- 著者
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山中 学
- 出版者
- 医学書院
- 巻号頁・発行日
- pp.1018-1020, 1966-07-10
この二つの測定は,出血性素因検査のなかで,もっとも基本的なものであるが,耳朶などの皮膚を刺して,湧出する血液が自然に止まるまでの時間である出血時間と,静脈穿刺により得た血液が,試験管内で自然に凝固するまでの凝固時間(正確には全血凝固時間)とは,まつたくべつのものである。通常生体において,出血が止まるためには,(1)傷害された血管壁に血小板がついて,いわゆる血小板血栓をつくる。(2)傷害血管壁が収縮する。(3)血液凝固反応が開始されてフィブリンを析出することが必要であるが,出血時間測定のごとく,毛細血管を傷つけた場合には,傷害部の皮膚組織の性状,血管壁の状態と,血小板の機能,とくに粘着凝集力に左右され,血液凝固因子はほとんど関与しない。血液凝固過程におけるフィブリン網の最初の析出まで,出血時間の正常値である3分以上を必要とすること,凝固時間の著明な延長を示す血友病で,出血時間は正常範囲にあり,逆に出血時間の長い血小板減少性紫斑病で,凝固時間はほとんど正常値を示すことからも,容易に理解されよう。