著者
鬼頭 誠 吉田 重方
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.1-8, 1993-02-05
被引用文献数
7

前報において植物性廃棄物と浄水場発生土を組み合わせることにより培養土が容易に製造できることを明らかにした.しかし材料とした浄水ケーキがリン酸固定を起こすために可給態リン酸含量がきわめて低く,かつ,交換性カルシウム含量も低い培養土となり,そのことが作物生育の制限因子として働くことを明らかにした.この点を改善し,より良好な培養土を製造することを目的として,本試験では過リン酸石灰および発泡ケイ酸カルシウム材を加えた培養土の製造を試みるとともに,その培養土製造過程における物質変動を調査した.なお,供試植物残さとしては前報と同じ草種(セイタカアワダチソウ,ヨモギ,ススキ,ダイズ,トウモロコシの茎葉)を用いたが,それ以外にモリシマアカシアのせん定枝も供試した.1)供試した植物材料の乾物分解,炭素消失および窒素消失はいずれも埋設1ヶ月間で急激に起こり,その分解,消失率はいずれもダイズ,トウモロコシ,セイタカアワダチソウにおいて高く,ススキ,モリシマアカシアにおいて低かった.また,乾物分解率と植物材料の成分との間には,全炭素含量との間に負の相関が認められた.2)供試植物材料の違いによって製造した培養土の硝酸態窒素含量は異なり,ダイズを植物材料としたものでは最も高く,ススキを材料としたものではきわめて低含量であった.また,ダイズ,トウモロコシを材料としたものでは培養土の堆積に伴い低下傾向を示し,ヨモギ,モリシマアカシアの材料としたものでは高まる傾向を示した.3)過リン酸石灰と発泡ケイ酸カルシウム材の添加により,Ca型リン酸含量と交換性カルシウムの含量の高い良好な培養土が製造できた.4)それら培養土で栽培したコマツナの生育は化学肥料を施肥した土壌に栽培したものに比べて良好な生育を示し,特に根部生育は高まった.したがって,植物の生育反応の点からみても良質な培養土が製造できたことがうかがわれた.以上の結果から,植物性廃棄物を主材料とした培養土の製造に際しては,材料とする植物性廃棄物の種類によって堆積時間を多少考慮することが必要であるが,果・葉菜類等の育苗用培養土として利用可能であるものと推察された.
著者
細野 耕司 西 政樹 吉田 明夫
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.29-37, 2006-08-31 (Released:2013-08-05)
参考文献数
22

We investigated changes in the depth distribution of aftershocks of three large inland earthquakes in Japan, the 2000 western Tottori Prefecture Earthquake of M 7.3, the 2003 northern Miyagi Prefecture earthquake of M 6.4, and the 2004 mid Niigata Prefecture earthquake of M 6.8. For all of them we found that the seismogenic layer extended to the deeper and shallower zones after occurrence of the main shock. The shallow and deep activities decayed faster than the activity in the intermediate depth. This suggests that when stress is built up very fast, brittle fractures can occur in the zone where increase of stress is usually relaxed through a ductile process. Our results also show that a fault motion could extend to the outside of the seismogenic zone estimated from the background seismicity, which should be taken into consideration in the hazard assessment.
著者
吉田 たかよし
出版者
日経BP社
雑誌
日経バイオビジネス (ISSN:13464426)
巻号頁・発行日
no.27, pp.94-97, 2003-08

1000気圧を超える高圧。場所によっては400℃にも達する高温。太陽光は全く届かず、どこまでも漆黒の闇が広がる。それが深海底の世界だ。そんな環境から新種の微生物を取り出し、産業に役立つ画期的な成分を見つけだす。あるいは、それを通して、地球で生命がどうやって誕生したのか、進化の謎に迫る。
著者
吉田 裕
出版者
校倉書房
雑誌
歴史評論 (ISSN:03868907)
巻号頁・発行日
no.460, pp.p2-15,25, 1988-08
著者
山本 貴士 長谷川 亮 鹿島 勇治 鈴木 幹夫 横田 大樹 吉田 幸弘 上東 浩 前原 裕治 木名瀬 敦 貴田 晶子
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会研究発表会講演集 第25回廃棄物資源循環学会研究発表会
巻号頁・発行日
pp.547, 2014 (Released:2014-12-16)

2011年3月の原発事故により,下水汚泥や焼却灰から放射性物質が高い濃度で検出される事例が東日本各地で多数報告され,原発事故由来の放射性物質に汚染された廃棄物の処理基準が定められたが,これまで廃棄物分野に特化した放射能濃度等の調査・測定法は存在しなかった。よって同年末に廃棄物等の放射能調査・測定法研究会から「廃棄物等の放射能調査・測定法暫定マニュアル」が発行された。その後,廃棄物関連分野での放射線・放射能の調査・測定に関しても事例や知見の集約が進んだことから,廃棄物資源循環学会内に設置された「廃棄物関連試料の放射能分析検討会」において改訂を行い、マニュアル(第2版)として公開した。今回は,この改訂されたマニュアルについて,改訂の経過と主な改訂点について紹介する。
著者
吉田 暁
出版者
経済理論学会
雑誌
季刊経済理論 (ISSN:18825184)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.15-25, 2008-07-20

I have advocated the endogeneity of money supply following the views of M. Nishikawa and J. Itakura as well as those of N. Kalldor and B. J. Moor. As Moor appropriately wrote, "Currently the standard paradigm, especially in the United States, treats the central bank as determining the money base and thence the money stock. / Modern monetary theory has inherited an approach to money that was more appropriate in a world where money was a commodity, usually gold or silver, without fully recognizing the fundamental differences between commodity and credit money." These views, however, have not been widely accepted, especially among Japanese Marxian economists. Some of them have criticized the endogenous money supply theory. This article is a counter-criticism of some most criticizing arguments, mainly those of professor H. Noda and professor T. Itoh Marxian economists quite often express their views based on what Marx said, especially in "The Capital". Marx introduced capitalistic money through the logical developments of the value form, and said that gold would become the main material of money due to its physical characteristics. Then, it is not strange that their views on credit money are based on gold. They have regarded that the gold convertibility is the essence of credit money. They do not attach greater importance to the causes of issuance or withdrawal of credit money, that is, the connection between the supply of credit and the supply of money. In the modern world gold as money does not exist. But they tacitly regard fiat money as a replacement of gold, in other word, exogenous money. Another point I stressed in this article is that those who are severely critical to the endogenous money supply theory misunderstand Marx's logical way of writing. In "The Capital" vol. 1 and 2, there are no credit systems, no credit money. There is only commodity money (gold) introduced at the money theory (vol. 1). At the reproduction charts (vol. 2), his premise is each capitalist has a certain amount of money which is needed for the purchase of materials and the payment of wages etc. Credit system and credit money are the problems of vol. 3, and unfortunately Marx could not complete the credit theory. But some of those who criticize the endogenous money supply theory quote from vol. 1 or 2 where, actually, only commodity money (gold) exists. I also stressed that Phillips-type credit creation theory (multiplier theory)is not valid, especially in the world of credit money. Revival of Macleod or Hahn=Schumpeter type theory is very important. Today's monetary policies of major central banks are not money supply control, but money market interest rates control that affects the public demand of funds. The starting points of the credit creation are loans of banks to firms and household by crediting to their deposit accounts. At this point banks do not need surplus money. Monies are created by the action of banks, that is Macleod-type credit creation. When the cash demand increases, central banks should accommodate. If a central bank worries about the level of the economic expansion and the increase of prices, it can affect demand of funds and then affect prices by interest rates control policy. Today's monetary policies of major central banks are money market interest rates control. Lastly, I stressed the importance of the independence of central banks. Some people might question that the central bank independence is against the democratic procedures of policy determination. But, in my opinion, there is a big difference between the monetary policy and other policies of the governments. While monetary policies are executed through financial transactions in the market, other governmental policies are executed as an exercise of administrative powers.
著者
浅野 良輔 吉田 俊和
出版者
The Japanese Association of Educational Psychology
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.240-252, 2014
被引用文献数
1

知覚された情緒的サポートには, 個人のストレスを低減したり健康を維持したりするだけでなく, 個人の目標追求をうながす効果もある。本論文では, 知覚された目標サポート尺度(Molden, Lucas, Finkel, Kumashiro, & Rusbult, 2009)の日本語版を作成し, その構成概念妥当性を検討した。大学生の異性友人関係(<i>n</i>=173)と同性友人関係(<i>n</i>=211)を対象とした質問紙調査を行った。多母集団確認的因子分析を行った結果, 予測通り, 日本語版知覚された目標サポート尺度は, 促進焦点目標サポートと予防焦点目標サポートの2因子からなることが明らかとなった。これら2つの下位尺度の内的整合性は, 十分に高いことが確認された。下位尺度得点についてはいずれも, 異性友人関係よりも同性友人関係において高く, 男性よりも女性において高かった。情緒的サポートや道具的サポート, 相互作用多様性, 親密性, 対人ストレッサー, 主観的幸福感といった同時に測定した外的基準との関連が, おおむね確かめられた。また, 2つの下位尺度の2週間を通じた安定性や, 2週間後に測定した親密性や主観的幸福感の尺度との関連についても確認することができた。知覚された目標サポートをめぐる心理学的研究や実践的応用について議論した。
著者
吉田 修作
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.1-10, 2011-02-10

天岩戸と天孫降臨神話に記述されたアメノウズメの所作である<神がかり>、<わざをき>に焦点を当てると、天岩戸でのウズメの所作は書紀の<神がかり>の表記やアマテラスとの問答などから、ことばによる<神がかり>が内包されており、天孫降臨のウズメの所作はサルタヒコの「神名顕し」を促し、天岩戸でのアマテラスの「神顕し」と対応する。ウズメの所作は天岩戸では一方で<わざをき>とも記されているが、<わざをき>は本質的には制度化されない混沌性を抱え込んでおり、それが<神がかり>と通じる点である。
著者
吉田 裕
出版者
早稲田大学法学会
雑誌
人文論集 (ISSN:04414225)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.73-98, 2008-02-20
著者
和田 知久 翁長 健治 宮城 隼夫 吉田 たけお 尾知 博
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ICD, 集積回路 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.41, pp.27-33, 2000-05-04

琉球大学では、ハードウエア記述言語を(VHDLまたはVerilog HDL)を用いたデザイン・コンテストを開催しました。コンテストは今年度が3回目でり、今年度より琉球大学の学生だけでなく、他大学や高等専門学校の学生も参加できるようにオープンなコンテストで、2月18日の締切りまでに15チーム(30名)の学生達の参加がありました。課題はガロア体の行列演算器であり、事前選考の結果、京大・阪大・九工大・豊田工業高等専門学校より6チームの代表を沖縄に招待し、琉大の4チームと合わせて、計10チームによる発表会を3月3日に琉球大学工学部にて行いました。琉球大学学部3年生の「タートルネックス」チームが、他大学を抑えて最優秀賞に輝きました。
著者
吉田 博
出版者
日本きのこ学会
雑誌
日本きのこ学会誌 : mushroom science and biotechnology (ISSN:13487388)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.157-163, 2004-12-25
被引用文献数
5

菌床栽培ハナビラタケ子実体の発育過程(子実体原基,幼子実体,成熟子実体)における化学成分(一般成分,無機成分,低分子炭水化物,有機酸,遊離アミノ酸)の変化について検討し,以下の結果を得た.発育過程における水分含量は86.1〜87.8%であり,顕著な含量変動はなかった.乾燥重量当たり,粗タンパク質は13.4〜33.2%,粗脂肪は1.4〜1.7%,粗灰分は2.8〜3.2%,炭水化物は61.9〜82.4%であり,発育にともない炭水化物は増加し,粗タンパク質,粗脂肪,粗灰分は減少した.無機成分含量は,1.45〜1.69%であり,子実体原基から幼子実体にかけて減少し,成熟子実体で増加した.主成分はカリウムで,ついでリン,マグネシウム,カルシウム,ナトリウムであった.低分子炭水化物含量は,6.2〜15.4%であり,トレハロース,マンニトール,グルコース,フルクトース,アラビトールが同定された.主成分はトレハロースとマンニトールであり,発育にともないトレハロースとマンニトール含量は増加した.有機酸含量は,2.6〜3.7%であり,発育にともない減少した.リンゴ酸,クエン酸,フマル酸,ピログルタミン酸,コハク酸,シュウ酸,乳酸,α-ケトグルタル酸,酢酸およびギ酸が検出され,主成分はリンゴ酸,クエン酸,フマル酸,ピログルタミン酸およびコハク酸であった.遊離アミノ酸含量は,0.49〜1.07%であり,発育にともない減少した.主成分はグルタミン酸,アスパラギン,アスパラギン酸,チロシン,アルギニン,アラニンおよびセリンであった.
著者
吉田 修 北川 将之 上田 知亮 石坂 晋哉 油井 美春 長崎 暢子 志賀 美和子 木村 真希子 舟橋 健太 中溝 和弥 田辺 明生 三輪 博樹 伊藤 融 小川 道大 小西 公大 近藤 則夫 森 悠子 和田 一哉 佐藤 仁美
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

20人弱の日本のインド政治・社会研究者がインドにおける州への分権化・自治の進展について共同・分担して分析を行った。その研究結果は2014年度アジア政経学会西日本大会で発表するとともに同学会誌『アジア研究』第62巻第4号に特集として掲載され、インド政治が一国家の枠内にありながら州を単位とした比較政治の対象でもありうること、また政治的に進展した分権化が全国レベルでの緩やかな統合を可能にしていることが、インド研究の政治学全体への貢献として提示できることが示された。この成果はインドの「社会経済変化研究所」で国際セミナーを開催することでインド国内にもインパクトを与え、今後の国際共同研究に道を開いた。
著者
吉田 正純
出版者
京都大学ヒマラヤ研究会
雑誌
ヒマラヤ学誌 : Himalayan Study Monographs (ISSN:09148620)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.47-60, 2000-06-30

本論文ではブータンにおけるノンフォーマル教育の分析を通して, 開発における教育を通じたエンパワーメントについて探求する. そのためにまず「開発とリテラシー」・「開発とジェンダー」の二つの領域でのノンフォーマル教育に関わる先行研究を整理し, アプローチを定位する. 次に現在のブータンにおける(ポスト)リテラシー・プログラムと女性の社会参加計画の政策・実践を分析し, エンパワーメントの可能性を考察する.