著者
根津 直也 山田 浩史
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2022-OS-155, no.3, pp.1-12, 2022-05-19

メモリ容量の増大や,電圧の微細化などの原因によるメモリエラーの増加に伴い,ソフトウェアにメモリエラー耐性を持たせるための手法が多く提案されている.フォールトインジェクタは擬似的にメモリエラーを発生させる事ツールであり,これらの対策手法の評価・検証に有効である.既存のフォールトインジェクタの多くはメモリ上のランダムな位置にエラーを挿入するという特徴がある.たとえば,LLFI では中間コード内のランダムに選ばれた動的命令の結果に対してエラーを挿入するため,どのデータに対してエラーが挿入されるかはランダムである.このようなランダムにエラーを挿入する手法では,特定のエラーケースを意図的に再現することが難しいと言った問題点がある.本研究では,指定したメモリオブジェクトに対して直接エラーを挿入でき,特定のエラーケースを容易に再現できるフォールトインジェクタを提案する.本フォールトインジェクタは memcached を対象として,メモリオブジェクト情報の表示,指定したメモリオブジェクトへの 2 種類のエラー挿入,エラー挿入後に検証したい処理への遷移などの機能を持つ.また,既存の耐メモリエラー機構である software-based ECC に対して,作成したフォールトインジェクタを適用する事でその有効性の検証も行った.
著者
吉田 徹 山田 等仁 津下 英明
出版者
日本結晶学会
雑誌
日本結晶学会誌 (ISSN:03694585)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.69-76, 2022-02-28 (Released:2022-03-04)
参考文献数
20

The iota toxin produced by Clostridium perfringens type E is a binary toxin comprising two independent polypeptides:Ia, an ADP-ribosyltransferase, and Ib, which is involved in cell binding and translocation of Ia across the cell membrane. Binary toxin family includes C. perfringens iota toxin, C. difficile CDT, C. spiroforme CST, C. botulinum C2, and B. anthracis anthrax toxin. Here we introduce the binary toxin complex structures using single-particle Cryo-EM structural analysis and the structural basis of toxin translocation system.
著者
栗本 享宥 苅谷 愛彦 目代 邦康 山田 隆二 木村 誇 佐野 雅規 對馬 あかね 李 貞 中塚 武
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

岐阜県北西部から中央部にかけて走る庄川断層帯は,1586年天正地震の起震断層帯として強く疑われている断層帯であり,4条の活断層から成る.その最南端部である三尾河断層の南に移動体体積が2.2×107m3の大規模地すべり地が存在する.これは伝承で「水沢上の大割れ」と呼ばれ,天正地震で生じたとされてきた.しかし,当地すべりに関する地形学・地質学的な観点からの詳しい検討はなかった.演者らは,当地すべりを水沢上地すべり(以下ML)と命名し,現地踏査と1 m-DEMデータから作成した各種主題図(地形陰影図など)に基づく地形判読と現地で採取した試料の年代測定および年代値の分析を基礎として,MLの地形・地質特性や発生時期,誘因を検討した.やや開析された円弧状の滑落崖は北東方向に開き,その直下に地すべり移動体が分布する.移動体末端の一部は直下の河川(吉田川)を越えて対岸の谷壁斜面に乗り上げる.また移動体の一部は比高40~50 mの段丘状地形を成す.滑落崖,移動体の形状はそれらが複数回の地すべりで形成されたことを示唆し,地表面には地すべりに起因する大小の凹凸地形が発達する.地すべり移動体は不淘汰・無層理の安山岩角礫と細粒の基質から成り,礫にはジグソークラックが発達する.Loc. 1の左岸側露頭では移動体構成物質中に,地すべり移動時に巻き込まれたと推定されるクロボク状表土の破片が認められる.この破片に含まれる木片2点の較正年代(2δ)はcal AD 1492~1645の範囲に及ぶ.また,地すべり移動体が吉田川を堰き止めて生じた層厚約2 mの湖沼・氾濫原堆積物も確認できる.この湖沼・氾濫原堆積物の下限の約90 cm上位から採取した直径約20 cmの丸太材の外周部の14C年代はcal AD1513~1618であり,細胞セルロース酸素同位体比年輪年代測定によってAD1615~1620頃と推定された同材の枯死年代とは調和的である.以上のように,MLの規模や地すべり移動体と堰き止め湖沼・氾濫原堆積物の層相および年代から,MLの誘因は強震動が第一に想定される.試料の年代からみて,誘因が1586年天正地震であった可能性は高まったといえる.ただし歴史地震学において提唱されている天正地震の本質から,本震と考えられる1586年1月18日の地震でMLが形成されたか否かといった問題について,なお検討を加える余地がある.同時に1596年慶長伏見地震との関係についても検討の対象となる.
著者
山田 雄司
出版者
山田雄司
巻号頁・発行日
2007-03-01

北野天満宮に関する古文書・古記録は、現在では各所に分かれて所蔵されているため、その全貌をうかがい知ることは困難である。しかし、文書群全体を把握した上で利用する場合と、そうした把握なしに部分的に利用した場合では、おのずと理解に差が生じよう。また、文書がいかに伝来してきたかを把握しておくことも、文書の理解につながるはずである。本研究では、こうしたことを前提に、明治維新前にどのようなかたちで文書が伝来してきたのかできるかぎり復元することにつとめ、かつての所蔵ごとに分類しようと試みた。ただし、北野天満宮所蔵分および筑波大学附属図書館所蔵分については、いくつかの所蔵先から流入したと推測されるが、分割することはせず一括して目録を作成した。北野天満宮旧蔵文書の中で大部分を占めるのが、松梅院が有していた文書群である。松梅院旧蔵の古記録は、現在では北野天満宮・筑波大学附属図書館・天理大学附属天理図書館・早稲田大学図書館で所蔵されていることが確認できる。松梅院に関する文書・古記録は、維新後に還俗して正神主兼社務となった吉見氏が所持していたが、その一部は明治30年以前に北野神社に寄贈された。そして一部は吉見氏が北野神社から離れ、さらには種々の理由により史料を手放したことにより、市中に出回ったものと推測される。文書の多くは、もと安楽寺御供所に鎮座していた一之保社に伝来し、神仏分離により安楽寺が廃絶となり、明治6年7月に一之保社が北野天満宮境内へ遷座したことにともない、神宝類も天満宮に移管されることになって北野天満宮所蔵となったものが多い。著名な酒麹役に関する文書ももと一之保社で所持していた。その他、現在知ることのできる北野社旧蔵古記録・古文書の目録を作成し、あわせて、筑波大学所蔵の北野関係文書の翻刻を行った。
著者
山田 壮志郎
出版者
日本福祉大学社会福祉学部
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 = Journal social Welfare, Nihon Fukushi University (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
no.143・144, pp.133-157, 2021-03-31

貧困を,物質的な側面からだけでなく社会関係的な側面から捉えた場合,生活保護に対する否定的な世論やメディアのバッシング報道の広がりにより,生活保護受給者のスティグマが増幅することが危惧される.本研究では,ホームレス経験をもつ生活保護受給者 7 人に対するインタビュー調査をもとに,受給者が抱くスティグマの実相を分析した.ホームレス経験者にとって,生活保護開始時における施設や病院での「惨めな経験」が,スティグマを増長する要因になっていた.また,彼・彼女たち自身が生活保護受給者に対してスティグマを付与する主体になっていることも示唆された.このことは,自らが自らに対してスティグマを付与することを意味しており,結果として常に周囲からの目を気にして暮らしていくことになる.一方,時間の経過や同じ境遇の人との交流を通じて,スティグマは徐々に軽減されていた.しかし,バッシング報道の広がりによって,軽減されつつあったスティグマが再付与されることが懸念される.
著者
小畑 弘己 丑野 毅 高瀬 克範 山本 悦世 高宮 広土 宮ノ下 明大 百原 新 那須 浩郎 宇田津 徹朗 中沢 道彦 中山 誠二 川添 和暁 山崎 純男 安 承模 田中 聡一 VOSTETSOV YU. E. SERGUSHEVA E. A. 佐々木 由香 山田 悟郎 椿坂 恭代
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

日本の考古学において、縄文時代の農耕の存否問題は古くから議論され、今でも論争中の課題である。この混乱の根底には、確実な栽培植物が存在しなかったという研究上の制約があった。我々は、この問題を解決するために、土器中に残る植物種子や昆虫の痕跡(土器圧痕)を検出することで解決しようと考えた。研究期間内に、日本列島の縄文時代~弥生時代171遺跡、海外の新石器時代9遺跡において圧痕調査(約400, 000点の土器)を実施し、多種・多様な栽培植物種子や貯蔵食物害虫(総数552点)を検出した。また、圧痕法の学問的定立のための方法論的整備を行った。その結果、まだ問題点は残るものの、縄文時代の栽培植物の実態と問題点を明らかにすることができた。
著者
布田 花子 森田 修一 山田 秀樹 花田 晃治 齊藤 力 高木 律男
出版者
特定非営利活動法人 日本顎変形症学会
雑誌
日本顎変形症学会雑誌 (ISSN:09167048)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.85-93, 2002-12-15 (Released:2011-02-09)
参考文献数
16
被引用文献数
1

The purpose of this study was to investigate the changes of the soft tissue profile in the nose following Le Fort I osteotomy in skeletal Class III patients.The subjects were 30 females who underwent twojaw surgery to correct anterior reversed occlusion, and who were classified into three groups according to the directions of surgical displacement of the maxilla.1. Advancement-Impaction group (n=11)2. Advancement group (n=12)3. Advancement-Downgraft group (n=7)For each patient, lateral cephalograms, taken preoperatively and postoperatively, were traced and superimposed, and linear and angular measurements were obtained. And, alinasal width was measured on frontal facial photographs taken preoperatively and postoperatively. These data from the three groups were compared.The results were as follows:1. In the Advancement-Impaction group, Pronasale and Subnasale were displaced in the upward and forward direction after Le Fort I osteotomy.2. In the Advancement group, Pronasale and Subnasale were displaced in the forward direction after surgery.3. In the Advancement-Downgraft group, Pronasale was displaced in the forward direction, and Subnasale was displaced in the downward direction.4. Alinasal width was increased in the three groups with advancement of the maxilla.In conclusion, there were differences in the postoperative changes of the nose, with different movement of the maxilla.
著者
山田 晋也
出版者
一般社団法人 日本医学物理学会
雑誌
医学物理 (ISSN:13455354)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.148-154, 2013-03-31 (Released:2013-09-30)
参考文献数
20
被引用文献数
1
著者
吉村 耕治 山田 有子
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, 2018

<p> 節分で頻繁に登場する鬼は,主に赤鬼と青鬼で,鬼の種類が多い場合には,黄(あるいは白),綠,黒の鬼が存在する.鬼の色は,地域によっては赤・青・黄や,赤・緑・黒という3鬼のところもあり,赤の頻度が最も高い.人生には「陰陽」がある.その陰の部分から,鬼が発生しており,日本では怪物のイメージから自然界にある主要な5色を利用して鬼が描写されている.それに対して,現代中国では「死者の魂」の意から「幽霊」のイメージが強く,怖いモノと考えられ,色で表現されないことが多い.鬼の5色は仏教や五行説と密接な関係がある.仏教の五色とは,青・赤・黄・白・黒で,青の代わりに緑,黒の代わりに樺色や紫が使われることがある.仏教を象徴する旗の国際仏旗は,左から青,黄,赤,白,橙,一番右の列には5色を上から順番に並べた縞模様となっており,それらの色にはそれぞれ意味が込められている.鬼はらいの儀式では平安京大内裏の外郭の十二の門に,青い土牛童子(以下,土偶)は東の門に,赤い土偶は南の門,黄色い土偶は東西南北の門,白色の土偶は西の門,黒色の土偶は北の門に立てられたと言及されている.陰陽五行説の五色が基本色になっている.</p>
著者
山田 妙韶
出版者
日本福祉大学社会福祉学部
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 = Journal social Welfare, Nihon Fukushi University (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
vol.139, pp.79-87, 2018-09-30

「寄り添い」という言葉が新聞記事で使用された頻度を調査した研究では,「『寄り添い』の使用頻度は,2000 年前後,2011 年に急激に増加しており,2000 年以降になると医療福祉分野で使用されるようになっている」(前田,中西,井川その他2014:68)が,「寄り添い」を標榜した取り組みもさまざまな場面でなされている.例えば,「寄り添い型相談支援事業」は,一般的な生活上の問題をはじめ,社会的なつながりが希薄な方への相談先として電話相談を行うものである.また,政府がめざす「地域共生社会」では,地域生活の中で本人に寄り添って支援をしていく専門職として保健医療福祉の人材養成の必要性を指摘している(厚生労働省「『地域共生社会』の実現に向けて」).そして,民間の福祉サービス事業所でも,「心に寄り添う」「利用者に寄り添う」などを掲げてサービス提供を行っている.このように「寄り添い」という言葉は,今後福祉領域においても多用されるのではないだろうか. 一方,CiNii の論文検索で「寄り添い」「寄り添う」に関する研究を検索したところ,1992 年以降で2087 件がヒットし研究への関心が高いことが分かる.しかし,「精神障害者」「寄り添い」「寄り添う」での検索でも「精神保健福祉士」「寄り添い」「寄り添う」でも数件しかなく,精神保健福祉領域において,研究はほとんど進んでいないと言えよう.この現状では精神障害者への寄り添う支援は,結果として提供される支援内容も各々の精神保健福祉士自身の経験によるところが大きいこととなろう. そこで,精神障害者の「寄り添い」に関する研究の着想に至った.まず,先行研究の検討を「寄り添う」に関して多くの研究が見られる看護領域を対象に行った.次に,「新人」「熟連」という実務経験年数に着目し,新人精神保健福祉士にフォーカスグループインタビュー調査を行った.新人精神保健福祉士が捉える「精神保健福祉士の寄り添う支援」は,「障がい理解を基盤にして,あきらめないという精神保健福祉士の姿勢と価値観のもと,コミュニケーションスキルを用いて利用者の利益を一番に考えて支援を展開する」と定義された.今後は,熟練精神保健福祉士にも同様のインタビュー調査を行い,新人PSW との比較を通して「精神保健福祉士の寄り添う支援」研究の端緒とすることを研究課題と考えている.
著者
田中 邦煕 新谷 洋二 山田 清臣
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.639, pp.23-37, 2000-01-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
15

本研究は 城郭石垣の築 (平) 石を正面から見たときの形状寸法などを基準に行った分類と変遷についてとりまとめたものである. 多くの石垣を踏査するうちに, 積み石はその形状寸法や加工状態から古代型・掘出し石型および切出し石型の3タイプに大分され, これはさらに8タイプに細分されるのではないかと想定した. そこで, 全国約140箇所の石垣調査データのうち, 積み石の形状寸法に関する4種類の数値パラメータから得られる9種の統計量を8タイプに当てはめたところ, この4パラメータにより8タイプの石垣を定量的に表示できる可能性が示された. したがって現存石垣を4パラメータを用いて数量化して表示することにより, 石垣分類を行いまた, その構築年代を推定する一手法になりうると考えられる.
著者
磯野 春雄 高橋 茂寿 滝口 雄介 山田 千彦
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.403-406, 2005-03-01 (Released:2011-03-14)
参考文献数
12
被引用文献数
4 7

Readers of e-Books read words on electronic paper. We conducted an experiment in which 13 college students read electronic paper and conventional paper for 90 minutes better understand the degree of visual fatigue from such reading. The degree of their visual fatigue was measured before, during, and after reading. Results showed no significant differences in the levels of visual fatigue between the electronic and conventional reading. We conclude that electronic paper is a good reading display that is as gentle to the eyes as conventional paper.