著者
木村 文輝
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.158-165, 2008-09-21

仏教は不殺生を基本理念としている。けれども、既に釈尊の時代から、仏教の立場において人が自らの死を選択する行為を是認してきた事例も存在する。それらの例を検討すると、そこには次のような条件が存在することが窺われる。すなわち、自己の死の選択が周囲の人々に承認された上で、以下の3つの事情のいずれかに該当することである。具体的には、(1)死期を目前にした者が、この世で為すべきことを為し終えたと自覚している場合、(2)自らの生命を犠牲にしても他者を救おうとする場合、(3)人生の目標の実現のために、自己の全存在を賭ける場合である。しかも、このような場面における「死」の覚悟と選択は、いずれも仏教的な意味における「人間の尊厳」を具現化するための有効な行為とみなし得るものである。本稿では、仏教が無条件の「生命至上主義」を主張するものではないことを論ずるとともに、そのような立場から、安楽死が是認され得る条件についての提言を行うことにしたい。
著者
星野 一正 木村 利人 唄 孝一 中谷 瑾子 青木 清 藤井 正雄 南 裕子 桑木 務 江見 康一
出版者
京都女子大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1991

文部省科学研究総合A研究班として『患者中心の医療をめぐる学際的研究』というテーマのもとに、平成3年度からの3ヵ年間、専門を異にしながらもバイオエシックス(bioethics)の観点から研究をしている十名の共同研究者と共に研究を進めてきた。単に医学・医療の面からの研究では解明されえない人にとって重要な問題について、宗教学、哲学、倫理学、法律学、医療経済学、生物科学の専門家に、医学、医療、看護などの医療関係者も加わった研究班員一同が集まって、異なる立場から議論をし、さらに既に発表されている文献資料の内容を分析検討し、現在の日本社会に適した生命倫理観を模索しつつ共同研究を積み重ねてきた。第一年度には、主に「人の死をめぐる諸問題」を、第二年度には、主に「人の生をめぐる諸問題」に焦点を合わせて研究をし、第三年度には、前年度から進行中の研究を総括的に見直し、必要な追加研究課題を絞って研究を纏めると共に、生と死の両面からの研究課題についても研究を行った。最近、わが国において議論の多い次のようなテーマ:臓器移植、脳死、植物状態,末期医療、がんの告知、自然死、尊厳死、安楽死、根治療法が未だにないエイズ、ホスピス・ビハ-ラ、体外受精・胚移植、凍結受精卵による体外受精、顕微授精、男女の生み分け、遺伝子診断を含む出生前診断・遺伝子治療、人工妊娠中絶などすべて検討された。各年度ごとに上智大学7号館の特別会議室で開催してきた当研究班の公開討論会の第3回目は、平成6年1月23日に開催され、「研究班の研究経過報告」に次いで「医療経済の立場から」「法学の立場から」「生命科学の立場から」「遺伝をめぐるバイオエシックス」「生命維持治療の放棄をめぐる自己決定とその代行」「宗教の立場から」「臨床の立場から」の順で研究発表と質疑応答があり、最後に「総合自由討論」が行われた。今回は、3か年の研究を基にしての討論であっただけに、多数の一般参加者とも熱気溢れる討論が行われ、好評であった。
著者
木村 勇雄 金谷 貢
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, 2009-09-10

The final purpose of this study is to develop a high-performance implant, which can prevent infection for a couple of day immediately after the operation and then promote the osseointegration. As a fundamental study, hollow calcium-deficient hydroxyapatite microspheres revealing high solubility were made to adhere onto a titanium screw, of which the surface had been treated with hydrofluoric acid. The effects of conditions for the surface treatment on the surface morphology of titanium and the adhering amount of the microspheres were investigated.
著者
木村 汎
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

ロシアの体制転換は、難航している。1991年8月のクーデター未遂事件後、新生ロシアは、共産主義体制から訣別し、民主主義と市場経済の体制への移行を宣言した。ところが、以後既に8年。一方においてはたしかに、もはや共産主義体制へと復帰する可能性はない。しかし他方、西側流の体制へスムーズに転換すると楽観論は、ほぼ完全に消滅した。だからといって、金融危機に陥ったアジア諸国をモデルとして掲げる訳にもいかない。結果として、ロシア独自の道を模索する姿勢を益々強めるにいたった。「ロシア独自の道」とは、一体なにか。この肝心の問いにたいする回答が、未だ見出されていない。完璧なモデルを他に求めることの不毛性への自覚。その探求努力からの疲労。明日はわが身がどうなるか定かでない、その日暮らしの連続。-これらが、現ロシアがおかれている精神状況である。研究代表者は、ロシアの金融(そして政治)危機が発生した丁度98年8月から米国に海外出張し、米国人およびロシア人の研究者たちと本テーマについて討論を交える機会に恵まれた。自身と全く同一のテーマと関心で書かれたJames Moltz,“Commonwealth Economics in Perspective:Lessons from the East Asian Model"に接したことも有益だった。自身は、“Japanese Civilization,Challenge to the Western Civilization?-Some Russian Japanologists'View"を、執筆・発表した。
著者
福田 道雄 木村 玄次郎
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

近年、1)慢性腎臓病(CKD)は早期であっても心血管病の危険因子であり、2)腎機能が正常な時期から腎機能低下につれて心血管病の危険度が増加する事(=心-腎連関)が判明し、CKDを早期診断・治療して心血管病を予防する事が世界規模の健康問題となった。私達名古屋市立大学心臓・腎高血圧内科学の研究グループは、24時間に亘る適切な血圧管理のために24時間血圧測定を日常診療に取り入れた結果、腎機能が低下するにっれて夜間血圧が低下しなくなるnon-dipper型の血圧日内リズムを呈し、かつ日中に比し夜間の尿中ナトリウム排泄量が多くなることを発見した(Kidney Intemational. 2004 Feb ; 65 (2) : 621-625)。この現象を「腎機能が低下すると日中に十分なナトリウムを排泄しきれなくなり、本来夜間に低下(dipper)する血圧を高いまま維持することで圧-利尿を発揮し夜間にナトリウムを排泄する」と解釈し、この考えを「non-dipperの腎性機序」として提唱してきた。さらに日中の活動時にナトリウム排泄が低下してしまう病態では臥位から立位に体位変化をするとナトリウム排泄が低下してしまうとの仮説を立て、本研究を立案・実施した。平成17~18年度は「non-dipperの腎性機序」を支持する研究成果を積み重ね、平成19年度は立位負荷時の尿中ナトリウム排泄低下が、血圧や尿中ナトリウム排泄のnon-dipper型日内リズムを検知し得ることを明らかとした。non-dipperや食塩感受性の基本には共通した腎におけるナトリウム排泄障害が存在し、それを立位負荷時のナトリウム排泄低下で診断し得る可能性が示された。non-dipperも食塩感受性も心血管イベントリスクである事は確立しており、立位負荷による腎予備能低下の診断はCKD早期における心血管イベントリスクのスクリーニングに有用である可能性が示唆され興味深く、今後さらなる検討を要する。本研究を支えて頂きました日本学術振興会様、国民の皆様に深謝致します。
著者
木村 三郎
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.37-41, 1991-03-30
被引用文献数
1

我国で世界に誇りうる風景観と云えば第一に富士山,その第二に瀬戸内海をあげることが出来る。そこで富士山については既に本機関誌『造園雑誌』第54巻1号(1990)に於いてその文化的価値を中心にその歴史的な考察を行ってきた。そこでその第二のステップとして,ここに瀬戸内海についても同様な観点から究明して見たい。即ち富士山が孤高の山景美とすれば正に瀬戸内海は白砂青松の海景美と云える。このような伝統美が欧米化の風潮の波に圧倒されて兎角忘れ勝ちになっていることに反発を禁じ得ないし,又その保全の手段方法についても一考して見たい。
著者
石川 誠 山野 英嗣 朴 鈴子 豊田 直香 羽田 聡 不動 美里 黒澤 浩美 平林 恵 木村 健 松村 一樹 西澤 明 竹内 晋平 西村 大輔
出版者
京都教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

生涯を心豊かに生きるための基盤作りとして,学校と地域の美術・博物館が相互の知見を共有し,知的財産(コレクション)を活用した鑑賞学習を多様に試行して七つの実践モデル(CD-ROM)にまとめた。従来,学校で扱いにくいかった分野にも対象を広げ,映像やワークショップ・プログラム,「書」など,実践に一つの道筋を付けたといえる。また,こどもの鑑賞過程で「見る」と「つくる」の密接な関係が確認され,実践計画の立案に示唆が得られた。この成果を公開討論会で問い,社会的な評価を受けている。
著者
木村 和弘
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

未妊娠の雌マウスにおいて肥満が乳腺発達異常(導管径の短縮と分岐数の減少、筋上皮細胞層の欠失とコラーゲン層の肥厚)をもたらすことを明らかにし、その異常の一部は脂肪細胞分泌因子レプチンに因ることを強く示唆した。一方、イヌ乳腺腫瘍組織より得た不死化細胞5株の増殖はレプチンにより影響されず、癌化に伴う応答性の変化が示唆された。さらに導管形成を促進する成長因子HGFの脂肪細胞における発現調節機構などについて検討した。
著者
木村 忠史 久保 泰
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

タランチュラ毒腺のcDNAライブラリーの中から約4000個の制限酵素切断パターンに基づき約1500個のクローンを選択しDNA配列の解析を行い869個の高い品質の配列データを得た。このうち284個(=32.7%)が毒様の配列を示していた。これは他種のクモで報告されている30.6% や32.5%とほぼ同等の値であり本研究の妥当性が示された。更にPCRクローニングにより34個の毒様配列を得た。これらから重複無く48個の独立した新規の毒様配列を得、GTx1~GTx7, GTx-TCTP, GTx-CRISPの9つ
著者
松村 常夫 遠藤 乾市 木村 秀明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. OCS, 光通信システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.91, pp.35-40, 1999-05-27

市販単四電池1本で停電時に5時間の通話が可能なISDN用のカードサイズONU(世界最小電力&電カサイズ)のプロトクイプを開発した。本ONUは50Mbit/s STM-PDS システムに適用するもので、最先端の1V級動作モジュール/デバイスを搭載している。これらモジュール/デバイスの搭載と共に、サービス対応部をプラグ形式で共通処理部と接続する構成法, 高精度モジュール設計法の適用により、本ONUは3.3V版の従来型ONUに比べ、1/8の低電力化(150mW), 1/6の小型化(59cc;カード搭載対象部)が可能であることが確認された。
著者
木村 典代
出版者
高崎健康福祉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

【目的】これまでに紫外線暴露による血中β-カロテン濃度の変化及び血中抗酸化能へ及ぼす影響については明らかにされていない。そこで紫外線暴露量の多いスポーツ競技者と少ない競技者ではUVBによって惹起されるDNA酸化傷害の程度が異なるか否かと血中抗酸化ビタミン濃度に変化がみられるかどうかを検討した。【対象・方法】研究協力の同意が得られた高校女子ソフトボール部員12名、高校女子バレーボール部員17名、コントロール群として大学女子学生11名を対象とした。平成18年夏期に早朝空腹時採血を行い、ヒトリンパ球を用いたCBMN assayを行った。HPLC法により血漿β-カロテン、アスコルビン酸、α-トコフェロール濃度を測定した。採血前の1週間は抗酸化ビタミンの摂取量調査、身体活動量および日常の紫外線暴露量を計測した。【結果および考察】自然誘発性の小核出現率はいずれの群でも低く、群間の差は見られなかったが、UVB照射を行ったリンパ球においては、バレーボール部(21.5±11.0%)がコントロール群(7.8±5.4%、p<0.01)やソフトボール部(9.5±5.7%、p<0.05)よりも有意に高かった。両運動群で身体活動量が同等であったにもかかわらず、バレーボール部のみ小核出現率がコントロール群よりも高値を示した原因の1つとして、α-トコフェロール濃度がコントロール群よりも有意に低値を示していたこと(p<0.05)が関係しているかもしれない。しかしながら、α-トコフェロール濃度と小核出現率の間には相関関係は認められず、さらに、β-カロテンの摂取量や血中濃度にも3群間で差が認められなかった。従って、ソフトボール部のように日常的に紫外線に暴露されている場合には、これらの抗酸化ビタミン以外の紫外線に対する何らかの耐性が高まっている可能性が考えられた。
著者
北岡 良雄 三宅 和正 木村 剛 木須 孝幸 伊豫 彰 秋光 純 大隅 寛幸 常盤 和靖 大貫 惇睦 八島 光晴 椋田 秀和
出版者
大阪大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2008

(1)多層型銅酸化物高温超伝導物質の系統的な研究から,高温超伝導現象の起源は反強磁性磁気秩序を生み出す超交換相互作用に起因することを明らかにし,発見以来25年経過してもなお混沌としていた銅酸化物高温超伝導現象を解明(2)Feニクタイド系新高温超伝導体が超伝導状態は等方的なギャップを有するマルチギャップ符号反転S±波モデルによって説明できることを示した(3)六方晶フェライトSr_3Co_2Fe_24O_41において電気磁気効果の室温弱磁場動作を世界で初めて実現(4)価数転移の量子臨界点が磁場により誘起されることを理論的に示した.以上の多彩な系において「新しい量子物質相の発見や現象を解明.
著者
小峯 裕己 谷合 哲行 木村 洋
出版者
千葉工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

化学物質による室内空気汚染に関する対策を講じる際に、竣工直後における室内の化学物質濃度、放散量の経時変化、濃度の減衰時間などの予測が不可欠である。本研究では、小形チャンバー法を用いて、環境因子の変化する実環境を考慮した建材からの化学物質放散量推定式を明らかにし、化学物質放散量測定値に基づく室内濃度予測手法を提案することを目的とする。本研究成果は以下の通りである。1)HCHOを放散する木質建材が単体で存在する条件下において、建材設置量、温湿度、換気量が異なる実環境を想定した模型実験を行い、小形チャンバー法を用いたHCHO放散速度推定式に基づく、HCHO気中濃度予測式の妥当性を検証した。2)種類、HCHO発散等級の異なる木質建材が混在する条件下に置いて、温湿度、N/L値(換気回数/試料負荷率)を系統的に変化させ、単体のHCHO放散速度推定値に基づいた室内HCHO濃度予測式の妥当性を検証した。3)種類、HCHO発散等級の異なる木質建材が混在し、温湿度変動が存在する条件下において、HCHO気中濃度予測式の妥当性を、実環境における長期間暴露試験により検証した。4)塗料から放散されるトルエン放散速度測定値に基づいて、環境因子がトルエン濃度の経時変化に与える影響について明らかにした。内部拡散支配型放散過程においては、温度の影響が少ないが、蒸散支配型放散過程においては温度の影響が大きいことが明らかにされた。また、トルエン濃度の減衰機関は二成分指数間モデルを用いて予測できることを示した。5)HCHOを放散する建材とトルエンを放散する塗料が混在する条件下において、HCHO、及びトルエンの放散速度に与える相互影響を明らかにし、それぞれの化学物質の期中濃度予測に与える影響を明らかにした。塗料からのトルエンの放散挙動は塗膜への吸着・再放散があるために、設置後5日程度は影響があることを明らかにした。竣工直後で塗膜が乾き切っていない状況でHCHO濃度の測定を実施すると、危険側の評価をしてしまう可能性がある。
著者
木村 憲彰
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

これまで、重い電子系における重い電子の起源、あるいは超伝導の形成において、スピン軌道相互作用の役割がよくわかっていなかった。本研究では結晶の空間反転対称性の破れによってあらわになるスピン軌道相互作用を、ドハース・ファンアルフェン効果をはじめとする輸送現象の測定によって明らかにし、質量増強のスピン依存性、異方的常磁性対破壊効果によって増強された超伝導上部臨界磁場を明らかにした。また、超伝導揺らぎの可能性や空間反転対称性の破れに共通した特異な超伝導状態を見出した。
著者
木村 優 後藤 千晴 谷 桃子
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.38, no.10, pp.529-534, 1989-10-05
被引用文献数
6 9

水中のモリブデン(VI)イオンについて活性炭の粒子表面での吸着特性を調べ,微量モリブデンの分離濃縮及び定量法について報告する.Mo(VI)を含む溶液200mlに活性炭50mgを添加して30分間かき混ぜてから〓過する.〓液中のモリブデン濃度をAAS装置を用いて測定した.モリブデン(VI)pPH3.3〜4.0において90%以上の吸着率を示した.この実験条件で吸着等温曲線を描き,Langmuirプロットをした.得られた最大吸着量は59mg g^<-1>であった.最大吸着量は,溶液にEDTAを加えると約8分の1に減じた.そのほか,シュウ酸ナトリウム,硫酸ナトリウム,塩化カリウム,塩化マグネシウム,塩化カルシウム,硝酸亜鉛などの共存する溶液中のMo(VI)イオンの活性炭への吸着率を求めた.これらいずれの塩類も共存量が増すに伴って吸着率は低下した.特に硝酸亜鉛の共存によってMo(VI)の吸着率は著しく低下したが,8-キノリノールの添加によって吸着率は90%以上に回復した.いったんMo(VI)を吸着させてから活性炭を取り出し,0.1M NaOHを加えるとMoは容易に脱離した.従って,水中のMo(VI)の分離濃縮を簡単に行うことができる.200mlの試料溶液中のMo(VI)を活性炭50mgに吸着し,分離及び脱離操作を経て最終的に1mlに濃縮した場合における試料中のMoのAASによる検出限界濃度は0.0011ng ml^<-1>の超微量である.本法を用いて,水道水,河川水及び海水中のモリブデンの分離濃縮及び定量を行った.その結果,水道水,河川水及び海水についてそれぞれ20回の操作(n=20)の平均値は,0.37(R.S.D.=14%),0.23(17%)及び7.9(8%)ng ml^<-1>であった.