著者
小山 政史 上野 宗久
出版者
日本泌尿器内視鏡学会
雑誌
Japanese Journal of Endourology (ISSN:21861889)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.23-28, 2011 (Released:2014-02-07)
参考文献数
20

5-アミノレブリン酸(5-ALA)を用いた術中光力学的診断(PDD)は通常光では視認困難な腫瘍の同定やサージカルマージンの検索に有用である.泌尿器科領域では従来,膀胱癌に対して5-ALAを膀胱内注入してきたが,内服が可能なことより,最近では腎細胞癌に応用され5-ALAの腫瘍特異性が確認されている.また,腹腔鏡下腎部分切除術に5-ALA-PDDを併用することでサージカルマージンの蛍光発色部位に病理組織学的に癌細胞が確認されている.5-ALA-PDDが手術中リアルタイムにサージカルマージン同定に寄与する可能性が示唆された.尚,5-ALAによる有害事象は本稿で紹介した報告では認めていない.
著者
小山 宏史 木村 暁
出版者
日本学術会議 「機械工学委員会・土木工学・建築学委員会合同IUTAM分科会」
雑誌
理論応用力学講演会 講演論文集 第59回理論応用力学講演会
巻号頁・発行日
pp.176, 2010 (Released:2011-01-21)

細胞は、細胞分裂を繰り返すことで増殖する。細胞分裂において細胞の形状はダイナミックに変化する。細胞形状の変化は、細胞表層の細胞骨格と呼ばれる構造物の動態が力学的パラメータに翻訳されることによって引き起こされると考えられている。しかしながら、細胞表層の力学的パラメータが時空間的にどのように変化するか、あるいは背景にある力学的パラメータの制御構造は十分に理解されていない。本研究では、細胞形状の変化を精緻に観測し、その観測データと弾性の理論に基づいた数理モデルを組み合わせることで力学的パラメータの時空間的変化を予測することを試みた。その結果、力学的パラメータが細胞全体にわたってダイナミックに変化していることが予想された。さらにこの結果は、これまで細胞分裂の主要な力学的要素と考えられてきた収縮環と呼ばれる構造物に加えて、細胞全体にわたる力学の制御が重要な寄与を果たしていることを示唆している。
著者
高瀬 達夫 涌井 克明 小山 健
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.I_57-I_67, 2011

近年,地方鉄道では自動車利用への転換や少子化などにより利用者が減少し,厳しい経営を強いられているところが多い.長野県においても,現在存続問題を抱えている路線として,上田電鉄別所線,長野電鉄屋代線,松本電気鉄道上高地線の3路線があり,各地域で検討されている.これらの路線は地域の交通手段として重要な役割を果たしており,路線の存廃に関しては慎重な判断が求められるが,そのための判断指標の1つとして各路線がもっている価値評価を算出することとした.<br> 路線価値を計測する具体的な方法として,各路線の沿線および沿線以外の住民に対しアンケート調査を行い,調査データを用いてCVM(仮想市場評価法)による路線の価値を推定し,沿線と沿線以外で支払意思額の比較や,支払意思額に影響を与える要因の把握を行った.さらに地元自治体が支援している補助金の妥当性についての検討も行った.
著者
齋藤 亮子 竹森 幸一 小山 睦美 小玉 有子 伊藤 久子
出版者
弘前医療福祉大学紀要編集委員会
雑誌
弘前医療福祉大学紀要 (ISSN:21850550)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.19-29, 2014-03-31

本研究の目的は、任意に公費負担で子宮頸がん予防ワクチンを接種することが出来た高1 女子(調査時高2)を対象に、子宮頸がん等の知識の多寡と、ワクチン接種行動を決めた要因を明確にすることである。青森県中弘南黒地区の高2 女子1500人を対象に自記式留置法でアンケート調査を行った。知識に関する合計得点を、都市・農村別、行政区別、接種者・非接種者別に平均値の差の検定等を行った。回収数1180(回収率79.4%)の内、有効数1162(都市部1051、農村111)を解析対象とした。ワクチン接種に関する回答数1148 の内、接種者773(67.3%)、非接種者375(32.7%)であった。知識得点は、全体に非常に低かったが、その中でも都市が農村より、また接種者が非接種者より有意に高かった。接種の決定要因はワクチンが子宮頸がん予防に有効であるという知識に基づき自分で決定したというより、家族の勧めと接種が無料である、また副作用が少ないことであった。当地区の接種率は全国平均(65%)とほぼ同等であったが、社会教育や学校教育による知識の普及で、ワクチン接種率向上の可能性が示唆された。
著者
堀内 成子 近藤 潤子 小山 真理子 木戸 ひとみ 大久保 功子 山本 卓二 岩澤 和子
出版者
Japan Academy of Nursing Science
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.8-17, 1990
被引用文献数
1 5

本研究は, 妊婦および褥婦の睡眠の主観的評価と睡眠ポリグラフ所見との間の関連性を明らかにすること, および妊婦各期と産褥早期の睡眠推移を明らかにすることを目的に終夜睡眠を分析した.<BR>妊婦11週~37週までの正常妊婦7例と, 産褥1週~7週までの正常褥婦4例を対象とし, 終夜睡眠をポリグラフ装置で連続3夜測定した. 睡眠段階はRechtshaffen & Kalesの判定基準を用いた. 対照群として健康な非妊期の女性4例を選び, 測定した.<BR>その結果, 主観的な睡眠深度経過では, 前半単相性パターンと前半多相性パターンとに分かれ, ポリグラフ所見との間に関係が認められた. 睡眠パラメータでは, 妊婦群が非妊婦群に比べて睡眠率が低く, 特に末期群では眠りが浅くなっていた. 産褥早期には, 妊娠末期よりさらに睡眠率が低かったが, 妊婦末期に比べて%S4は増加の傾向が認められた.
著者
小池 毬子 樫尾 明憲 尾形 エリカ 赤松 裕介 小山 一 浦中 司 星 雄二郎 岩﨑 真一 山岨 達也
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.195-203, 2021-04-28 (Released:2021-05-19)
参考文献数
29

要旨: 当科で経験した人工内耳埋込術を行った蝸牛神経低形成または欠損を認めない小児内耳奇形例23例を Sennaroglu 分類による内耳奇形に分類し, 就学期の聴取能や語彙理解能力及び就学状況について報告した。内耳奇形の内訳は, incomplete partition type I (IP-I) が7例, IP-II が7例, IP-III が1例, cochlear hypoplasia III (CH-III) が1例, cochlear hypoplasia IV (CH-IV) が4例, common cavity (CC) が3例であった。IP-II 症例では聴取能, 語彙理解能力ともに良好な症例を多く認めた。IP-I, CC 症例では症例間での差はあるものの, 聴取能, 語彙理解能力ともに良好という症例も存在した。一方, CH-IV 症例では聴取能が良好であっても, 語彙理解能力はいずれも不良であった。就学時普通学級選択状況については他の内耳奇形を伴わない症例の報告と大きな違いはなかった。予後の不確実性はあるが, 内耳奇形の種類に関わらず良好な成績をおさめる症例は存在し, 人工内耳手術は選択肢の一つとして考慮されるべきと思われた。
著者
宇根 寛 青山 雅史 小山 拓志 長谷川 智則
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.124, no.2, pp.287-296, 2015-04-25 (Released:2015-05-14)
参考文献数
20
被引用文献数
5 6

The 2011 off the Pacific coast of Tohoku Earthquake brought severe damage caused by wide-ranging soil liquefaction across the Tohoku and Kanto districts. In Abiko City, Chiba Prefecture, heavy liquefaction damage occurred in a small area, which was not accurately predicted by the existing liquefaction hazard map. The authors consider the reason to be land history, such as landform development and artificial landfill, which was not taken into account in the assessment of liquefaction risk. Accordingly, Abiko City has revised the hazard map to take account of micro-landform classifications using land condition maps, old edition maps, and aerial photographs with the assistance of the Geospatial Information Authority's support team.
著者
佐藤 安貴 正木 慎也 梅本 萌李 山本 浩貴 小山田 正人
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.90-102, 2021-04-01 (Released:2021-05-15)
参考文献数
35

【目的】摂食障害は,若年女子に好発する難治性の疾患で,治療の優先事項は栄養改善である。摂食障害の10~20%に自閉スペクトラム症が合併し,合併例は予後不良例が多く,治療では自閉スペクトラム症の特性に着目した対応が必要となる。摂食障害を発症し入院した自閉スペクトラム症女児2症例に,チーム医療の一環として自閉スペクトラム症の特性に着目した栄養指導を実施したので,報告する。【方法】対象は,摂食障害治療を目的に精神科病院へ入院した自閉スペクトラム症の15歳女児2名である。症例1は,体重管理の厳しい審美系スポーツの選手で,過剰な運動と食事制限から低体重となり入院した。症例2は,ストレス時に拒食反応を示す病態で,拒食による急激な体重減少で入院した。管理栄養士は,自閉スペクトラム症の特性に着目し,1)褒めて労う,2)視覚情報の利用,3)具体的説明の繰り返しを基本に栄養指導を行った。【結果】症例1は,1週間毎に増加する食事を全量摂取するとともに,活動量を減少させることにより,目標体重を達成した。症例2は,拒食が消失し目標体重を達成した。【結論】摂食障害と自閉スペクトラム症合併2症例において,自閉スペクトラム症の特性に着目した1)褒めて労う,2)視覚情報の利用,3)具体的説明の繰り返しを基本とした栄養指導の有用性が示唆された。
著者
石田 岳史 松田 昌三 小山 隆司 栗栖 茂 大藪 久則 柴田 正樹
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.362-365, 1995-08-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
12
被引用文献数
2 1

We report an unusual case of a 63-year-old man supposedly bitten by a mamushi, who developed shock, bleeding diathesis and serious hematemesis at an early stage. About 10 minutes after the mamushi bite, he fell into shock transiently, and 2 hours later, continious bleeding from the bite wound and an injection site was observed. This platelet count decreased markedly to 1.3×104/mm3 resulting in serious hematemesis. Four hours after the bite, we injected Agkistrodon halys antivenin (6, 000U) with methylpredonisolone sodium succinate 500mg and the bleeding from the bite wound and hematemesis improved remarkably. Twelve hours after the bite, the platelet count had increased to 27.1×104/mm3, and the patient had recovered from the bleeding diathesis. Mamushi bites are sometimes complicated by DIC (disseminated intravascular coagulation) as a result of massive tissue necrosis, however, there was severe thrombocytopenia and bleeding diathesis in this case, even though the local swelling and muscle necrosis were not serious. It is very important to closely monitor patients after mamushi bites, and mamushi antivenin should be used early without hesitation when these complications are observed.
著者
小山 英彦 北 貴志 大江 理英
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.373-378, 2018-09-01 (Released:2018-09-01)
参考文献数
21
被引用文献数
1

甲状腺手術の周術期死亡率は0.4%以下と低く,日帰り手術を行っている施設も少なくない。一般的な外科術後合併症の他に,危機的上気道閉塞,術後出血・血腫,反回神経麻痺などの合併症があり,これらの頻度は少ないものの,発生した場合の多くは集中治療管理を要することになる重要な合併症である。特に危機的上気道閉塞は,発生頻度は約1%と少ないが,死に至る可能性のある重要な合併症である。危機的上気道閉塞は術後出血・血腫による気管外からの圧迫,静脈およびリンパうっ滞による頸部腫脹および喉頭浮腫,さらに反回神経麻痺などが複合的な原因となって発生すると考えられているが,リスク因子など不明な点も多い。その発生を完全に予測することは困難であり,対応は早期発見・早期介入が原則である。医療チームは,危機的上気道閉塞の危険性や非常時の対応について理解を深めることが重要である。
著者
小山武士 松尾俊彦 鴨田浩明
雑誌
第74回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2012, no.1, pp.587-588, 2012-03-06

情報システムにおいて、例えばSNSにおける投稿のように1処理毎にIDを付与して管理するような場合、大量のIDを迅速に発行することが求められる。このようなシステムにおいて、IDにランダム性が求められるようなケースでは、新たなIDを発行する際に、ランダムに生成された大量の既存IDとの重複の有無を確認する必要がある。そのためIDを発行するまでに要する時間が既存IDのボリュームに応じて増大するという課題がある。そこで本稿では、生成したIDに対応する配列のフラグをチェックすることで重複有無を確認する方式を含め複数の確認方式を提示し、その処理時間を比較し、安価に実装可能かつ実用的な方式を示す。
著者
東海林 正弘 平谷 和幸 小山内 信 張 立也 朴 鑽欽 刀塚 俊起 横澤 隆子
雑誌
日本薬学会第140年会(京都)
巻号頁・発行日
2020-02-01

【緒言】丹参を主薬とする冠元顆粒は、国内で開発された生薬製剤で、第2類医薬品に分類されている。我々は、冠元顆粒並びに構成生薬の活血化瘀作用に注目し、糖尿病性腎症の進行に対する治療効果を検討しているが、本報では2期、並びに3期の患者に対する治療効果を検討した。【方法】真生会富山病院糖尿病センターの外来を受診し、漢方治療を希望した糖尿病性腎症患者 (2期3症例、3期2症例) に、冠元顆粒 (丹参、芍薬、川芎、紅花、木香、香附子からなる漢方方剤) を1日3包7.5 gを6ヶ月間連日経口投与した。なお、従来より服用している内服薬及び注射剤は継続投与した。【結果】いずれの患者も、自覚症状として肩こり、頭痛、手足の冷え、疲労感、胃・腹部の張り、腰や身体の痛み・痺れ等を訴えていたが、投与2ヶ月から問診票スコアの著しい改善が認められ、身体が楽になった、軽くなった、疲労感が改善された等の変化を示した。生化学的所見では、血清クレアチニン (Cr) がいずれの症例においても低下し、特に推算糸球体濾過値 (eGFR) は冠元顆粒投与6ヶ月前から低下していたが、投与6ヶ月の時点で有意に上昇していた。また2期患者において、尿蛋白、尿アルブミンの改善が見られ、投与5ヶ月以降は正常レベルを示した症例も見られ、中にはHbA1cの低下、収縮期と拡張期血圧が低下する症例も見られた。【結論】冠元顆粒を服用した糖尿病性腎症2期、並びに3期の患者5例において、自覚症状と腎機能 (eGFR、血清Cr) の改善が認められた。