著者
高橋 達彦 平野 菅保
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.47, pp.111-112, 1993-09-27

1変数の4次方程式の解を求める場合、一般的には、ニュートン法等による反復解法や、直接解法としては、フェラリ法(Ferrari:1522-1565)が用いられることが多いが、反復解法よりも、直接解法の方が都合の良いことが多い。その理由としては、次のようなことが挙げられる。(1)直接解法の方が、経験的なことであるが、反復解法よりも演算回数が少ない。(2)計算時間の予想、すなわち、計算機使用費用の見積もりが容易である。4次方程式の解法であるフェラリ法では、3次の係数を零にする座標変換を行うので、それによる情報落ちによって、4次方程式に含まれる4つの解の中で絶対値の小さい解は精度が悪くなるという問題がある。ここで述べる、ブラウン法は座標変換を行わず、4次式を2つの2次式の積に直接変形するアルゴリズムである。現在、用いられているブラウン法では、実際に有限桁で解を求めると、絶対値が桁違いに異なる解を持つ場合には、絶対値の小さな解は、計算途中における桁落ちの誤差によって、相対誤差が大きく入り、正確な値は求められない。今回、演算によって桁落ちする計算式を桁落ちの起こらない計算式に変更することによって、絶対値の小さな解も、与えられた係数の精度より当然得られる精度で求めることができた。
著者
平野 裕子 小川 玲子 川口 貞親 大野 俊 大野 俊
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

2008年より日本インドネシア経済連携協定(以下「JIEPA」)に基づき、インドネシア人看護師らが来日したのを皮切りに、2009年からは、日本フィリピン経済連携協定(以下「JPEPA」)に基づくフィリピン人看護師らが来日した。本制度における外国人看護師の導入は、国が公的な形で導入した最初の医療福祉専門職の受入れにあたり、今後の日本の受入れ態勢を整備すると同時に、国際化社会における看護師の移住の観点から起こりうる様々な問題を抱えていた。本研究では、JIEPA,JPEPA制度に基づく外国人看護師の移住のパターンの比較を行う。本研究の研究成果の概要は以下のとおりである。1.JIEPA、JPEPAでは、看護師の受入れスキームは一部を除き、ほぼ共通していたが、実際に来日する看護師たちの社会的人口学的特徴及び来日動機は、インドネシア人、フィリピン人の間でかなり異なっていた。2.看護師の国籍によってかなり特徴は見られたにもかかわらず、日本の病院側は、「学習意欲がある者」「患者に対する接遇態度がよい者」を高く評価する傾向があり、その傾向には国籍別に差は見られなかった。3.病院側は、外国人看護師を受入れた後に職場が活性化したことを高く評価しており、その傾向には、受入れた看護師の国籍別に差は見られなかった。
著者
富山 明男 平野 雅司 松田 隆男 坂口 忠司
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. B編 (ISSN:03875016)
巻号頁・発行日
vol.58, no.551, pp.2177-2183, 1992-07-25
被引用文献数
1

Computational time for numerical simulation of transient incompressible viscous flow is governed by numerical methods to solve the Poisson equation of the pressure. In order to improve the computational efficiency of the SOR method, a mathematical analysis was conducted in the present study to derive the spectral radius, i. e., the maximum modulus of the eigenvalues of the iteration matrix for a discrete Poisson equation in staggered mesh system. The derived spectral radii for the point, line and area Jacobi iteration matrices are applicable to the Dirichlet, the mixed boundaryvalue and the Neumann problems in an n-dimensional rectangular region. The validity of the optimum relaxation parameter of the SOR method, which was calculated by the derived spectral radii, was confirmed by numerical experiments. Furthermore, a simple estimation method of the optimum relaxation parameter for the non-rectangular region was presented for transient flow analyses.
著者
永原 陽子 鈴木 茂 舩田クラーセン さやか 清水 正義 平野 千果子 中野 聡 浜 忠雄
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、「植民地責任」という従来の歴史学になかった概念を試論的に提示し、脱植民地化研究におけるその可能性を探った。「植民地責任」論は、かつて植民地支配を受けた地域の人々から近年になって出されている、植民地支配にかかわって生じた大規模暴力に対する謝罪や補償への要求等の動きを、歴史学の問題として受け止めたものである。そこでは、植民地体制下、あるいは植民地解放戦争などの中でおこった大量虐殺等の大規模暴力が、「戦争責任」論において深化・発展させられてきた「人道に対する罪」として扱われている。そのような趣旨の訴訟等を比較検討した結果、植民地支配の歴史をめぐって、主体に解消されない、「個人」や「民族」主体、その他様々なアクターが形勢してきた新たな歴史認識を見て取ることができた。植民地主義の歴史にかんするこうした新たな歴史認識は、植民地支配の直接の前史としての奴隷貿易・奴隷制にも及ぶものである。こうした歴史認識・歴史意識の変化は、政治的独立とは別の意味での「脱植民地化」現象ととらえることができる。このことから、本研究では、「植民地責任」論を「脱植民地化」研究を主体論的にとらえるための方法と位置づけた。植民地体制下の大規模暴力の少なくない部分は、「人道に対する罪」に代表される、「戦争責任」論の論理によってとらえることが可能である。しかし、そのような法的議論が対象とすることのできない歴史的現象、また「罪」の指標には該当しない、日常化した植民地体制の問題も、植民地支配を経験した人々の生にとってはきわめて重要なことであり、本研究は、「平時」と「戦時」の連続性の中において大規模暴力を理解し、それを通じて、脱植民地化を16世紀以降の長い世界史の中でとらえ直すための方法として「植民地責任」論を提示し、その有効性を確認した。
著者
平野 篤 上村 圭右 内藤 正雄
出版者
日本信頼性学会
雑誌
信頼性シンポジウム発表報文集
巻号頁・発行日
vol.2010, no.18, pp.33-34, 2010-05-28

防衛省では、防衛装備品を取得するためのコストを量産単価だけでなく、構想、開発、量産、運用・維持、廃棄までの過程(ライフサイクル)に必要な総経費として、ライフサイクルコスト(以下、「LCC」という。)管理を行うことで、開発や量産への着手時の結節点において、費用(LCC)対効果の判断を踏まえた意思決定が可能になると考えている。防衛省では、平成20年3月に「総合取得改革推進プロジェクトチーム報告書」を作成し、現状の課題、体制整備、統一的なLCCの算定方法の確立、LCC管理の試行及び人材育成の検討結果が述べられた。その過程において、平成20年度より、防衛省の調達機関である装備施設本部においてLCC算定要領を作成し、航空機(戦闘機(図1)、哨戒機)を対象としたLCC年次報告書を提出した。その後、対象を航空機以外にも拡大して平成21年度の報告書にまとめている。さらに、平成21年度には、装備施設本部内にライフサイクルコスト管理室が9名体制で発足し、防衛省内におけるLCC管理業務を行なっている。本内容は、LCC管理室で作成した、LCC算定要領の概要及びLCC管理年次報告書について報告する。
著者
平野 勝也
出版者
東北大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1998

平成11年度は,昨年度の,店舗単位でのイメージ分析の街路単位への拡張を行った.まず特徴的な街並みを含むように,東京を中心に実際の11街路19区間について調査を行い,実際の街並み写真及び地図等の基礎資料収集を行った.街路の景観特性は、店舗のパターン認識の集積であると捉え,店舗のイメージから,街路のイメージを説明する論理的枠組みの整理を行った.即ち,店舗パタンにはイメージの代表値があり,その代表値を昨年度の成果である店舗パタンごとに店舗イメージ平面の重心として算出し,これに基づき,実際の街並みのイメージ指標を,店舗軒数による重み付き平均及び分散を,街並みイメージ計量手法として提案した.これに基づき調査した19区間について,街並みイメージの計量を行った.一方,昨年度の店舗と同様,街並みイメージを,被験者に分類試験,SD法心理実験を行うことを通じて,街並みイメージの実験的把握を行った.その結果と,街並みイメージを計量手法による結果を比較検討を行ったところ,極めて良好に,双方が一致することが確認された.これは即ち,提案した街並みイメージ計量手法の有効性の証左であると考えられる.このことにより,概ね街路単位においても,店舗同様,店外論理記号猥雑さを演出し,店外直感記号がそれを補完している点,店外直感記号及び店内直感記号の多さが親近感を演出している点,論理記号の多さが疎外感を演出していること等が明らかとなった.
著者
渡辺 美郎 平野 敏明
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.A45-A55, 2011 (Released:2011-09-11)
参考文献数
16
被引用文献数
1

繁殖期と冬期のヒクイナ Porzana fusca の生息個体数を調査するために,兵庫県神戸市付近の約43.75km2内の河川や溜池,農地で2009年1月から6月に録音再生法をもちいて調査を行なった.冬期には, 190地点で鳴き声再生した結果,合計76羽(1月)と66羽(2月)のヒクイナが記録された.環境区分ごとの1月と2月の調査地点あたりの個体数は,中規模河川(N=55)が0.62羽と0.62羽,小規模河川(N=49)が0.18羽と0.29羽,池(N=78)が0.41羽と0.23羽,農地(N=7)が0.14羽と0.29羽であった.一方,繁殖期には,合計169地点で調査を行ない,合計81羽(5月)と45羽(6月)が記録された.環境区分ごとの5月と6月の調査地点あたりの個体数は,中規模河川(N=48)が0.79羽と0.46羽,小規模河川(N=49)が0.31羽と0.18羽,池(N=65)が0.38羽と0.17羽,農地(N=7)が0.38羽と0.38羽であった.農地を除く3環境区分の個体数は,冬期および繁殖期とも有意に異なっており,中規模河川がもっとも多く記録された.池の調査地における生息の有無と池の面積および池内の湿地性植物の面積を比較した.ヒクイナの生息が確認された池の面積(±SD)は,2.87±3.62ha(冬期)と2.69±3.20ha(繁殖期),生息が確認されなかった池は2.89±2.72ha(冬期)と3.16±3.16ha(繁殖期)で,両者の間には有意な違いは得られなかった.しかし,ヒクイナが生息していた池の湿地性植物の面積は,0.27±0.21ha(冬期)と0.28±0.22ha(繁殖期)で,生息していなかった池より湿地性植物の面積が有意に広かった.このことから,ヒクイナの生息には湿地性植物の面積が重要であることがわかった.調査地で,越冬期と繁殖期に70羽以上のヒクイナが記録されたのは,調査地には溜池が多くあることで,良好な生息環境が多く存在することが一因になっていると考えられる.
著者
平野 浩
出版者
明治学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究は、日本において1990年代以降に生じた大きな政治的・経済的変化が、有権者の投票行動、特に経済投票のメカニズムにどのような影響を与えたかを明らかにすることを目的としたものである。 1992年以後の6回の国政選挙時に東京都の有権者を対象として行われたサンプル調査から得られたデータの分析により、以下のような知見が得られた。第一に、「景気の悪い時こそ自民党」といった政策領域指向(policy-oriented)の経済投票に代わって、経済状況が良くなれば与党に投票し悪くなれば野党に投票するといった現職指向(incumbency-oriented)の経済投票がより優勢になってきている。第二に、国レベルの経済状況の変化が個人の暮らしに与える影響が強く意識されるようになった結果、国全体の経済状況に関する認識が与党のパフォーマンスに対する評価に与える影響が増大し、個人指向(pocketbook)の経済投票から社会指向(sociotropic)の経済投票へと、経済投票のメカニズムが変化しつつある。第三に、経済投票の因果的なメカニズムとして、(1)まず自民党に対する支持や経済状況に関する認識が自民党の業績に対する評価に影響を与え、(2)次いでこれらの要因が自民党に対する今後の期待に結びつき、(3)最後にこれらの要因が自民党への投票に影響を及ぼす、という流れが存在する。このうち自民党への期待に対してはより長期的な要因である政党支持の影響に代わって、より短期的な要因である自民党への業績評価の影響が強まりつつある。他方、自民党への投票に対しては、過去の業績評価に代わって将来に向けての期待の効果が強まりつつある。第四に、経済的な政策争点に対する態度、集団的利益に対する同一視、そして特に地域や仕事に対する利益感覚もまた、広義の経済投票を形成する要素として自民党に対する投票に影響を及ぼしている。
著者
遠西 昭壽 川上 昭吾 大高 泉 吉田 淳 平野 俊英 楠山 研 森本 弘一 磯崎 哲夫 橋本 健夫 劉 卿美 遠西 昭壽
出版者
愛知教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

アジアの中で発展が急な韓国、中国、台湾、シンガポール4ヶ国、中国については教育特区の北京、上海、香港の理科教育の実態を調査した。アジア各国は例外なく理科教育の充実に努めている。特に、韓国では英才教育院、科学英才教育院において英才教育が進められていること、シンガポールでは2007年に「シンガポール大学附属理数高校」(National University of Singapore High School of Math and Science)、理数教育に特化した高校が開校していることが特記すべきことである。コンピュータ教育の充実も盛んに行われている。特に、シンガポールでは国が力を入れ、コンピュータはインターネット、電子黒板等多面的に利用されている。いじめがあるのは日本で、韓国では問題になりつつある。その他の国ではこの問題はない。3年間の本研究で、韓国、中国(北京、上海、香港)、台湾、シンガポールの研究者との交流を深めることができ、国際シンポジウムを開催することもできて、今後の研究交流の基盤が整備されたことは、大きな成果であった。
著者
平野 高司 文字 信貴 鱧谷 憲 町村 尚 高木 健太郎 岡田 啓嗣
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

北海道苫小牧市のカラマツ林を対象とし,現地での連続観測およびデータの解析を行なった。2001〜2003年の3年間の結果をまとめた結果,CO_2交換量の年積算値の平均(±標準偏差)は,純生態系生産量(NEP),総生態系生産量(GEP),生態系呼吸量(RE)でそれぞれ499±26,1595±65,1095±52gCm^<-2>y^<-1>と推定された。また,REがGEPに占める割合は67〜70%であった。このように,CO_2交換量の年積算値における年次差は比較的小さかったが,季節変化には大きな違いが認められた。特徴的なのは,2002年のGEPであった。この年は冬から春にかけて気温が高かったため,融雪と開葉が他の年より2週間ほど早く,光合成も早く始まった。しかし,2002年の夏期はP_<max>が小さく,PPFDも低かったため,GEPが他の年より小さくなった。結果として,成長期間が長いにもかかわらず,2002年のGEPは他の年より小さくなった。2002年におけるP_<max>低下の原因として,多雨による光合成酵素(Rubisco)の損失や早期の開葉による窒素利用効率の低下が考えられた。なお,2003年7月の気温は他の年より2〜3℃低かったが,GEPが減少することはなかった。低温は大気飽差を低下させ,結果としてGEPを増大させた。成長期間の土壌水分は0.2〜0.4m^3m^<-3>で推移したが,土壌水分の変化がGEPやREに大きな影響を与えることはなかった。カラマツ人工林は,北海道や世界の他の森林と比べて高い炭素固定能力を示した。これは,冷温・湿潤・多雨な気候により,カラマツの持つ高い生産能力が維持されるためであることが示唆された。
著者
平岡 昌和 古川 哲史 平野 裕司
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

HERG Kチャネルは心筋の再分極に重要な役割を果たすIkr電流をコードし、また最近QT延長症候群の一つ・LQT2の原因遺伝子であることが判明した。さらに、多くの薬物によっても抑制されることから薬物誘発性QT延長の原因ともなりやすい。そこで、我が国のLQT2家系に認められたHERG Kチャネル遺伝子の機能解析を中心にその抑制機序を検討した。T474I(I-II linker),A614V,V630L(チャネル外孔部)について卵母細胞にて発現実験を行うと、変異種単独では電流を発現せず、野生型との共発現でその機能を抑制するdominant negative suppression(DNS)を認め、A614VとV630Lではさらに不活性化の促進から強い電流抑制を呈した。電位センサーに位置するS4のR534C変異では、単独では小さな電流しか発現しなかったが、野生型との共発現ではDNSを示さなかった。発現電流では活性化曲線のシフトが見られ、S4が電位センサーとして働くことを始めて明らかにした。この変位での電流抑制機序は脱活性化の促進のみでQT延長を来す十分な説明とはならず、未知の抑制機序の関与が考えられたが、調節因子との会合不全を示す所見は得られなかった。HERGのC端側のS818L変異は、単独では電流を発現せず、野生型と変異型cRNAを1:1で混合注入による共発現では電流を発現し、しかもDNSを示さなかった。ところが、変異種を増量した割合で共発現させると、明らかなをDNSが見られ、電流活性化曲線はマイナス側にシフトし、活性化・脱活性化が促進された。これらの結果から、S818L変異は野生型と会合して膜に到達して機能的なチャネルを形成すること、HERGのC端側が一部電流の活性化にも関与しうることが示唆された。このようにHERGの変異部位によって異なる電流抑制機序を発揮し、それはこのチャネルの機能-構造相関にも有意義な情報をもたらした。これいがいに、アシドージスやエストロゲン、抗不整脈薬のシベンゾリンによるこのチャネル抑制機序を明らかにした。
著者
平野 薫
出版者
昭和大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

嚥下運動(飲み込むこと)時の大脳皮質の脳血流変化について、嚥下障害の改善に有効とされる嚥下法施行時および嚥下誘発手技施行時の大脳皮質の脳血流変化について調査を行い、それぞれの脳活動部位の傾向が明らかとなった。また、側頭筋の受動的・能動的筋活動が近赤外線分光法データへ与える影響について検討し、いくつかの知見を得た。