著者
加藤 倫平 植田 勇人 吉田 孝紀
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

北海道中軸部の空知-エゾ帯の主要な構成メンバーとして南北に渡って広く分布する白亜系堆積物は蝦夷層群と呼ばれ,多くの層序学的・古生物学的研究が重ねられてきた。その層序は従来から下部,中部,上部に区分されている(Matsumoto, 1942など)が,蝦夷層群の下部と中部の境界の層序学的位置は各地で異なり,蝦夷層群の広域的な対比は困難である。一方,蝦夷層群分布域全域に渡って追跡できる珪長質な凝灰岩や火山砕屑性砂岩からなる鍵層が確認され,北海道中央部では丸山層と命名された (Matsumoto, 1942;本山ほか,1991など)。この鍵層の堆積年代は蝦夷層群の広域的層序対比に有効であると考えられる。しかし,空知-エゾ帯北部の天塩中川地区や南部の春別川地区においても,化石の産出が乏しいため,この丸山層に対比されるような地層の特定は困難である。このような化石の産出に乏しい地層の年代決定には,U-Pb法による砕屑性ジルコンの年代値が有効である。よって,本研究では,天塩中川地区と春別川地区の凝灰岩層中の砕屑性ジルコンを用いて,U-Pb法により堆積年代を決定し,蝦夷層群下部~中部に及ぶ層準の広域的層序対比を試みた。ジルコンのU-Pb測定には新潟大学のLA-ICP-MS (Agilent 7500a ICP-MS及びNew Wave UP213 レーザーアブレーションシステム)を用いた。 その結果,天塩中川地区の蝦夷層群中部の白滝層の凝灰岩の堆積年代として,96.3-103.4Maを得た。一方,春別川地区の蝦夷層群中部春別川層の凝灰岩層の堆積年代として,98.5±0.5Maを得た。これらの凝灰岩及び凝灰質砂岩の岩石学的性質は珪長質であることが分かった。すでに報告されている北海道中央部の丸山層の堆積年代は浮遊性有孔虫の検討から,102-105Maである(高嶋ほか, 1997b)。また,北海道中央部の日陰の沢層の凝灰岩層のサニディンから98.98±0.38Maおよび99.16±0.37Maの Ar-Ar年代がすでに報告されている(Obradovich et al., 2002)。これらの凝灰岩層は,96-127MaのK-Ar年代を示す渡島帯の花崗岩類(柴田・山田, 1978など),100.6±3.3MaのAr-Ar年代を示す火山岩類(滝上, 1984など)に由来すると考えられる。
著者
村井 純 水野 勝成 三谷 和史 加藤 朗 山口 英 石田 慶樹
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.49, pp.205-206, 1994-09-20
被引用文献数
6

インターネットの発展とともに、知識や情報を共有する応用は一対一型の通信を基盤とした応用と比べて著しく増加している。例えば、WWWの利用による情報の共有、nv(Net Video)、VAT(Visual Audio Tool)といった会議システムが挙げられる。また、インターネットの地理的に普遍的な接続に対する要求が高まっている。これらの傾向によって生じる課題は、一対多型の通信媒体を有効に利用することによって解決が期待できる。そこで、衛星ネットワークと従来の地上網を融合し、衛星通信のもつ地理的普遍性や同報性などの特徴を用いて、インターネットの新しい課題の解決を目的とするネットワーク構築実験であるWISH(WIDE Internet with Satellite Harmonization)を開始した。WISHの構成は、送受信地球局が図1に示すように6地点、7局(奈良は2局)で、7つの周波数帯域を使用する。各局には1.8mφのアンテナを設置し、切り替えが可能な送受信周波数で出力2W、最大2Mbpsの速度で通信が出来る。これら地球局は衛星網を形成するだけでなく、各所で地上網と接続されている。
著者
加藤 政彦
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報
巻号頁・発行日
vol.121, no.2, pp.97-103, 2018

<p> 新しいワクチンの開発と導入によりワクチンで予防できる疾患, いわゆる Vaccine Preventable Diseases(VPD) が増えている. 小児の耳鼻科領域におけるワクチンとしては, インフルエンザ菌 b 型 (ヒブ) と肺炎球菌が特に重要であり, ワクチン導入後同感染症は減少傾向にある.</p><p></p><p> ポストワクチン時代の感染症治療の課題と注意点としては, 海外ではヒブ感染症が激減する中, 無莢膜型や b 型以外の莢膜型による侵襲性感染症が微増していることである. 本邦の調査でも同様の報告がなされている.したがって, インフルエンザ菌が無菌的な部位から検出された際には, 必ず菌株を保存し, その莢膜型を確認する必要がある. また, 喉頭蓋炎については, ヒブワクチン導入後は, その発生数は減少したものの, 平均発症年齢の上昇がみられたとされている. 今後は, 小児よりも成人における喉頭蓋炎の増加や典型的な症状の変化に注意するべきである.</p><p></p><p> 肺炎球菌については, その数多くの莢膜型の存在からワクチンに含まれているタイプが減少する一方で, 非ワクチンタイプが増える serotype replacement (血清型置換) を認めている. その中には, ワクチンタイプの株が莢膜遺伝子群の組み換えを起こすことで血清型を変化させる capsular switching が起こることもある. 実際に, 7価肺炎球菌結合型ワクチン (PCV7) 導入後, PCV7 に含まれない血清型 19A の検出率が全体の約2割を占めたという海外の報告がある. この原因として, 薬剤耐性化の関与も考えられている. 国内でも同様の報告がある. さらに, 13価肺炎球菌結合型ワクチン (PCV13) 導入後も PCV 非含有株による侵襲性感染症が主体となっている. このような観点から, 今後のサーベイランスと薬剤耐性のさらなる検討が重要と考えられる.</p>
著者
田村 祐 原田 結以 加藤 大幾 原 和久 草薙 邦広
出版者
The Japan Society of English Language Education
雑誌
全国英語教育学会紀要 (ISSN:13448560)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.169-184, 2016 (Released:2017-04-05)
参考文献数
26

Among foreign language teachers and researchers, it has been widely acknowledged that grammatical knowledge of a foreign language comprises two types of mental storage. One of the two, explicit knowledge, is quite likely linked to adjectives such as “slow” and “conscious,” whereas the other, implicit knowledge, is associated with words such as “fast” and “unconscious.” The present study challenges this conventional and popularized view, by addressing the consciousness and speed dimensions of Japanese EFL learners’ (N = 24) knowledge about tough movement. We conducted a grammaticality judgment task adopting two experimental paradigms: (a) a subjective measure of consciousness known as the meta-knowledge criterion, and (b) response time modeling. The participants judged the grammaticality of the stimuli under the two conditions, (a) control and (b) tough movement, and described their mental state during judgments (explainable vs. intuitive) trial by trial. We analyzed the dynamics among the recorded judgment responses, reaction times, and responses on the subjective measure. The results supported the hypothesis that the consciousness and speed dimensions intersect obliquely. This means that unconscious knowledge does not entail faster grammatical performance. Some pedagogical implications, particularly in light of English grammar teaching in Japan, are also discussed.
著者
杉田 正明 西村 明展 加藤 公 福田 亜紀 松田 和道 須藤 啓広
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.31-34, 2013 (Released:2013-07-04)
参考文献数
14

高地で行われるスポーツ競技会に対し、平地と同様のパフォーマンスが発揮できるよう「高地順化」が求められる。しかし、高地にまとまった期間、滞在しトレーニングを行うには経済的、時間的にも負担が大きく、さらに高地でのトレーニングではトレーニングの強度や量の低下が心配される。2010年に開催されたワールドカップ南アフリカ大会のサッカー男子日本代表は、事前に平地(国内)で安静時に低酸素を吸入し、高地順化を促進する取り組みを行い、ある一定の成果を収めることができたとされている。しかし、特殊なツールを用いた安静時での低酸素吸入に関しては、不明な部分も多く、トレーニングの順序性を考える上で、安静時の低酸素吸入がその直後に行うトレーニングへ悪影響を及ぼす可能性が危惧されるところである。そこで、本研究の目的は、低酸素吸入後にオールアウトまでの運動を行い、通常環境(常酸素)で行った運動と比較して、生体への負担度や運動能力に影響が生じないかどうかを検討することである。8名の健常な男性を対象とし、安静時に低酸素吸入ツールを用いて低酸素吸入(SpO2 88~92 %;1時間のプログラム)をさせ、安静(常酸素)30分後にハンドエルゴメーターを用いて多段階漸増負荷法でトレーニングをさせた。また、低酸素吸入をしない環境(常酸素)でも同様のことを行わせた。各負荷での心拍数、血中乳酸濃度および主観的運動強度(RPE)の値は負荷が上がることに上昇したが、各測定項目の最大値も含めて低酸素吸入の有無による差は認められず、運動継続時間についても有意な差は認められなかった。本研究の結果より、平地で安静時に低酸素吸入をさせても、30分後の平地での通常の運動トレーニングには悪影響を及ぼさないと考えられた。
著者
田中 延亮 南光 一樹 加藤 弘亮 平田 晶子 恩田 裕一
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.124, 2013

林地における豪雨時の表面流発生プロセスを理解する上で,豪雨時の林内雨量の空間分布の把握は重要であるが,既往研究では,その点について十分に調べられていない.我々は,愛知県内のヒノキ人工林で2010年7月に発生した豪雨イベントを対象にして,同林内17地点において30分間隔で観測された林内雨量の空間分布を調べた.具体的には,上記イベント中の豪雨前(最大30分間降雨強度9.0 mm),豪雨中(同57.0 mm),豪雨後(同5.5 mm)の各時間帯について,林内雨量の空間分布を調べた.豪雨前の時間帯から起算した各地点の積算林内雨量の変動係数は,豪雨のタイミングでほとんど変化せず,林内雨量の空間分布の変動の度合いについては,豪雨の影響をあまり受けないことがわかった.各地点の林内雨量の順位が時間帯の間で相関があるかどうかについて, Spearmanの順位相関係数(r)を用いて調べたところ,豪雨前と後の時間帯は高い相関(r=0.92)を示したが,両時間帯ともに,豪雨中とは比較的低い相関(r=0.79,0.67)を示した.これは,豪雨時には,通常の降雨時とは異なる地点に林内雨が集中することを示唆する.
著者
鈴木 和広 加藤 活大 西村 大作 鈴木 夏生 矢口 豊久 池内 政弘 神谷 泰隆 平松 武幸 水野 志朗 三宅 隆
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.275, 2006

<b><緒言></b> 愛知県厚生連では、傘下9病院の医局長が幹事となって、愛知県厚生連医師会が運営されている。毎年、幹事会で決定された活動テーマに沿って各病院から現状報告と問題提起がなされ、幹事会での議論を経て、医師会総会で幹事会活動報告としてその総括がされている。2003年度の活動テーマは「救急医療」と決定されたが、これは、今後ますます救急医療に対する地域からの要請が高まり、その重要性が増すであろうことから、各病院の現状を把握の上、病院間で情報を交換し、それぞれの救急体制の整備に役立てることが目的であった。<BR><b><方法></b> 各病院の幹事を通じて、2002年度の救急来院患者数、救急車搬入数、救急入院患者数などの統計および人員配置と教育体制に関してアンケート調査を行った。さらに、各病院が抱える問題点を列挙し、幹事会で報告の後、対策について議論を交わした。<BR> 救急来院患者数などの各統計量については、Mann-WhitneyのU検定を用いて解析を行った。<BR><b><結果></b> 9病院全体で、年間約16万名の救急患者を診療し、2万3千台以上の救急車を受け入れていた。施設数では県全体の3.6%に当たる病院群が、出動救急車の10%強に応需している計算となった。救急来院患者の7.4%が入院を必要としており、全入院患者の1.05%を占めていた。立地別に見ると、都市型に分類される病院群のほうが郡部型に分類されたそれらよりも、救急来院患者数、救急車搬入数および救急入院患者数が有意に多かった。配置人員については、診療時間内は多くの病院が各科での対応となっており、研修医を含めた医師および看護師が、救急外来に常駐している施設は少数であった。休日の日直体制での平均配置人数は医師が3.1名、看護師が3.2名であり、当直では、それぞれ3.1名と2.9名であった。教育については、定期的な講習会、講演会あるいは症例検討会が行われている施設は少数であった。問題点として、もっとも重視されたのは人員不足であり、医師、看護師のみならず、診療協助部門、事務部門の各部門でも、多数の救急患者への対応には職員数が十分でないとの指摘がされた。<BR><b><考察></b> 立地条件による差異はあるが、各病院ともその規模に応じた救急患者の受け入れを行っており、愛知県下の病院群のなかでも救急医療への寄与は大きいと考えられた。しかし、人的資源の不足および救急医療の質の確保が問題点としてあげられており、救急医療向上のためには、職員の啓蒙のみならず、厚生連の病院間あるいは地域の医療機関の間での取り組みが必要になると思われた。
著者
加藤 昌宏 鵜沼 英郎 高橋 実
出版者
The Ceramic Society of Japan
雑誌
Journal of the Ceramic Society of Japan (日本セラミックス協会学術論文誌) (ISSN:09145400)
巻号頁・発行日
vol.108, no.1257, pp.478-481, 2000-05-01 (Released:2010-08-06)
参考文献数
14
被引用文献数
9 9

In the aim of the understanding of the coloration mechanism in Cr-doped inorganic pink pigments, the valences of Cr dopant in sphene-type (CaTiSiO5-CaSnSiO5), perovskite-type (CaTiO3-CaSnO3) and rutile-type (TiO2-SnO2) matrices were investigated by use of X-ray photoelectron spectroscopy (XPS). The valences of chromium were directly related to the color of the pigments. The valences were dependent on the Ti/Sn ratio in the mother crystals. Results of XPS showed that chromium ions doped in CaSnSiO5 and CaSnO3 matrices existed Cr4+, causing reddish purple color. With substitution of Ti for Sn in these matrices, the fraction of trivalent chromium increased and the color changed from reddish purple through purple red, red brown and finally to brown. A similar valence change of chromium was observed in the rutile-type pigments that changed lilac through brown to ocar colors. Purple red color was achieved in 2mol% Cr-doped sphene- and perovskite-type pigments containing 20mol%Ti.
著者
祝原 あゆみ 井上 千晶 山下 一也 齋藤 茂子 伊藤 智子 松本 亥智江 加藤 真紀 松岡 文子 持田 和夫 福間 紀子 錦織 圭佑 Ayumi IWAIBARA Chiaki INOUE Kazuya YAMASHITA Shigeko SAITO Tomoko ITO Ichie MATSUMOTO Maki KATO Ayako MATSUOKA Kazuo MOCHIDA Noriko FUKUMA Keisuke NISHIKORI
出版者
島根県立大学短期大学部出雲キャンパス
雑誌
島根県立大学短期大学部出雲キャンパス研究紀要 (ISSN:18824382)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.65-75, 2011

S県A市とS県立大学が取り組む共同事業に参加した地区スタッフが事業から得ているものを分析し,今後の支援について検討することを目的に自記式質問紙調査を行った。その結果「プログラム内容の満足感」は高いが「教室運営の満足感」は低いことや,【高齢者への認識の変化】【自らが感じたプラスの効果】【介護予防への関心の高まり】【活動継続に対する意欲】の4カテゴリーの抽出から,個人のエンパワメント効果が明らかになった。1年間の事業は住民が介護予防に取り組むきっかけとしての役割を果たしており、今後も住民のパートナーとしての継続した関わりが必要と考えられた。
著者
王 立 加藤 信介 黄 孝根
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.59-61, 2016

アクティブチルドビーム(ACB)と液冷空調システム(LCAC)を設置している標準執務室の室内温熱環境を評価するために,数値流体解析により室内温熱環境寄与率(CRI)を計算し,室内の各熱源が人体周り0.2m 離れの処に与える影響を検討した.その結果,ACB はドライFCU と比べ,室内インテリアゾーンの温熱性状に大きく影響したことが分かった.また,LCAC で処理されたパソコン等の室内発熱機器は各人体に均一な影響を与えた結果が見られた.そして,各壁面は壁体近傍の狭い範囲の人体に顕著な影響を与えたことが確認された.