著者
坪田 敏男 金川 弘司 山本 聖子 間野 勉 山中 正実 喜多 功 千葉 敏郎
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.1-5, 1992-02-15
被引用文献数
1

飼育下8頭および野生7頭の雌エゾヒグマについて, プロジェステロン(P)測定用エンザイムイムノアッセイ(EIA)キット(「オブチェック」ケンブリッジ・ライフ・サイエンス社)を用いて血清中P値を測定し, その有効性を検討した. 本キットによる2検体の測定内および測定間変動係数は, それぞれ8.9%, 12.6%および16.6%, 22.7%と比較的良好な成績であった. ラジオイムノアッセイ法との相関関係については, 64サンプルで相関係数r=0.725と高い相関が認められた(p<0.01). 飼育エゾヒグマでは, 妊娠個体5頭, 非妊娠単独個体2頭および非妊娠子連れ個体1頭についてP値が調べられた. 妊娠個体のP値は, 交尾期(5〜6月)後の小さな上昇, 9〜10月にかけての2回目の上昇, さらに11〜12月にかけての大きな上昇として観察された. この最後の大きなP値上昇は, 着床に伴う変化と推測される. 非妊娠単独個体のP値変化は, 妊娠個体のP値変化と類似した. 非妊娠子連れ個体のP値は, 6〜12月まで5 ng/ml以下の値を持続した. 野生エゾヒグマ7頭中2頭は, 1 ng/ml以上の値を示し, そのうちの1頭では出産が確認された. 他の5頭はいずれも1 ng/ml以下の低値であり, 非妊娠個体と考えられた. エゾヒグマでのP-EIAキットによるP値の測定は有効であると結論づけられた.
著者
神田 鉄平 前田 憲孝 井口 亜弥乃 柴田 和紀 野村 千晴 山本 達也 村尾 信義 加計 悟 古本 佳代 古川 敏紀
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.1-6, 2013-04-10 (Released:2013-05-17)
参考文献数
9

肥満はイヌやネコにおいて一般的な健康問題のひとつである。肥満を予防、あるいはコントロールするには、体脂肪の評価を正しく行うことが必須となる。しかしながら、これまで広く用いられているBCS評価法は、観察と触感のみに基づき主観的になりがちである。そこで、BCSによる体脂肪の評価が客観性を担保した適切な方法であるかを確認すべく、我々はイヌにおけるCT撮影によって得られた体脂肪評価とBCSによる評価に相関が認められるかを検討した。実験には体重が2.6から29.3 kgまでの8犬種15頭のイヌを用いた。「アメリカ動物病院協会 栄養評価 犬・猫に関するガイドライン」に従い、9および5段階によるBCS評価(9段階BCS、5段階BCS)を行い、CT撮影により得られたL3およびL5レベルの断層画像から-135/-105HUの範囲を脂肪組織とみなした。体脂肪面積/体幹面積比はL5レベルにおいて、9段階BCSと中等度の相関を示した。また、9段階BCSはL5レベルでは、腹腔脂肪面積/体幹面積比とも中等度の相関を示した。つまり、イヌにおいて9段階BCSはCT撮影により得られた体脂肪評価との相関を示す結果となった。本研究結果は、BCS9がイヌの体脂肪評価法方法として比較的客観的であり、かつ適切であることを支持するものである。
著者
山本 修身 佐藤根 寛
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.419-426, 2011

The fifteen puzzle is a sliding puzzle which has fifteen pieces on which numbers from 1 to 15 are printed. Using the IDA* algorithm with an admissible evaluation function, we can obtain an optimal solution of the puzzle. The performance of the algorithm depends on the evaluation function. The most simple evaluation function is the Manhattan evaluation function, whose value is the sum of the Manhattan distances from the positions of the corresponding pieces in the goal configuration. In this paper, we propose an evaluation function whose values are greater than or equal to that of the Manhattan evaluation function. Our evaluation function refers an approximated database of the gap-2<i>n</i> set. The database is computed beforehand like pattern databases, but it is completely different from pattern databases. The belongingness of a configuration of pieces to the set has to be checked by the database. Using an evaluation function based on the gap-8 set, we were able to reduce the number of search nodes to about 2.5×10<sup>-4</sup> times in average with the IDA* algorithm compared with the Manhattan evaluation function. We also show that combining an evaluation function by gap-8 set and an evaluation function by additive pattern databases of disjoint seven and eight pieces, we were able to reduce the number of search nodes by about 53 compared with the evaluation function only by the additive pattern databases.
著者
寺沢 文男 高橋 公正 山本 和明 篠崎 隆 浜田 和孝 奥山 康治
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.93-97, 2006
参考文献数
15
被引用文献数
1

推定12歳の雄ミナミゾウアザラシが突然死亡した。死亡する2日前まで臨床兆候を示すことなく解説にも参加し,それまでの10日間の平均摂餌量は35.8kgだった。解剖,病理組織学的所見より,肺気腫,急性カタル性腸炎,腎盂結石を伴う慢性間質性腎炎,リンパ節萎縮が示された。死亡後1時間以内の血液からClostridium perfringens A型,Clostridium sp.を含む5種類の細菌を分離した。
著者
鴨井 美帆 今村 武浩 山本 健 岡本 真理子 高橋 実里 園田 華子 西岡 千賀子 門松 伸一 山近 重生 斎藤 一郎 中川 洋一
出版者
日本歯科薬物療法学会
雑誌
歯科薬物療法 (ISSN:02881012)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.85-91, 2011-12-01 (Released:2012-02-07)
参考文献数
18
被引用文献数
1

Purpose: The purpose of this study was to investigate the effects of sulpiride, an antidepressant, on xerostomia.Method: Fifty-five patients who visited the Dry Mouth Clinic, Tsurumi Dental Hospital with subjective oral dryness were enrolled in this study. The cause of the xerostomia in the patients was unknown. The patients did not meet Sjögren's syndrome criteria, and their condition was not congruent with xerostomia caused by radiation therapy to the head and neck, HIV infection, chronic graft-vs-host disease, or diabetes mellitus. The patients were divided into two groups: the dry group, with the chief complaint of dry mouth, and the pain group, with the chief complaint of pain. The patients received oral administration of sulpiride, and the clinical efficacy was evaluated by doctors' subjective judgment and by visual analogue scale (VAS).Results: Sulpiride was effective in both groups, but the response rate was higher in the pain group than in the dry group according to the doctors' subjective judgment. In the evaluation by VAS, improvements were not obtained in other items such as thirstiness and dysgeusia, although a significant decrease of VAS value was found in "dry mouth" in the dry group. In contrast, in the pain group, significant improvements were found in all items as well as pain.Conclusions: The results suggested that the dry and pain groups possessed completely different pathophysiologies. The results also suggested that subjective dry mouth may be a partial symptom of burning mouth syndrome (BMS), and that depression was one of the causative factors of xerostomia.
著者
才川 勇 桃井 海秀 酒井 広志 高下 寛 大橋 俊則 南 尚 山本 芳子 福岡 義和
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
薬学雑誌 (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.99, no.12, pp.p1207-1218, 1979-12

The stability, degradation pattern and structure of degradation products of sodium 7-[D (-)-α-(4-ethyl-2,3-dioxo-1-piperazinecarboxamido)-α-(4-hydroxyphenyl) acetamido]-3-[(1-methyl-1H-tetrazol-5-yl) thiomethyl]-3-cephem-4-carboxylate (T-1551) in aqueous solution were investigated. T-1551 was kept in various solutions in pH and μ=0.5 at 35°, its degradation was followed by HPLC. T-1551 was stable at the range of pH 4.0-7.0,slightly unstable at acid and markedly unstable at alkaline. It was confirmed that in alkaline solution, 7-[D (-)-α-[3-[2-(N-ethyl-N-oxaloamino)-ethyl] ureido]-α-(4-hydroxyphenyl) acetamido]-3-(1-methyl-1H-tetrazol-5-yl) thiomethyl-3-cephem-4-carboxylic acid (T-1551A) was produced, and that in acidic solution, 7-[D (-)-α-(4-ethyl-2,3-dioxo-1-piperazinecarboxamido)-α-(4-hydroxyphenyl) acetamido]-3-hydroxy-methyl-3-cephem-4-carboxylic acid γ-lactone (T-1551B), 7-[D (-)-α-(4-ethyl-2,3-dioxo-1-piperazinecarboxamido)-α-(4-hydroxyphenyl) acetamido]-3-hydroxymethyl-3-cephem-4-carboxylic acid (T-1551C), 5-mercapto-1-methyl-1H-tetrazole (T-1551F), 2-[2-(4-ethyl-2,3-dioxo-1-piperazinecarboxamido)-2-(4-hydroxyphenyl) acetamido]-2-[1,2,5,7-tetrahydro-7-oxo-4H-furo [3,4-d] [1,3] thiazin-2-yl] acetic acid (T-1551G), 2-[α-(4-ethyl-2,3-dioxo-1-piperazinecarboxamido)-α-(4-hydroxyphenyl) acetamidomethyl]-2,3-dihydro-5-hydroxy-methyl-6H-thiazine-4-carboxylic acid γ-lactone (T-1551H) and N-formylmethyl-D-(-)-α-(4-ethyl-2,3-dioxo-1-piperazinecarboxamido)-α-(4-hydroxyphenyl) acetamide (T-1551D) were produced, respectively.
著者
遠藤 秀紀 山際 大志郎 有嶋 和義 山本 雅子 佐々木 基樹 林 良博 神谷 敏郎
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.1137-1141, s・iv, 1999-10
被引用文献数
2 7

ガンジスカワイルカ(Platanista gangetica)は,ガンジス・ブラマプトラ川周辺の水系に限られて分布する,珍しいイルカである.同種は,原始的とされる形態学的形質が注目されてきたが,近年生息数を減らし,保護の必要性が指摘されている.筆者らは,東京大学総合研究博物館に収蔵されてきた世界的に貴重な全身の液浸標本を利用して,気管と気管支の走行を,非破壊的に検討した.ガンジスカワイルカの気管は,右肺葉前部に向けて,気管の気管支を分岐させることが明らかとなった.MRIデータにおいては,気管の気管支と左右の気管支の計3気道が,胸腔前方において並列する像が確認された.原始的鯨類とされるカワイルカで気管の気管支が確認されることは,鯨類と偶蹄類の進化学的類縁性を示唆している.一方で,左気管支は右気管支より太く発達していた.気管の気管支によって,右肺前葉に空気を供給する同種では,気管支のガス交換機能は,左側が右側より明らかに大きいことが示唆された.MRIによる非破壊的解剖学は,希少種の標本を活用して形態学的データの収集を可能にする,きわめて有効な手段として注目されよう.
著者
山本 勉
出版者
東京国立博物館
雑誌
Museum (ISSN:00274003)
巻号頁・発行日
no.589, pp.2-4,7-42, 2004-04
著者
田崎 美弥子 山本 幹男 小久保 秀之 小林 宏
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、喜怒といった対立する情動が混在するNon-Dialecticな東洋圏と混在しないDialecticな西欧文化圏において顔表情認知過程において差異があるかどうかを検証することである。本研究は4つの実験から構成された。実験1では、3名ずつの日本人と中国人との顔表情認知を喜び、怒り、驚き、軽蔑、嫌悪、恐れの顔表情と喜びを基点としてそれぞれの情動への変化する過程の中間表情を示す26枚顔表情刺激を使って、カードソーティングを実施した。また中国人学生には面接インタビューを行った。実験2では、同じ刺激材料を用いて、139名の日本人学生にスクリーンで刺激材料を8秒、白紙を3秒提示することを交互に26回繰り返して、その顔表情認知実験を行った。正答率の分析し、同じ日本人でも日本人の顔表情で正確に識別されるのは、笑い顔であり、「喜び、驚き、怒り」は「恐れ、嫌悪、軽蔑」より識別されやすいことがわかった。また実験3では、日本人と中国人に近赤外線、分光血流計OMN-3000を使い、実験1と2の刺激材料を提示したときの脳の血流変化を測定した。その結果、中国人は右前頭前野腹外側部の血流増加が顕著に認められた。日本人は相対的に血流増加が目立たず、課題負荷が少ないことが推測された。実験4では人種的にはヨーロッパ系であるものの情動表出が明確なラテン系の文化圏にあるブラジル人にとってどのように日本人の顔表情変化が認知されるかを検証した。その結果、喜怒哀楽が激しいブラジル人にとっては、日本人の笑い顔と驚き顔以外は識別が不可能であることがわかった。本研究から、笑い顔はともかくほかの曖昧な顔表情は同じ日本人にとっても難しいこと、さらに同じNon-Dialecticな文化圏であるアジア圏の中国人にも笑い顔と驚き顔以外は識別が難しく、Dialecticな文化圏であるブラジル人にとっては同じ結果が示された。以上から、日本人の曖昧な顔表情は特にほかの文化圏では極めて識別が難しく日本人の海外でのミス・コミュニケーションの一要因になっているのではないかと示唆された。