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著者
島田清次郎 著
出版者
新潮社
巻号頁・発行日
vol.第1部, 1919
著者
永田 勝太郎 島田 雅司 長谷川 拓也 真木 修一 秦 忠世 大槻 千佳
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.1151-1156, 2010-12-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
12

酸化バランス防御系は,生体調節機構の1つと考えられる.そのゆがみは生活習慣病の発症に関与する.疼痛性疾患である,慢性腰痛,線維筋痛症,関節リウマチ患者について,酸化ストレス(d-ROM test),抗酸化力(BAP test),潜在的抗酸化能(修正BAP/d-ROM比:修正比)をFRAS4(Free Radical Analytical System 4)により,測定した.健常者群に比し,線維筋痛症の酸化ストレス,修正比は悪化していたが,関節リウマチほどではなかった.酸化バランス防御系の是正のため,抗酸化剤である還元型coenzyme Q10を3ヵ月間投与した.その結果,疼痛VASの改善,酸化バランス防御系の改善がみられた.線維筋痛症の診断・治療に酸化バランス防御系の評価は重要であると考えられた.
著者
島田 厚良 石井 さなえ
出版者
中部大学現代教育学部
雑誌
現代教育学部紀要 = Journal of College of Contemporary Education (ISSN:18833802)
巻号頁・発行日
no.7, pp.21-25, 2015-03

妊娠後期における感染に誘発された母体の免疫系の活性化は、胎内環境を悪化させ、発達中の胎児脳に脆弱性をもたらし、知的障害や発達障害を引き起こす。このことは、免疫系と脳が相互に影響し合うことを示唆するが、その組織・細胞レベルでの機構は明らかではない。本研究ではまず、免疫系細胞と脳の接点はどこかを調べるため、緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子導入マウスの骨髄を通常のC 57 BL/6マウスに骨髄移植し、移植後2週間、1、4、8ヵ月後にマウスを固定し、頭蓋内における骨髄由来細胞の分布を調べた。その結果、骨髄由来細胞は移植後早期に髄膜、脈絡叢間質、血管周囲腔に、移植4-8ヵ月後には、脈絡叢が付着する脳実質領域に分布し、これらの領域が免疫系細胞と脳との接点であることを示した。免疫系と脳の相互作用という新しい観点から、発達障害の病態形成の理解を深め、将来的には予防法や治療薬の開発につなげたい。Maternal immune activation during pregnancy has detrimental effects on the brain development of their offspring, resulting in neurodevelopmental disorders. However, the mechanism of the brain-immune interaction remains to be elucidated. To determine the sites of brain-immune interaction, we made bone marrow chimeric mice in which the recipients'immune system was reconstituted by marrow cells derived from GFP-transgenic mice and examined the distribution of donor-derived marrow cells in the brain 2 weeks and 1, 4 and 8 months after bone marrow transplantation (BMT). Marrow-derived cells were distributed in the meninges, choroid plexus stroma, perivascular spaces and circumventricular organs early after BMT and in the discrete brain regions adjacent to the attachments of choroid plexus during 4-8 months after BMT, indicating that these sites are the brain-immune interface. The findings of the present study would enhance the understanding of the mechanisms underlying neurodevelopmental disorders from the viewpoint of the brain-immune interaction.
著者
平井 啓之 本多 清志 藤本 一郎 島田 育廣
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.296-304, 1994-04-01 (Released:2017-06-02)
参考文献数
12
被引用文献数
2

音声の基本周波数(F_0)の変化に伴う喉頭軟骨の位置変化を観測して、F_0調節の生理機構を考察した。F_0上昇の生理機構は主に輪状甲状筋の活動によって行われることがよく知られているが、F_0の下降については輪状軟骨の弛緩だけでは説明できない問題があり、現在でも明らかにされていない。本研究では、F_0下降の生理機構の理解を目標として、磁気共鳴装置(MRI)を用いて約1〜1.5オクターブのF_0範囲で持続発声を行ったときの喉頭の正中矢状断面の撮像を行った。複数の被験者の断層像より喉頭周囲構造の輪郭を抽出した。結果、F_0の昇降におおむね従う喉頭の上下動などの形態変化が観測された。F_0下降においては喉頭の下降に伴い輪状軟骨が回転する現象が観測された。これは声帯を短縮させる方向への回転であり、輪状軟骨の後板が頚椎の自然湾曲に沿って移動する結果生ずるものである。F_0下降に伴う喉頭下降の現象や外喉頭筋の活動の理由はこの生理機構により説明できると考えられる。
著者
島田 忠夫 矢崎 清貫 狛 武
出版者
石油技術協会
雑誌
石油技術協会誌 (ISSN:03709868)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.164-171, 1955-09-30 (Released:2008-03-27)
参考文献数
3

Oshamambe natural gas field had been surveyed geochemically and geologically by the Geological Survey of Japan in 1953 and 1954.The writers performed the core analysis and lift test of natural gas well, Oshamambe R-1, which was drilled under planning of Oshamambe town-office, having 600m of depth and being located about 200m north from Oshamambe station.As a casing pipe, gas-pipes 4 inches in diameter are used about 500m of length. The gas-pipe was perforated between 350-390m, 410-550m in depth, and non-casing bore hole in adepth of 551-613m.The production data obtained under natural flowing are as follows: gas volume water volume water temperature 350-400m3/d 710m3/d 49.0°CAnd the data obtained by the lift test are as follows gas volume water volume water temperature 850-900m3/d 1, 150-1, 200m3/d 50.0°CThe geothermal gradient of this place is almost twice in ordinary region.As a conclusion, the writers suppose that the promising gas-reservoir beds in the Kuromatsunai formation of Pliocence age exist probably in the deeper part than 600m in depth.
著者
乾 つぶら 島田 三恵子 早瀬 麻子 緒方 敏子 時本 秋江 保条 麻紀 新川 治子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.189-197, 2008 (Released:2009-05-20)
参考文献数
26
被引用文献数
1 2

目 的 妊娠末期から産後4ヶ月の母親の睡眠覚醒リズムの特徴と変化を明らかにする。対象と方法 同意を得た妊娠末期の妊婦57名を対象とし,このうち追跡調査できた産後1ヶ月47名,産後4ヶ月34名に縦断調査を行った。睡眠表に一日の睡眠と覚醒を30分毎に連続1週間の記録を依頼し,郵送法で回収した。夜間・昼間・総睡眠時間,最長睡眠時間とその開始時刻及び終了時刻,昼睡眠・総睡眠回数,中途覚醒時間とその回数,及び睡眠覚醒のリズム周期を検討した。結 果 総睡眠時間は妊娠末期7.79時間,産後1ヶ月6.73時間,産後4ヶ月6.91時間であり,夜睡眠時間は各々6.75時間,5.85時間,6.36時間であり,最長睡眠時間は6.39時間,3.46時間,4.13時間であり,いずれも時期による変動があった(p<0.001)。産後,これらの睡眠時間は妊娠末期よりも短縮した(p<0.01~0.001)。夜間の中途覚醒時間は妊娠末期0.42時間,産後1ヶ月1.70時間,産後4ヶ月1.14時間であり,中途覚醒回数は各々0.3回,1.7回,1.5回であり,いずれも時期による変動があった(p<0.001)。産後,中途覚醒は妊娠末期よりも増加した(p<0.001)。妊娠末期から産後4ヶ月は睡眠が分断されても,最長睡眠は0:22から6:50の時間帯にあり,睡眠覚醒のリズム周期は24.04~24.08時間であった。妊娠末期と産後4ヶ月では,最長睡眠時間とその入眠時刻との負の相関(p<0.001~0.05)がみられた。いずれの時期も入眠時刻と夜睡眠時間との負の相関があった(p<0.01~0.001)。結 論 妊娠末期から産後4ヶ月にかけて,総睡眠時間,夜間睡眠時間,および最長睡眠時間が減少し,夜間の中途覚醒が増加しても,最長睡眠時間は夜間にあり,睡眠覚醒のリズム周期は約24時間であることが明らかになった。また,妊娠末期と産後4ヶ月では最長睡眠の入眠時刻が早いほど最長睡眠時間は長いことが明らかにされた。
著者
高橋 紀子 島田 義弘
出版者
東北大学
雑誌
東北大学歯学雑誌 (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.19-27, 1989-06-30
被引用文献数
1

年一回の視診型定期歯科検診を実施している某高専校において, 年齢15歳から21歳の学生664名(男子577名, 女子87名)を対象に舌疾患の有病状況について調査し, 以下の成績を得た。同一年齢の男女間の有病率は, 19歳群の男女間を除く他の年齢群では性差を認めなかった。男女合計の年齢群別有病状況は, 19歳群が最も高く56.1%, 20歳が最も低く40.0%であり, この範囲の高低はあるが, 各年齢群間には統計学的有意差を認めなかった。被検者全体における有病者は331名, 49.8%であった。検出された舌疾患は9種類で, それぞれの被検者全体に対して占める割合は, 舌苔32.4%, 毛舌症19.4%, 地図状舌4.2%, 溝状舌2.6%, 舌強直症2.3%, 圧痕舌1.7%, 赤色平滑舌0.6%, 舌裂と正中菱形舌炎がそれぞれ0.2%であった。なお, 舌苔と白毛舌, 地図状舌と溝状舌等のように, 二つの別な疾患が併存する例も多く, 89例に見られた。これらの舌疾患は痛み等の自覚症状に乏しく, 治療処置を必要としないため, 定期歯科検診の際には一般に軽視されがちであるが, 今回の調査では9種類の舌疾患を検出し, 従来の類似した年齢集団を対象とした調査成績と比較して, 舌苔, 毛舌症, 地図状舌はかなり高い有病率であった。
著者
山本 実穂 野添 匡史 大西 晶 桝矢 璃央 大澤 摩純 久保 宏紀 山崎 允 間瀬 教史 島田 眞一
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11639, (Released:2019-11-27)
参考文献数
34

【目的】慢性腎臓病(以下,CKD)を合併した心不全カヘキシア症例に対して,分岐鎖アミノ酸(以下,BCAA)を含むたんぱく質摂取を中心とした栄養療法と運動療法によって身体機能の大幅な改善が得られたので報告する。【症例紹介】心不全(CKD stage3b 合併)を発症後1 ヵ月間の中心静脈栄養管理となり20 kg の体重減少を招いた。身体機能の改善を目的に理学療法が処方されたが,第76 病日時点で疲労感が強く,運動耐容能(6 分間歩行距離150 m)も低下していることからカヘキシアの状態と考えられた。【経過】BCAA を含むたんぱく質の摂取量を1.2 g/kg/ 日まで漸増し,運動療法はレジスタンストレーニングを中心に行った。約3ヵ月間で体重は8.4 kg 増加し6 分間歩行距離は557 m まで改善した。【結論】CKD を合併した心不全カヘキシア例であっても,たんぱく質摂取量を増やした栄養療法と運動療法の併用は有効と考えられた。
著者
中原 健一 島田 史也 宮崎 邦洋 関根 正之 大澤 昇平 大島 眞 松尾 豊
出版者
人工知能学会
雑誌
2018年度人工知能学会全国大会(第32回)
巻号頁・発行日
2018-04-12

株式市場における売買審査業務をより効率的かつ合理的に行うために,定量的に見せ玉を検知する手法を提案する.本手法においては,教師ラベルを使用せずに相場操縦行為中に見られる不自然な取引履歴を発見するため,密度比推定による異常検知手法を用いた.東京証券取引所の上場銘柄の中より無作為に選択され,専門家チームによってラベル付けされた118 件の半日単位の一銘柄取引履歴による検証結果によると,見せ玉が疑われる事例の80%は,モデルが予測した異常度順にソートした事例の上位50%に含まれ,実務で使用されている単純な規則によるスクリーニングの結果と比較して更なる精緻化が達成できていることが示された.
著者
島田 剛
出版者
国際開発学会
雑誌
国際開発研究 (ISSN:13423045)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.69-84, 2018-11-30 (Released:2019-04-04)
参考文献数
26

This study examines Japan's experience as a recipient of the United States'aid for productivity improvement after World War II. Three points were identified as a result of the research. First, the US assistance was extremely strategic and large-scale. The goal of the US aid was to exclude the Soviet influence over Japan's labor unions because the labor unions were considered sympathetic to the Soviet Union during the cold war. The aid was implemented on an extremely large scale, including the acceptance of 3,986 Japanese trainees into the United States over seven years. Second, prior to the aid, labor-management relations in Japan were adversarial, but while Japan was accepting aid from the US, leaders of opposition labor unions were also invited to visit the United States. The aid gradually changed labor-management relations from conflictive to constructive. In other words, while working on improving productivity, collaborative labor-management relations were developed in Japan, which suggests that Kaizen can be implemented in other countries. Third, it was the private sector that played a central role in receiving aid from the United States, not the Japanese government. Instead, the government provided supplemental support for the active movement of the private sector, very likely an ideal industrial policy. It is also worth noting that while half the budget (132 million yen in half a year) was borne by Japan in accepting the aid, the majority of the budget was borne by the private sector. In other words, the commitment of the private sector was very high.
著者
畑江 敬子 脇田 美佳 宮後 恵美 佐藤 由紀 島田 淳子
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.41, no.11, pp.755-762, 1994-11-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
12
被引用文献数
3 1

嗜好性の高い昆布だし汁を調製するための基礎的知見を得るために,だしの成分量と抽出時間(1~90分間)および抽出温度(5~95℃)との関係を調べた.各温度における各成分の抽出量(Y)は,抽出時間(X)の関数としてうまく示された.すなわち,ここでa値は,抽出初期段階における傾斜で, b値は,漸近値すなわち最大抽出量である.各成分についてa値を各抽出温度に対してプロットし,みかけの活性化エネルギーを計算した.同様に,各成分について, b値のみかけの活性化エネルギーを求めた.これらの活性化エネルギーを比較することによって,各成分の抽出における温度依存性を知ることができる.抽出初期の温度依存性は,マンニット,全エキス,K+, Cl-,および全窒素に高かった.最大溶出量の温度依存性の高い成分はCa2+,グルタミン酸, Mg2+, P5+お上アド全エキスであった.
著者
福山 千愛 竹林 崇 竹内 健太 山口 理恵 島田 真一
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.519-526, 2021-08-15 (Released:2021-08-15)
参考文献数
17

要旨:セルフアウェアネスの低下は,日常生活動作の改善やリハビリテーションの阻害因子の1つである.しかし,セルフアウェアネスに対する介入方法やその効果は十分に検討されていない.今回我々は,高次脳機能障害によりセルフアウェアネスの低下を呈した回復期脳卒中患者に対し,作業活動にセルフアウェアネスの促進を目的とした行動学的技法を組み合わせたアプローチを実施した.その結果,身体機能,神経心理学的検査結果に著明な変化がないにもかかわらず,活動パフォーマンスの向上を認め,セルフアウェアネスの改善を示唆する知見を得た.以上より,本アプローチが,活動だけでなく,セルフアウェアネスの改善に対して有用である可能性が示唆された.
著者
三枝 信吾 加茂 亜里沙 稲本 あさみ 久保 宏紀 山崎 允 野添 匡史 間瀬 教史 島田 真一
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.12208, (Released:2022-02-21)
参考文献数
43

【目的】二次性サルコペニアを呈したTrousseau 症候群患者に対する理学療法について報告する。【対象と方法】卵巣癌の精査中に小脳梗塞を発症した50 代女性である。初期評価では,握力は右8.5 kg/左11.5 kg,快適歩行速度は0.73 m/ 秒,Skeletal Muscle mass Index(以下,SMI)は4.4 kg/m2 であり,重症サルコペニアを呈していた。分岐鎖アミノ酸を含む栄養療法でタンパク質の摂取量を漸増させ,運動療法は低負荷高頻度Resistance Training と有酸素運動を中心に実施した。【結果】最終評価では,握力は右18.9 kg/ 左19.3 kg,快適歩行速度は1.17 m/ 秒,SMI は5.6 kg/m2 と各指標で改善を認め,歩行自立で自宅退院となった。【結論】二次性サルコペニアを合併したTrousseau 症候群に対して,適切な栄養管理下の運動療法は効果的である可能性が示唆された。
著者
畠山 和利 松永 俊樹 巌見 武裕 大高 稿兵 佐々木 研 佐藤 峰善 渡邉 基起 髙橋 祐介 島田 洋一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1049, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】腹腔内圧は,腹腔構成筋群の同時収縮で増加し,支持性や強制呼気,排尿や排便に貢献するとされている。腹腔内圧の上昇には,横隔膜,腹横筋,骨盤底筋などが重要となり,支持性向上のための運動療法が積極的に行われている。この腹腔内圧は,脊柱に強い伸展モーメントが加わる際に不随意で上昇するとされており,スポーツなどの素早い動作や日常生活動作で腰部障害予防の観点から重要な因子といえる。これまでわれわれは,3次元体幹筋骨格モデルを作成し,前屈時における脊柱モーメントや体幹筋張力の変化,スクワット動作時の下肢を含めた解析など報告してきた。このモデルは体幹筋を詳細に再現したモデルであり,動作時の筋張力を算出することが出来る。本研究の目的は,3次元体幹筋骨格モデルを用いて腹腔内圧の有無により立位姿勢保持に必要な体幹筋筋力をシミュレーション解析することである。【方法】3次元体幹筋骨格モデルの作成健常な成人男性(31歳,身長1.74m,体重78.5kg)を対象にCT,MRIを撮像した。3次元骨格モデルは,Materialise社製MIMICSを用いてCT/DICOMデータから骨形状を抽出し作成した。作成した骨格モデルとMRI断層画像より抽出した筋を基に3次元体幹筋骨格モデルを作成した。筋骨格モデルの構築は,豊田中央研究所製EICASを使用した。モデルに構築した筋は,腹直筋,内外腹斜筋,腰方形筋,大腰筋,棘間筋,横突間筋,回旋筋,多裂筋,腰腸肋筋,胸腸肋筋,胸最長筋,胸棘筋,胸半棘筋である。各筋の断面積はMRIより算出した。また,各椎体間の可動性はモーメントに影響を及ぼすため,レントゲン写真で可動性を測定し,関節最終可動域で抵抗がかかるように設定した。また,MRI断層画像から腹腔体積を求めた。本モデルに用いた腹腔内圧値は健常者における日常生活動作時の平均値を用い30mmHgとした。またValsalva時の最大腹腔内圧はJ. Mensらの報告に基づき120mmHgとした。解析条件構築した筋骨格モデルで立位状態を反映させるため,3次元動作解析装置VICON MXで立位姿勢を計測した。対象は健常成人6名(平均身長170.5 cm,平均体重66.8 kg)で,直径6mmの反射マーカー計72個を脊柱および四肢に貼付した。計測した座標位置を3次元体幹筋骨格モデルに反映させ,立位保持時に発揮している筋力を算出した。得られた筋力値と筋断面積から導き出した最大筋力値より筋活動量を算出した。対象筋は腹筋群と脊柱起立筋群(腹直筋,外腹斜筋,内腹斜筋,棘筋,最長筋,腸肋筋)とした。腹圧なし,腹腔内圧30mmHg(以下,腹圧あり),valsalva時の腹腔内圧120mmHg(以下,Valsalva)の3条件とし,Kruskal-Wallis検定を用いて比較した。有意水準は5%未満とし,統計処理はSPSS ver.20を使用した。【結果】腹腔内圧の有無による腹筋群,脊柱起立筋群の筋活動量を算出した。静的立位時の筋活動量は,腹筋群で3群間に差がなかったが,脊柱起立筋群では腹腔内圧が増加するにつれ,筋活動量の減少がみられた。特に最長筋では,腹腔内圧なしで18.6±2.5%,腹腔内圧ありで15.2±3.2%,valsalvaで9.1±3.4%で有意に差が認められた(p<0.05)。また,腸肋筋は腹腔内圧なしで15.3±4.4%,腹腔内圧ありで13.6±2.4%,valsalvaで10.1±3.5%で有意に差が認められた(p<0.05)。【考察】脊柱アライメントは体幹伸展筋力の与える影響が大きく,われわれは体幹伸展筋力の低下が脊柱後弯を増強させることを報告した。今回の結果から,腹腔内圧の設定で姿勢保持に必要な体幹伸展筋力が減少する結果となった。これは腹腔内圧が体幹伸展筋力を補助し,体幹安定性を高めるといえる。本モデル上では,腹腔容積が変化しないため設定した腹圧が直接体幹に作用するが,生体では腹横筋や横隔膜,骨盤底筋などの筋力や筋硬度が必要となり,体幹の安定化に重要な役割を果たす。したがって,体幹の固定性を得るためには,あらゆる姿勢や動作で持続的な腹腔内圧を維持できる筋持久力や高い体幹伸展筋力が必要な際に腹腔内圧を高めるなどコントロールする能力が重要になると考える。本研究では腹腔内圧が体幹安定性を補助し,少ない筋活動量で姿勢を維持できることがシミュレーションにより導き出された。【理学療法学研究としての意義】腹横筋や横隔膜,骨盤底筋など腹圧をコントロールするトレーニングやコルセットの有用性が示された。日常生活上で,腹腔内圧の維持は重要な要素を占めることがシミュレーションにより算出された。
著者
埴岡 大輝 竹林 崇 竹内 健太 島田 眞一
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.333-340, 2020-06-15 (Released:2020-06-15)
参考文献数
25

Mirror Therapy(以下,MT)は,脳卒中後の上肢機能障害に対してエビデンスが示されてきた治療である.今回我々は,脳卒中による重度の上肢機能障害に対して,エビデンスが確立されている電気刺激療法やロボット療法などを複合的に実施したが,手指の随意伸展運動が全く出現しない症例を経験した.その症例に対して,回復期後期にMTを実施した結果,示指の随意伸展運動の改善を認め,麻痺手単独での課題指向型練習が可能となり,生活の一部で麻痺手を補助的に使用することが可能となった.MTの回復メカニズムに未だ不明な点はあるが,重度上肢機能障害に対するMTを併用した複合療法は,上肢機能の改善の一手段となる可能性がある.
著者
菊地 博 川崎 聡 中山 均 齋藤 徳子 島田 久基 宮崎 滋 酒井 信治 鈴木 正司
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.461-466, 2010-05-28 (Released:2010-06-22)
参考文献数
15
被引用文献数
1

ノイラミニダーゼ阻害薬であるオセルタミビルは,インフルエンザAおよびB感染症の治療,予防に有効な薬剤である.慢性維持透析患者に対する,治療,予防に関する報告は少なく,その推奨量は決定されていない.2007年2月19日~20日,火木土昼に透析を受けている患者9人のインフルエンザA発症を確認した.発症患者の病床は集積しており,施設内感染が強く疑われた.透析患者は感染のリスク,重症化のリスクが高いと考えられ,感染の拡大を防ぐため,オセルタミビルの治療投与のほか,予防投与も行った.385名の透析患者に,十分なインフォームドコンセントを行い,同意が得られた患者にオセルタミビル75 mg透析後1回経口投与を行った.アンケート等の協力が得られた339名を調査対象患者とした.9人が治療内服,299名が予防内服を行い,31名が内服しなかった.治療内服後,全員が速やかに解熱し,重症化例を生じなかった.予防内服者には,インフルエンザ感染を生じなかったが,非予防内服者に2名の感染を認めた.この2名も同様の内服により,速やかに解熱,軽快した.内服者において,報告されている臨床治験時にくらべ,消化器症状の発症率が低かったが,不眠を訴える割合が多かった.また,内服者は非内服者にくらべ,臨床検査値異常は多くなかった.血液透析患者におけるオセルタミビル75 mg透析後1回投与は,健常者の通常量投与にくらべ,血中濃度が高値となると報告されている.過量投与による副作用の報告はなく,また,今回の透析患者339名の検討でも,安全性には概ね問題がないと考えられた.予防投与は有効で,当施設におけるインフルエンザAアウトブレイクを収束させた.