著者
大久保 雄平 福井 巌 坂野 祐司 吉村 耕治 前田 浩 米瀬 淳二 山内 民男 河合 恒雄 石川 雄一 山本 智理子
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.87, no.9, pp.1138-1141, 1996-09-20

44歳,家婦。1年3ヵ月来の肉眼的血尿,排尿困難を主訴に1994年6月初診。経膣的な触診にて膣前壁に柔らかい腫瘤を触れ尿道腫瘍を疑った。尿細胞診では腺癌を疑わせる多数の悪性細胞集塊を認めた。尿道膀胱造影にて尿道憩室を2つ認め,尿道鏡にて尿道括約筋の近位と遠位の2カ所にそれぞれの憩室口を認めた。膣からの圧迫により近位の憩室から表面平滑な小豆大の腫瘍が突出したのでこれを切除したところ,病理学的には低分化型の移行上皮癌が疑われた。尿道憩室癌の診断にて8月9日前方骨盤内臓器全摘術,インディアナパウチ造設術施行。近位憩室内に認められた腫瘍は病理学的に管状,乳頭状および嚢胞状など多彩な腺様構造を呈し,核が上皮細胞の表面に突出した,いわゆるhobnail(鋲くぎ)パターンを認め,mesonerphric adenocarcinomaと診断した。術後,局所に放射線照射を追加し退院。術後1年4ヵ月の現在再発,転移を認めていない。女子尿道mesonephric aenocarcinomaはその組織発生に関していまだ統一された見解はなく,自験例は文献上44例目と思われる。
著者
前田 一平
出版者
鳴門教育大学
雑誌
鳴門教育大学研究紀要 (ISSN:18807194)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.247-258, 2008

For Whom the Bell Tolls has long been regarded as one of the major novels of Ernest Hemingway, but almost no critics of the 80's and 90's, when the drastic revising of Hemingway's works took place, seem to have paid much attention to it. Still, two small critical movements supporting this novel can be recognized. One is a discussion presented from Spanish scholars : Edward F. Stanton and Allen Josephs are versed in the language, tradition, and culture of Spain and try, for example, to find the models of Pilar and Maria in the history and culture of Spain, not of the US of America. They maintain that what Hemingway had learned in Spain in the course of eighteen years, especially the primordial Spain which was the other world to him, is realized in this novel. The other movement is made by the critics who highly praise the organically united structure of the novel. The point of their argument is that the plural narrative voices, interior monologues, and recollections which form the multiple narrative structure of For Whom the Bell Tolls are all united with the simple and single action of blowing the bridge. This paper critically examines and denies the reliability of those two movements and concludes that the most convincing reading so far presented of For Whom the Bell Tolls could be found in Edmund Wilson's review published as early as in 1940, where he criticized the defects of the form and the story development of the novel.
著者
藤原 均 野澤 悟徳 前田 佐和子 三好 勉信 品川 裕之
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

地表から大気上端(~700km高度)にいたる領域の気温、風速、組成変動を計算可能な数値モデルが研究代表者らのグループによって世界で初めて開発された。この数値モデルシミュレーションとレーダー観測データから、下層大気に起源を持つ高度300 km付近の超高層大気変動のいくつかを明らかにした。特に、極冠域では従来認識されていた以上の激しい大気変動を観測、シミュレーションの双方から明らかにすると伴に、低緯度領域では、これまではシミュレーションでは再現不可能であった真夜中の温度極大の再現に成功した。
著者
冨永 良喜 小澤 康司 村本 邦子 前田 潤
出版者
兵庫教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

2004年12月に発生したインド洋大津波の被災地インドネシア・アチェの被災した教師36名に対して2007年9月、2日間の心のケア研修プログラムを実施した。また、アチェの中学生及び高校生に対して、心のケア授業を実施した。2008年6月には、アチェの中学・高校生297名に、心理教育のための心のケア・アンケートを実施した。その結果、97%の生徒が「またツナミが来るのではないか心配だ」と回答した。防災教育の必要性を示唆する結果であった。
著者
前田 良三
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

1.ルートヴィヒ・クラーゲスの比喩論・言語論における美的身体性とメディアの問題:クラーゲスの『リズムの本質』が端的に示しているように、彼のリズム論は都市生活の機械的・無機的なタクト(拍子)に対するアンチテーゼとして構想されているが、それと同時に、19世紀的な個的・主観的身体性を超克する契機としての集団的リズムの発見という点において、複製技術的メディアによって可視化されたリズムの表象と通底している。2.ゲオルゲ派のメディア戦略と複製技術による自己演出:ゲオルゲの美的自己演出の戦略は、逆説的にも大都会的・技術メディア的な知覚が支配的になったヴァイマル期の視覚文化を前提としている。大衆文化とエリート文化がいわば同一平面上に並列的に展示され、「触覚的」(リーグル、ベンヤミン)な知覚の対象とされるとき、ゲオルゲ派の美学は自らの詩的世界のみならず、詩人としての社会的存在をも図(大衆文化)に対する文様=ゲシュタルトとして示そうとするものであり、この点においてすぐれて20世紀的といえる。3.伝統主義美学とメッセージの暗号技術:伝統主義者の美学において唐突に復活する「形式」という主題は、非大衆的メッセージ伝達形式として詩というメディアをあらたに発見する。そこでは日常的コミュニケーションに対する暗号として詩が表象されている。4.保守的文学者集団と技術者集団の男性同盟的組織原理:ゲオルゲ派にもっとも典型的に見られる男性同盟的かつカリスマ指導者+弟子という組織構造は、反近代主義的・宗教的な背景を有するが、同時に専門家集団としての技術者集団とその排他性・内的規律といった点で共通性をもつ。
著者
九郎丸 正道 金井 克晃 大迫 誠一郎 前田 誠司 恒川 直樹
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

プラスティック製品の可塑剤として広く使用され、精巣毒性が知られているフタル酸エステル類に属するDi(n-butyl) phthalate(DBP)及びDi-iso-butyl phthalate(DiBP)について、その作用機序を種々の実験系を用いて検討した。その結果、DBPはエストロゲン様作用を示し、DBP投与により誘起される精細胞アポトーシスは精巣におけるエストロゲン受容体の活性化によりもたらされると考えられた。一方、DiBPによるアポトーシスはエストロゲンのそれと異なる作用経路によることが示唆された。
著者
高後 裕 蘆田 知史 藤谷 幹浩 大竹 孝明 前本 篤男 上野 伸展
出版者
旭川医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

ヒトおよびマウス腸管を用いた腸内細菌叢の解析から、腸管内とバイオフィルム内の細菌ポピュレーションが異なること、健常人と炎症性腸疾患患者におけるバイオフィルム内の細菌ポピュレーションが異なることが示唆された。宿主由来および腸内細菌由来活性物質の作用解析から、プロバイオティクス由来の腸管保護活性物質が、腸炎による腸管障害を改善することが明らかになった。また、この作用は上皮細胞膜トランスポーターによる細胞内への取り込みや上皮細胞接着分子との結合により仲介されることが明らかになった。以上の研究結果から、プロバイオティクス由来の活性物質を用いた新規腸炎治療開発の基盤的成果が得られた。
著者
前原 由喜夫
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本年度は昨年度から行ってきた協同実行機能課題に関する実験を継続すると同時に,成人の「心の理論」における作動記憶の役割に関する研究成果を英語論文にまとめた。また,新たな成人の「心の理論」課題も開発して国際学会で発表した。さらに,小学校で注意欠陥多動性障害(ADHD)児童の療育の実施とスーパーバイズを行い,共同研究者とともにADHD児童の社会的場面における実行機能の改善に焦点を当てたトレーニング課題を論文化する準備を進めてきた。実行機能は人間の目標志向行動を支える認知機能の総称であり,前頭葉にその脳機能が集中しているとされ,今まで数多の研究が行われてきたが,他者との協力場面における実行機能の働きについては検討されてこなかった。そこで,協同実行機能課題に関する研究では,他者との協力場面における実行機能の働きをコンピューターとの協力場面における実行機能の働きと比較することによって検討した。実験の結果,相手が人間のときのほうが自分の反応をうまく抑制できていることが判明し,対人状況での共感性が高い人ほど自分の反応のコントロールも十分にできていることがわかった。この結果は,対人協力状況における実行機能の働きが,従来調べられてきたコンピューターを相手にして1人で課題を遂行するときの実行機能の働きと異なる特徴を備えている可能性を示唆している。ADHDは実行機能の障害が原因だと広く考えられてきたため,実行機能課題を繰り返し訓練して注意制御能力の改善を実現した研究はいくつか存在する。しかし,注意制御能力が改善されても多動性や衝動性といった問題行動の改善が見られていない。そこで,上述の協同実行機能研究の知見を踏まえて,対人協力場面で実行機能を駆使する必要のあるトレーニング課題をADHD児童に実施し,行動制御能力の改善を試みる研究を行った。
著者
田中 良明 斉藤 勉 藤井 元彰 斉藤 友也 前林 俊也
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

難治性悪性腫瘍に対する放射線治療において、進行固形癌や再発癌は通常の放射線照射単独では十分な治療効果が得られない場合が多い。そこで、三次元原体照射による優れた線量分布と、放射線増感作用を有する温熱療法併用することにより、局所一次効果と臨床症状に改善が得られるかを検討した。対象は平成15年1月以降の4年間に温熱併用放射線化学療法を行った消化器系の癌腫25例(男/女=18/7、平均年齢59.4歳)で、内訳は、膵癌8例、胆嚢癌2例、胆管癌4例、小腸腫瘍2例、S状結腸癌2例、直腸癌7例で、現症別では局所進行・手術不能12例、術後再発12例、その他1例である。放射線治療は可能な限り三次元原体照射、多門照射を適用し通常分割で50〜60Gy、温熱療法はRF波誘電加温装置(Thermotron-RF8)を用い、病巣部41℃、30分以上で週1回、計4回以上を目標に実施した。化学療法は膵癌にはGEM(800-1000mg)、結腸・直腸癌には5-FU/LV、UFT、TS-1もしくはFOLFOXを適用した。結果は、治療内容について予定の70%以上実施できた症例を完遂例とすると、完遂率は68%(17/25)で、臓器別では膵癌(7/8)、結腸・直腸癌(7/9)で完遂率が高かった。画像診断や臨床症状による治療効果は、著効7例、有効12例、無効6例であり、臓器別の奏効率は膵癌(6/8)、結腸・直腸癌(8/9)で高く、胆道癌(4/6)、十二指腸・小腸癌(1/2)では相対的に低かった。完遂率別の治療効果は完遂例で著効6、有効10、無効1(奏効率94%)、非完遂例で著効1、有効2、無効6(奏効率38%)であり、完遂例の方が奏効率が高かった。臨床的に疼痛の軽減、異常分泌物の排泄減少など、QOL(生活の質)の向上が得られる例が多かった。有害事象として、2例に急性胃潰瘍がみられたものの、局所の疼痛、熱感などは軽微であった。以上、本法により奏効率の向上と一次効果持続期間の延長ならびに患者のQOLに改善がみられ、難治性腫瘍に対して有効な治療法であることが明らかとなった。
著者
前野 まさる
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
建築雑誌 (ISSN:00038555)
巻号頁・発行日
vol.113, no.1430, 1998-11-20
著者
田中 寛 加藤 禎一 柿木 宏介 西尾 正一 前川 正信 辻田 正昭 西島 高明 柏原 昇 甲野 三郎 早原 信行
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.p95-103, 1983-01

Cefmenoxime (CMX)について,基礎的ならびに臨床的検討を行った.1.健康成人4名に対しCMX250 mgをcross over法を用いて,筋注,静注および1時間の点滴静注の3方法で投与した.各投与法における最高血中濃度(時間),血中半減期はそれぞれ,筋注5.9±0.1 μg/ml(30分),1.41時間,静注11.1±1.2 μg/ml(15分),1.26時間,1時間の点滴静注12.4±1.4(点滴静注終了時)0.94時間であった(いずれもMean±S.E.).またCMXの投与後6時間までの尿中排泄率は,いずれも60~70%であった.2.急性単純性膀胱炎4例に対するCMXの有効率は100%であった.3.複雑性尿路感染症10例に対する有効率は70%であった.無効例はいずれもカテーテル留置例でPseudomonasが存続もしくは菌交代として出現したものであった.なお従来のcephalosporin系抗生剤に耐性のSerratiaが陰性化した.4. CMX投与による自覚的副作用は認められなかった.しかし一過性に軽度のtransaminaseの上昇が1例にみられたBasic and clinical studies were made on Cefmenoxime (CMX), a new cephalosporin antibiotic, and the following results were obtained. The serum concentration of CMX was examined in four healthy adults after administration of 250 mg of CMX by intramuscular injection, intravenous injection and one-hour intravenous drip infusion (cross over). In the case of intramuscular injection, the peak value of 5.9 micrograms/ml was obtained 30 minutes after administration, and the half-life in serum was 1.41 hours. In the case of intravenous drip infusion, injection, a concentration value of 11.1 micrograms/ml on the average was obtained after 15 minutes of administration, and the half-life in serum was 1.26 hours. In the case of intravenous drip infusion, the concentration was 12.4 micrograms/ml upon completion of drip infusion, and CMX disappeared from serum at a half-life of 0.94 hour. The urinary recovery up to 6 hours was from 60 to 70% in each The efficacy rate of this preparation was 100% for 4 cases of acute simple cystitis. The efficacy rate of CMX was 70% for 10 cases of complicated urinary tract infection; the 3 cases in which CMX was not effective were patients with a residual catheter and Pseudomonas persisting or appearing as superinfection. It was noted that Serratia, which was resistant to the conventional cephalosporin antibiotics, became negative. No subjective side effects due to the administration of this preparation were observed. As for abnormal laboratory findings, a slight and transient rise in transaminases was observed in one case. On the basis of the above-mentioned results, it was concluded that CMX is an effective preparation for the treatment of urinary tract infections.
著者
高山 洋一郎 藤田 孝之 前中 一介
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

ワイヤレス通信システムの普及・高度化に伴い,広ダイナミックレンジの高効率,低ひずみ特性の可能性を持つ送信用マイクロ波電力増幅器としてドハティ増幅器が注目されている.ドハティ増幅器は,B級動作のキャリア増幅器およびC級動作のピーク増幅器を直接結合して,低RF電力レベルでキャリア増幅器(CA)の特性を,高RF電力レベルでピーク増幅器(PA)の特性を取り出して,低RFレベルから高RFレベルにわたって優れた特性を実現しようとする増幅器である,しかしながら,2台の増幅器の一般的な直接合成特性の解析・設計理論は確立していなかった.本研究者らは,マイクロ波域での電力増幅器の解析・設計に適応できる理論を提案し,Si MOSFET電力増幅器を設計製作してその有効性を示した.まず,ドハティ増幅器を構成するCAおよびPAへのRF入力信号が等分配の場合について詳細な検討を行った後,本研究者らが提案したより一般的な出力合成回路構成法およびその設計法を拡張して,CAおよびPAへのRF入力信号の配分が等分配でない場合の一般的なマイクロ波ドハティ増幅器回路の設計法を検討提示した.この設計法によりRF入力電力分配比率を変えた場合のドハティ増幅特性を検討し,より高性能のドハティ増幅器構成法の可能性を示した.入力不等分配回路は直接分配型およびウイルキンソン型を試作検討した.アイソレーションがない直接分配型は安定性に課題があるため,ウィルキンソン分配回路により1GHz帯2WクラスのSiMOSFET電力増幅器を製作評価して詳細な検討を行った.その結果,不等分配によりさらに低レベルでの効率の向上を期待できる広ダイナミック特性入出力を確認した.
著者
田山 智規 鈴木 啓一 美川 智 粟田 崇 上西 博英 林 武司 前田 高輝 加地 拓己 上本 吉伸 鹿野 裕志 柴田 知也 児嶋 千尋 西田 朗
出版者
日本養豚学会
雑誌
日本養豚学会誌 (ISSN:0913882X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.187-194, 2006-12-26 (Released:2007-08-10)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

抗病性に関与する遺伝子を特定するために,ランドレース種について,免疫形質と慢性疾病病変に関する品種内QTL解析を行った。用いた集団は,慢性疾病病変を選抜形質としたランドレース種系統造成の選抜第2世代までの育成豚と調査豚519頭(基礎世代44頭,第一世代205頭,第二世代310頭)である。7週齢時と体重105kg時で採血し,補体別経路活性,貪食能,顆粒球・リンパ球比,総白血球数,羊赤血球に対する抗体産生能などの免疫形質を測定した(抗体産生能は105kg時のみ)。また,各世代の調査豚267頭についてブタ萎縮性鼻炎(AR)と肺の病変を測定し,スコア化した。常染色体18本に合計107個のDNAマイクロサテライトマーカーを配置し,それらの多型判定は,353頭(基礎世代の雌の一部25頭と第1世代204頭,第2世代調査豚124頭)について行った。解析にはIdentical-by-decent(IBD)行列を利用した分散成分分析法を用いた。まず,IBD行列をLOKIプログラムにて推定した。分散成分分析法はSOLARプログラムを用いて行った。解析の結果,総白血球数と貪食能,そして肺の病変に関する有意なQTLが検出された。
著者
森田 譲 前田 保憲 日隈 崇文
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.262-270, 2004-06-15

本論文では、ニューラルネットワークを利用し、倒立振子制御におけるPIDゲインのセルフチューニングを行い、評価関数の最小となるPIDゲインが存在することを明らかにした。実システムの制御対象として無駄時間を含む1重倒立振子を考える。この制御系は1入力2出力系を構成し、台車、倒立振子および角度補償器と位置補償器を含めた系を伝達関数で表し、これに時系列処理を行いニューラルネットワークで同定する。このニューロエミュレータはPIDゲインをチューニングする際に必要なシステムヤコビアンを計算するときに用いる。つぎに実システムモデルに対して、別のニューラルネットワークを用いて、倒立しているが不安定なPIDゲインの初期値からセルフチューニングを開始する。この結果チューニングで得られたPIDゲインを用いて実験を行い、測定された振子の角度および台車の位置の情報とも整定時聞か短くなり、かつシミュレーション結果とよく一致することを示した。
著者
前田 健
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

1) CDVのレセプターSLAMを恒常的に発現する細胞を用いて、野外株とワクチン株の増殖性を比較した結果、ワクチン株はSLAM発現細胞で極端に増殖能力が落ちた。これはワクチン株がSLAM発現細胞すなわちリンパ系の細胞での増殖が抑制していることから、イヌでの病原性が低下していると推測された。2)世界で初めて100代以上継代が可能なウマ由来の培養細胞株を樹立した。この細胞でウマヘルペスウイルス2型は細胞変性効果を示して増殖するため、EHV-2を含むウマヘルペスウイルスに対する治療薬の効果の判定が可能となった。3)Fcwf-4細胞を用いたウイルス中和試験によりI型ネコ伝染性腹膜炎ウイルス(FTPV)はFIP発症ネコ血清により感染が増強されることが示されたが、I型ネココロナウイルス(FCoV)感染健常ネコ血清には感染増強作用が存在していなかった。これはFCoV感染による抗体ではなく、FIPV発症ネコ血清中に含まれる何らかの因子がfcwf-4細胞に対する感染増強に関与していることを示唆している。このin vitroにおける感染増強機構を指標にFIPに対する治療薬の開発が可能になると期待される。4)コウモリより新規細胞株の樹立と新規ヘルペスウイルスとアデノウイルスの分離に成功した。コウモリ由来の新興感染症は多く、これらの細胞はその診断に役立つものと期待される。
著者
奥野 良信 伊藤 正恵 加瀬 哲男 中川 直子 前田 章子
出版者
大阪府立公衆衛生研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

インフルエンザウイルスのHA蛋白は構造的に頭部と幹部に分かれるが、我々は以前に幹部に共通中和エピトープの存在することを証明した。このエピトープを利用するために、幹部だけをコードするヘッドレスHAのcDNAを構築し、これを広域反応性のDNAワクチンとして活用することを考えた。昨年度までは、HA遺伝子を発現させるベクターにpEF-BOSを用いていたが、マウスに有効な免疫を賦与できなかった。そこで今年度は、高発現ベクターのpNOW-GKTに変更してDNAワクチンを作製し、マウスに免疫して抗体価の測定とチャレンジテストによりこのワクチンの有効性を検討した。フルサイズのHA、あるいはヘッドレスHAをコードするcDNAをベクターに挿入し、遺伝子銃を用いて3週間隔で2回マウスに免疫した。2回目の免疫から2週後にマウス肺に強い親和性を示すA/FM/1/47(H1N1)をマウスの鼻腔内に接種してチャレンジテストを行った。ベクターだけを接種したマウスは著明に体重減少し、半数のマウスが死亡した。一方、フルサイズのHAを免疫したマウスはすべて体重減少を示すことなく生存した。ヘッドレスHAを免疫したマウスの20%は死亡したが、生存したマウスは体重減少を起こさなかった。経時的にマウスより採血し、血清抗体価をELISAと中和試験で調べた。フルサイズのHAを免疫したマウスは有意な抗体上昇を示したが、ヘッドレスHAを免疫したマウスは抗体価の上昇を認めなかった。以上の結果より、ヘッドレスHAを免疫したマウスがコントロールのマウスよりも生存率が高かったのは、液性抗体よりも細胞性免疫が働いているためだと推測された。今後は、ヘッドレスHAの免疫方法を変え、抗体価の測定だけでなく細胞性免疫も調べてヘッドレスHAのDNAワクチンとしての有用性を検討したい。
著者
前田 浩佑 徳久 雅人 村上 仁一 池原 悟
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.353, pp.19-24, 2008-12-06

本稿では,情緒傾向値の付けられた文末表現パターン辞書を用いることで,メール文章の口調のきつさを判定することを試みる.本辞書のパターンが文にマッチすることで,その文から解釈される情緒の傾向が解析される.そこで,口調(やわらかい・中立・きつい)を変えた3種類のメール文章を32名に作成してもらい,それらの各文章に対する情緒の傾向を,本辞書を用いて解析した.その結果,「やわらかい」および「中立」の口調で作成された文章と,「きつい」口調で作成された文章との間に,情緒傾向値の違いが見られ,それは,人間により口調の違いを識別する精度と同様の傾向であることが,実験的に確認された.こうして,本辞書を用いて,文章の口調のきつさを判定することの可能性が確認できた.