著者
松下 姫歌 橋村 裕治
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.8, pp.271-280, 2008

本研究では, 青年期における自己愛傾向は自我同一性の感覚に寄与する健康な側面をもちうるという仮説のもと, 大学生の自己愛傾向と自我同一性との関連を検討した。自己愛人格目録短縮版(NPI-S)の下位尺度の主成分分析によって抽出された「自己愛総合」と「注目-主張」の2成分の高低によって対象者を4群に分類し, 多次元自我同一性尺度(MEIS)の総合得点および下位尺度得点を比較したところ, 全体的な自己愛傾向の高い群は低い群よりも自我同一性達成感を強く持つという結果が示された。このことから, NPI-Sによって捉えられる一般青年の自己愛傾向の高まりは, 病理的な自己愛とは異なり自我同一性達成に寄与するものであると言える。また, 自分の感覚を軸に自己を捉える群の方が, 他者の視点を介して自己を捉えようとする群よりも, 自分の理想や願望を明確に意識していることが示された。
著者
重野 寛 本田 新九郎 大澤隆治 永野 豊 岡田 謙一 松下 温
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.42, no.7, pp.1922-1932, 2001-07-15
被引用文献数
19

本稿では,3次元仮想空間をより実感することを可能にする仮想空間システムFriend Parkについて述べる.Friend Parkは3DCGで構築された空間や物体を特徴付ける香りをユーザに提供することや,ユーザが自然な振舞いで利用することのできる入力インタフェースによって,仮想空間の実感を高めるシステムである.人間の五感のうち嗅覚においては,他の感覚器では得ることのできない情報を取得し,物事を実感するうえでその効果は大きいと考えられる.そこで,仮想空間内の嗅覚情報を表現するために,「アロマ」という概念,およびアロマの伝達される範囲を表した「アロマオーラ」を定義し,アロマオーラ内にいるユーザにアロマの伝達を行った.実際に香りを発生させる方法としては,コンピュータ制御可能な芳香発生装置を利用し,香りの発生を行った.また,より自然な振舞いで利用できる入力インタフェースを実現するため,人間の「息を吹きかける」という動作に注目し,専用の風力センサを作成した.ユーザ側にはデバイスによる負荷を与えたり,過度に意識させることなく,ディスプレイに表示されている仮想空間において,息を吹きかけるという動作による直接的なオブジェクトの操作を可能にした.評価を行った結果,香りの伝達および風力センサを利用した入力インタフェースによる仮想空間の実感について,良好な結果を得た.In this paper,we describe a 3D virtual space system named ``Frien Park'' that gives users a more definite sense of reality.Users can get riality by using Friend Park taht provides the information of the sence of smell in virtual space and the input device which user can use by the natural behavior.Human percept the important infomation through tne sense of smell that cannot be perceiced through other senses.So we propose the general idea of ``Aroma'', the area of ``aroma aura''. and the method of transmitting the actual smell from a virtual space to real world.By entering the aroma aura, the user can attain the aroma.In addition, to perform a natural way of input in virtual space,we focused on the action of ``blowing''.we propose the techniqu of operating the virtual object by blowing onto the screen and measuring a force of the wind with a special device.we design a special device that can set below the display,thus the user can naturally make direct input without being too aware of the device.The system evaluation demonstrated that we have gained a better result on transmitting olfactory infomation,input device, and whether users can get riality by them.
著者
松下 戦具 菊永 佐紀子 青山 純也 野村 毅
出版者
日本顔学会
雑誌
日本顔学会誌 (ISSN:13468081)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.41-50, 2023-12-26 (Released:2023-12-26)
参考文献数
22

唇の外見は加齢に伴い変化する。しかし、どういった質感や特徴が唇の見た目の年齢に影響するかはこれまでよくわかっていない。本研究の目的は、唇の見た目年齢に影響する因子を抽出すること、およびそれらの因子の寄与の度合いを推定することであった。実験では、参加者は20代から60代の唇の写真を印象評定し、その後その唇の年齢を推定した。印象評定値を因子分析したところ「色つや」「ボリューム」「かたち」「シワのなさ」の4因子が抽出された。唇の見た目年齢に対するそれら4因子の影響を重回帰分析で検討したところ、「色つや」と「ボリューム」が特に唇の見た目年齢に影響していることが示された。その一方で、見た目年齢に対する「かたち」と「シワ」の影響は有意ではなかった。
著者
田中 厚子 松下 希和 赤澤 真理
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住総研研究論文集・実践研究報告集 (ISSN:2433801X)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.1-12, 2022 (Released:2022-05-10)

日本の住宅の近代化における女性の役割に関する研究の一端として,戦間期に女性が施主となった住宅6件を対象に,婦人雑誌というメディアを通した近代化への貢献および憧れの醸成について分析した。住まいの外観は,海外渡航の有無によって和風と国際様式に二分し,起居様式は床座,椅子座,混合に三分した。それらの平面計画は一例を除き伝統的な座敷などの家父長制の名残はなく,自立した女性としての要望を満たしていた。室内には布地と色彩へのこだわりがあった。憧れには施主の交友関係における住まいへの憧れと,一般読者の憧れの二重構造があり,婦人雑誌の記事では,本人が住まいの写真に写ることで憧れを呼び,共同の意識を生み出した。
著者
松下 和裕
出版者
北海道歯学会
雑誌
北海道歯学雑誌 (ISSN:09147063)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.25-32, 2018-09

昨年2017年9月2日,下顎枝矢状分割術の考案で著名なHugo Obwegeser(1920年10月21日生まれ)が96歳で亡くなった.葬儀は彼のホームタウンであるチューリッヒのシュヴェルツェンバハで9月13日に行われた.これも最新の歯学として忘れてはならない出来事である.彼が書いた書籍1)に,下顎枝矢状分割術の施行に関しとても興味深い内容が書かれているので,最初に紹介したい.その上で,当院でのこれまでの発展の歴史と最近の話題を語りたい.
著者
松下 光宏
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.165, pp.57-72, 2016 (Released:2018-12-26)
参考文献数
8

原因・理由を表す接続辞「ものだから」は,これまで「PものだからQ」のPとQが表す事態の特徴や機能からとらえた意味や用法が説明されてきた。本稿では,「PものだからQ」文より前や後の文脈に表される事態も分析し,「ものだから」の使用文脈の特徴を明らかにする。その特徴は次のとおりである。 「PものだからQ」は,話し手の認識において,本来・通常の事態とは異なる,異質・例外の事態Qとそれを引き起こす異質・例外の理由Pを表し,本来・通常の事態と対比的に示す文脈で用いられる。 そして,この使用文脈の特徴から,当該事態が本来・通常の事態と異なる,異質・例外の事態であるという話し手の判断が使用条件になり,さらにこの使用条件が予想や期待と異なる都合の悪い事態に対して理由を述べる「言い訳・弁解」の用法に結びつくことを述べる。
著者
駒ヶ嶺 光 法理 樹里 松下 京平 深町 加津枝
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.21-26, 2023-08-31 (Released:2023-10-12)
参考文献数
21

本研究は,小学生時の自然体験と,その後の自然との感情的つながり,環境態度,環境配慮行動との関係性を把握することを目的とした。アンケート調査によってデータを収集し,分散分析を行ったところ,自然との感情的つながりと環境配慮行動の頻度は,小学生時の自然体験の頻度が高いほど有意に高かった。環境態度には自然体験の頻度は関係しなかった。また,自然体験の体験地域は,自然との感情的つながり,環境態度,環境配慮行動に関係しないことが明らかになった。
著者
松下 博通 佐川 康貴 佐藤 俊幸
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集E (ISSN:18806066)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.507-519, 2010 (Released:2010-12-20)
参考文献数
50
被引用文献数
1 1

本研究では,地盤に含まれる硫酸イオンおよび硫酸塩によるコンクリートの硫酸塩劣化について取り上げた.はじめに,旧産炭地域のぼたを用いた盛土地盤と新第三紀泥岩層の造成地盤における住宅基礎コンクリートの劣化既往事例を概説し,その原因が地盤に含まれる硫酸イオンおよび硫酸塩によるものであることを示した.次に,黄鉄鉱を含む海成層による堆積地盤において,細菌の作用により黄鉄鉱が酸化され,硫酸イオンが生じる過程を示した上で,日本各地の地盤中に含まれる硫酸イオン濃度について考察した.最後に,地質と気象要因に基づき,日本全土におけるコンクリートの硫酸塩劣化の可能性を有する地盤を「コンクリートの腐食程度の厳しさ」として提案した.
著者
関口 珠希 松下 和裕 柏原 みゆき 笠原 和恵 堀川 雅昭
出版者
北海道歯学会
雑誌
北海道歯学雑誌 (ISSN:09147063)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.76-82, 2022-09-15

埋伏智歯が本来の位置から遠く離れ,それが下顎枝最上方の筋突起に位置することは非常にまれである.今回われわれは筋突起に埋伏した含歯性嚢胞を伴う智歯の1 例を経験したので報告する. 患者は72歳,男性.2021年5 月に左側耳下腺咬筋部の腫脹と疼痛を自覚し,近在歯科を受診した.症状が悪化傾向であったため,当院を紹介受診した.初診時の口腔外所見では左側耳下腺咬筋部の腫脹,疼痛と重度の開口障害を認めた.口腔内所見では開口障害により視認は困難であったが,左側頬粘膜に浮腫性の腫脹を認めた.画像検査では筋突起内に逆性埋伏智歯とその周囲に嚢胞様透過像を認め,それら周囲の軟組織の肥厚を認めた.血液検査所見では炎症反応を認めた.埋伏智歯ならびに嚢胞様病変への感染と診断し,抗菌薬による消炎を行った.消炎後,全身麻酔下で埋伏智歯抜歯ならびに嚢胞摘出を施行した.病理組織学的診断は含歯性嚢胞が考えられた.現在,術後6 か月を経過しているが,問題なく経過している.
著者
金 貞姫 菊地 良介 鈴木 敦夫 度會 理佳 横山 覚 森瀬 昌宏 八木 哲也 松下 正
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.554-561, 2020-10-25 (Released:2020-10-29)
参考文献数
5
被引用文献数
3

新型コロナウイルス感染症に対する抗体検査試薬は,SARS-CoV-2のnucleocapsid protein(N)あるいはspike protein S1 domain(S)を抗原として用いた2種類に大別される。本研究では,抗SARS-CoV-2抗体検査について,5社7種類のイムノクロマト法キットと3社4種類の自動分析装置用試薬による比較検討を行った。対象のイムノクロマト法キットとして,Kurabo社,RayBiotech社,Innovita Biological Technology社,LumiQuick Diagnostics社およびLepu Medical Technology社のキットを使用した。自動分析装置用試薬はAbbot社,Roche Diagnostics社,Ortho-Clinical Diagnostics社の測定試薬を用いた。対象試料には,COVID-19と診断された患者2例の検査後残血清を使用した。その結果,N 蛋白を抗原とした抗SARS-CoV-2抗体検査試薬ではIgG抗体はIgM抗体に比して早期に陽性を示し,S 蛋白を抗原とした抗SARS-CoV-2抗体検査試薬はIgM,IgG抗体両方が感染早期より検出可能であった。以上より,COVID-19のスクリーニング検査としてはS蛋白を標的とした抗SARS-CoV-2抗体検査試薬が有用である可能性が示唆された。
著者
四釜 洋介 黒澤 実愛 松下 健二
出版者
一般社団法人 日本エンドトキシン・自然免疫研究会
雑誌
エンドトキシン・自然免疫研究 (ISSN:24341177)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.40-42, 2019 (Released:2019-11-06)
参考文献数
9

Interleukin (IL) -29 is a cytokine belonging to the type Ⅲ interferon family, which regulates a similar set of genes as type Ⅰ interferons. Although type Ⅰ interferons act globally, type Ⅲ interferons primarily target epithelial cells and protect them against the frequent viral attacks that are common for barrier tissues. The antiviral effects of IL-29 have been demonstrated at barrier surfaces in the respiratory and gastrointestinal tracts, liver, blood-brain barrier, and skin, but it remains unknown whether IL-29 exhibits these effects in oral epithelial cells. In this study, we found that the functional IL-29 receptor, interferon-lambda receptor 1, is expressed in epithelial cells from both human oral mucosa and gingiva, but not in human gingival fibroblasts. Although IL-29 stimulation did not induce pro-inflammatory cytokine mRNA expression, such as IL-6 and IL-8, it did induce retinoic acid-inducible gene (RIG) -I and interferon gamma-inducible protein 16 (IFI-16) production via a signal transducers and activator of transcription 1 (STAT1) -dependent pathway in gingival epithelial cells. RIG-I and IFI-16 sense viral nucleic acids, and the stimulation of these receptors induces interferon beta production. Moreover, we confirmed that the augmenting effects of IL-29 on 5’triphosphate double-stranded RNA (a synthetic ligand for RIG-I) -induced interferon beta production in gingival epithelial cells. These data suggest the therapeutic potential of IL-29 for preventing viral infections in the oral mucosa.
著者
立花 久嗣 高橋 哲 影山 智子 前野 和重 松下 達生
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.152-156, 2022 (Released:2022-03-25)
参考文献数
18

症例は38歳女性.来院前日に誘因なく意識障害を伴う数分間の痙攣発作を繰り返し入院した.入院時神経学的に感覚性失語を認め,頭部MRIにて左側頭葉に病変を認めた.また,著明な鉄欠乏性貧血と血小板増多を認め,後に子宮筋腫による慢性貧血と判明した.脳血管撮影では血管奇形や静脈洞血栓症を疑う所見を認めなかった.後日撮像した頭部MRIの3D-FLAIRにて,左側頭葉病変の表層に索状の高信号域を認め,後方視的に来院時CTでも同部位の点状の高吸収域を確認できたため,閉塞血管と判断し,子宮筋腫に伴う鉄欠乏性貧血に合併した脳皮質静脈血栓症と診断した.3D-FLAIRを用いた多面的な評価が脳皮質静脈血栓症の診断に有用であった.
著者
岩前 篤 松本 衛 近田 智也 松下 敬幸 松村 収
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.65, no.528, pp.29-36, 2000-02-28 (Released:2017-02-03)
参考文献数
14
被引用文献数
5 3

We found many houses have condensation in the crawl space in summer. These houses have enough openings on the foundation to ventilate and vapor retarder at the ground surface for the recommend in the building code. The temperature and humidity in the crawl space have great influences to durability of the house. We made clear the annual variations of hygro-thermal environment of the crawl space by the field measurements and numerical analysis. We monitored the temperature and humidity variations of 36 houses in Japan for 2 years. The numerical calculations based on the vertical one dimension heat transfer model represented the monitored results. The results show the houses in Japan normally have condensation in crawl space in summer. The condensation term is from one week to one month. The daily average of crawl space's vapor pressure is nearly equal to that of the outdoors. The difference of 2 years results is so great that we think the main factor is outdoor condition. The thermal resistance of the floor and moisture of the ground do not have great effect on the crawl space humidity.