著者
兪 善英 松井 豊
出版者
The Japanese Psychological Association
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.83, no.5, pp.440-449, 2012
被引用文献数
3

The present study focused on attitudes related to inhibiting spousal disclosure about stress as an influential factor for the mental health of firefighters. In a pilot study using semi-structured interviews (<I>N</I> = 14), we found that some firefighters usually did not talk about their stresses with their spouses. Some reasons were that they were hiding their weakness, were feeling sure of controlling their stress, out of consideration for their spouse, were giving up on the possibility for improving the situation after spousal disclosure, or hoped to distract themselves. In a subsequent questionnaire survey (<I>N</I> = 554), the results showed that attitudes about inhibiting spousal disclosure of stress have an effect on spousal disclosure about stress and the mental health of firefighters. The findings of the present study imply that spousal disclosure about interpersonal stress can be regarded as an effective factor, along with the disclosure to colleagues, for relieving stress. It is necessary to consider the importance of attitudes about inhibiting disclosure for stress as part of stress management for firefighters.
著者
都築 誉史 松井 博史 菊地 学
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.83, no.5, pp.398-408, 2012

In multi-attribute decision making, the similarity, attraction, and compromise effects warrant specific investigation as they cause violations of principles in rational choice. In order to investigate these three effects simultaneously, we assigned 145 undergraduates to three context effect conditions. We requested them to solve the same 20 hypothetical purchase problems, each of which had three alternatives described along two attributes. We measured their choices, confidence ratings, and response times. We found that manipulating the third alternative had significant context effects for choice proportions and confidence ratings in all three conditions. Furthermore, the attraction effect was the most prominent with regard to choice proportions. In the compromise effect condition, although the choice proportion of the third alternative was high, the confidence rating was low and the response time was long. These results indicate that the relationship between choice proportions and confidence ratings requires further theoretical investigation. They also suggest that a combination of experimental and modeling studies is imperative to reveal the mechanisms underlying the context effects in multi-attribute, multi-alternative decision making.
著者
三上 修 植田 睦之 森本 元 笠原 里恵 松井 晋 上田 恵介
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.A1-A12, 2011 (Released:2011-05-20)
参考文献数
12
被引用文献数
2

近年,日本国内においてスズメ Passer montanus の個体数が減少していると言われている.その原因はわかっていないが,熊本で行なわれた先行研究では,都市部では農村部とくらべて1つがいが連れている巣立ち後のヒナ数が少なく,都市化にともなう何らかの要因がスズメの減少をもたらしている可能が示唆されている.しかし,この研究は狭い地域で行なわれたものであり,それが本当に日本全体でも起きているかはわからない.そこで2010年にこの研究と同じく,巣立ち後のヒナ数を調べる調査を「子雀ウォッチ」と銘打ち,一般市民に協力してもらう形で全国規模で行なった.その結果,全国から406の記録が集まり,それを解析したところ,巣立ち後の平均ヒナ数は,商業地で1.41羽,住宅地で1.81羽,農村では,2.13羽と,商業地,住宅地,農村の順で多くなった.この結果は前述の先行研究の結果と整合性があり,やはり都市化と関連している何らかの要因が全国規模でスズメの減少要因になっていると考えられる.この子雀ウォッチを今後もつづけ,記録を蓄積することで,スズメの減少要因の解明につながると期待できる.
著者
田中良夫 松井 祥悟 前田 敦司 中西 正和
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会記号処理研究会報告
巻号頁・発行日
vol.94, no.49, pp.17-24, 1994
被引用文献数
1

通常ガーベッジコレクション(GC)はリスト処理を中断して行なわれる.GCをリスト処理と並列に行なう(並列GC)ことにより,GCによる中断時間をなくし,リスト処理の実時間化が可能となる.並列GCではGCの処理中にリスト処理によってデータが書き換えられるので,GCの正当性を保証するために特殊な処理が必要となる.そのため並列GCは停止型GCに比べてあまり効率が上がらず,実用化されているものもほとんどない.mark and sweep方式の並列GCにおいては,ゴミセルの回収効率が停止型GCに比べて約1/2になってしまうことが知られている.これらの欠点の改善は,並列GCの実用化へ向けての重要な研究テーマである.本論文では,mark and sweep方式の並列GCの欠点を改善したGCである,Partial Marking GC(PMGC)の提案,実装および評価に関する報告を行なう. PMGCはmark and sweep型の並列GCに世代別GCの概念を導入したGCである.PMGCを実装し様々な実験を行なった結果,PMGCによってゴミセルの回収効率は従来の並列GCに比べ最大で2倍に改善されることが確認された.PMGCは並列GCの実用化に向けての有効なGCである.
著者
鵜野 伊津志 天野 宏欣 木下 紀正 荒生 公雄 村山 利幸 松井 一郎 杉本 伸夫
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.17-29, 2003-01-31
参考文献数
21
被引用文献数
6

地域気象モデルRAMSと結合した黄砂の輸送モデルを開発した.この輸送モデルでは,黄砂の発生源の特定に,NDVI植生インデックスと積雪被覆率データを利用し,発生条件には土壌分類に従った臨界摩擦速度マップを利用した.また,粒径別輸送,乾性沈着,湿性除去,重力沈降のプロセスもモデル内に組み込んだ.1998年4月10日〜25日にかけての東アジア域の大規模な黄砂エピソードに適用し,その輸送解析を行った.1998年4月14日〜15日に主にゴビ砂漠〜黄土高原で発生した黄砂は,寒冷渦に巻き込まれる形で日本列島を西から東に横断するように輸送されるのがシミュレートされた.寒冷渦の通過に伴い,ダストの鉛直分布は,最初に濃度の濃い層が高い高度に現れ,続いて低い位置へと変化することがモデルの鉛直空間分布から示され,これはライダー観測の結果を合理的に説明していた.大量の黄砂が寒冷渦の西側の沈降性の逆転層内にトラップされて輸送されたため,観測されたダスト層は2〜3km以下の比較的低高度であった.
著者
松井 敏也
巻号頁・発行日
2012

科学研究費助成事業(科学研究費補助金)研究成果報告書:挑戦的萌芽研究2009-2011
著者
戸田 弘二 松井 豊
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.288-291, 1985-12-25 (Released:2010-07-16)
参考文献数
10

Research on adolescents in romantic love has suggested that their heterosexual relationship may be influenced by their attachment to their mothers and to friends of the same sex. Three hundred fifty-nine college students responded to a questionnaire designed to explore this correlation. The results indicated that male sexual behavior and feelings of romantic love towards their girl friends were not influenced by the attachment to their mothers nor to their friends whereas those of the females were. Females who were involved in intimate sexual relationship had weaker attachment to their mothers; on the other hand, females who had strong romantic feelings, yet without sexual relationships, tended to have strong attachment to their friends of the same sex.
著者
松井 健一
出版者
筑波大学出版会
巻号頁・発行日
pp.1-328, 2013-02
著者
松井 高峯 牧野 壮一 石黒 直隆
出版者
帯広畜産大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

羊のスクレイピー、牛の海綿状脳症(BSE)、およびクロイツフェルト-ヤコブ病(CJD)に代表される伝達性海綿状脳症(プリオン病)の病原体(プリオン)は病原体特異的な核酸を持たないことから、遺伝子型別および抗原型別は病原体型別には応用できない。しかしプリオンは生物学的性状あるいは生化学的性状によりある程度区別可能である。そこで本研究では、日本の羊スクレイピーの病原体に多様性("株")が存在するか否かを明らかにするための一連の実験を行なった。また、プリオンの多様性を規定するPrP以外の宿主の遺伝的要因についても検討を加えた。我が国で過去10年間に日本で発生した羊スクレイピーの11例を選抜し、マウスに接種して伝達性と羊脳内に蓄積したPrP^<Sc>の蛋白質分解処理抵抗性を調べた。その結果、使用した11例のスクレイピーは生物性状および生化学性状の異なる3群に分類された。つまり日本には複数のスクレイピー病原体が存在することが明らかとなった。本研究のような多数の羊スクレイピーを材料としてその性状を詳細に比較検討した研究はこれまでに英国で報告があるのみで、日本では本研究が初めての例である。本研究で得られた成績は、日本に存在するスクレイピー病原体が動物種を越えて牛や人間に感染する危険性を評価するための重要な知見となる。人ではアポリポプロテインE(ApoE)の特定の遺伝子型が、アルツハイマー病の危険因子であり、またCJDの病型に関与することが示唆されている。そこで本研究では、羊スクレイピーにおいてApoEが病型や病原体株の多様性に関与するか否かを検討した。まず羊ApoE遺伝子をクロ―ニングして塩基配列を決定した。次に羊ApoE遺伝子の多型を調べた結果、羊には3種のApoE遺伝子型があることが明らかとなったが、羊ApoE遺伝子の多型とスクレイピー病原体の生物性状および病型に関連は認められなかった。
著者
中村 茂和 松井 繁幸 杉山 典 黒田 博通
出版者
静岡県畜産技術研究所中小家畜研究センター
雑誌
静岡県畜産技術研究所中小家畜研究センター研究報告 (ISSN:18826415)
巻号頁・発行日
no.2, pp.43-48, 2009-02

微粉砕したモウソウチクに乳酸菌を添加してサイレージ化した竹粉サイレージ資材を肉用鶏および採卵鶏の飼料中に所定割合添加し、それら排せつ物から揮散するアンモニア態窒素揮散量や硫黄系化合物濃度について測定した。その結果、竹粉サイレージ資材を添加した試験区の排せつ物におけるpHや水分率等は対照区とほとんど同じであり、資材添加による明らかな違いはみられなかった。更に、排せつ物の主要な臭気成分であるアンモニア態窒素揮散量についても同様、対照区に対する明らかな低減効果は認められなかった。一方、排せつ物のpHとアンモニア態窒素揮散量との関係では、肉用鶏および採卵鶏のいずれの場合においても正の相関関係が認められたことから、供試排せつ物のpHは、揮散するアンモニア態窒素量の多少に影響することが推察された。また。硫黄系化合物の濃度は、いずれも対照区に対する有意な違いは認められなかったが、肉用鶏の場合、竹粉サイレージを2.5%および5%添加した時のメチルメルカプタン濃度や硫化メチル濃度は対照区に比べて低くなる傾向がみられ、採卵鶏の場合、10%添加において、測定した全ての硫黄系化合物濃度は対照区に比べて低くなる傾向がみられた。このことから、肉用鶏の場合、飼料中に竹粉サイレージ資材を約5%添加することにより、また、採卵鶏の場合は、約10%添加することにより、排せつ物から揮散する硫黄化合物の濃度低減の可能性が示唆された。
著者
松井 武彦
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.17, no.9, pp.947-956, 1965-09-01

近年, 妊娠貧血に関する研究は多方面に亘り, その進歩には目覚しいものがある. 古くは末梢血の検索が主たる研究課題であったが, 最近は優秀な理化学器械の出現と放射性同位元素の応用などにより研究方法が一新したかの感がある. 末梢血の検索が貧血の診断に重要であることは今更申すまでもないが, 更に一歩前進して血液中の造血資材の検索はそれ以上に診断的価値があるものと信ずる. 妊娠貧血の原因については未だ氷解しない面が多いようであるが, その大部分は鉄欠乏性のものであるとの意見が強い. 私は健常妊婦の末梢血の検索の結果, 低色素性のもの以外に高色素性の貧血をかなりの頻度に認めた^&lr;22)>. このことが動機となり健常妊婦の血清鉄および血清ビタミンB_<12>量の変動を追求した. 1) 昭和37年1月から昭和39年1月まで約2年間に亘り, 長崎大学産婦人科外来健常妊婦330例について検索を試みた. 2) 末梢血の検索は一般に行われている方法で行った. 3) 血清鉄および不飽和鉄結合能の測定はSchade et al ^<37)>の原法に従って行った. 発色剤は2, 2', 2"-terpyridine, 試薬はすべて特級を使用した. ガラス器具は硝酸:水=1:1に一昼夜以上浸し鉄イオンの排除につとめ, 洗滌は再溜水で何回も行った. 4) 血清ビタミンB_<12>量の測定はMeynell et al^<26)>の原法に従って行った. 定量用菌株は, Lactobacillus leichmannii, 保存, 前培養および定量用培地はDifco社製市販既成培地, ビタミンB_<12>標準原液はRubramin(Squibb社製)を用いた. 試料中の菌の増殖度は試料のpHの変化から求めた. 研究成績 : 赤血球数, ヘモグロビンおよびヘマトクリット(以下それぞれをRBC, Hgb, およびHct. と略記する)は妊娠初期にすでに健常非妊婦に比し推計学的に有意の減少(P<0.05)を示した. 妊娠月数の進行につれてその減少は著明となり, 妊娠中期に最大の減少が認められ, 以後やゝ恢復傾向が認められたが, 妊娠初期の値にまでは達しなかった. 初経産別では経産群に有意の減少(P<0.05)を示した. 大部分のものは正球性正色素性を示したが, この外, 小球性低色素性および大球性高色素性のものがかなりの頻度に認められた. 血清鉄は健常非妊婦に比し有意の減少(P<0.05)を認め, 不飽和鉄結合能は有意の増加(P<0.05)を認め鉄欠乏の存在を確認した. 血清ビタミンB_<12>量は健常非妊婦に比し有意の減少(P<0.05)を認めなかった. 妊娠月数の累加にともない減少傾向にあり, 妊娠中期に有意の減少(P<0.05)が認められた. 妊娠後期ではやゝ恢復の傾向を認めた. 小球性低色素性群にも血清ビタミンB_<12>量の欠乏を認め, 又大球性高色素性群にも血清鉄の減少を認め妊娠中は鉄欠乏とビタミンB_<12>の欠乏の両者が合併しているために複雑な病相な呈するのではないかという結論に達した.
著者
寺地 智弘 舟場 正幸 土井 花織 湯浅 一之 松井 徹
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.80-84, 2012-10-10 (Released:2013-01-25)
参考文献数
15

ネコ被毛中水銀濃度測定法を検討した。ネコの頭部、頚部、背部、腹部および尾部の被毛をアセトンおよび界面活性剤で洗浄後、マイクロウェーブ分解装置を用いて密閉状態で高圧湿式灰化した。分解産物を純水で希釈し、誘導結合プラズマ質量分析装置 (ICP-MS) を用いて水銀濃度を定量測定した。認証標準物質であるヒト頭髪を用いた結果、日内変動係数 (CV) は1.9%、日間CVは3.0%、回収率は103%であり、測定下限は0.088 mg/kgであった。ウェットフード (乾物当たり水銀含量1.73 mg/kg)を給与されているネコ5頭の頭部、頚部、背部、腹部および尾部の被毛中水銀濃度を測定した結果、水銀濃度は背部が標準的な値であった。ついで、20頭のネコにウェットフード (乾物当たり水銀含量1.73 mg/kg) あるいは、ドライフード (乾物当たり水銀含量0.04 mg/kg) を28週間給与し、背部の被毛中水銀濃度を測定した。測定したサンプルは全て測定下限を上回っていた。ウェットフード群のネコの被毛中水銀濃度はドライフード群より有意に高い値を示した (p〈0.01)。本試験の結果、簡便かつ高感度でネコ被毛中水銀濃度の分析が可能であること、ならびに、ネコの被毛中水銀濃度は水銀摂取量をある程度反映することが示された。
著者
中井 智博 三橋 俊高 鈴本 宜之 舟橋 宏樹 後藤 亮吉 後藤 俊介 鈴木 ゆき 杉本 健治 星田 尚子 轟木 孝浩 松井 史子 酒井 順子 鈴木 ふみ子 河合 恵美子 早川 富博
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.4-12, 2009-05-30 (Released:2009-07-13)
参考文献数
8

介護保険制度の導入当初から,訪問リハビリテーションが漫然と在宅療養における介護サービスとして提供されることは適切ではないとされてきた。しかし,一方では利用者の目標設定をするために必要な評価方法が不十分であるのも現状である。機能的自立度評価法 (FIM) やBarthel Index (BI) を評価として取り入れるように推奨されているが,これらは「している活動」の評価であり,利用者の最大能力である「できる活動」を把握しなければ目標を設定するのは困難である。そこで,私たちは2005年に「できる活動」と「している活動」をそれぞれ同じ項目で評価し,点数化した生活機能スコア (functioning score: FS) という評価法を考案した。今回,2005年10月から2006年9月までの1年間で訪問リハビリの利用者を対象に評価を試行し調査した。「している活動」の合計得点は前回の44.1±13.7から今回の47.8±14.2へと有意に増加し (p<0.05),また「できる活動」の合計得点は前回の49.6±13.2から今回の51.6±13.5へと有意ではなかったが,増加傾向を示した。新しく考案した評価法で「できる活動」と「している活動」の差を明確にすることで,利用者のどこに問題があるのか的確に把握ができ,介護サービス事業者が共通の目標を設定できたと考えられた。
著者
松井 宣也
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
油化学 (ISSN:18842003)
巻号頁・発行日
vol.28, no.10, pp.680-688, 1979-10-20 (Released:2010-02-19)
参考文献数
57
被引用文献数
1
著者
佐原 眞 小池 裕子 松井 章 西本 豊弘 中野 益男
出版者
奈良国立文化財研究所
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1989

1982年以来,我々は原始・古代遺物に遺存する残存脂質の試行的研究を開始して,上器・石器の用途の解明,墓の認定を行い,原始古代の環境を復原するための「残存脂質分析法」を開発した。しかし,脂肪酸とステロ-ルを中心とした分析のみでは方法が確立したとはいい難い。そこで,現生資料の脂肪酸およびステロ-ルの組成に関するデ-タベ-スを作成するとともに,新たに免疫学的な方法を導入して動植物種を精密に特定して,原始古代の衣・食・住の生活復原の精度を高めるための基礎研究を行った。その結果,次の事が明らかにされた。1.肪肪酸とステロ-ルの化学組成による石器の用途の解明馬場壇A遺跡・富沢遺跡(旧石器時代)から出土した石器の用途を現生資料の脂肪酸・ステロ-ル組成を集積したデ-タベ-スから解明した。2.糞石による縄文人の食生活の栄養化学的評的価里浜貝塚・鳥浜遺跡(縄文時代前期)等9遺跡から出土した糞石の残存脂質から縄文人の摂った食物を明らかにした。主要な食事メニュ-は13種類あり,木の実,魚介類,海獣,鳥獣を組合せたバラエティ-に富む食物を摂っていた。一日約2250Kcal(9980kJ)と理想的なエネルギ-を摂り,糖質,たんぱく質,脂肪のバランスも良く,p,Ca,Fe等の無機成分やビタミンB^1・B^2も豊富で栄養化学的にも現代人が目標にしている値に近く,縄沢人の健康的な食生活がうかがえた。3.酵素抗体法(ELISA法)による土器棺と胞衣壺の同定原川遺跡(弥生時代中期)の土器棺,田篠中原遺跡(縄文時代中期末)・平城京右京三条三坊一坪(古墳時代前期)等縄文から近世までの6遺跡から出土した胞衣壺と推定される埋設土器を免疫手法のELISA法を用いて調べた。ヒト胎盤特有の糖鎖を持った古代糖脂質が検出されることから,埋設土器は土器棺と胞衣壺と認定された。
著者
松井 美由紀 乗松 貞子
出版者
一般社団法人 日本健康心理学会
雑誌
健康心理学研究 (ISSN:09173323)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.1-9, 2012
被引用文献数
2

Physiological and psychological effects of illumination with different colored lights on humans were investigated in order to improve lighting conditions in medical treatment environments. Women (<i>n</i>=12) participated in an experiment in which they were exposed to illumination using 900 lx and 200 lx white fluorescent lamps, and a 200 lx lamp covered with a green cellophane transparent film. Physiological variables such as heart rate, HF values, LF/HF ratio, and Chromogranin A in saliva, as well as psychological variables such as subjective feelings of relaxation were measured using the Visual Analogue Scale test and the short version of the Japanese Profile of Mood. Participants subjected to stress conditions created by using the Uchida&ndash;Kraepelin test under white fluorescent lighting and then tested after 15 min of rest following stress in all three lighting conditions. Results indicated that there was a suppression of sympathetic activity, an increase in parasympathetic activity, as well as an improvement in physiological responses when using the 200 lx green light. There was also an improvement in psychological reactions and the feeling of relaxation, as well as a reduction in anxiety-tension, fatigue and confusion.