著者
小山 省三 羽二生 久夫 宮原 隆成 芝本 利重 重松 秀一
出版者
信州大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1997

複合材料は人などの生活空間に用いる際には勿論のこと、腎不全、心不全、肝不全等の生体の機能不全を改善する目的で利用されるさいには、これらの複合材料による生体側の防御反応としての、免疫アレルギィー反応を含めた炎症反応の出現の有無が、それらの素材開発と応用に重要な要因となることは当然のことである。しかしながら、それらの複合材料を受け入れる生体側での反応性に関して古典的であるにもかかわらず炎症防御反応の根源的な検討が、同一施設において、比較検討された報告は少ない。本研究では、各種のピッチ状活性炭(FL-1)をマウスの皮下に埋没し、6ヵ月間にわたって免疫リンパ球の変動並びに病理組織学的な反応形態の変化を検討し、複合素材としての活性炭の生体防御系に対する妥当性についてアスベストと比較検討した。実験には4週齢系統std:ddYマウスを3群に分けた。実験に用いた活性炭はピッチ系活性炭繊維のうち直径が通常のものの約10分の一である極細系のFC-1を用いた。またアスベストを比較材料として用いた。本年度成績ではアウベストの生体適合性は極めて悪く、皮下に埋没後1ヵ月後にはすでにラングハンス細胞の出現や慢性炎症所見を示すとともに、免疫担当血液細胞のバランスもすでに1ヵ月後には変化していた。さらにこの慢性炎症所見は時間の経過とともに進行性であり、生態的合順応とは逸脱した生体反応を時間変遷とともに発現していることが推察される。すなわち、また、新規な炭素素材であるFC-1の生体適合性を検討したが、6ヵ月間の観察経過で組織炎症反応の発現は究めて軽度であり、進行性の慢性炎症所見はいずれの期間においても認め難いことが特徴的な所見であった。今後、予想することができる生産から廃棄までの生産者側の環境要因、また不確定多数の利用者側の状態要因に対応した生体適合性の検討が逐一なされるべきであることを本年度研究のまとめとして指摘しておきたい。
著者
宮原 耕介 藤井 彩人 齊藤 久志 藤原 徹
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.35, no.31, pp.49-52, 2011-07-21

日本テレビは2010年の8月21日に巨人戦の生中継の制作を初めて3Dで行った。3Dカメラを用いた立体的な映像のみならず、得点や守備図などの画面表示も3DCGを制作した。画面表示の送出は新たに開発した3D立体映像送出機を用い、デザインやアニメーションも3D映像に適した演出にして新規制作した。中継は「スカチャン3D169」で放送され、東京ドームや新宿で行われたパブリックビューイングにおいても多くの方が3Dメガネをかけて中継を楽んだ。
著者
芝山 秀次郎 江口 末馬 宮原 益次
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.112-115, 1976-10-25

福岡・佐賀両県にわたる筑後川下流域水田地帯の1,682 カ所の地点において,クリーク内に生育する水生雑草の種類および種数の調査を行った。クリークに見いだされた雑草は合計34種であり,それらの内,現地で雑草害が問題となっているのは,主としてホテイアオイ,キシュウスズメノヒエ,キシュウスズメノヒエ亜種およびオオフサモの4種であった。また,各調査地点に見いだされる雑草種数は比較的少なく,平均1.9種であった。
著者
宮原 誠 吉田 育弘
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会誌 (ISSN:03866831)
巻号頁・発行日
vol.43, no.10, pp.1129-1136, 1989-10-20
被引用文献数
46 7

カラー画像処理や符号化の研究は, (1)信号を人間の色知覚の3属性(Hue, Value, Chroma)にもとづく均等知覚空間上で, (2)処理誤差を実際に知覚される色差と関係づけて扱うことが有効である.この目的で用いる均等色空間として, 色差が定義されている(H, V, C)マンセル色空間を用いることとした.しかし, CIE(1976)L^*a^*b^*色空間にもとづく(R, G, B)↔(H, V, C)データ相互変換は精度が低く, また変換表を用いる方法も, 表を内挿する必要があるなど, 実用上の支障が多い.そこで本論文では, MTMと名付けた数学的(R, G, B)→(H, V, C)データ変換方法を提案する.MTMは, ある仮定した変換関数の未定係数を, カラーテレビの色再現範囲から均等にサンプルした250の代表色にもとづく重回帰分析によって決定したものである.また, ニュートン法を応用した逆変換の方法を示した.最後に, MTMとこの逆変換法を組み合せれば, 充分精度良く, かつ, 簡単に(R, G, B)↔(H, V, C)データ相互変換が行えることを確認した.
著者
松崎 浩之 笹 公和 堀内 一穂 横山 祐典 柴田 康行 村松 康行 本山 秀明 川村 堅二 瀬川 高弘 宮原 ひろ子 戸崎 裕貴
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

南極ドームふじアイスコア中の過去72万年にわたる宇宙線生成核種記録を加速器質量分析で分析した。特徴的な宇宙線イベント(ラシャンプ、ブレーク、アイスランドベイズン)を詳細に解析したところ、宇宙線生成核種(特にベリリウム10)の記録が、グn一バルなイベントの記録となっていることが証明された。これにより、古環境研究における、より信頼性の高い年代指標を確立する道が拓けた。
著者
戸田 任重 宮原 裕一 浅井 和由
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

不活性ガスの六フッ化イオウ(SF6)による年代解析では、調査地(長野県南部)の地下水の滞留時間は2~33年と推定された。水道水源および観測井戸(いずれも30m以上の深井戸)の地下水の硝酸態窒素濃度は、滞留時間が20年弱(1993~94年涵養)の井戸で極大を示し、15年未満(1997年以降涵養)の井戸では比較的低濃度であった。調査地では、堆肥を含む施肥量が過去40年以上にわたり減少し続けており、水道水源などの深井戸の硝酸態窒素濃度は施肥量の減少を反映している可能性がある。
著者
宮原 一成
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

ゴールディングが作家活動に専念する前、教師をしていたことは周知の事実だが、その教職歴のうち約2年間がマイケル・ホール・シュタイナー・ヴァルドルフ学校で費やされたことは、従来等閑視されてきた。学友アダム・ビトルストンの誘いによりシュタイナー思想に触れ、マイケル・ホール校でも教鞭を執ったのである。近年公刊されたゴールディングの実娘ジュディ・カーヴァー氏による回想スケッチや、マイケル・ホール校の関係者に対する電子メールでの聞き取り調査により、シュタイナーに対するゴールディングの姿勢は、没頭というよりも一定の距離を置いた共感と呼ぶのがふさわしいことが見えてきた。1970年代以降は、むしろユング心理学に傾斜し、シュタイナー思想とは皮肉な距離が広がっていく。だが、共感的にしろ批判的にしろ、ゴールディング作品、特に前半期の作品にはシュタイナー思想の影らしきものが読みとれる。『蝿の王』の少年たちが年齢層によって行動様式に違いを見せる点は、人間の成長発達段階を独自に分類したシュタイナー教育論によって、うまく説明がつけられる。同作品で印象的な4つの色彩、緑・ピンク・白・黒は、シュタイナー色彩論の基底をなす四色である。サイモンをキリスト的と読む従来の固定的解釈も、シュタイナーのキリスト論を援用することによってさらに可能性が広がる。『後継者たち』の登場人物の名にはオイリュトミー的要素が感得できる。『ピンチャー・マーティン』は、シュタイナーの主著の一つ『いかにして超感覚的世界の認識を獲得するか』を皮肉に、悲観的に辿った作品と読むことが可能である--など、本研究は新解釈の可能性を提示できた。
著者
下山 正一 木下 裕子 宮原 百々 田中 ゆか里 市原 季彦 竹村 恵二
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.105, no.5, pp.311-331, 1999-05-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
57
被引用文献数
7 9

従来の第四紀地殻運動論では, 九州のほぼ全域を隆起地域と解釈してきた.最近, 九州北部各地に沈降域があることが明らかになったので, 堆積相・貝化石群集・生痕化石などの古水深指標と広域テフラに基づいて九州各地の最終間氷期最高海面期(ステージ5e)の旧汀線高度を比較し, 過去約12.5万年間の九州の地殻運動を見直す作業を行った.その結果, 過去12.5万年間の動きは別府~島原地溝帯を境に, 九州北部は全て沈降地域である.また, 九州南西部にも沈降地域があることが判明した.特に佐伯から川内にかけて九州を北東-南西に横切る1本の顕著な沈降軸(佐伯~川内沈降軸)が存在する.九州南東部は顕著な隆起地域であることを再確認した.沈降地域や隆起地域の隣接分布は, 現在の九州の海岸地形と極めて調和的である.中期から後期更新世にかけて地殻運動が逆転したと考えられる地域が存在する.これは九州の複雑な地殻運動史を示している.
著者
田中 仁 許 衛東 宮原 曉 山田 康博 堤 一昭 秋田 茂 青野 繁治 片山 剛 三好 恵真子 今泉 秀人 大谷 順子 竹内 俊隆 高橋 慶吉 木村 自 思 沁夫 西村 成雄 丸田 孝志 江 沛 許 育銘 周 太平 李 朝津
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

(1)統合後の大阪大学における現代中国研究の部局横断的プラットフォームとして、中国文化フォーラムを改組した。(2)中国南開大学・台湾東華大学との研究セミナーの共同開催をふまえて、東アジア学校間交流の定例化をめざした。(3)『大阪大学中国文化フォーラム・ディスカッションペーパー』を刊行した。(4) 本研究の成果を、時間軸・社会空間軸・日中関係軸の三部構成とし、各部で歴史学と諸ディシプリンとの対話を提示する『共進化する現代中国研究』としてとりまとめた。
著者
宮原 三郎 湯元 清文 廣岡 俊彦 河野 英昭 リュウ フイシン 渡辺 正和 吉川 顕正
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

中性大気の変動と電離圏変動の関係を,九州大学中層大気大循環モデルで得られたデータと九州大学が展開している全球的な地磁気観測データや,中性大気再解析データを用いて研究を行った。成層圏突然昇温の後に顕著な電離圏電流の変動が起こることが,観測データとモデル計算によって明らかとなった。また,成層圏突然昇温の後に電離圏電流が流れる高度領域の温度が全球的に降下することがモデルにより明らかとなった。この原因は半日大気潮汐の急激な変動によることも解明された。中性大気変動にみられる超高速ケルビン波の変動による電離圏電流の変動は赤道から低緯度域に限定され,大気潮汐波変動によるに変動の25%以下であることが判った。
著者
小林 真 宮原 千佳
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.89-98, 2012

本研究では,大学生を対象に日々の生活に関する充実感と,自己開示動機を調査した。因子分析によって,充実感と自己開示動機の尺度からそれぞれ 3因子が抽出された。充実感の 3因子をもとに学生を 7つのクラスターに分類し,充実感と自己開示動機の特徴を検討した。その結果,充実感が低い(特に孤独感が高い)学生は,他者からの受容的なサポートを求めるために自己開示をしたいと考えていることが示された。また,自己開示動機が低いクラスターが 2つ存在することも示された。学生支援という観点から,この 2つのクラスターについては,生育歴や自己像などの調査が必要であることを提言している。
著者
宮原 優
出版者
東京大学大学院総合文化研究科附属共生のための国際哲学研究センター The University of Tokyo Center for Philosophy(UTCP) 上廣共生哲学寄附研究部門
雑誌
UTCP Uehiro Booklet (ISSN:21879567)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.27-41, 2013-10 (Released:2017-01-17)

共生のための障害の哲学 : 身体・語り・共同性をめぐって Philosophy of Disability & Coexistence : Body, Narrative, and Community 論文 Research Papers
著者
岡本 道也 鎌原 淳三 植田 和憲 下條 真司 宮原 秀夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.85, no.8, pp.1269-1276, 2002-08-01
参考文献数
4
被引用文献数
11

短時間で概要を把握するための映像コンテンツとしてダイジェストがある.スポーツダイジェストの場合,試合のもつストーリーをダイジェストにおいてユーザに提示する必要がある.本研究ではスポーツの試合のストーリー決定に教師付き学習プログラムC4.5を利用し,決定したストーリーに対応するシナリオテンプレートを用いて,ダイジェストを自動的に生成する手法を提案する.また,本手法を野球に適用しシステムを実装した.このシステムを用いて実際に行われた試合のスポーツダイジェストを生成し,朝日放送による試合へのコメントと比較を行った.その結果,本システムによって生成されたスポーツダイジェストと朝日放送によるコメントとの間に多くの関連性が見られることがわかった.
著者
渡辺 寛明 宮原 益次 芝山 秀次郎
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.153-161, 1991-09-02
被引用文献数
4

水稲稚苗移植栽培におけるイヌホタルイの生育および種子生産量をイヌホタルイの出芽時期と発生密度との関係で検討し、以下の結果を得た。(1)水田裸地区では、6月18日に出芽したイヌホタルイの実生個体は、9,700粒/個体の種子を生産した。これより遅く出芽した個体ほど、個体の生育量の低下とともに種子生産量が減少し、7月16日に出芽した実生個体では個体当たり3,000粒以上の種子がつくられた。 (2)水稲畦問区では、水稲移植直後の6月18日に出芽した実生個体は100粒/個体程度の種子を生産したが、水稲移植後18日目に当たる7月2日に出芽した実生個体では着穂・開花に至らない個体がみられ、開花した個体も大部分の種子が未熟のまま水稲収穫期を迎えた。さらに水稲移植後1ヵ月以上たって出芽したイヌホタルイの実生個体はほとんど種子生産がみられなかった。 (3)越冬株から萌芽した個体は実生個体に比べて初期生育が旺盛なために、水稲畦問区でも1,500粒の種子を生産し、水田裸地区で萌芽した場合は17,000粒もの種子を生産した。 (4)水稲を作付した場合、イヌホタルイの単位面積当たりの種子生産量は発生本数がm^2当たり1,000本で65,000粒程度であったが、発生密度が1,000本/m^2を越えると生育途中の死滅により、残存本数および種子生産量は少なくなった。 (5)種子から出芽した実生個体と越冬株から萌芽した個体、あるいは水田裸地区で生育した個体と水稲畦間区で生育した個体とでは個体の生育量は大きく異なっていたが、いずれも個体当たりの種子生産量は個体の茎葉部生育量と密接な関係にあった。
著者
今給黎 尚幸 大渕 俊朗 濱中 和嘉子 吉田 康浩 宮原 聡 柳澤 純 濱武 大輔 白石 武史 岡林 寛 岩崎 昭憲
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.595-599, 2011-09-15 (Released:2011-10-26)
参考文献数
10

肺分画症は,肺組織に体循環系の奇形性異常動脈からの流入を有する先天性疾患であり,肺葉内分画症と肺葉外分画症とがある.我々は1994年4月から2010年3月までに当院およびその関連施設で手術を行った肺分画症15例を対象とし,術前診断および手術手技を中心にその臨床像を検討した.術前に全例で造影CTが施行されたが確定診断に至ったものは11例であり,残りの4例は術中所見で診断された.下葉に嚢胞や硬化像が認められる症例では肺分画症も念頭に入れ,異常動脈を検索することが必要である.胸腔鏡手術は4例に適応され,その内2例で開胸手術に移行した.条件が整えば胸腔鏡手術でも安全に施行できる症例があることが確認された.異常動脈の処理における自動縫合器の使用については,本検討では8例に施行され合併症は認めず利便性と安全性を鑑みると十分容認できると考えられた.