著者
多田 美由貴 岡久 玲子 岩本 里織 松下 恭子
出版者
一般社団法人 日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.13-22, 2021 (Released:2021-12-24)
参考文献数
33

目的:健康や医療に関する情報を入手,理解,評価,活用して健康に結びつくよりよい意思決定ができる力であるヘルスリテラシーが健康を決める力として注目されている.本研究では,乳幼児をもつ母親の育児に関するヘルスリテラシー(以下,育児リテラシー)を明確化することを目的とする.方法:A県の子育て支援施設を利用しており,育児リテラシーを発揮して育児ができていると推薦された乳幼児をもつ母親10人を研究参加者とした.半構成的面接調査を実施し,母親の育児リテラシーについて,質的帰納的に分析した.結果:乳幼児をもつ母親の育児リテラシーとして,【子育て情報にアンテナを張る】【複数の子育て情報源にアクセスする】【子育て情報を理解する】【子育て情報の信頼性を判断する】【自分や子どもに必要な子育て情報であるか判断する】【子育て情報を自分の子育てに取り入れる】の6つのカテゴリーが抽出された.考察:乳幼児をもつ母親の育児リテラシーの内容に特徴的な要素として【子育て情報にアンテナを張る】【自分や子どもに必要な子育て情報であるか判断する】の2カテゴリーが,ヘルスリテラシーに共通する要素として残り4カテゴリーが明確化された.保健師は,早期からの育児リテラシー教育とともに,育児相談等における環境づくりや根拠を基にしたアドバイス,また,母親に対するねぎらいの言葉をかける等の支援の必要性が示唆された.
著者
小野 健一郎 田之上 俊介 吉浦 徹 大川 英徳 松下 芳太郎 瀬野 宗一郎 城谷 寿樹
出版者
一般社団法人 日本脳神経外傷学会
雑誌
神経外傷 (ISSN:24343900)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.6-11, 2023-06-30 (Released:2023-06-30)
参考文献数
12

Background: The purpose of this study was to clarify the criteria for initial treatment of chronic subdural hematoma (CSDH) by com­paring the backgrounds and post–treatment courses of patients who underwent drainage or middle meningeal artery (MMA) emboliza­tion for CSDH.Methods: We performed a retrospective investigation of 23 and 21 patients who underwent drainage and MMA embolization, respec­tive­ly, performed between April 2020 and July 2022 as initial treatment for unilateral CSDH.Results: There was no significant difference between the drainage and embolization groups in terms of age (78 vs 76 years), gender, lateral­ity of lesion, maximum diameter of hematoma (21 vs 19 mm), pretreatment Markwalder grading system (MGS) score (1 vs 1), or length of hospital stay (5 vs 17 days) between the groups. Pretreatment midline shift was greater in the drainage group than the MMA embolization group (8.8 vs 6.6 mm). Operative time was shorter in the drainage group (32 vs 79 min). Recurrence occurred in 2/23 (8.7%) of the drain­age group, in whom addi­tional MMA embo­lization was per­formed. Additional drainage was required due to exacerbation of symptoms in 4/21 (19%) of the MMA embo­lization group. No perioperative complications occurred in either group. There was no significant difference in median pre­operative MGS score (1 vs 1) or mean maximum hematoma diameter (18 vs 19 mm) in the 17 patients who showed resolution of CSDH by MMA embolization alone or in the 4 patients who required additional drain­age. Mean midline deviation was 6.1 and 8.9 mm in the embo­lization alone and additional drainage groups, respec­tively, and was significantly greater in those who required additional drainage (p=0.002).Conclusions: The postoperative course between patients who under­went drainage or embolization for CSDH showed no significant difference in the case of very mild preoperative neurological findings (MGS score of about 1). Patient selection for MMA embolization as the initial treatment for CSDH should be clarified based on clinical symptoms and the radiological findings.
著者
篠原 恵 松下 戦具 森川 和則
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第14回大会
巻号頁・発行日
pp.134, 2016 (Released:2016-10-17)

株価の予測は、過去の変動から未来の変動を予測する賭け行動である。このような事態では、物事の変化の受け止め方に関する性格特性が賭け行動に影響する可能性がある。しかし、株価の予測への性格特性の効果はほとんど調べられていない。 そこで、本研究では、世の中や人生の移り変わりについての見方である無常観が、株価予測にどのように影響するかを調べた。 実験課題は、株価の変動を示すチャートを観察し、その後の株価が上がるか下がるかを予想することであった。実験の結果、チャートが上昇トレンドの場合、無常観の低い参加者はその後の株価も上昇すると予測する傾向があった。一方、無常観の高い参加者は、上昇の継続と下降への反転を同程度予想した。これらの結果は、無常観の高い人は、賭け行動においても中立的なあるいは保守的な予測を行うということを示している。
著者
宮﨑 達郎 松下 秀介 氏家 清和
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.42-49, 2012 (Released:2012-06-29)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

東海地震は発生が予想される国内有数の震災であるが,その家庭対策の1つとして食料品備蓄が挙げられている.本研究は家庭による食料品備蓄の普及のために,食料品備蓄の便益と費用に対する家庭の評価の形成要因を明らかにすることを目的とした.分析に用いたデータは2011年5月に静岡県静岡市において実施した調査より収集した.分析結果より,食料品備蓄が実施されない理由として,食料品備蓄の必要性が十分に家庭に認識されていないこと,備蓄の計画を立てる能力が不足していることが考えられた.また,食料品備蓄を実施しても継続を断念してしまう家庭が存在するが,その理由として,食料品の買い出しの手間や備蓄食料品の消費の問題,備蓄スペース等の負担が,食料品備蓄を実施した経験により増幅され,顕在化した可能性が考えられた.他方,食料品備蓄の知識が豊富な家庭ほど,食料品備蓄の必要性を認識し,食料品備蓄実施に伴う様々な負担も感じにくい傾向があることが指摘された.さらに,各家庭が持つ備蓄食料品の食味や消費期限に関するイメージが,食料品備蓄の費用に対する評価に大きく影響することが分かった.以上より,地方公共団体や農林水産省等関係機関による情報提供や,備蓄食料品の食味の改良等,高品質化による食料品備蓄の普及の可能性が指摘された.
著者
松下 晃生 内山 雄介 高浦 育 小硲 大地
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.I_1003-I_1008, 2021 (Released:2021-11-04)
参考文献数
11

気候値海洋モデルを用いたLagrange粒子追跡実験により,南シナ海に河口を有する4本の大河川から放出される海洋マイクロプラスチック(以下 MP)の平年的な移流分散特性とその形成機構を解析した.MPの分散パターンにはモンスーンに伴う季節差が存在した.特に中国南部の2河川から放出された粒子は,南西モンスーンが卓越する春から夏にかけて台湾海峡を越えて東シナ海へと到達する割合が増加する傾向が見られたことなどから,南シナ海起源のMPが日本近海のMP汚染に大きく寄与している可能性が示された.さらにMP自身の重量密度にも着目し,海洋表層を漂う(軽い)MP,および浮力を持たない(中立密度)MPに分けて粒子追跡実験を行い,海洋での輸送傾向の違いを考察した.
著者
小黒 亮史 茂木 雅臣 松下 豊 豊川 怜子 渡邊 統星 飯田 誠 山本 裕 小島 博己
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.221-227, 2020-10-15 (Released:2021-10-15)
参考文献数
34

Gradenigo 症候群とは中耳炎, 三叉神経痛, 外転神経麻痺を3主徴とする疾患概念である。 症例は10歳の女児。 側頭部痛と耳後部痛で発症するも近医耳鼻咽喉科・小児科診察で異常所見はなく, 鎮痛薬のみで経過観察したところ約1ヵ月後に外転神経麻痺を来した。 当院受診時に中耳炎所見を認め, 本症と診断した。 抗菌薬およびステロイド投与による保存的加療が奏功し, 症状・所見の改善を得た。 画像検査や治療経過より, 原発性錐体尖炎や中耳炎による続発性錐体尖炎が原因と推測された。 退院後6ヵ月時点で再燃を認めず経過良好である。
著者
松下 達彦 佐藤 尚子 笹尾 洋介 田島 ますみ 橋本 美香
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.178, pp.139-153, 2021-04-25 (Released:2023-04-26)
参考文献数
33

本研究では「漢字変換テスト」(KCT)を開発し,「日本語を読むための語彙サイズテスト」(VSTRJ-50K)(田島ほか,2015;佐藤ほか,2017)と合わせて日本語L2学生を対象に実施した。日本国内の3大学における日本語L2学生では,中国語L1学生の推定理解語彙量が平均3万語以上なのに対し,非漢字圏出身学生は2万語に満たなかった。二つのテストの相関は高かったが,ラッシュ分析でVSTRJ-50Kの一次元性が低かったためL1グループ別にDIF分析したところ,各グループ内ではモデルへの適合度が増し,L1によって難度の異なる語が多く存在した。特に語種による違いは顕著であった。1語・1漢字あたりの平均学習時間を検証したところ,初級から中上級にかけて短くなっていき,上級から超上級にかけて再び長くなることが明らかになった。L1/L2の語彙力・漢字力を包括的に見たカリキュラム開発が必要である。
著者
根本 愛子 ボイクマン 総子 松下 達彦
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.177, pp.1-16, 2020-12-25 (Released:2022-12-26)
参考文献数
19

本研究では,ボイクマンほか (2020) で開発されたプレースメントテストのための日本語スピーキングテストSTAR (Speaking Test of Active Reaction) の検証のため,非日本語教師30名による状況対応タスクのレベル判定実験を行った。その判定結果の分析から,STARは中級レベルの弁別力が不足している可能性があるものの,プレースメントテストとしての有用性 (信頼性,構成概念妥当性,実用性) は高いといえることがわかった。また,判定時のコメントを分析したところ,日本語の自然さ・流暢さは上級の特徴となること,レベル判定の観点は内容・テキストの型・対人配慮では中級前期と中級中期,文法は中級中期と中級後期を境にそれぞれ異なることがわかった。さらに,中級前期は初級レベルと比較され肯定的なコメントが多い一方,中級中期は上級レベルと比較され否定的なコメントが多くなっていることも明らかになった。
著者
有村 達之 岡 孝和 松下 智子
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.745-754, 2012-08-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
16
被引用文献数
6

目的:失体感症を評価する質問紙である失体感症尺度を開発し,信頼性と妥当性の検討を行った.方法:415名の大学生を対象にして,失体感症尺度予備尺度およびToronto Alexithymia Scale-20(TAS-20)への記入を依頼した.結果:項目分析により「体感同定困難」「過剰適応」「体感に基づく健康管理の欠如」の3つの下位尺度,合計23項目からなる失体感尺度が開発された.失体感症尺度は,総得点および下位尺度のいずれにおいても,内的整合性が高く(α=0.70〜0.84),再検査信頼性も十分であった(r=0.71〜0.81).失体感症尺度の総得点と下位尺度は,そのほとんどがTAS-20と有意に相関していた.結論:失体感症尺度は失体感症を評価するためにはじめて標準化された質問紙である.大学生における信頼性は高く,ある程度の妥当性も示唆され,失体感症の研究や臨床応用に有望な心理テストであると考えられる.
著者
浜田 友康 宇津野 衞 松下 智昭
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.I_827-I_831, 2017 (Released:2017-09-21)
参考文献数
5

崩壊のおそれのある斜面に近接して施設構造物を設置する際は,斜面の崩壊状況を想定し適切な離間距離を確保しておく必要がある.土砂到達距離の簡易推定法は各種指針類に示されているが,各推定法には差がある.そこで,2016年熊本地震における代表的な崩壊斜面を調査し,土砂到達距離を各種指針類の斜面高さに基づく推定法と比較するとともに,到達距離に及ぼす斜面高さ以外の影響因子について検討した. その結果,最大到達距離/最大崩壊高さは,強度の小さい火山灰・軽石層の崩壊では指針類の簡易推定法を上回る事例もあるが,岩盤崩壊では指針類の推定法に比較して小さい.また,崩壊高さに比較して崩壊土量が多い程,崩壊土の強度特性が小さい程,到達距離は大きくなることがわかった.
著者
橋本 隆雄 松下 一樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.I_522-I_533, 2018 (Released:2018-11-01)
参考文献数
10
被引用文献数
2

2016年熊本地震では,震度7が2回,震度6弱以上が7回発生し,熊本市,益城町,西原村,南阿蘇村等の宅地擁壁の被害が広範囲に数多く発生した.そこで,延べ2,870人被災宅地危険度判定士が熊本県内の被災した12の市町村において43日間で20,022件の判定を行った.本論文では,各市町村の宅地被害状況について被害項目ごとに分析し,既往地震と2016年熊本地震の比較を行った.その結果,熊本地震による宅地擁壁の被害は,空石積擁壁が29%(約1/3)を占め,傾斜・倒壊及び崩壊の被害が非常に多くなっている.宅地地盤の被害は陥没17%,沈下24%,段差15%が非常に大きく,のり面・自然斜面の被害は滑落・崩壊87%が非常に大きく,既往地震と比較すると被害割合・量ともに非常に大きいことが明らかとなった.
著者
三枝 令子 丸山 岳彦 松下 達彦 品川 なぎさ 稲田 朋晃 山元 一晃 石川 和信 小林 元 遠藤 織枝 庵 功雄
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.176, pp.33-47, 2020-08-25 (Released:2022-08-26)
参考文献数
16

執筆者らは,日本で医学教育を受け,最終的に日本の医師国家試験合格を目指す外国人学習者に効果的な支援を行うことを目的として,医学用語の調査研究並びに教材作成を進めている。一口に医学用語といっても,その範囲は多岐にわたるため,医学用語の効率的な学習を目指すならば,まず医学用語の網羅的な収集と体系的な分類が必要になる。そこで本研究では,医学用語の体系的な語彙リストを作成する準備段階として,医学書のテキストから医学書コーパスを構築し,27種類の診療分野に分けて,そこに含まれる語を収集・分類した。その上で,高頻度の助詞,接辞,動詞や,領域特徴度の高い名詞について,医学テキスト固有の特徴という観点から分析を行った。その結果,接辞や動詞において医学分野特有の語がみられた。また,名詞に関しては診療分野ごとに頻出語が異なることから,診療分野別に語彙リストを構築することが重要であることがわかった。
著者
松下 浩之 福本 稜佑
出版者
障害科学学会
雑誌
障害科学研究 (ISSN:18815812)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.149-162, 2022-03-31 (Released:2022-10-01)
参考文献数
23

余暇の過ごし方を充実させることは、障害のある人の生活の質を向上させるために必要な支援の一つである。知的障害のある子どもの余暇活動についての調査研究はこれまでにいくつかなされているが、その多くは休日や長期休業中の余暇に注目している。本研究では、学齢児童の平日の放課後の過ごし方について、支援資源や保護者のニーズなどについて調査した。そこで、知的障害の有無や学年という点から実施している活動を比較することで、知的障害のある子どもの好みの活動傾向を把握し、活動レパートリーを拡大するための支援の要点を整理することを目的とした。その結果、知的障害の有無にかかわらず、子どもたちは一人で、あるいは家族と自宅内で過ごすことが多かったが、知的障害のある子どもは特に活動レパートリーが乏しく、その多くがテレビや動画鑑賞などの受動的な活動であった。今後は、家族以外の資源を活用した放課後支援が必要であること、豊富な余暇活動機会の保障と、余暇活動を指導する場の設定が重要であると考えられた。
著者
安田 誠宏 間瀬 肇 小西 秀誉 松下 紘資 徳永 誠之
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
海洋開発論文集 (ISSN:09127348)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.519-524, 2008 (Released:2010-08-25)
参考文献数
6
被引用文献数
6 6

A set of experiments was conducted to examine the stability of new type of wave dissipating blocks. It was confirmed from the experimental results that offshore wave steepness influences the stability of blocks. The parameters of stability number formula were derived with classification of wave steepness. Required weight of new block against a design wave can be reduced to 90 percent compared to a typical standard block because the stability is being improved. The wave steepness relates deeply to the breaker type, and wave steepness' effect should not be neglected in the stability estimation of blocks. In order to separate the effects of wave steepness and wave breaking, it had better to conduct the experiments with flat bottom condition for further investigation of blocks' stability.
著者
松下 憲一
出版者
北海道大学
巻号頁・発行日
2001

博士論文
著者
中井 義明 大橋 淑宏 江崎 裕介 石塚 洋一 松下 隆 伊藤 博隆 馬場 駿吉 平川 勝洋 原田 康夫 菊屋 義則 岡崎 英登 黒川 道徳 二宮 優子 村上 譲 伊東 一則 深水 浩三 大山 勝 松根 彰志 飯田 冨美子 小川 敬 大堀 八洲一 花田 武浩
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.33, no.Supplement5, pp.655-673, 1990-10-15 (Released:2011-08-10)
参考文献数
12

漢方製剤である麻黄附子細辛湯の通年性鼻アレルギーに対する効果を検討した。漢方の古典の記載に忠実に基づいた製法により得られたエキスを含む細粒剤と, それまでの経験に基づいた製法により得られたエキスを含む散剤の比較試験を実施した。有効率 (著効+有効) は散剤投与群で63.5%, 細粒投与群で76.7%と, 両群とも良好な結果であり, 統計学的に差は認められなかった。各症状の改善率において, 細粒投与群が散剤投与群より鼻汁, 鼻閉症状に高い効果を示したが, 統計学的な差は認められなかった。細粒剤といわゆる抗アレルギー剤の有効率を比較すると, くしゃみ発作および鼻汁は同程度の効果が, 鼻閉については優る効果であったと考えられる。副作用については, 散剤投与群で6.2%, 細粒剤投与群で5.1%の症例に認められたが, いずれも症状は軽微であり, また臨床検査値にもなんら異常は与えなかった。
著者
蔵本 築 桑子 賢司 松下 哲 三船 順一郎 坂井 誠 岩崎 勤 賀来 俊 峰 雅宣 村上 元孝
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.267-273, 1978-05-30 (Released:2009-11-24)
参考文献数
16
被引用文献数
5

脳出血, 脳梗塞に伴う心電図変化の成因を検討する目的で, 発作前1カ月内及び発作後の心電図, 臨床検査成績が得られ, 剖検上確認された老年者脳出血18例, 脳梗塞29例について, 発作前後の心電図, 臨床検査成績, 血圧の変化, 剖検による冠狭窄度, 脳病変の部位, 大きさ等を対比検討した.発作前後の心電図変化は脳出血88.9%, 脳梗塞89.7%に認められST, T変化がそれぞれ61.1%, 69.0%と高頻度に見られ, 高度な虚血性変化は脳梗塞で多く見られた. 不整脈は脳出血55.6%, 脳梗塞41.4%に見られ, 発作時の心房細動出現は脳梗塞にのみ10.3%に見られた. 期外収縮は脳出血に多く上室性22.1%, 心室性11.1%, 脳梗塞ではそれぞれ10.3%, 3.4%であった.脳卒中発作前後のヘマトクリット上昇は脳梗塞で大きい傾向があり, 虚血性ST, T変化を示した群では脳出血2.44±0.57, 脳梗塞6.04±1.74の上昇を示し, 著明なヘマトクリットの上昇による冠微小循環の障害が虚血性ST, T変化を斉すことを示唆した.脳卒中発作時の収縮期血圧上昇は脳出血では52.5±8.9mmHgで心電図変化の程度に拘らず200mmHg以上の高値を示したが脳梗塞では8.7±10.4とその変動は僅かで血圧上昇が心電図変化の原因とはいえなかった.冠動脈狭窄の程度は脳出血, 脳梗塞共各心電図変化群の間に狭窄指数の差が見られず, 虚血性心電図変化が太い冠動脈の狭窄によるものではないことを示した. 一方心筋梗塞の合併は脳出血5.6%に比し脳梗塞で50.0%と有意に高頻度であった.脳病変の部位, 大きさでは外側型脳出血に虚血性ST, T変化の多い傾向が見られたが, 脳梗塞では中大脳動脈領域の梗塞に於ても心電図変化に一定の傾向はなく, 部位による特徴は認められなかった. また両群共病巣の大きさと心電図変化には一定の傾向は見られなかった.脳出血, 脳梗塞の虚血性心電図変化は病巣の部位, 大きさ, 冠硬化, 血圧上昇等とは関連が認められず, ヘマトクリット上昇による冠微小循環の障害がその一因と考えられた.