultraviolet protection effects (UPF values) than those dyed with quercetin.
著者
前木 孝洋
出版者
日本神経感染症学会
雑誌
NEUROINFECTION (ISSN:13482718)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.115, 2022 (Released:2022-05-12)
参考文献数
19

【要旨】日本脳炎(Japanese encephalitis:以下 JE)は、日本脳炎ウイルス(Japanese encephalitis virus:以下 JEV)の感染によって生じる中枢神経感染症である。JE 患者から急性期に採取された髄液中からでも JEV 遺伝子が検出されることはきわめてまれであるため、JE を正確に診断するためには、急性期に採取された髄液だけでなく、急性期血清と回復期血清(ペア血清)を採取、保管しておくことが重要である。2019 年、2020 年に日本で報告された JE 患者から検出された JEV の遺伝子型はⅠ型であった。JEV Ⅴ型株が近年、中国、韓国で検出されており、日本への侵入に注意を払う必要がある。
著者
浅井 康文 佐藤 昌太 坂脇 英志 相坂 和貴子 加藤 航平 水野 浩利 前川 邦彦 丹野 克俊 森 和久 奈良 理 高橋 功 目黒 順一
出版者
一般社団法人 日本交通科学学会
雑誌
日本交通科学学会誌 (ISSN:21883874)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.21-27, 2011 (Released:2018-03-01)
参考文献数
6

北海道では、ドクターヘリ(3機体制)と北海道防災ヘリなどとの共存体制や、さらなる航空機医療の充実を目的に、2010年5月北海道航空医療ネットワーク研究会が設立された。本研究会では、試験事業として民間企業からの寄付によって小型ジェット機を1ヶ月間チャーターし、患者搬送、医師搬送、臓器搬送を実施したので、その結果と運航の可能性や課題等について報告する。結果は、総出動件数16件で、患者搬送9件(要請11件)、臓器搬送4件、医師搬送3件であり、事故なく安全に運航できた。また、着陸可能な北海道内の8空港で見学会を開催し、普及活動も同時に実施した。1ヶ月間の固定翼機運航の成果を踏まえて、北海道地域再生医療計画に基づき、2011年度より3年間に渡り、固定翼機(メディカルウイング)の運航が実地される。
著者
前田 陽次郎
出版者
The Japan Association of Economic Geography
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.69-83, 2021-06-30 (Released:2022-06-30)
参考文献数
19
被引用文献数
1

長崎県対馬市は韓国との国境地帯に位置する.近年では1999年に対馬釡山間に定期高速船航路が開設されたことを契機に,日韓両国間の人の行き来が増えた.特に韓国からの観光客が多く,2018年には韓国人入国者が年間40万人を越えた.観光客は1999年から2010年までは徐々に増加したものの,年間5~6万人程度で落ち着いていた.その後2011年の原発事故による韓国人の日本旅行客減少を受け,博多釡山間を運航していた会社が,距離が近く運賃が安い対馬に博多から航路を振り替えたことを契機に対馬への入国者が一気に増え,観光関連事業への投資が活発になった.ところが日本政府による韓国への輸出規制厳格化を受け韓国内で起こったボイコットジャパン運動の影響で2019年7月から入国者が激減した.さらに2020年3月にはCOVID-19の感染拡大を受け,韓国から対馬への入国が禁止されたため,入国者数は0になった.対馬の観光業は大きな打撃を受けたが,他産業から観光関連産業への就業者移行は進んでおらず,地元の住民への影響はそれほど大きくなかった.急激な観光客の増大は産業構造の大きな変化は起こさず,観光業を産業の中心に据えたいのであれば,もっと長期的な施策が必要になる.
著者
前川 喜久雄 本多 清志
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.15-30, 2001-08-31 (Released:2017-08-31)

This paper describes how the experimental study published as Chiba and Kajiyama's The Vowel, Its Nature and Structure was conducted in pre-war Japan. Human, institutional, and instrumental environments of the study were investigated based upon various documents, including newly found laboratory notes written by Masato Kajiyama. Survey of the early citations of The Vowel, both in home and abroad, was also reported.
著者
土倉 潤一郎 高橋 佑一朗 前田 ひろみ 吉永 亮 井上 博喜 矢野 博美 犬塚 央 川口 哲 田原 英一
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.40-46, 2017 (Released:2017-07-05)
参考文献数
13
被引用文献数
1 2

「1週間に1回以上の頻度」かつ「2週間以上の持続」で再発するこむら返り33例に対して,疎経活血湯を使用した。判定は薬剤開始1ヵ月後に行い,薬剤開始直後から症状が消失したものを「著効」,1ヵ月後に症状が消失していたものを「有効」,1ヵ月後に半分未満へ軽減したものを「やや有効」,1ヵ月後に半分以上が残存したものを「無効」とした。結果は,「著効」12例,「有効」11例,「やや有効」9例,「無効」1例であった。1ヵ月後までに23/33例(69.6%)でこむら返りが消失し,32/33例(96.95%)において半分未満に改善した。さらに3ヵ月後までに29/33例(87.8%)で消失しており,高い有効性を認めた。夜間から明け方のこむら返りに対しては,“夕より眠前”“1包より2包”でより効果を認め,眠前2包の“発作前の集中的投与”が最も有効であった。再発性のこむら返りに対して疎経活血湯は有用だと思われる。
著者
前田 玄太 一杉 正仁 柴崎 宏武 影澤 英子
出版者
一般社団法人 日本交通科学学会
雑誌
日本交通科学学会誌 (ISSN:21883874)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.20-26, 2019 (Released:2020-09-30)
参考文献数
9

交通事故総合分析センターのマクロデータの中から2012〜2016年の5年間に日本で発生した「路上横臥」(以下、横臥群とする)の交通事故を対象に、事故発生状況、路上横臥による死傷者の背景および人身損傷程度を分析した。また、同期間の事故類型別の「人対車両」の非路上横臥の交通事故(以下、非横臥群とする)と比較した。横臥群が人対車両の中に占める割合は、死傷者数で0.6%、死亡者数で8.3%であった。横臥群の発生は8月がもっとも高く、夏季に多い傾向であった。次いで12月を中心とした冬季にも高い傾向がみられた。非横臥群の発生は12月がもっとも高く、冬季に多い傾向であった。横臥群は非横臥群と比較して、土曜日および日曜日の発生割合、および夜間の発生割合が有意に高かった(p<0.001)。横臥群では、死亡の割合(致死率)が33.0%であり、非横臥群の致死率2.3 %と比較して有意に高かった(p<0.001)。路上横臥は致死率が高いため、路上横臥者を轢過しないための予防安全が重要である。地域の実情を踏まえた路上横臥の予防対策と、事故を回避できる車載システムの実用化が今後望まれる。
著者
田辺 卓也 粟屋 豊 松石 豊次郎 永井 利三郎 山本 克哉 栗原 まな 伊予田 邦昭 前川 喜平
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.318-323, 2004-07-01 (Released:2011-12-12)
参考文献数
6

てんかん症例への予防接種基準案作成の一環として, てんかんの中では接種の際に最も注意を払う必要があると考えられる乳児重症ミオクロニーてんかん (severe myoclonic epilepsy in infancy;SMEI) 症例の予防接種実施状況と自然罹患時の状況とを比較検討した.対象は調査時2~25歳のSMEI症例58例で, のべ359回接種されていた.接種率はBCG, ポリオ1回目が71%と最も高率であった.ポリオの2回目, DPT初回接種の2, 3回目はより低率であり, 接種時期も遅れる傾向にあった.一方, 麻疹は55%と比較的高率に接種されており, 1~2歳代の接種率が高かった.自然罹患した際はけいれん発作の増悪や意識障害, 脳症などの重篤な合併症が高率 (63%) にみられたのに比し, ワクチン接種後の発熱やけいれんは有意 (P<0.0001) に低率 (7.2%;けいれんのみでは5.0%) であった.ワクチンの中では, 麻疹ワクチンによる発熱およびけいれん誘発率が有意に高率であった (P=0.012).SMEI症例に対しては, 十分な発熱, けいれん対策の指導のもと, 特に麻疹を中心に積極的にワクチン接種を推奨し, 自然罹患による合併症のリスクを低減する必要があると考えられた.
著者
吉川 義之 前重 伯壮 植村 弥希子
出版者
Japanese Society for Electrophysical Agents in Physical Therapy
雑誌
物理療法科学 (ISSN:21889805)
巻号頁・発行日
pp.2023-010, (Released:2023-06-15)

創傷リハビリテーション(以下,創傷リハ)においてリハビリテーション専門職(以下,リハ専門職)が多く関わると考えられる糖尿病足病変と褥瘡に対する物理療法について紹介する.創傷リハでは創傷発生予防と創傷管理のリハビリテーションがあり,リハ専門職はその両方に関わることができる.物理療法も同様に,創傷発生予防と創傷管理の両方に関わることができる.創傷予防については電気刺激療法を実施し筋の収縮を促すことにより足底圧や坐骨部圧の分散が可能になる.創傷管理については,創部に電気刺激療法を実施することにより創縮小率が上昇することが確認されている.このように物理療法は創傷発生予防と創傷管理の両方に関わることができるため,積極的に実施していただきたい.今後,創傷領域に関わっていただけるリハ専門職が増えることを切に願っている.
著者
小堀 栄子 前田 祐子 山本 太郎
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.64, no.12, pp.707-717, 2017 (Released:2018-01-05)
参考文献数
55

目的 日本在住外国人の死亡率を日本人と比較し,その特徴と傾向を明らかにする。また,日本在住外国人の健康に関する研究の意義と今後の方向性について考察する。方法 対象は日本在住外国人とした。データ(2010年)は政府統計から入手した。外国人の実際の人口により近いと考えられる法務省の登録外国人統計による外国人登録者数を用いた死亡率を新たに算出し,外国人の死亡率と日本人の死亡率を比較した。結果 死亡総数の年齢調整死亡率(人口10万対)は男性571.5,女性316.1で,日本人の値を1としたときの率比は男性1.1,女性1.0であり,日本人とほぼ同等の年齢調整死亡率であった。しかし,年齢階級別の率比は,20-34歳で0.3-0.5,35-59歳で0.6-1.0,60歳以上で1.0-1.4と,年齢階級とともに上昇していた。一般的に外国人は日本人より多くの面で不利な状況にあると思われるが,若年層から中年層の死亡率は日本人より低く,高年層では日本人より高くなっていた。同様の傾向は,主要死因別死亡率でもみられたが,不慮の事故,自殺による死亡率は中年層でも日本人より死亡率が高かった。また,高年層では主要死因別死亡率が全般的に日本人より高い中で,とくに自殺による死亡率が高かった。結論 本研究結果は,若年層および中年層の外国人は日本人より健康であり,日本でもヘルシー・マイグラント効果が存在する可能性を示している。しかし,その効果はその国での在住期間が長いと減少・収束するという報告があり,若年・中年層でみられた低い死亡率は,何もしなければやがて上昇に転じ,日本人のそれを上回ることも考えられる。死因別にみれば,中年層では外因死(不慮の事故,自殺)による死亡率が高く,また,高年層ではヘルシー・マイグラント効果の減少や収束にとどまらない高い死亡率の死因が多く,中でも自殺による死亡率はとくに高く,いずれも留意されるべきである。死亡率の算出値には,過小評価や過大評価の影響がまだ残されている。しかし,その影響の程度は小さく,算出値の妥当性が公表値のそれに比べて劣るとの根拠として十分ではない。ヘルシー・マイグラント効果に関するさらなる研究は,日本在住外国人の現在と将来の健康課題の解明とその対策に有用であると思われる。
著者
古野 真菜実 前田 香奈 今泉 修 神藤 真優 日比野 治雄 小山 慎一
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第63回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.60, 2016 (Released:2016-06-30)

人間の肌に蓮の花托(花弁・おしべ・めしべを取り去った部分) をコラージュした画像は「蓮コラ」と俗称されており,肌から多数の蓮の実が覗いている様は体験的に不快を喚起することが知られている。また蓮コラと似た斑点模様を持つ広告やプロダクトに対しても不快感を訴える者がいる。蓮コラや斑点模様が不快を喚起する要因として,嫌悪を感じやすい傾向である「嫌悪感受性」との関連が挙げられている。蓮コラと嫌悪が密接に関わっているならば,蓮コラージュ対象が人間にとって身近であればあるほど不快感が増す可能性がある。また嫌悪的な蓮をある対象にコラージュすると,嫌悪が増幅する現象が蓮コラであると考えられる。よって本研究では蓮コラによる不快現象を確認し,更にその不快感が蓮コラージュ対象の違いによるものだと推察し検討を行なった。人間と動物の蓮コラに対する不快感評定の結果, 蓮コラは蓮単体よりも不快感が強かった。しかし人間と動物の間に不快感の差は見られなかった。この結果は蓮コラージュ対象への心理的距離の近さによって部分的に説明されることが示唆された。本研究は蓮コラや斑点模様による不快の予防と軽減に繋がると考えられる。
著者
瀬尾 恵美子 小川 良子 伊藤 慎 讃岐 勝 前野 貴美 前野 哲博
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.71-77, 2017-04-25 (Released:2018-07-05)
参考文献数
14

目的 : 研修医の抑うつに関して, 臨床研修制度導入時と, 制度が広く周知された段階とで比較検討を行う.方法 : 全国の臨床研修病院250施設で, 2011年採用の研修医1,753名に対し, 研修開始時と開始3カ月後に, 抑うつ反応, 勤務時間, ストレス要因, ストレス緩和要因などに関するアンケート調査を行い, 2004年の同様の調査と比較した.結果 : 研修開始3カ月後, 抑うつ状態の研修医は30.5% (新規うつ状態率19.6%) で, 2004年より有意に減少していた. 一因として勤務時間の減少, ストレス要因, 緩和要因の改善が考えられた.考察 : 依然多くの研修医が抑うつ状態となっており, 研修環境の更なる改善が望まれる.
著者
下島 桐 東 祐圭 若月 大輔 笹井 正宏 久野 越史 池田 尚子 前田 敦雄 前澤 秀之 江波戸 美緒 鈴木 洋 嶽山 陽一
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.44, no.SUPPL.3, pp.S3_129-S3_134, 2012 (Released:2013-09-25)
参考文献数
7

症例は74歳,男性.主訴は心肺停止.2010年5月ころより失神発作が出現するようになったが,1分程度で自然回復するために放置していた.2010年11月失神発作出現.12誘導心電図でデルタ波を認めWPW症候群と診断されたが,頻拍発作がとらえられず経過観察となった.2011年5月夜間胸部不快感の後心肺停止となった.救急隊到着時心室細動(VF)であり心肺蘇生,電気的除細動施行されVFは停止した.近医に入院し脳神経系異常なく,精査加療目的で当院に転院した.CAGでは有意狭窄なし,アセチルコリン負荷中に冠攣縮誘発は認められなかったが,AFが誘発されVFに移行した.VFはDCで停止.電気生理学的検査(EPS)施行,Kent束付着部位は左後側であると同定.洞調律中,順伝導はKent束で,逆伝導は房室結節であった.プログラム刺激で心拍数185bpmのwide QRS tachycardiaが誘発されたが,順伝導はKent束で,逆伝導は房室結節であり逆方向性房室結節リエントリー性頻拍(antidromic AVRT)であった.AVRT中血圧は40mmHgまで低下した.心肺停止の原因はAVRTから心房細動(AF)に移行し,VFに至った可能性が示唆された.Kent束をアブレーションしKent伝導ブロックに成功し,その後症状なく経過している.Antidromic AVNRTが心肺停止の原因であった1例を報告する.