著者
村上 聖一 山田 潔
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.2-17, 2019 (Released:2019-03-20)

シリーズ「証言を基に読みとく放送制度」では、これまで十分に明らかになっていない放送制度の形成過程や制度と経営との関係について、証言を基に探究を進める。1回目は、行政法研究者として長年にわたり放送法制の体系的な研究にあたった塩野宏・東京大学名誉教授の証言である。 戦後、民放の発達とともに放送制度が抱える問題点が認識されるようになる中、塩野氏はNHKの放送法制研究会(1963年~)に加わったことで本格的に放送法の研究を始めた。証言からは、当時、民放が放送制度の見直しを強く求め、事業免許導入や受信料の使途の見直しが焦点になっていたことがわかる。特に受信料制度の行方についてはNHKが危機感を持ち、制度について理論的な検討を行う必要に迫られていた。こうした中で、NHKの考え方をまとめていく上で重要な機能を果たしたのが放送法制研究会であり、その中では法律の専門家、とりわけ行政法研究者が主導的な役割を果たしていたことが証言から明らかになった。そして、NHK・民放の二元体制を明確にすることや、受信料の使途をNHKの業務に限ることなど、研究会の提言の多くはその後の郵政省による制度の見直しの検討にも反映された。今回の証言は、塩野氏にとって鮮明な印象を与えた1960年代の議論が中心だが、それはこの時期にきわめて重要な検討がなされたことを意味している。この時期の議論がその後の日本の放送制度の枠組みに大きな影響を与えたことが証言からは浮かび上がる。
著者
山田 満 山本 真弓
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編 (ISSN:09160035)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.35-42, 2001-03-31

近年アレルギー疾患が増加する傾向にあり,アレルギー患者は国民の3分の1という高率になるという。そこで食物アレルゲンの一つである牛乳を対象として,牛乳の殺菌温度別アレルゲン性を測定し,アレルギー発症との関係について動物実験により比較検討を行った。抗原として低温殺菌牛乳(63℃30分),超高温殺菌牛乳(130℃2秒)および煮沸乳(100℃20分)を用い,マウス,ラットの腹腔内に注射し感作させた。アレルギー反応の確認はマウス血清IgE抗体値の測定と,ラット平滑筋のSchultz-Dale反応による抗原体反応によって確認した。その結果,低温殺菌乳に比べ超高温殺菌乳のマウス血清IgE抗体含有率の方が有意に高いことが分かった(P<0.05)。超高温殺菌乳と煮沸乳のIgE平均含有率の間には有意差は認められなかったが,高温で加熱時間の長いほどIgE値の高くなる傾向がみられた。一方,ラットによるSchultz-Dale反応でも低温殺菌乳では平滑筋の収縮は見られなかったが,超高温殺菌乳と煮沸乳では1分以内に著しい筋肉の収縮が認められた。これらのことより低温殺菌乳は,超高温殺菌乳に比較してアレルゲン性が弱く,加熱温度の高くなるほどアレルゲン量が増加し,アレルギー発症の原因になりやすいのではないかと考えられる。
著者
新井 博文 高杉 美佳子 山田 耕路
出版者
北見工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

活性酸素によって生理的に生成すると考えられる過酸化脂質がアレルギー反応に及ぼす影響について培養細胞を用いて試験管内で調べた。アレルギー反応に関与する白血球の一種であるマスト細胞を培養し、人工的に刺激したときに培養上清中に放出されるヒスタミンなどの化学伝達物質を定量したところ、過酸化脂質分解物である4-ヒドロキシ-2-ノネナールはマスト細胞からのヒスタミン放出を促進した。生体内脂質過酸化がアレルギーを悪化させる可能性が示唆された。

6 0 0 0 OA 国語学史要

著者
山田孝雄 著
出版者
岩波書店
巻号頁・発行日
1935

6 0 0 0 OA 赤心録

著者
山田潤二 著
出版者
民友社
巻号頁・発行日
1921
著者
山田 昌弘
出版者
関東社会学会
雑誌
年報社会学論集 (ISSN:09194363)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.2, pp.95-106, 1989

There have been few articles on the sociological analysis of love. In this paper, it is tried to make framework of sociological analysis of love in with reference to &lsquo;Sociology of Emotions&rsquo;, and to understand the character of the love institution in modern society by using the fruits of Social History. It is understood that love is constructed subjectively by feeling rules regulating the relation between situations, desires to act, emotional words. And love is institutionalized by the several types of norms. In modern society, the love institutions are characterized by the enclosure in marriage.
著者
山田 貴司
雑誌
文化科学研究 = CULTURAL SCIENCES
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.118-98, 2016-03-15
著者
嵯峨山 茂樹 川本 真一 下平 博 新田 恒雄 西本 卓也 中村 哲 伊藤 克亘 森島 繁生 四倉 達夫 甲斐 充彦 李晃伸 山下 洋一 小林 隆夫 徳田 恵一 広瀬 啓吉 峯松 信明 山田 篤 伝 康晴 宇津呂 武仁
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音声言語情報処理(SLP) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.14, pp.57-64, 2003-02-07
参考文献数
24
被引用文献数
42

筆者らが開発した擬人化音声対話エージェントのツールキット``Galatea''についてその概要を述べる。主要な機能は音声認識、音声合成、顔画像合成であり、これらの機能を統合して、対話制御の下で動作させるものである。研究のプラットフォームとして利用されることを想定してカスタマイズ可能性を重視した結果、顔画像が容易に交換可能で、音声合成が話者適応可能で、対話制御の記述変更が容易で、更にこれらの機能モジュール自体を別のモジュールに差し替えることが容易であり、かつ処理ハードウェアの個数に柔軟に対処できるなどの特徴を持つシステムとなった。この成果はソース公開し、一般に無償使用許諾する予定である。This paper describes the outline of "Galatea," a software toolkit of anthropomorphic spoken dialog agent developed by the authors. Major functions such as speech recognition, speech synthesis and face animation generation are integrated and controlled under a dialog control. To emphasize customizability as the dialog research platform, this system features easily replaceable face, speaker-adaptive speech synthesis, easily modification of dialog control script, exchangeable function modules, and multi-processor capability. This toolkit is to be released shortly to prospective users with an open-source and license-free policy.
著者
小川 智久 小延 裕之 鴨井 久一 太田 泰史 清水 政之 山田 昌彦
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.354-358, 1996-09-28 (Released:2010-08-25)
参考文献数
10

イソジンガーグル ® の含嗽による歯周疾患に対する効果を検索した。成人性歯周炎と診断された初診患者20名を対象とし, 初期治療の一環として1日4回, バス法によるブラッシングとイソジンガーグル ® による含嗽を行う群とブラッシングのみによる群に分け, 初診時, 1週目, 2週目に臨床診査および歯肉縁下プラークのサンプリングを行い, 位相差顕微鏡による微生物の形態学的分類およびその計数を行った。その結果, 臨床パラメータでは実験群においてPlaque Index, Gingival Indexの有意な減少が認められたが, 対照群ではPlaque Indexのみ有意な減少が認められた。細菌叢は, 運動性桿菌の数が実験期間を通じて実験群のほうが対照群に比較して有意な減少が認められたが, それ以外については有意な変化は認められなかった。以上のことから, イソジンガーグル ® による含嗽は臨床症状の改善のみならず, 口腔内の細菌叢を臨床的に健康な状態に保つことから, 日常におけるその有用性が示唆された。

6 0 0 0 OA 信頼と不信

著者
山田 浩之
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.86, pp.59-74, 2010-06-30 (Released:2017-04-21)
参考文献数
10
被引用文献数
1

本稿は,小説,映画,マンガなどに描かれる教師像を「熱血教師」を手がかりとして分析することで,教師への錯綜するまなざしを明らかにすることにある。「熱血教師」は現在のテレビドラマなどに見られる画一的な教師像であるが,これは現在も教師への信頼が強いことを示す。その一方で,メディアでは教師への批判が数多く報道されている。本稿ではこうした教師への信頼と不信の錯綜したまなざしと教師像の変化を検討した。 「熱血教師」は1960年代に石原慎太郎『青春とはなんだ』で提出された教師像であった。その特徴は,教育への情熱,教師らしさの無さ,理想的人間像の他,教師と生徒の関わりに物語の重点が置かれていること,さらに児童生徒の私的領域に押し入ってまでの問題解決であった。こうした教師像は,日本の現実の教師の行為を反映したものでもあった。 その一方で,1980年以降,マンガの中では児童生徒の私的領域に関わらない不良教師が描かれるようになった。このことは,現実の社会でも教師が児童生徒の私的領域に関われなくなったことを示している。それにもかかわらず教師には「熱血教師」として,なおも児童生徒の私的領域に関わることが求められている。 以上の議論をもとに,教師に対するまなざしを多様化し,個々の教師の多様性に着目することの重要性を指摘した。
著者
山田 実
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1067, 2020-09-15

「すぐに自分の講義で使用したい」,本書を拝見したときの第一印象です.大学院で統計学の講義を担当していると,毎年,学生からは決まって同じような質問が寄せられます.つまり,研究初学者が『統計学』を学ぶ際に疑問に思う点,理解に難渋する点,興味を抱く点はほぼ固定されており,われわれ講義担当者には,それらの点についてわかりやすく解説することが求められています.しかし,専門書に記載されてある内容を咀嚼して,わかりやすくかつシンプルに伝達するということは決して容易ではありません.本書には,このような学生から寄せられる質問(Q)がほぼそのままの形で記載されており,それに対応する解説(A)が一問一答形式の平易な表現でまとめられています.月並みな表現になってしまいますが,本書にはまさに『目から鱗』の情報が満載で,「講義で活用したい」,「学生・研究初学者にぜひ読んでもらいたい」,そう思えた一冊です. 『統計学≒難しい』という印象が強く,『統計』と聞いただけで拒絶反応を起こす方も少なくないのではないでしょうか? しかし,『エビデンス』という用語が日常的に用いられるようになった現在の医療現場では,研究論文を読み・書きする必要性が生じ,どうしても『苦手な(嫌いな)統計』と向き合わざるを得ない日が訪れてしまいます.そのようなときに,手に取っていただきたいのが本書です.『統計学≒難しい』から『統計学≒やれるかも』に変換してくれる,そのような役割を果たしてくれると思います.
著者
網本 和 内田 賢 内山 靖 大城 昌平 金谷 さとみ 酒井 桂太 福井 勉 山田 英司 横田 一彦
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.812-817, 2020-07-15

内山 本日は理学療法教育をめぐる現状を共有し,今後の展望について意見交換したいと思います. まず,教育関係者の共通認識として主要な行政文書を確認しておきます.2月28日付の文部科学省・厚生労働省の事務連絡として「新型コロナウイルス感染症の発生に伴う医療関係職種等の各学校,養成所及び養成施設等の対応について」が出され,在学中の学生に不利益が生じないよう,迅速かつ弾力的な対応が示されています.
著者
山田 真裕
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.2_52-2_69, 2011 (Released:2016-02-24)
参考文献数
13

This paper is a case study of organizational transformation in a prefectural party unit of Japan's Liberal Democratic Party (LDP). Ibaraki prefecture was one of the bulwarks of LDP dominance and the prefectural organization (“kenren”) had been proud of own strength. But, at the defeat in the 2009 gubernatorial election, many conservative local politician and interest organizations were against the “kenren” and supported the incumbent governor, Masaru Hashimoto, and let him win. The defeat broke the previous regime at the “kenren”, and the Ibaraki-kenren was forced to rebuild its organization and to try transforming itself from being a prefectural member-centered organization to becoming a more inclusive organization.   The purpose of this article analyzes the process of the gubernatorial defeat and the organizational reformation in the kenren following that defeat, to claim the necessity of further accumulation of analysis about local organizations of political parties, not only from perspective of national level confrontation among parties, but also local conflict among local politicians and interest organizationswith a peculiar dynamism.
著者
山田 毅
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.613-627, 2000-10-31 (Released:2009-02-19)
参考文献数
87
被引用文献数
1

私は, 結核菌が薬剤耐性を獲得する生化学的機構を解明するための研究を行い次ぎのような結論を得た。患者由来の多剤耐性結核菌は突然変異によりリボソームの構造を変え蛋白合成阻害剤であるバイオマイシンとカナマイシンに対して耐性を獲得していることを証明した。又RNA合成阻害剤であるリファンピシンに対してはRNAポリメラーゼの構造を変え耐性を獲得している。このように薬剤の攻撃をうける菌体の分子の変化に加えて透過性の変化により耐性を獲得している菌株もあり, 複数の機構が同じ菌株でおこり高度耐性を獲得している。最近では, 結核菌では, このような突然変異とその選択による耐性獲得機構はほとんどすべての抗結核剤に対して普遍妥当的にみられる機構であることが多くの研究者により明らかにされている。臨床医は多剤併用療法により薬剤耐性獲得に対処しているが, 完全に菌を排除することは不可能である。結核菌は宿主のなかで増殖をますます遅くし viable but non-culturable の状態に姿を変えあらゆる化学療法剤に抵抗するようになり且つ免疫機構に抵抗し人が生きている限り残存菌として人と共生することになる。我々はその機構を解明しこの機構に打ち勝つ薬剤やワクチンを開発し結核を根絶しようと考えた。遅発育性の機構解明の研究はその一つである。我々はDNAと強く結合する蛋白質のひとつが遅発育性を演出していることを発見した。このように, 結核菌が人に感染しても約95%の人は発病せず菌は残存菌として共生することになるが, 結核菌は眠った状態でも常に抗原を分泌し続け宿主の免疫力を高めているので逆にこの性質を利用することで結核以外の病気にも抵抗する免疫力を高める工夫が考えられる。我々はアジュバント活性最大の弱毒性結核菌BCGに様々な難病の予防抗原を分泌させ結核以外の感染症の予防にも効力を発輝するワクチンをつくるための基礎的実験を試みた。その結果, エイズ, マラリア, ハンセン病, 膀胱癌の予防実験を動物実験と試験管内の培養細胞レベルで試み成功した。癌の特効薬として有名な丸山ワクチンは弱毒結核菌の抽出物であり精製されていないために再現性が疑問視されているが, 我々の研究は分子生物学と免疫学のきちんとした手法でBCGに付加価値をつけ加え, しかも生菌を利用している点が異なる。
著者
山田 一郎
出版者
The Institute of Noise Control Engineering of Japan
雑誌
騒音制御 (ISSN:03868761)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.23-27, 1990-02-01 (Released:2009-10-06)
参考文献数
9
被引用文献数
4
著者
渡辺 実 野田 伸司 山田 不二造 藤本 進
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.367-372, 1981-05-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
9
被引用文献数
1

生体試料中のウイルスに対するエタノールの不活化作用について研究を行つた.エタノールの反応に十分な水分が含まれている限り, 液相および固相, いずれの生体試料中においても, エタノールのウイルス不活化作用は, エタノールの濃度に比例して上昇する. 血清原液およびPBS中のポリオウイルスは, いずれも90%エタノールによつて10秒で不活化を受けるが, 70%エタノールによつては, 前者は1分, 後者は10分, 即ち10倍の感作時間を必要とし, 血清による阻害効果が著明であつた: また凝固家兎血液およびHeLa細胞に感染したポリオウイルスは, いずれも90~99.5%エタノールにより速やかに感染価の低下が示されるが, 80%以下の濃度では不活化の進行は緩やかであつた.これに対し乾燥血清中のウイルスには, 高濃度のエタノールによる不活化効果は低く, 99.5%エタノールには殆どウイルス不活化作用は認められなかつた. しかしこの条件下においても70-80%エタノールのウイルス不活化効果は最強ではなく, 乾燥血清中のNDVおよびワクチニアウイルスは40~60%エタノールによつて最も高い不活化効果が示された.最も効果的な消毒が要求される場合には, 被消毒物件の水分およびウイルスの種類に応じたエタノール濃度の選択が必要と思われる.