著者
金山 彰宏 小曽根 惠子
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー学会誌 (ISSN:09167382)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.81-85, 2002-09-30 (Released:2019-07-11)
参考文献数
6
被引用文献数
1

越冬から目覚めたコガタスズメバチの女王を用いて,古い巣盤への産卵誘引とコロニー形成に向けての室内飼育を行った.その結果,女王蜂による古い巣盤への産卵が確認された.約2ヶ月の室内飼育後,屋外に移設した巣は,その後,自然環境の巣と変わらぬコロニーを形成した.屋外に移設後,ビデオカメラを用いて,働き蜂の日周活動を観察した.帰巣働き蜂による餌の持ち帰り状況から,一コロニーにおける捕獲昆虫類の個体数を計算すると,年間約20,000個体と推計された.
著者
小谷 紗稀 深沢 良輔 武澤 秀理 馬場 正道 曽根 淳 藤井 明弘
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.194-199, 2021 (Released:2021-03-25)
参考文献数
10
被引用文献数
2

症例は70代の男性3例.主訴は全例歩行障害だった.全例に縮瞳と四肢・体幹失調を認め,mini-mental state examinationは2例,frontal assessment batteryは全例で低下していた.頭部MRIで白質脳症所見と小脳萎縮,拡散強調画像で皮髄境界の高信号を認めたが,2例は経過観察となっていた.全例,皮膚生検で抗ユビキチン抗体と抗p62抗体陽性の核内封入体,遺伝子検査でNOTCH2NLCのCGGリピート伸長を認め,神経核内封入体病と診断した.本症は物忘れを主訴とすることが多いが,失調による歩行障害で受診することもあり,特徴的な頭部MRI所見を手掛かりに皮膚生検や遺伝子診断で精査を進めることが重要である.
著者
小田 亮介 藤倉 舞 林 貴士 松谷 学 曽根 淳 下濱 俊
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001609, (Released:2021-10-16)
参考文献数
22

症例は70歳女性.来院6年前にもの忘れを発症した.認知機能障害,神経因性膀胱,便秘症,繰り返す嘔吐発作が認められた.当科初診時には肝内門脈体循環シャントによる肝性脳症を合併していた.頭部MRIでは皮髄境界や脳梁膨大部,両側中小脳脚にDWI高信号像が認められ,皮膚生検とNOTCH2NLC遺伝子検査の結果から神経核内封入体病(neuronal intranuclear inclusion disease,以下NIIDと略記)と診断した.過去10年の頭部MRIを後方視的に確認したところ,認知機能障害の出現に先行して異常信号が存在し,経時的に拡大していた.特徴的な皮髄境界病変だけではなく脳梁膨大部にも早期からDWI高信号像が認められることを念頭に置くことが,NIIDの早期診断に重要と考えられた.
著者
曽我 龍宇一 秋田 典子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.228-234, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
14
被引用文献数
1

本研究では、集約型都市構造を目指す自治体の大都市郊外の住宅団地に着目し、生活環境の実態を把握して定住意識を明らかにした上で、今後も住民が継続的に居住していくための方策の示唆を得ることを目的とする。対象地は立地適正化計画(案)において現状のまま街を維持していく方針が示されている八王子市高尾台地区である。現地踏査やヒアリング調査、住民意識調査を実施し、住宅団地の概況を踏まえながら住民が感じている「住宅団地の住みやすさ」と「転出意向」の背景を探り,住民の継続的な居住へ向けた方策を検討した。結果、利便性が低く都市計画において住環境の改善が見込まれない住宅団地においても、人々の繋がりや緑環境が良好であれば、住民は住みやすいと感じると言うことが示唆された。
著者
曽山 小織 吉田 和枝 米田 昌代
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.1_139-1_150, 2015

子育てする母親とそれを支援する祖父母との間には,子育て方法に関する世代間相違があると指摘されている。本研究の目的は,祖母の子育て経験と孫育てに対する意識との関連を明らかにすることである。調査方法は無記名自記式質問紙調査であった。妊婦の母親651名に調査票を配布して,有効回答数は180名であった。分析は単純集計とχ<sup>2</sup>検定を用いた。対象の平均年齢は57.1±5.5歳で,祖母の子育て経験と孫育てに対する意識との間に関連が認められたのは,おしゃぶりの使用,沐浴後の湯冷ましの使用,離乳食を大人が噛み砕いて子どもに与えること,果汁開始や断乳の時期,三歳児神話,または性別役割分業意識であった。赤ちゃんが泣きやまないときの粉ミルクの使用に対する意識と祖母の子育て経験との間には関連が認められなかったが,初孫か初孫以外かとの間には関連が認められ,孫の誕生が粉ミルク使用に対する意識を変化すると示唆される。
著者
曽良 一郎 福島 攝
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 : FOLIA PHARMACOLOGICA JAPONICA (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.128, no.1, pp.8-12, 2006-07-01
参考文献数
32
被引用文献数
4 2

注意欠陥・多動性障害(AD/HD:Attention Deficit/Hyperactivity Disorder)における治療薬として使用されているアンフェタミンなどの覚せい剤の作用メカニズムについては十分に解明されていないが,覚せい剤がドパミン(DA)やノルエピネフリン(NE)などの中枢性カテコールアミンを増やすことから,ADHDへの治療効果が中枢神経系におけるカテコールアミン神経伝達を介していることは明らかである.モノアミントランスポーターは主に神経終末の細胞膜上に位置し,細胞外に放出されたモノアミンを再取り込みすることによって細胞外濃度を調節している.ドパミントランスポーター(DAT)は覚せい剤の標的分子であり,ADHDとの関連が注目されている.野生型マウスに覚せい剤であるメチルフェニデートを投与すると運動量が増加するが,多動性を有しADHDの動物モデルと考えられているDAT欠損マウスでは,メチルフェニデート投与により運動量が低下する.野生型マウスではメチルフェニデート投与後に線条体で細胞外DA量が顕著に増加するのに対して,DAT欠損マウスでは変化がなく,これに対して前頭前野皮質では,野生型マウスでもDAT欠損マウスでもメチルフェニデートによる細胞外DA量の顕著な上昇が起こった.前頭前野皮質ではDA神経終末上のDATが少ないためにDAの再取り込みの役割をNETが肩代わりしていると考えられており,メチルフェニデートは前頭前野皮質のNETに作用して再取り込みを阻害するためにDAが上昇したと考えられた.筆者らは,この前頭前野皮質におけるDAの動態が,メチルフェニデートによるDAT欠損マウスの運動量低下作用に関与しているのではないかと考えている. 1937年に米国のCharles Bradley医師が多動を示す小児にアンフェタミンが鎮静効果を持つことを観察して以来,注意欠陥・多動性障害(AD/HD:Attention Deficit/Hyperactivity Disorder)におけるアンフェタミンなどの覚せい剤の中枢神経系への作用メカニズムについて数多くの研究がなされてきたが,未だ十分に解明されていない.覚せい剤がドパミン(DA)やノルエピネフリン(NE)などの中枢性カテコールアミンを増やすことから,ADHDへの治療効果が中枢神経系におけるカテコールアミン神経伝達を介していることは明らかである.健常人への覚せい剤の投与は興奮や過活動を引き起こすにもかかわらずADHD患者へは鎮静作用があることから,覚せい剤のADHDへの効果は「逆説的」と考えられている.本稿では覚せい剤の標的分子の一つであるDAトランスポーター(DAT)に関する最近の知見を解説するとともに,我々が作製したDAT欠損マウスをADHDの動物モデルとして紹介し,ADHDの病態メカニズム解明に関する近年の進展について述べる.<br>
著者
小木曽 加奈 金子 昌二
出版者
長野県短期大学
雑誌
長野県短期大学紀要 = Journal of Nagano Prefectural College (ISSN:02861178)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.13-19, 2015-02

Recently, damage to agriculture and forestry businesses due to wild birds and beasts is a serious situation in the mid-mountain areas such as Nagano Prefecture. Every year approximately 20 billion yen of loss occurs in Japan. Management of wild birds and beasts based on scientific data is necessary. Recently, wild animals are being examined as a promising resource for local development. In this study, we compared the smell of venison and beef to consider how venison compared to edible meat. Next, we considered whether the smell was improved by immersing venison in some seasonings. Sensory evaluation of grilled venison and beef resulted in the venison having a strong raw and bloody odor. As a result of smell component analysis, the main cause of the smell was 2,3-butanedione (diacetyl) and hexanal. As a result of having inspected the venison meat immersed in various seasonings, milk was shown to prevent the most smells. As results, we were able to elucidate a part of the cause of the unpleasant odor of the venison and we were able to prevent unpleasant odor of the venison with milk.
著者
若曽根 健治
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

ドイツ中世後期の騎士および市民のフェーデには同時代人の「はげしい情感」(ホイジンガ)の動きがあった。これは「名誉に敏感で傷つき」易いことと、表裏の関係にあった。暴力現象の背後には、名誉に拘泥し、身分に拘る、騎士や市民の繊細さが潜んでいた。他方で、フェーデには他の様々の問題が絡む。フェーデの考察は、中世ヨーロッパに関する1つの総合史的考察とならざるをえない。このことは、フェーデの1つの担い手であった都市ひとつをとってみても、よくわかる。都市を周域と切り離して隔離的に取り上げることは、できないのである。関係的状況の考察をもっと押し進めていかねばならない。日本中世との比較法社会史的考察も、中世ヨーロッパの法的制度の特質を浮き彫りにする。比較史的考察の必要性は今後高まろう。その場合類似だけに注目するのでなく、むしろ相違に目を向ける必要がある。これによって、本当の意味で類似性にも理解がいく。フェーデの現象には、蓄積された富に与かろうとする、騎士の志向が働いていた。この志向は、フェーデによって権利を主張し、暴力を正当化しようとしたところからわかる。他方で、騎士による権利主張の理由や正当化の根拠については、史料からは見えにくい。このことは、騎士の権利主張や権利正当化には、必ずしも十分な理由・根拠がなかったことを思わせる。市民には、富の形成・蓄積について実績があったが、騎士にはこれがない。じつは、このことを、誰よりも騎士自身がよく知っていたのではなかろうか。時代と共に、フェーデによって富の蓄積に関与しようとすることが、もはや意味をなさなくなる。このことに騎士は気づくのではないか。これは、上級権力者--領邦君主--によるフェーデ権の集中化・独占化と表裏の関係にある。時代は、こうして1つの変化を見せるのである。
著者
平良 知子 曽田 彩夏 坂口 翔一 石松 隆志 園田 昭彦 平山 英雄 成田 勇樹 門脇 大介 平田 純生
出版者
一般社団法人 日本腎臓病薬物療法学会
雑誌
日本腎臓病薬物療法学会誌 (ISSN:21870411)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.15-25, 2012 (Released:2018-04-02)
参考文献数
30

血液透析(HD)患者は、カリウム制限による水溶性ビタミン摂取不足、HDによる水溶性ビタミンの除去、酸化ストレス亢進に伴う抗酸化ビタミンの消費亢進などにより一部のビタミンが欠乏するという報告が散見される。そこで、HD患者に至適量のビタミン補給を目的としたチュアブル錠のマルチビタミンサプリメント「ネフビタンKD」(以下、KD-MV)が日本で初めて研究開発され、上市された。本研究ではKD-MV摂取の有用性及び安全性の評価を目的として検討を行った。 対象は維持透析療法を受けているHD患者83人で、二重盲検プラセボ対照無作為化クロスオーバー試験を1年間行った。クロスオーバーは半年経過後に実施し、A群はKD-MVを前半の半年間、B群は後半の半年間摂取した。調査項目は、腎疾患患者用QOL評価尺度であるKDQOL、酸化ストレス指標、その他臨床検査値及び血液生化学検査項目とし、安全性の評価は患者や医療者からの報告の有無で判断した。2ヶ月間の平均服薬率が75%未満、または採血ポイント欠落の患者は解析から除外した。 解析対象者は45人で、クロスオーバー解析の結果、KDQOLでは「症状」「腎不全の日常生活への影響」の項目でKD-MV摂取後に改善傾向を示し、特に筋痙攣やしびれなどの改善が認められた。AST・ALT値はKD-MV摂取後、正常範囲内で有意に上昇したが(⊿AST; 3.4±5.6 IU/L、p<0.001、⊿ALT; 4.2±6.5 IU/L、p<0.001)、他の生化学検査項目・酸化ストレス指標はともに有意な変化は認められなかった。有害事象は、KD-MVと因果関係不明な不定愁訴3件のみであった。 今回、KD-MV服用により主な検査値や酸化ストレスの変動は認められなかったものの、有害事象を示さず、HD患者のQOLを改善する結果が得られた。したがって、今回の知見はHD患者におけるKD-MV摂取の有用性を示唆するものである。
著者
曽根 博仁 吉村 幸雄 田中 明 山田 信博 JDCSグループ
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.269-279, 2007-12-01 (Released:2010-02-09)
参考文献数
44

Type 2 diabetes is one of the most challenging health problems throughout the world and is increasing at an alarming rate. Most clinical evidence involved in therapeutic guidelines for diabetes is derived from European or American cohort studies, and the characteristics of diabetes in Asians, including Japanese, have been only poorly investigated to date, despite Asians constituting approximately half of the world diabetes population. The Japan Diabetes Complications Study (JDCS) is a nationwide multi-center prospective study of type 2 diabetic patients. In 1996, 2, 205 patients aged 40-70 years with previously diagnosed type 2 diabetes were recruited from 59 Japanese institutes that specialize in diabetes care. Parameters related to their diet, exercise, glycemic control, diabetic complication events, dyslipidemia, hypertension, obesity and quality of life have been measured and collected every year until now. It was clarified from the interim results of JDCS that the characteristics and pathophysiological backgrounds of diabetes in East Asians were quite different from those in Caucasian subjects. Compared with Caucasian diabetic patients, the JDCS patients had a much lower body mass index (BMI). Moreover, whereas the mean BMI of Caucasian diabetic patients was higher than that reported for non-diabetics of the same ethnic origin, the mean BMI of Japanese diabetic patients was normal in comparison with the Japanese non-diabetic population. Other differences between Japanese and Caucasian patients with type 2 diabetes could be found in the incidence rate and risk factors of complications, the effects of moderate alcohol drinking on cardiovascular disease, and the clinical significance of the diagnosis of metabolic syndrome. These profound differences demonstrate the necessity for obtaining clinical evidence based on a large-scale study of East Asian patients in order to establish and provide management and care specific to this particular population.
著者
曽我 昌史
出版者
日本精神衛生会
雑誌
心と社会 (ISSN:00232807)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.56-61, 2021
著者
若曽根 健治
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

「贖罪と刑罰」の問題は人類史上、社会と文化とに<埋め込まれた>存在である。この点では、他の諸問題と比べて、格段の重みを持っていた。「贖罪と刑罰」は種々の文化要素、宗教、呪術、法、経済、権力、裁判、習俗などと深く結びついていて、容易に分け難い存在であった。始原的には、「贖罪」は宗教、呪術と結びついており、非行によって生じた共同体の穢れを払い、神の(神神の)怒りを解くための、共同体内部的儀式として営まれていた。従って、いわば「内部的」刑罰-「国津罪」の系統に属していた。「贖罪」思想をこうした宗教的違反、軍事的違反、性的タブー違反の系列(穢れの思想)から解放したのは、ヨーロッパ中世初期(8-9世紀)において裁判権力者の、地域における「平和」維持の志向であった。この志向を背景になって、裁判不出頭者や判決不服従者にたいする「アハト」(追放)の刑罰(公的刑罰)が登場してきた。こうして「贖罪」観念はヨーロッパにおいてしだいに個人主義化し、世俗化する。非行者本人が謝罪をおこなったり、非行者の親族友人が放免を請願したりすることを契機に、裁判権力者は非行者を恩赦に付したり、巡礼行を課したりして、刑事司法の中に、新らしい意味の「贖罪」観念を導入していった。中世後期から近世初期の時代(14世紀から17世紀)には、糺問的職権的司法がしだいに広がっていくものの、いまだ当事者主義裁判が影響力を行使していた。糺問的職権的司法が制度的定着を見る以前の、刑事司法のきわめて流動的、混乱的時代に、当事者本人の「贖罪」思想を背後にした、殺人の和解やウァフェーデの誓約がある一定の役割を果たしえたのには、理由があった。