著者
小川 正弘
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.15, 2007

<BR>1.はじめに<BR> わが国では,高度経済成長期以降,地域に根ざした生活様式や伝統文化が変貌する一方で、全国で町づくり,村おこしなどの地域活性化の手段として伝統的な祭りや新しく創出された市民祭りを活用するなどの行政側の動きが見られた.<BR> 本研究の対象地域である八王子市は,第二次世界大戦後の1955年さらに1959年,1964年と合併を行い,市域拡大や人口増加が急速に進んだ.そこで,新旧住民の連帯感を高め,合併後の新市一体化を促進するために,行政主導で創出された市民祭りが「八王子まつり」である.<BR><BR>2.研究方法<BR> 本研究では,市民祭りとして新たに創出された「八王子まつり」を事例としてとりあげ,市民祭りの成立や展開過程を考察し,伝統的祭礼とは異なる市民祭りの特徴を,まつりの担い手とその内容に着目した.また市民祭りを通して,いかなる地域文化が,実践・継承されているのかについて検討を行った.<BR><BR>3.結果<BR> 現在の八王子まつりにおける内容の特徴は,伝統的祭礼である山車や神輿を全面に押し出している内容であるが,実は市民祭から開始されている.また,まつりの変遷過程を考察した結果,大きく以下の4つの時期ごとに異なるまつりの特色が把握された.それは,1)市民祭形成期(市民祭的内容),2)八王子まつり原型期(鎮守的神社祭礼の参加,融合,共存,まつり名称の変化),3)八王子まつり発展期(伝統的文化と非伝統文化(イベント型)の対立,差異化,4)八王子まつり変革期(伝統的文化の重視と非伝統文化の排除)である.<BR> また,八王子まつりの運営主体であるまつり事務局も時期ごとに変化していた.前述の時期区分によると,市民祭形成期~八王子まつり発展期においては,行政主体で企画・立案を行っていたが,八王子まつり変革期移行は,市民祭開始以前から八王子の旧宿場町を中心にして行われていた神社祭礼の氏子組織やまつり参加団体の代表等が多数参加し,新たなまつり実行委員会が組織されて,まつりの企画・運営等を行っていた.<BR> 八王子まつりが時代的に変化した要因は,八王子まつり開始期から現在におけるまつりを主催する行政団体におけるまつりの運営・実施方針などが大きく影響している.とくに2002年にだされた八王子まつり検討委員会の答申の影響は大きく,従来の八王子まつりの形態・内容及びまつりの運営組織まで変化させたことが判明した.<BR> 八王子まつりにおける担い手は,大別すると伝統的祭礼の担い手と非伝統的祭礼(イベント)の担い手に分類できる.伝統的担い手としては,神社の氏子町会組織が中心であった.その氏子組織は,多賀神社と八幡・八雲神社から構成された.また氏子組織(町会)内には他町会に対する競合意識や市外祭礼に積極的に出向する氏子組織もあった。このことから氏子町会が八王子まつりの形態・内容に影響を与えた.<BR> 一方非伝統的担い手としては,子ども音頭と民踊流しの参加団体及び構成員を事例としてとりあげた.いずれの担い手とも行政関係の支援を得ながら,子ども会組織や地元の民踊教室,企業,学校,民踊クラブ等などを活用して組織された.また踊りで使用される曲は、まつりを主催する行政団体が八王子という地域に因む曲を作成し,それを参加団体に提供した。これは演技だけでなく郷土愛育成等を意識しながら,八王子まつりに参加させるねらいがあった.<BR> 以上のように,八王子まつりにおける地域文化の一部分として存在し,実践・継承をしている担い手や文化は,現在の時点で氏子町会が所有する山車・神輿等にみられる伝統的祭礼,子ども音頭,民踊流しと考えられる.そして,これらは八王子まつりを通してそれぞれが所有する文化の知識・技術の維持管理や継承の努力を続け,知識や技術の伝達する必要性や継承性の強い地域文化として再生され創出されたものといえるだろう.
著者
小川 都弘
出版者
The Human Geographical Society of Japan
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.586-606, 1992-10-28 (Released:2009-04-28)
参考文献数
122
被引用文献数
1

The purpose of this article is, based on a postmodervist perspective to attempt to reformulate the methodological framework for multiple-readings of the messages of picture-maps of manors (_??__??__??__??_, syoen-ezu) in medieval Japan. The author's approach, called‘sociocartology’, is broadly socio-linguistical or semiotical. The summary is as follows:The syoen-ezu as a socio-legal document in medieval Japan was explored here under five themes: the bibliographical background of each individual syoen-ezu; the cartographic conventions in medieval Japan; the syntax of each syoen-ezu as encoded text; the cartographic discourses in each syoen-ezu; the historico-sociological phase of geographical lore, from the viewpoint of the‘sociocartology’, in which the messages of the syoen-ezu in the context of the linguistic lifestyles and the political behaviour patterns of the medieval Japanese people were studied systematically.The primary function of the syoen-ezu, was to provide geographical information about various objects that exist cosynchronously in the manorial territory (called‘Function-A’), to represent the paticular events occuring there and the ruler's political attitude towards such (called‘Function-B’), and to convey not only the ideological contents, but also the ethos that were differentiated from the literal meanings which were manifest in these maps (called‘Function-C’). Function-B and Function-C had been neglected by historical geographers.As to the Function-B, using R. Bartes' methodology, the author considered distortions of the cartographic language which were deliberately induced by cartographic artifice, and reformulated the hidden rules of cartographic distortion (J. B. Harley, 1988) in the paradigm of cultural semiotics. On this basis the highly variegated cartographic discourse, made up from various social dialects among the map makers according to differences of the sociohistorical context, was reconstructed from the standpoint of both map-maker and mapreader.As to Function-C, the notion of geosophy as ideology of the lord of the manor was equivalent to that of fusui (_??__??_, geomantik) and inyo-gogyo (_??__??__??__??_) originated from ancient Chinese philosophy. The physical landscape of the syoen-ezu was, therefore, not due to what was seen in itself, but something to be reconstructed ideally in the medieval geosophical field. For the God of Wealth and Longevity of the manorial lord, some ideal landscape types and imagined genius loci types were prefered above all as the physical basis of manorial territory to be depicted.Reading maps from the view point of sociocartology is to elucidate the politics of meaning according to the manner in which objects and events had been expressed by forms under varying historical conditions. A manorial territory here may be seen as a construction of language as well as a land based novel, of economics, and sociopolitics (Tuan, 1991). Thus every reading of a syoen-ezu will offer us the possibility of challenging received ideas about the politics of place.
著者
小川 仁 舟山 裕士 福島 浩平 柴田 近 高橋 賢一 長尾 宗紀 羽根田 祥 渡辺 和宏 工藤 克昌 佐々木 巌
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.455-459, 2004-08-01
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

症例は23歳女性.5年前にスプレー缶の蓋を膣内に留置してしまったが医療機関を受診せず放置し,次第に月経周期に類似した下血と腰痛が出現したため近医を受診した.大腸内視鏡検査で膣内異物と直腸膣瘻を指摘され経肛門的に異物除去術が施行されたが,2カ月後も瘻孔が閉鎖しないため当科を紹介された.初診時2横指大の直腸膣瘻と膣狭窄を認めた.回腸にループ式人工肛門が増設されたが6カ月後も瘻孔は閉鎖せず,根治目的に手術が施行された.瘻孔周辺の直腸と膣は高度の線維化により強固に癒着しており直腸・膣の修復は不可能であったため,再手術により子宮摘出・直腸切除,結腸肛門吻合術が施行された.3年2カ月の間にこれらの手術を含む計6回の手術が行われ直腸膣瘻は根治した.膣内異物による直腸膣瘻はまれな病態であるが,治療に難渋した自験例を若干の文献的考察を加え報告する.
著者
小川 宣子 オガワ ノリコ Ogawa Noriko 山田 和 ヤマダ ヤスシ Yamada Yasushi 山中 なつみ ヤマナカ ナツミ Yamanaka Natsumi
出版者
中部大学生物機能開発研究所
雑誌
生物機能開発研究所紀要 (ISSN:13464205)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.75-84, 2013-03

鶏卵の摂取が血中コレステロール濃度に及ぼす影響について,摂取方法をふまえて評価することを目的とし,鶏種の違いと熱変性が卵白の血中コレステロール上昇抑制作用に及ぼす影響を調べた.白色レグホーン,岐阜地鶏,奥美濃古地鶏の卵白を高コレステロール食とともにラットに10日間摂取させた結果,血中LDL-コレステロール濃度は各々49,72,61 mg/100ml となった.比較としてカゼインを摂取させたラットの106 mg/100ml に比べて有意に低く,いずれの鶏種の卵白も血中コレステロール濃度の上昇を抑制し,これら3鶏種においてはその作用に差はないことが示された.白色レグホーン種の卵を殻付きのまま85℃まで加熱したゆで卵の卵白と生卵白について同様に比較した結果,熱変性した卵白も生卵白と同様に血中コレステロール濃度の上昇を抑制した.さらに,全卵として摂取した場合の卵白と卵黄の相互作用を検討したところ,卵白の摂取は肝臓におけるコレステロールの分解を促進すること,卵黄の摂取はコレステロールの吸収を抑制することが示唆された.しかし,全卵として卵白と卵黄をともに摂取させたラットでは,コレステロールの吸収抑制は認められたが,コレステロールの分解促進は認められなかった.
著者
三宅 醇 小川 正光 松山 明 田中 勝
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住宅建築研究所報
巻号頁・発行日
vol.12, pp.313-322, 1986

この研究は,同名の前回研究(No.8110)に引き続くものである。前回研究では,明治以降現在に至る主要な住宅事情の流れを,都道府県別のデータに推計整理し,各時代ごとの主要な住宅型のプランの代表例によって,量的質的な,住宅事情史の概親を試みた。今回の研究では,過去の住宅事情の構造的把握により将来予測をする方法の開発に意を用いた。将来予測は困難な課題だが,もし可能ならば,現在の矛盾の拡大方向や,自然の治癒作用が分かり,要求の発展のレベルの予測によって,政策の展開がより有効に提起できるようになるはずだからである。今回の研究では3つの予測を行った。第1に,年齢×人員数というライフサイクルマトリックスの利用による新しい住宅事情の予測法(ライフサイクルマトリックス法:LCM法)を開発して,全国を大都市圏域(10大都道府県)と地方圏域(その他地域)の,住宅所有関係別住戸数の,ストック予測を行ってみた。ストックの増は,従前よりも低下し,建設フローも現在の7~8割程度に低下すると考えられる。第2に,人員数別住宅畳数による,住宅規模水準の予測を行ってみた。住宅規模の拡大と,低レベルでの停滞の2極分解が予測される。住居水準値の政策的決定にも住戸規模の予測は重要な役割を果す。第3に,過去の住宅型の発生理由と,その住戸プランの変遷の再整理を行い,上記の水準についての将来予測値を加味して,今後の住戸プランや住宅計画上の留意点について,居住者のデマンド予測からの予測的提言を行った。前回の報告と合わせて,日本の全住宅について,住宅需給構造上の型区分によって流れを追い,予測を含めて100余年の住宅事情史概観の重要データを作成することができた。
著者
岩﨑 正幸 梶間 幹弘 小川 ゆい 久田 梨香
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.354-358, 2018-07-01 (Released:2018-07-01)

昨今,産業分野を問わず多くのM & Aが活用されており,知財デューディリジェンス(DD)の重要性が高まっている。そこで我々は,知財DD実務対応力を向上させることを目的に,過去のM&A事例を用いて,調査分析実務のケーススタディに取り組んだ。調査分析のシナリオとして,①M&Aや出資の必要性②T社への出資による課題解決の可能性③他候補に対するT社への出資の優先度の3つの論点を押さえて事業部長への回答を作成する方針とし,分析結果から第三者特許権クリアランスや主要発明者の活躍状況等を留意点として指摘した。最後に,ケーススタディに取り組んだ経験から,効率的に知財DD業務を進めるためのポイントを整理した。
著者
谷口 房一 小川 恒一 水山 高久 藤田 正治 小杉 賢一郎 扇 行徳
出版者
砂防学会
雑誌
砂防学会誌 : 新砂防 = Journal of the Japan Society of Erosion Control Engineering (ISSN:02868385)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.27-30, 1999-07-15
参考文献数
4
被引用文献数
3

Typhoon 7 hit Honshu on September 22, 1998. This storm brought about a certain amount of local damage in the path of the typhoon. Trees in the southern part of Nara Prefecture were blown down. Field survey and analysis of aerial photographs taken after the storm were carried out to determine some of the characeteristics of the trees blown down. Along narrow gorges the blown down trees on the steep slopes lay scattered in the direction of the downward grade. The blown down trees on slopes in the open areas lay in the same direction as the blast of the wind.The most trees blown down entirely from their roots and a few trees were broken at the middle of their trunks. The structure that check the outflow of the downed trees and the incidental landslides or debris flow sediment was proposed to be built from the logs of rather large diameters available at the sites.
著者
斎藤 均 萩原 章由 北川 敦子 小川 明久 溝部 朋文 石間伏 彩 金子 俊之 福王寺 敦子 熊木 由美子 阿部 成浩 渡邉 沙織 尾﨑 寛 前野 豊 山本 澄子
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.B0701, 2008

【目的】我々は,三次元動作解析装置を用いて,片麻痺者の立ち上がり動作を主に重心・COPの左右方向の動きと麻痺側・非麻痺側の荷重に着目し分析を行ってきた.今回,過去に94回測定した中から,同一測定中に立てたときと,立てなかったとき(離殿したものの立ちきれずに座っていた台に殿部をついてしまうこと)があった6例を対象に,この動作の成否における重心の動きを,床反力鉛直成分との関係から明らかにすることを目的とする.<BR>【方法】<対象>左片麻痺・男性5名,右片麻痺・女性1名.随意性Br.StageIII:3名,IV:2名,V:1名.(全例,本研究の主旨を説明し同意を得た)<測定条件>下腿長に合わせた台からの上肢を使用しない自由な立ち上がり動作.<測定装置>三次元動作解析装置(Vicon512),床反力計(KISTLER社製).<解析項目>重心の左右方向の動き,両側の床反力鉛直成分(Fz).立てたとき(成),立てなかったとき(否)の重心・Fzを比較・分析した.<BR>【結果】開始から離殿までの重心の左右方向の動き:(否)では開始位置より非麻痺側方向が2例,4例は麻痺側方向.(成)では1例を除き開始位置より非麻痺側方向.この1例は開始位置で非麻痺側にあった重心が離殿時,麻痺側方向(ほぼ正中)に動いた.離殿時の重心位置(開始位置を0とする):各対象の(否)と(成)の比較では,(成)では上記1例を除き離殿時の重心位置は,(否)より(1.4,2.7,3.6,3.7,4.2cm)非麻痺側方向であった.離殿時のFz:静止立位の麻痺側・非麻痺側の合計を100とした時のFzの値を(麻痺/非麻痺側)で示す.<U>(否):(成)</U>,<U>(47/55):(45/59)</U>,<U>(45/55):(26/79)</U>,<U>(34/71):(33/76)</U>,<U>(48/63):(49/66)</U>,<U>(37/71):(40/72)</U>,<U>(35/60):(29/81)</U>.各対象の(否)と(成)の比較では,(否)では麻痺側Fzは4例で大きく,また,非麻痺側Fzは全例で小さかった.<BR>【考察】離殿時の重心の動きを左右方向から見ると,(成)では非麻痺側方向であった.(否)では概ね直進か麻痺側方向であり,そのまま動作が継続すると麻痺側に能力以上に荷重しなければならなくなり,非麻痺側の力も十分に使えず立つことは困難である.また,離殿時,重心が麻痺側方向であった例は,ほぼ正中での離殿となり,非麻痺側の力も弱く麻痺側の力も使わないと立てなかった症例と考える.今回の対象のような立ち上がり動作に成否があり,麻痺側下肢の支持能力が不十分な段階では,非麻痺側方向に重心を動かし,非麻痺側に多く荷重をして立つほうが動作の失敗が少ないといえる.また,立てたときではFzが非麻痺側で大きかったことから,非麻痺側からのさらなる力が加わることで,重心が上方に向かい立ち上がることができたと考える.<BR>
著者
坂本 秀樹 森 啓信 小嶋 文博 石黒 幸雄 有元 祥三 今江 祐美子 難波 経篤 小川 睦美 福場 博保
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.93-99, 1994
被引用文献数
1 23

トマトジュースの連続飲用による血清中のカロテノイドの濃度の変化を調べた。また同時に飲用による血清中のコレステロール濃度の変化も調べた。65名の被験者を1日1本, 2本, 3本のトマトジュース飲用区と対照のリンゴジュース1本の飲用区の4区分に分け, 連続4週間の摂取を行った。<BR>1) リコペン濃度は飲用本数の増加に従い有意に増加し, 2本以上の区分では飲用後の飲用前に対する血清中濃度は3倍以上となった。<BR>2) β-カロテンは, トマトジュース中の含有量はリコペン量の約1/30であるにもかかわらず, 血清中において有意な増加を示し, 3本の区分では飲用後の飲用前に対する血清中濃度は約2倍近くとなった。<BR>以上の結果より, トマトジュースの飲用は血清中のリコペンとβ-カロテンの濃度上昇に有効であることが明らかとなった。<BR>3) トマトジュース中のリコペンはall-<I>trans</I>型がほとんどであるのに対して, 飲用後の血清中ではcis型の増加も見られたことから, 体内ではリコペンの異性化起きていることが示唆された。<BR>4) いずれの試験区においても, 血清中のLDL-コステロールをはじめとする脂質の増加は見られず, トマトジュースの飲用によるカロテノイドの血清中の濃度上昇は, 血清脂質濃度の上昇を促さないと考えられた。
著者
水谷 仁 青野 麻由 渡部 愛子 三宅 絵里 佐伯 茂 小川 節郎
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.87-89, 2010-01-15 (Released:2010-02-19)
参考文献数
3

血清コリンエステラーゼ (ChE) が異常に低値を示した症例の麻酔を経験した. 症例は, 74歳, 女性. 今回, 胆石症に対し開腹胆嚢摘出術が予定された. 手術・麻酔歴はなく, 既往として悪性貧血, 高血圧を指摘されていた. 近医での血液検査でChE値の異常低値が20年にわたり認められていたが, 自覚症状がないため経過観察とされていた. 麻酔は, 胸部硬膜外麻酔併用全身麻酔を選択し, 術中は脱分極性筋弛緩薬, エステル型局所麻酔薬を避け, ベクロニウム, メピバカインを使用し特に問題なく手術, 麻酔を終了した. 血清コリンエステラーゼは薬物代謝に関与しているので, 術中に使用する薬剤の選択には十分な注意が必要と考える.
著者
小川 真寛
出版者
京都大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2014-08-29

高齢者施設においてレクリエーションや体操といった様々な活動が提供されている。しかし、認知症高齢者のような自らの活動を選ぶことや、その意義について表現できない対象者にとって、それらの活動が効果的であるかどうかは検証するすべがない。そこで、本研究では本人にとって活動を行った際の効果に関して観察から評価する項目が何かを調べることを目的に実施した。熟練作業療法士へのインタビューや郵送調査から、活動への取り組み方、感情表出、言語表出、社会交流や活動を通して得られたものといった観察項目が得られた。これらの視点は認知症高齢者のように自分の意思の主張ができない対象者の活動の選択や効果検討に有用と考える。
著者
小川 雄二郎
出版者
東京都立大学都市研究センター
雑誌
総合都市研究 (ISSN:03863506)
巻号頁・発行日
no.29, pp.p13-22, 1986-12

本研究は文化遺産保存において都市的災害をどのように位置付けて,災害対策をおこなうべきかを検討したものである。文化遺産の保存における都市的災害に対する取組は保存担当者と防災専門家の狭間にあって不充分である。文化遺産保存の現状把握,過去の災害事例調査から問題の所在を検討し、文化遺産の災害対策のありかたを災害危険の把握と災害敏感性の観点から提案するものである。
著者
小川 和男 寺田 忠史 村中 義幸 浜川 寿博 橋本 貞夫 藤井 節郎
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.34, no.8, pp.3252-3266, 1986-08-25 (Released:2008-03-31)
参考文献数
34
被引用文献数
3 7

Many 2-oxoalkyl arenesulfonate derivatives having straight or branched alkyl chains of different lengths, 2-oxoalkyl bis-arenesulfonate derivatives, and alkyl arenesulfonate derivatives having a ketal moiety at the 2-position on the alkyl chain were synthesized, and their esterase-inhibitory activities, as well as hypolipidemic activities, were evaluated.Among these compounds, 1-(2, 4, 6-trimethylbenzenesulfonyloxy)-2-dodecanone (III-1u), and 1-(2, 3, 4, 6-tetramethylbenzenesulfonyloxy)-2-hexanone (III-1w), -2-octanone (III-1x) and -2-decanone (III-1y) exhibited potent esterase-inhibitory activities (IC50=3×10-10, 2×10-10, 2×10<-10> and 3×<-11>M, respectively). However, the sulfonate (XV) having a ketal moiety on the alkyl chain and the bis-sulfonate (XVI) exhibited low inhibitory activities toward esterase in comparison with III and XII. Most of the compounds III and some of the compounds XII exhibited potent hypolipidemic activities corresponding to more than 50% lipid-lowering effect (plasma triglyceride and cholesterol ester) in vivo. The structure-activity relatioinships of these compounds are discussed.
著者
小川 和男 寺田 忠史 村中 義幸 浜川 寿博 橋本 貞夫 藤井 節郎
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.1118-1127, 1986-03-25 (Released:2008-03-31)
参考文献数
43
被引用文献数
7 7

Many 1-substituted 2-alkanone derivatives were synthesized and their inhibitory activities toward pancreatic lipase and esterase were examined in order to obtain hypolipidemic agents. 1-Benzenesulfonyloxy-2-pentanone (VI-2a) and 1-(2, 4, 6-trimethylbenzenesulfonyloxy)-2-pentanone (VI-2q) exhibited not only potent and selective esterase inhibitions (IC50 : 9.0×10-7M and 1.0×10-6M, respectively), but also potent hypolipidemic action (90 and 92% reductions of plasma triglyceride, and 53 and 90% reductions of plasma total cholesterol, respectively). A novel working hypothesis is presented to account for the lowering of the plasma lipids level, i.e., that inhibition of esterase and lipase activities in the small intestinal lumen may be responsible for the decrease in the plasma lipids level.
著者
小川 和男 山田 省三 寺田 忠史 山崎 富生 本邦 隆次
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.2256-2265, 1985-06-25 (Released:2008-03-31)
参考文献数
21
被引用文献数
1 6

2-Aklylidene-4-arylidene-1, 3-oxathiolan-5-one (III-1a-m) and 2, 4-diarylidene-1, 3-oxathiolan-5-one (III-2a-i) derivatives were synthesized by treating β-aryl-α-mercaptoacrylic acids (I) with alkanoic acid anhydrides (II) or by treating α-acylthio-β-arylacrylic acids (V) with thionyl chloride in dimethylformamide. Basic hydrolysis and methanolysis of III-1 and III-2 in the presence of lithium hydroxide easily occurred to give the corresponding ring-cleaved products, the carboxylic acid (I and II) and the ester (VII and VIII), respectively. The catalytic hydrogenation of the two olefinic bonds of III-2 in the presence of 10% palladium charcoal proceeded easily without ring cleavage to give 1, 3-oxathiolan-5-one (IXa-e) derivatives. The oxidation of III-1 and III-2 with m-chloroperbenzoic acid afforded the corresponding 1, 3-oxathiolan-5-one S-oxide (Xa, b) derivatives.
著者
小川 和男 寺田 忠史 本那 隆次
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.930-939, 1984-03-25 (Released:2008-03-31)
参考文献数
16
被引用文献数
5 13

As a part of our search for new potent analgesic agents, novel fused pyrazole derivatives were synthesized. The reaction of 2-substituted-5-hydroxypyrazole (I) with ethyl 2-substituted (for example COCH3 or CO2C2H5) acylacetates (II) gave mainly pyrazolo [1, 2-a] pyrazole-1, 5 (1H, 5H)-diones (III). On the other hand, similar reaction of I with diethyl benzoylmalonate gave mainly pyrazolo [5, 1-b] [1, 3] oxazin-5 (5H)-one (V) but did not give III at all. Thermal and photochemical isomerization of III gave V. Methanolysis of IIIa in the presence of LiOH occurred with retention of the 4-ethoxycarbonyl-5-pyrazolone ring and similar products (VIa and VIf) were obtained by methanolysis of Va and Vf, respectively. Analgesic activities of the present new compounds were all inferior to that of aminopyrine.