著者
平野 敏明
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.A25-A32, 2005 (Released:2005-11-10)
参考文献数
8

2004年 4月から 7月に栃木県宇都宮市において,セキレイ属 3種(セグロセキレイ,ハクセキレイ,キセキレイ)の生息分布と生息環境を比較するために,1984年に行なわれた調査(平野 1985)と同じ場所,同じ方法で調査を行なった.調査地は1984年と同様に500×500mの方形区545個に分けられた.各方形区を優占する環境をもとに建物密集地,住宅地,農耕地,大河川,工業団地,丘陵の 6つに分けると,1984年と比較して建物密集地と住宅地の方形区は増加したが,農耕地と丘陵の方形区は減少していた.セグロセキレイの生息分布とその環境は,1984年と比較して,有意な変化はみられなかった.しかし,ハクセキレイは生息分布と生息環境ともに著しく変化した.すなわち,2004年には1984年にほとんど記録されなかった農耕地や大河川に分布を拡大していた.そのため,セグロセキレイとハクセキレイのあいだに,生息環境に有意な違いはなくなった.このようなハクセキレイの生息分布の変化の原因の 1つとして,調査地の都市化による営巣場所の増加が考えられた.なお,キセキレイでは,生息環境に変化はなかったが,分布は有意に縮小した.
著者
東 哲司 平野 達也 笹山 大輔
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

アマゾン野生イネ種Oryza grandiglumis の2つの系統は,部分的深水で浮稲と同様に節間の伸長を示し,冠水状態では,冠水耐性イネ品種と同様に成長を停止し,気中に戻すと正常に成長した。これらの系統において,SUBMERGENCE1(SUB1A)遺伝子とSNORKEL (SK)遺伝子は共に検出できなかった。これらの結果は,O. grandiglumis のこれらの系統は,SUB1AとSK遺伝子が関与しないメカニズムによって相反する2つの成適応反応を有することを示す。これらの系統の深水下での節間の伸長促進にはエチレンではなく過湿度環境が引き金となっている。
著者
佐藤 俊 平野 聡 太田 至 河合 香吏 湖中 真哉 岡倉 登志
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

地域間の生態的,政治的,経済的,社会的,軍事的な諸要素の相互浸透的な相互作用は地域連環と定義され,在地の遊牧民が地域社会を自ら変容させつつ外的要因を選択的に取り込み,社会の持続性を維持するシステムを生活安全網と定義される。後者の概念はすぐれて地域社会に根ざすものであるが,複雑な地域連環を視野に入れてはじめて理解できるものである。1.遊牧生態系のGIS/RSによる解析:SRTM成果を標高値,DEMから計算された水系網の評価によって,基盤地図データの整備,地理情報の視覚化,自然環境のモデル化,遊牧民研究への応用が可能であることが検証された。2.地域社会の生活質リスクの解明:個々の遊牧社会が直面している問題のうち,家畜の略奪,市場経済化による社会的平準化機構の脆弱化,貧富の格差増幅による地域社会の変質,町場形成による牧野生態の劣化,就学と就労の増加による牧人不足と家計の多角化による家族構造の変化,伝統的政治体系と儀礼体系の変質などが,実証的資料によって明かにされた。3.地方的社会経済の広域的枠組みとその歴史的背景の解明:エチオピアでは,経済自由化によっても,社会的紐帯に制約された皮流通経路は開放されないことが判明した。ジブチのFRUD(ジブチ民族統一回復戦線)結成の背景,ならびに13〜15世紀のスルタン国家アファルに由来するアファル人のアイデンティティが文番資料によって明らかにされた。ケニアの政治的動向を,大統領の権限縮小,地方分権化をめざす現行憲法の見直し問題の経緯,国民投票(2005年11月実施)の選挙区党派別分布,憲法見直し問題とNARCの本格的分裂の3点について分析した結果,政党組織が意見集約機能を喪失して地域化していく過程が明らかとなった。今後の課題として,地域社会の生活安全網と地域連環を統合的に理解できるモデルを精緻化する作業が残されている。
著者
岡崎 隆 平野 雅宣 高柳 滋 田口 哲 高久 元
出版者
北海道教育大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

金星の太陽面通過周期の「規則性」を考える-数理融合教材の試み;ハレーは金星の太陽面通過を観測することによって地球-太陽間距離の決定が可能であることを示した。この現象は8年の短周期と百年を超す長周期を繰り返すという特異な周期性をもっておりこの現象観測の科学史上の意義とともに、理科教育の題材として興味深い内容を持つ。金星と地球の公転周期が近似的に整数比(8対13)になっていることおよびこの整数比からの僅かなずれが特異な周期性の要因である。コンピューターシミュレーションを活用しながら、周期運動の合成、惑星現象の立体幾何学的考察、有理数がもつ意味を自然現象の中で明らかにする数理融合教材として検討した。電子天秤による液体の表面張力の測定-表面張力の分子論的理解のための実験教材;「表面張力」は日常の様々な場面で見かける液体表面の振る舞いを説明する言葉として用いられる。「液体(水)=引力で引き合う分子集団」として表面張力の正体を明らかにすることを目標とした測定実験を考案しその指導法を検討した。表面張力測定法として「ジョリーのバネばかり」が知られているが、この原理に従い電子天秤を利用することによって微小な表面張力を容易に測定することができる。水の表面張力の温度依存、エタノール、オリーブ油の表面張力との比較を測定結果から考察し、液体の物性(融点、沸点、比熱)を考え合わせて物質の分子論的理解を促す教材実験とした。教材実験の解説・演示映像の編集;これまでに検討、作成した以下の理科実験教材の解説・演示映像の編集を行った。創造性を育む理科実験教材として、教育現場での活用・普及を図っている。1)ブラウン運動の観察とアボガドロ数の導出-分子運動を見る、2)電子天秤による磁気力の測定-遠隔力の規則性を測る、3)ブランコの運動とパラメーター励振、4)断熱蒸発による液体の温度低下の観察・計測-分子が運ぶエネルギー、5)金星の太陽面通過周期の「規則性」を考える-数理融合教材の試み、6)電子天秤による液体の表面張力の測定-表面張力の分子論的理解のための実験教材
著者
平野 牧人
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は種々の神経変性疾患原因蛋白の核内輸送に関して、運動ニューロン病様Triple A症候群(AAAS)の原因である核膜孔蛋白アラジンに依存性であるかを検討し、本疾患で障害を受けやすい古典的な核局在シグナル(NLS)以外の輸送シグナル同定と輸送機序の解明である。本研究により小脳失調原因蛋白アプラタキシンのみAAASの輸送障害を受け、他の原因蛋白は障害を受けないことが判明した。また、核内輸送障害を受けないDNA修復蛋白であるXRCC1において、輸送障害を改善するために重要なのは、古典的NLS(239-266残基)の下流267-276残基であることを同定した。この部位を含む新規NLS(239-276残基)38アミノ酸配列をminimum essential sequence of stretched nuclear localization signal(mstNLS)と名付けた。mstNLSを融合すると、輸送障害を受けていた小脳失調原因蛋白アプラタキシンはAAAS患者細胞の核内に効率よく輸送された。さらに、mstNLSは酸化ストレス下の正常細胞においても、強力な核局在シグナルとなることが証明された。以上から本研究成果は、AAASの病態機序改善のみならず、核内輸送研究に貢献しうると考えられる。
著者
葛西 宏 河井 一明 平野 雄 紙谷 浩之
出版者
産業医科大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2000

活性酸素によるDNA損傷とその防御に関して下記のような、大腸菌を用いた変異誘発に関する基礎的研究、酵素基質特異性に関する生化学的研究、また発がんリスク評価に関連して、動物臓器DNA、ヒト試料の酸化ストレスのマーカーの分析などを行った。1)リボヌクレオチド2-OH-ATPはヒトMTH1蛋白により効率よく分解され様々な酸化損傷ヌクレオチドの中で最も低いKm値(最も高い親和性)を示した。2)アゾ色素系肝発がん物質3'-methyl-4-dimethylaminoazobenzenの投与によりマウスおよびラットの肝臓中の8-OH-dGおよびその修復活性が高まったことから肝発がんにおける活性酸素の関与が示された。3)ヒトMTH1タンパク質により次亜塩素酸DNA付加体8-クロル-dGTP(8-Cl-dGTP)が効率良く分解された。4)ヒト培養細胞に対しクロシドライトアスベストを作用させたところ、8-OH-Guaレベルおよびその修復活性、hOGG1およびhMTH1のmRNA発現がすべて上昇した。5)大腸菌のOrf135タンパクはリボヌクレオチド5-OH-CTPを効率良く分解した。6)ヒト培養細胞に対し発癌性砒素化合物で処理した後、酸化ストレスマーカーを調べた。DNA中8-OH-dGの上昇、修復活性の低下、OGG1mRNAおよびタンパク発現の低下が認められた。7)尿中8-ヒドロキシデオキシグアノシンの高精度自動分析装置を開発した。8)アゾ色素3'-メチル-4-ジメチルアミノアゾベンゼン(3'-MeDAB)投与マウス肝において低分子OGG1分子が検出された。9)DNA修復酵素OGG1はカスパーゼ依存的アポトーシスにより断片化する事を見い出した。
著者
平野 孝一 足立 吉數 Bintvihok Anong 石橋 幸子 熊澤 教眞
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.567-569, 1992-06-15

肝臓からの効果的なアフラトキシンの抽出及びクリンアップの方法について検討した. 先ず, アフラトキシンを破砕した肝臓から遊離させるために, プロテイナーゼKで酵素処理を行った. その試料からの回収試験では, 鶏の肝臓の場合, 高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で108.1±4.9%(平均値±標準誤差, n=3), 酵素免疫測定法(ELISA)で, 122.0±18.3%(n=3)であった. 豚の肝臓では, HPLCで111.8±5.2%(n=3)・ELISAで120.3±9.1%(n=3)であった. さらに, 幼雛へのアフラトキシンB_1(AFB_1)の投与試験を実施し, その肝臓からの回収試験を行ったところ, 投与後3時間目に高いAFB_1値が得られ, その値は時間とともに, すみやかに低下した. このことから, アフラトキシン汚染飼料を摂取した鶏においては, 少なくともアフラトキシン摂取後24時間以内ならば肝臓から検出可能との知見が得られた. この抽出及びクリンアップの方法を用いて, 血漿からアフラトキシンが検出された野外飼育採卵鶏の肝臓36検体と屠畜場から入手した豚の肝臓6検体及びそれらの豚が食べていた飼料6検体からアフラトキシンの検出を試みたが, いずれの試料からもHPLC及びELISAによってアフラトキシンは検出されなかった.
著者
平野 廣美 尾内 理紀夫
雑誌
研究報告グラフィクスとCAD(CG)
巻号頁・発行日
vol.2012-CG-146, no.19, pp.1-6, 2012-01-31

競馬中継または競馬動画中の特定の騎手を追跡する手法については,現在,ほとんど報告が無い.一般的なオブジェクト追跡については各種手法が報告されているが,競馬シーン独自の条件から,一般的なオブジェクト追跡手法を適用することには困難が伴う.本論文では,騎手のヘルメットおよび勝負服の色の組合せがユニークであることを利用して,数組の少数のパーティクルを用いる手法を報告する.パーティクルを用いることにおいては,対象のオブジェクト上に位置するように,背景差分の情報を用いて制限をかけている.これにより,パーティクル数を少数に抑えることができ,リアルタイムでの追跡も可能にしている.
著者
平野 吉直 小林 祥之 大日方 彩香
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究の目的は、 中1ギャップ対策としての野外教育活動の成果を明らかにすることである。本研究では、野外教育プログラムを企画し、3中学校を対象にプログラムを実施した。また、中1ギャップを乗り越える力を測定する調査用紙を作成し、プログラムの実施前後の調査をとおしてプログラムの成果を分析した。さらに、プログラム直後に実施した生徒へのふりかえりシートの内容と、研究対象校の引率教諭へのインタビュー調査を通して、プログラムの成果を分析した。
著者
中田 行重 村山 正治 下川 昭夫 平野 直己
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は個人心理臨床では十分に埋め合わせられない今日の社会病理への対応として、地域への心理的援助の枠組みを探った。研究の方法論として、地域のフリースペースやグループアプローチ、スクールカウンセリングなどにおける地域臨床実践およびインタビュー調査、地域文化・風土のローカルな視点に関する文献研究が行われた。研究により明確になったのは大きく次の4点である。第1点は西欧で始まった"コミュニティアプローチ"は日本においては、日本人の心理的風土に合わせる必要があるということである。例えば日本では子育て支援とは、コミュニケーション支援であることが明らかになったのはその1例である。第2点は、臨床心理学は西欧社会から生まれているが、自己と関係性、心理療法論において日本では西欧とは深い面で異なっていることが明らかになった。第3点はコミュニティアプローチのリーダーや心理臨床家は、個人療法家と異なり、水平アプローチという対象間の関係性を活性化する触媒として非構造化された環境における実践を行う資質が必要であることが明らかになった。第4点は日本は対人支援のためのネットワーキングとして西欧と異なるものが必要であり、それはスクールカウンセリング事業などで現れていることが明らかになった。このようにして明らかになったことは、それぞれ本課題の研究者達の日々の臨床実践で活かされており、更なる実践・研究の継続を予定している。
著者
三井 計夫 三井 豊穂 平野 孝雄
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地研究会誌 (ISSN:04475941)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.104-109, 1960-01-15

新規の草地造成において,先駆作物としてマメ科の野草類と一般の作物との比較で,跡作牧草生育への影響を試験した。(1)前作としての収量は,生育期間の長い場合,カワラケツメイ,ツルマメ,生育期間の短かい場合,青刈大豆,青刈ソバが多収であつた。(2)跡作牧草への影響は前作によつて減収をしめすものはなく,特にツルマメ,青刈大豆は,イネ科牧草の増収がいちじるしい。(3)マメ科野草類の跡作マメ科牧草,特にアカクローバーには負の影響がみられたが,ツルマメ,青刈大豆は影響が極めてわずかであつた。(4)青刈類前作の敷込区は刈取持出区よりも跡作牧草が増収する。しかし刈取持出区の前作青刈類収量と跡作牧草の収量合計よりは下廻った。
著者
平野 雄一 伊藤恵
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告ソフトウェア工学(SE) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.119, pp.93-100, 2005-11-29

近年,ソフトウェア開発は開発対象の分野にかかわらず,シズテムの大規模化と複雑化により難しいものとなってきている.そのような現状を解決するための一手法として,現在のプログラムコード中心のソフトウェアの記述に代わり,直感的に記述・理解のたやすい状態遷移図からプログラムコードを生成することを試みた.ここでは状態遷移図としてUML2.0で定義されているステートマシン図を用い,ステートマシン図の状態(State)と遷移(transition)にネイティブな実行コードを埋め込んでいくことで,ステートマシン図記述からネイティブなプログラムコードの生成を行っている.これによりシステムの問題領域を状態遷移図で表現される「制御」と,図上に埋め込まれる実行コードで表現される「動作」に分割することにより,ソフトウェア開発の効率化を試みている.評価のため,ステートマシン図からプログラムコードの生成を行うグループと,手動でプログラムコードを記述するグループに分け,比較実験を行い,今後の課題を検討する.We propose an automated program generation from UML 2.0 statemachines while more efficient of the software developing. It generates executable native program codes from the Statemachines which native codes is embedded in its states and transitions. It divides the problem area of the development software into the "control" on the statemachine and the "operation" on the native codes and efficient of the developmeat.