著者
宮原 将平
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.160-167, 1972-03-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
18

本稿はもともと日本物理学会の北海道年会(1971年)において綜合講演として話したことにもとづきそれに若干補筆したものである. ところで, 十年ばかり前にやはり物理学会のシンポジウムで似たような話をした記憶がある. それにもとづいて雑誌「金属物理」1960年第1号に「磁性体研究の歴史」: 将来の展望のために : という一文を書いた. 歴史については別として展望について何をいったか反省してみることは, 十年を経た今日において興味あることである. そこで私は三つの提案をしていた. 第1は性急に全般的な理論をたてることをいそぐことより"物質"の役割を強調したこと, 第2には"典型的物質"というものを提案したこと, 第3には物質を極端な条件下におくことを第2の典型性との関係で考えてみたことである. 以上のような提案がじっさいの研究の発展の上でどれだけ意味をもっていたかは, さらに歴史の批判にまたなければならないだろう. しかし, 私の考えでは, それは物質の典型性との関係ではじめて意味をもちうるものと思うのであるが. 昔話はそのくらいにしておいて, 本題に入らなければならない. ここでは歴史を, 十年前にしたのとは少しちがった角度から述べようと思う.
著者
松下 哲朗 宿輸 昌宏 大村 浩之 原口 増穂 浅井 貞宏 波多 史朗 山佐 稔彦 宮原 嘉之
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.163-168, 1996-02-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
14

再燃寛解型の潰瘍性大腸炎に急性肺動脈血栓塞栓症を合併し, t - P A による血栓溶解療法が有効でった1例を経験した.症例は66歳,女性.再燃寛解型の潰瘍性大腸炎で,プレドニゾロン15mg/日の維持投与中,労作時の息切れと失神を主訴に受診した.動脈血ガス分析で,PaO2,45torr,PaCO2 25torrと低酸素血症を認めた.心エコー検査では,著明な右室の拡大と左室の変形がみられた.右心カテーテル検査にて肺動脈圧は65/30(41)mmHg,DSAによる肺動脈造影(以下DS-PAG)では肺葉動脈に多発性血栓を認めたため,急性肺動脈血栓塞栓症と診断した.診断後,肺動脈から選択的にt-PA600万単位を30分かけて注入した.その後,貧血の進行や便潜血反応,肺動脈圧,心エコー所見を参考にしてt-PA600万単位を肺動脈から3日間注入し,DS-PAGを施行した.DS-PAGで,両下肺動脈に血栓の残存はあったが血流は保たれていたため,ヘパリンによる抗凝固療法を行った.1カ月後,DS-PAGでは両下肺動脈の再閉塞を認めたが,肺動脈圧は23/8(13)mmHgまで改善していた.結論:潰瘍性大腸炎でも重症度分類で中等度以下の症例であれば,貧血の進行や便潜血反応の増悪を確認しながら少量のt-PAによる血栓溶解療法を施行することにより,急性広汎性肺動脈血栓塞栓症でも有効な治療効果が得られると考えられた.
著者
磯野 英治 近藤 佐知彦 宮原 啓造 イソノ ヒデハル コンドウ サチヒコ ミヤハラ ケイゾウ Isono Hideharu Kondo Sachihiko Miyahara Keizo
出版者
大阪大学国際教育交流センター
雑誌
多文化社会と留学生交流 = Journal of multicultural education and student exchange : 大阪大学国際教育交流センター研究論集 (ISSN:13428128)
巻号頁・発行日
no.20, pp.19-24, 2016

本稿では、国際教育交流センターの短期プログラム開発研究チームと日本語教育研究チームが協働のもと行っている短期日本語教育プログラムである「J‒ShIP」および「超短期プログラム」の2015年度の実施状況を報告した。その中で、新たなプログラムの開発の背景や短期日本語教育プログラムの意義と可能性を併せて論じている。
著者
宮原 志津子
出版者
東京大学大学院教育学研究科
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.91-99, 2011-03-10

This article aims to examine the definition and history of the International Comparative Librarianship (ICL). The ICL has been developed since the 1960's supported by the library assistance of US for the developing countries. In the 1960's, American library consultants published their articles and books, referring to their work experiences in Southeast Asian countries. They are the first ICL studies in the library and information science (LIS) field. Instead of Americans, some Asian students started the ICL study and earned Ph. D of US graduate schools in the 1970's. At present, many Asian scholars have been contributing to the development of ICL study, particularly at the field of international cooperation of LIS education.
著者
花田 有紀子 笹井 久徳 鎌倉 綾 中村 恵 坂田 義治 宮原 裕
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.116, no.5, pp.606-611, 2013-05-20 (Released:2013-08-21)
参考文献数
21
被引用文献数
14

上咽頭癌はわが国では40~60歳代に好発し, 男性にやや多い悪性腫瘍である.その解剖学的特徴より, 放射線治療が治療の核をなす1). 放射線治療の後期合併症として, まれに内頸動脈仮性動脈瘤を形成することがあり, 破裂により致命的となる. われわれは上咽頭癌に対し放射線治療を行った既往のある75歳男性の内頸動脈仮性動脈瘤の症例を経験した. 鼻出血で発症し, 大量出血を認めたがAngiography下コイル塞栓術により救命し得た.この合併症はまれではあるが突然破裂することで致命的となるため, 常に念頭におき放射線治療を行うべきであると考える.
著者
宮原 誠 守田 幸徳
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.52, no.7, pp.516-522, 1996-07-01
被引用文献数
34

過去3年間のオーディオ雑誌を調査し, 音質評価語1,322語を得た。これをKJ法で整理, グループ化し, 30個の代表評価語を得た。代表評価語 (30語) と総合音質の関係を求めるために評価実験を行い, 主成分分析 (PCA) 法により総合音質に重要な評価形容詞を明らかにした。
著者
奥 俊夫 宮原 義雄 小林 尚
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.122-126, 1982-04-28

最近11年間に,東北地方の人工草地における害虫の集中発生状況について実態調査を行い,次の結果を得た。スジコガネは,東北6県の延べ16地点,586haの耕起造成草地に大発生し,イネ科牧草に大きな被害を生じた。被害は主として火山灰土台地の山林跡の草地に発生し,造成後5〜6年目に多い傾向があった。他のコガネムシ類による被害も,二,三の地点で認められた。ウリハムシモドキは各県でシロクローバを食害し,広面積の大発生は8地点で記録された。イナゴモドキは,主に青森県において,造成後10年以上のイネ科牧草が優占する草地に大発生した。一方,エンマコオロギは主に福島県山間部の比較的新しい草地において,しばしば牧草に壊滅的な被害を与えた。このほか,ムギノミハムシ,コバネイナゴ及びホシアワフキによるイネ科牧草の被害各1例が記録された。
著者
加藤 孝康 小林 幸夫 石川 智治 宮原 誠
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告オーディオビジュアル複合情報処理(AVM) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.89, pp.31-36, 2000-09-22

我々は、音楽再生の中で感激の伝達:高度感性情報の再現を目的とした研究開発を行ってきている。研究方法は、モデルを作って演繹的に研究を行なう従来とは逆に、出ている音から逆にたどって、多くの実験的事象を基に未発見の物理要因・特性を探していく帰納的研究方法である。この研究方法に基づき、高度感性情報の再現のためには、精密に波面を再現することと同時に、音像を高忠実に再生することが重要である事が分かりつつある。この必要条件から見ると、従来音響理論で音質向上に良いとされてきたL R独立音源は、例えば、トランスが別々に振動し、波面や音像がぼけるので、高度感性情報再現に本当に良いのか問題があると考えられる。この問題を、心理物理学的に検討した。We are developing an sudio system for the reproduction of the High Order Sensations, and researching the basic of transmitting the deep human impression given by the music. To find unknow physical factors from the reproducting sound, we have adopted the inductive method on the contrary to the deductive method as is common constracting the model and examining. We have found that it is important to reproduce the wave font of sound. For this requirement, we have considered on the power supply. Common sense it is believed that each transformers of Lch and Rch should be separated to obtain a good channel separation. However, we have considered that transformers of L and R may not be separated because the wave font of sound is blurred if transformer vibrate independently. We have examined this problem based on the experiments from the viewpoint of phychophics.
著者
宮原 温子 藤森 景子
出版者
日本語教育方法研究会
雑誌
日本語教育方法研究会誌 (ISSN:18813968)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.20-21, 2020

In the current era where information equipment is widespread, research was conducted regarding the extent to which beginner Kanji learners -whose native language does not include Kanji characters in their writing system- are seeking recognition, reading, meaning, usage, and reproduction of the shape of Kanji characters. As a result, it was found that all of them seeked to learn to read Kanji words and to convert Kanji through typing. It was also revealed that many students sought the ability to handwrite Kanji, demonstrating their desire to be able to use Kanji through both handwriting and typing.
著者
宮原 浩二郎 森 真一
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.2-20, 1998-06-30 (Released:2010-04-23)
参考文献数
32

「地震」と「震災」はそれぞれ別の対象を指している。「地震」は地面の揺れという自然現象を指す。それに対して, 「地震による災害」である「震災」は, 自然と人間生活の相互作用現象を指示している。それゆえ, 「震災」の研究には, 人間生活の様態を知ることが不可欠である。このような視点に立つわれわれは, 本稿で, 芦屋市を事例として, 「阪神・淡路大震災」の特徴の1つである, 被害の区域差の記述を試みる。特に, 人的被害の区域差と被災者住民の生活・居住環境を記述する。われわれは, 芦屋市を5区域に分け, それぞれの震災被害, 生活・居住環境のデータを集計した。データから, 芦屋を構成する5区域は, 市が標榜する「国際文化住宅都市」のイメージに合致する程度がそれぞれ異なることが浮き彫りにされる。中間平坦区域は, 「邸宅地」指標の高い山麓区域と, 「新住宅地」指標の高い埋立区域を圧倒的に上回る被害を出した。つまり, 「住宅都市」イメージから最も距離のある中間平坦区域は生活居住環境の対地震抵抗力が弱く, 最大の被害を出したのではないかと考えられる。
著者
宮原 祥吾 原田 健次 新海 陽平 稲葉 泰嗣 荒牧 勇
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.111_1, 2017 (Released:2018-02-15)

近年、脳の局所的な構造が運動・認知スキルと関連するという報告が相次いでいるが、スポーツ選手を対象とした報告は少ない。そこで本研究は、野球熟練者の投球コントロール能力と関連する脳部位の構造的特徴を明らかにすることを目的とした。C大学野球部のピッチャー9名(右利き)に対し、的の中心点を狙った右投げ投球、左投げ投球をそれぞれ30球ずつ行わせた。それぞれの条件について的中心からの平均距離を計算した。すべての被験者のT1強調MRI脳画像を計測し、Voxel Based Morphometry解析により、それぞれの投球条件において、的中心からの距離と脳灰白質容積の相関のある脳部位を同定した。その結果、いずれの条件においても、的中心からの平均距離と右頭頂葉の灰白質容積に有意な正の相関関係が認められた。頭頂葉は、空間的な運動制御に重要な役割を果たす脳部位であり、投球コントロール能力に頭頂葉の構造的発達が重要であることが示唆された。
著者
宮原 康弘 水野 孝志郎 石川 朝之 武田 邦彦
出版者
マテリアルライフ学会
雑誌
マテリアルライフ学会誌 (ISSN:13460633)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.33-39, 2009-02-28 (Released:2021-05-08)
参考文献数
11

油団(ゆとん)は日本の伝統的製品であり,夏場に座敷に敷き詰めると真夏の暑い時期でもその部屋の中にいる大人や子供は快適な時間を過ごすことができるため,上品で高級な夏の敷物として使われてきた.本論文はこの伝統的製品をSEM,熱伝導測定,赤外線サーモグラフィーなどの現代の機器分析器を用いて解析した結果を示したものである.油団は日本の紙(和紙)を積み重ねて作られ,表面は密で滑らかであるが,下部は粗く,繊維が絡み合っている構造を採っている.熱伝導率は0.11W・m−1・K−1であり,アルミニウム,ガラス,アクリル樹脂の板よりも低かった.これは油団が紙でできていて典型的な保温材構造をとっていることから理解できる.しかし,人間の手を赤外線サーモグラフの上において種々の物質の熱散逸速度を測定すると,油団の熱散逸速度はアルミニウム板よりは小さいものの,ガラスやアクリル樹脂より大きい結果を得た.これは,手の脂と水が油団の滑らかな表面から内部に移動し,そこで絡み合った細い繊維の表面から蒸発することによって熱を奪っているためと考えられる.
著者
石川 浩康 宮原 信哉 吉澤 善男
出版者
Atomic Energy Society of Japan
雑誌
日本原子力学会和文論文誌 (ISSN:13472879)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.452-461, 2008 (Released:2012-03-02)
参考文献数
7

Supercritical carbon dioxide (CO2) is being investigated as a material for a secondary cooling system of sodium (Na)-cooled fast reactor to avoid Na/water reaction. In this type of reactor, however, it is necessary to consider the consequences of Na/CO2 reaction, which might occur in the case of tube rupture in a heat exchanger between primary and secondary systems. Experiments were carried out with test equipment for the Na/CO2 reaction, which can handle 1-5 g order of Na and measure temperatures using thermocouples. The solid products of the Na/CO2 reaction sampled from the equipment were analyzed by X-ray diffraction (XRD) and chemical analysis. The parts of exhaust gases were analyzed by gas chromatography. From these experimental results, we proved that the reaction proceeded between liquid Na and CO2. The Na/CO2 reaction stopped only the pool surface reaction with a small quantity of aerosol emission when the initial temperature of Na was lower than 570°C. On the other hand, the reaction continuously proceeded with an orange-colored flame and aerosol release when the Na initial temperature was higher than 580°C, and the reaction products expanded to the margin of the Na pool tray.
著者
宮原 隆成 赤羽 順平 村元 美帆 山中 美和 上原 魁 上原 剛 山田 響子 横関 万里
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.392-397, 2020-09-25 (Released:2020-10-16)
参考文献数
15

背景.線毛を有する腫瘍は一般に良性とされている.症例.33歳男性.当院人間ドック胸部CTにて,右上葉に9 mm大の結節影を指摘された.胸部CTでの経過観察15か月後,腫瘍径は変わらなかったが,気管支鏡検査を行った.線毛を有する気管支上皮を認め,基底細胞様細胞が増生し乳頭状構造を形成していた.線毛性粘液結節性乳頭状腫瘍が疑われ,人間ドック33か月後,胸腔鏡補助下右肺S3区域切除が施行された.切除標本における免疫染色では粘表皮癌との鑑別も困難であったため,粘表皮癌に特有のMAML2遺伝子検索を行い,遺伝子異常を認めたため,粘表皮癌と診断した.結語.亜型が存在する腫瘍では時に診断が困難である.免疫染色のみならず遺伝子検査の併用が診断に有用である.