著者
小林 裕子 永田 智子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.59, 2016

 【研究目的】自然災害大国の我が国において,児童生徒に対し実践的かつ継続的な災害学習の実施は必要不可欠である。本研究の目的は中学校家庭科で「災害時の食」を扱った授業を開発し,授業実践を通して有効性と適切性を評価することである。研究の第一段階として,小林・永田(2015)は中学生に災害に関する質問紙調査を実施した。その結果,中学生は「災害時の食」への不安は大きいが,災害に関する知識や家庭での備えが不足していることが明らかとなった。この結果を基に,小林・永田(2016)は,「災害時の食」を扱う3時間構成の授業を開発し,実践した。実践は兵庫県公立中学校2学年の生徒5クラス164人を対象に,2016年2月に行った。 【授業評価の結果】 開発した授業の有効性と適切性を検証するため,以下の4つを実施した。 1)授業前後に行った「災害時の食」に関する知識アンケート 「「災害食」と「非常食」の違い」,「ローリングストック法」を「分かる」と回答した生徒は,事前3.7%から事後61.8%へ,事前2.5%から事後70.4%へとどちらも授業後大幅に増加した。 2)授業終了1ケ月後自由記述感想 「各時間の授業」,「学習の内容・活動」に関してカテゴリに分類した。また生徒の「~したい」の記述は,「災害時の食」と主体的にかかわろうとする意欲の表れで重要ととらえ,これも抽出しカテゴリに分類した。「各時間の授業」について記述した生徒は70.1%であった。その内2時間目について記述した生徒は59.3%で最も多く,次いで1時間目が50.0%で,3時間目は1.9%と少なかった。「学習の内容・活動」を記述した生徒は72.7%であった。その内「災害食」・「ローリングストック法」を記述した生徒が50.0%と最も多く,次いで「ツナじゃが調理」,「ポリ袋を用いた炊飯」が各40.2%,36.6%であった。「献立作成」は4.5%と少ない結果であった。「~したい」を記述した生徒は66.9%で,「作りたい」28.2%,「備えたい」20.3%,「実践したい」11.7%,「家族で話し合いたい」11.7%であった。 3)授業終了1カ月後アンケート 「授業後,本授業について家庭で話しあった」生徒は65.1%で,思春期の中2としてはかなり多い結果であった。「授業後,「災害時の食」に関する意識や考えに変化」があったと答えた生徒は75.7%と多く,変化の内容は「節水の大切さを考えるようになった」74.8%,「「非常食」より「災害食」が便利で役立つと考えるようになった」66.1%が上位であった。 4) 有識者対象アンケート調査 家庭科教育を専門とする大学教員7人に,開発した授業のアンケートを実施し,5段階尺度で各授業の「目標設定」,「内容や方法」,「生徒の興味・関心」の適切性,「開発した3時間の授業の総合的な適切性」を尋ねた。3つの項目の平均値がほぼ4以上の評価を得,総合的な適切性も平均値は4.6と高評価であった。 【まとめと今後の課題】 1)~3)の結果から,「災害時の食」の基本的な知識の習得,備えや対策を考えること,学習内容を家庭で共有することについては,大半の生徒が達成したと考えられる。また多くの生徒が本授業を積極的に評価し,「災害時の食」について主体的に考えることができるようになったことが分かり,授業としての有効性が認められたと言える。有識者からは本授業を家庭科で扱うことは適切であるという評価を得ることができた。以上のことから,本研究で開発した授業は有効であり適切であることが示唆された。今後の課題は,まず災害時の献立を考える授業の難しさを解消するべく,授業内容や活動の改善を図ることである。家庭や地域と連携した「災害時の食」の授業開発や実践を行うことも目指したい。
著者
小林 裕 梶嶋 邦江 細田 祥子 佐久間 康富 土久 菜穂 横堀 肇
出版者
社団法人日本建築学会
雑誌
学術講演梗概集. 計画系
巻号頁・発行日
vol.2002, no.1, pp.879-880, 2002

rights: 社団法人日本建築学会rights: 本文データは学協会の許諾に基づきCiNiiから複製したものであるrelation: IsVersionOf: http://ci.nii.ac.jp/naid/110004540236/
著者
今井 賢徳 青木 直和 小林 裕幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EID, 電子ディスプレイ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.247, pp.13-15, 2007-10-04
参考文献数
5

私たちは、背景の色や模様によって見ている物の見え方が変わることをよく経験する。写真の中の人物が背景の色によっては不健康そうに見えたり、服を選ぶときにも、シャツとネクタイの色の調和を考えたりする。本研究は、この背景色の影響が見ているものに依存するのかを調べた。その結果、例えば楕円といった単純な図形より、楕円型をした顔といった具体的なものの方が背景色の影響を受けないことを明らかにした。これは背景色の影響が単純な対比効果では説明できないことを示唆している。
著者
木内 豪 神田 学 栗城 稔 小林 裕明
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
水工学論文集 (ISSN:09167374)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.381-386, 1994-02-28 (Released:2010-08-25)
参考文献数
4
被引用文献数
2 7

Growing cities have been deteriorating heat environment due to artificial coverage of the ground and artificial heat effluence. The authors focused on the watering on paved roads as one of elective and immediate measures against the situation and observed the elect on the micro climate in a city area in the last summer. The results showed that the difference in temperature and humidity at two points with and without watering were maximum 1.5 degree and 8%, respectively. In addition, the estimated heat balance at the points showed that the considerable latent heat and the lateral heat transport contributed to lower the surface temperature of the road due to watering.
著者
小林 裕美 乗越 千枝
出版者
日本赤十字九州国際看護大学
雑誌
日本赤十字九州国際看護大学intramural research report (ISSN:13478877)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.128-140, 2005-12-25
被引用文献数
3

訪問看護師の訪問看護を行うことによって生じる負担と精神的健康状態および首尾一貫感覚(SOC)との関係を明らかにする目的で、福岡県内の訪問看護ステーションに勤務する訪問看護師に調査を依頼し、有効回答を得た102名の結果を分析した。対象者は、全員女性で、40歳代の既婚者で子供がいる者が多かった。精神健康状態は良好とはいえなかったが、首尾一貫感覚(SOC)が高いほど、精神健康状態が良好になることが明らかとなった。訪問看護に伴う負担は、訪問看護師の精神健康状態に直接的に影響していなかった。その1つである「多くのことをひとりで判断すること」は、訪問看護の経験ではなく看護経験の長さに影響し、そのような訪問看護師に対する特別な配慮が必要であると考えられた。また訪問看護師は、SOCの3つの要素のうち、把握可能性、有意味感が高く、処理可能感が低いために、問題解決のための資源をあきらめず探しつづけ、正の方向に押し上げる力をもつといえる。従って、訪問看護師が問題解決できる資源を準備することが重要であることを示唆している。
著者
小林 裕幸 鈴木 正和 青木 直和
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.26, no.33, pp.21-24, 2002-05-24
参考文献数
2
被引用文献数
4

好ましい肌色が人の記憶色に基づくとの考え方が一般的に受け入れられている。本研究は肌色の記憶色そのものについて、CRTディスプレー上に示した無地、女性、男性のイラスト画、写真画像といった画像に各自が肌色として記憶している色を塗ってもらうことによって調べた。その結果、人が肌の色としてイメージするのは女性の肌の色で、しかも実際の肌の色よりもかなり明るいこと、また、好ましい肌の色の要因である記憶色とは決まった一つの色ではなく、それぞれの画像ごとにあり、色の違いに一定の傾向がある。その傾向にも年齢、性別によって差があることがわかった。
著者
小林 裕一郎
出版者
広島国際学院大学現代社会学部
雑誌
現代社会学 (ISSN:13453289)
巻号頁・発行日
no.13, pp.63-77, 2012

本稿は、日本においてノルベルト・エリアスの暴力論がどのように受容されたのかについて明らかにすることを目的とする。エリアスは、1969年まではほとんど知られることのなかった社会学者である。その彼が1970年代以降ヨーロッパをはじめ、日本においても受容されるようになったのはどうしてなのか。またその過程においてエリアスの暴力論はどのように受け取られたのか。本稿はこうした疑問に対して、日本におけるエリアスの暴力論についての論文等を参照しつつ、大まかな受容の流れを解釈しようとする試みである。 Diese Studie ist über den Akzeptanz in Japan für die Theorie von Norbert Elias. Norbert Elias, ein Soziologe in Europa, ist als Forscher der Gewalt und des Sportes. Sein Hauptwerk ist "Über den Prozeß der Zivilisation". Dies deutsch geshriebenes Buch wurde 1939 in der Schweiz gedrückt. Aber es erregte in der Nazizeit keine Aufmerksamkeit. Warum ist Norbert Elias jetzt in Japan bekannt? Und wie ist seine Theorie der Gewalt bekannt? Diese Frage zu lösen ist der Zweck dieser Studie.
著者
林 裕子 門間 正子 井瀧 千恵子 木口 幸子 森 康子 辻 紀代子 山田 惠子
出版者
札幌医科大学保健医療学部
雑誌
札幌医科大学保健医療学部紀要 = Bulletin of School of Health Sciences Sapporo Medical University (ISSN:13449192)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.9-17, 2003-03

本研究は、札幌市内の看護系大学および専門学校に在籍する女子学生180名(平均年齢20.2±1.6歳)を対象に、自覚的健康状態と健康に関わる食生活について調査した。朝食欠食の有無によって自覚的症状や食品の摂取内容、栄養バランスに差があるかどうかを知る目的で、対象者を昼食や夕食の欠食の有無に関わらず、毎日朝食を摂取している者(以下、朝食群)と朝食を欠食する者(以下、朝食欠食群)の2群にわけて解析を行った。対象者の61.8%が朝食群であった。朝食群の23.1%、朝食欠食群の41.2%の者が「風邪をひきやすい」、朝食群の67.3%、朝食欠食群の82.4%が「頭が重い感じがある」と回答し、これらの症状を持つ者は朝食欠食群で多かった(p<0.05)。朝食群と朝食欠食群共に6割以上の学生が食事に関心を持っていた。朝食群の肉類、魚類、緑黄色野菜、乳製品の摂取割合は朝食欠食群より多く、卵、大豆製品の摂取割合は逆に低かった。朝食欠食者のインスタント食品の摂取割合も朝食群より高く、食品摂取バランスも悪いことが示された。以上の結果から、朝食欠食が健康に与える影響について考察した。The subjective health condition and dietary habits of 180 female students aged 18 through 24 were investigated in a self-evaluation questionnaire survey. The subjects were divided into two groups, one eating breakfast regularly and the other not. A total of 61.8% of subjects ate breakfast regularly and 23.1% and 67.3% of them answered, "I am susceptible to colds" and "my head feels heavy", respectively, whereas 41.2% and 82.4% of those not having breakfast answered, "I am susceptible to colds" and "my head feels heavy", respectively. About 60% of total subjects were interested in dietary habits. Subjects who ate breakfast regularly had a higher frequency of intakes of meat, fish, green and yellow vegetables and dairy products than that who did not have breakfast. Subjects who did not have breakfast also ate much fast food. The result of our questionnaire survey clearly shows that not eating breakfast had a bad influence on the health of female students.
著者
小林 裕史 堀田 恭平 高田 尚樹 藤本 貴之
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告情報システムと社会環境(IS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.20, pp.1-6, 2010-03-10

本論文では,旧世代の機器と,現代のコンピュータ技術を接続した装置を提案する.本研究ではそのような試みを 「想い出のデザイン」 と呼んでいる.「想い出のデザイン」 とは,旧世代の 「想い出」 を喚起させつつ,新しいコンピュータ技術による新感覚のシステムを開発することを意味する.本研究で進めている複数の 「想い出のデザイン」 事例を紹介し,とりわけ,「黒電話」 をモチーフとした 「想い出のデザイン」 の開発について詳述する.In this research, we propose the device that connects old generation's equipment with modern computer technology. A new sense system by a new computer technology was developed rousing old generation's "Memories".
著者
小林 裕 Kobayashi Hiroshi
出版者
三重大学水産学部
雑誌
三重大学水産学部研究報告 (ISSN:02875772)
巻号頁・発行日
no.13, pp.p25-133, 1986-11
被引用文献数
1

この研究は,深海性サメ類と深海底延縄との関わり,および,分布と生態的な特性を解明するため,熊野灘海域(本州南東岸)において、主として底延縄による漁獲試験を行い,つぎの諸点を明らかにした。1.漁獲試験を行った水域は,長鳥沖,尾鷲沖,および,阿田和沖に存在する海底谷,あるいは,その近傍を主とする水域(3漁場)である。これらの海域の深海(200~1100m)における海洋環境(水温,塩分量)は,周年安定していて,漁場間の相遵もきわめて微少である。また,溶存酸素極小層の酸素量は,1.6~1.7mL/Lで1500mに至ると約2.1mL/Lまで増加する。長島沖,および,尾鷲沖漁場の海底地形は,海底谷をやや離れた比較的平坦な水域であったが,阿田和沖漁場は海底谷の真上,および,その近傍の海底傾斜の急峻な凸凹のある複雑な水域であった。海底を覆う底質は3漁場とも細かい砂を含んだ泥土であった。2.底延縄の海底における縄成り(枝縄の水中形状)は,漁具性能を決定する重要な要素の一つであり,浮子とロープの浮力,その海水抵抗,沈子の固定力とその流水抵抗,および,海底における流速などによって決まる。理論計算の結果,枝縄は,海底においてほぼ直立状態にあると考えてよいことが分かった。3.この研究によって,熊野灘海域から生息が確認された底層性サメ類は,これまでに,この海域から確認されている種,この海域で初めての種,稀にしか漁獲されない種など8科20属31種(底延縄が3科10属19種,底刺網が7科13属17種)に達した。これらの中から,ツノザメ科サメ類9属18種を,これまでに,他海域(銚子沖と駿河湾)において記録されているツノザメSqualidae科のサメ類(TANIUCHI、田中、TANAKA,YANO and TANAKA)と比較すると,隣接海域の共通性は駿河湾を挟さんだ銚子沖と熊野灘海域の共通性に比べて高い。4.長島沖,および,尾鷲沖漁場ではへラツノザメDeania calceaが,阿田和沖漁場ではタロウザメ Centrophorus acus が最も多獲され最優占種の地位にある。漁場によって第2優占種以下の種が異なる。種組成を類似度指数Cλ(Morisita)を適用し比較すると,長島沖漁場と尾鷲沖漁場の類似性はきわめて高い。しかし,これらの2漁場と阿田和沖漁場の類似性は低く,サメ類相は種組成においても量的組成においても明瞭な相違がある。5.底層性サメ類(主としてツノザメ Squalidae 科のサメ類)の深度別釣獲率(分布)を種に関係なくみると,どの漁場においても釣獲率の一つのピークが,300~500mに存在する。この深度を越えると漸次減少傾向に移行するが再び増加し,長島沖漁場では,1000mを超える深海に,きわめて高い釣獲率域の存在が確認された。これは1000m以探における高い密度域の存在の示唆と考える。また,魚種組成は異なるが釣獲率の変化傾向は,どの漁場においてもほぼ同じであった。さらに,この結果はインド洋西部で Foster et al. が,行った漁獲試験結果とよく対応する。釣獲率を種別にみると,分布水域は種間で重なりを持つが,高釣獲率域は,種によって異なり,多獲される種は,漁場と深度によって特定される。また,漁獲種数は深度によって異なる。これらの結果は、深度によってサメ類相が質的にも量的にも相適することを示すものと考える。6.タロウザメ Centrophorus acus は、等深線の尾根付近の比較的傾斜の緩やかな水域を,モミジザメ Centrophorus squamosus は海底谷の傾斜の急峻な水域を主分布域とする。両種の混獲関係には,負の相関性が認められた。また,フトカラスザメ Etmopterus priceps とニセカラスザメ Etmopterus unicolor とは,分布の重なりは全くなく,明瞭にすみ分けていることが分かった。さらに,タロウザメ C. acus は、海底地形の急峻な水域で,へラツノザメ Deania calcea は比較的平坦な水域で多獲され生息域に地形的な相違があることが分かった。このように,深海性サメ頬は、地形や深度によって独自の生活場所を形成している。7.延縄に沿った漁獲傾向を調べた結果,一回の操業で延縄が敷設された限られた水域における,深海性サメ類の水平的な分布のパターンは,ランダム分布で近似できるが,種によって所々に濃密な分布域が存在することが分かった。8.枝縄に沿った漁獲傾向から,深海性サメ類は,必ずしも,常に着底生活を営むものでないこと,どのサメ類も海底から,10数メートルを越えて上昇し摂餌していることが推定された。9.海洋環境と漁獲の関係を検討した結果,深海性サメ類の海洋環境への適応の幅は,比較的広いことが推定された。また,タロウザメ C.acus, へラツノザメ D.calcea, および,カラスザメ E.pusillusなどの探海性サメ類は,急激な海洋環境の変化に対する耐性が強いことが推定された。 このような特性を持つ深海性サメ域の構成種を,制限し決定する要因の一つとして,海洋環境が,強く関与しているとは考えにくい。地形的な相遼が結果したものと考えられる。10.夜縄と昼縄の漁獲を比較したところ,釣獲率は昼縄に比べて夜縄の方が著しく高い。この結果は,深海性サメ類の摂餌活動が,昼間より夜間に活発化することの現われであり,夜間に摂餌活動が活発化する種の多いことを物語る。11.深海性サメ類の加害生物は,食害の痕跡から腐食性生物(Scavenger)が目立つ。サメ類も加害魚として関わりを持つ。しかし,サメ類の漁獲と食害魚との間に相関性を認めることばできなかった。これは,サメ類が食害を受けにくいことを示すものと考える。サメ類の食害率は,低く平均5.2%であった。12.生物調査結果 a.フジクジラ E.lucifer,および,へラツノザメ D.calcea の全長組成のモードの位置は,雌雄で明らかに相違(雌の方が大型である)する。また,タロウザメ C.acus,モミジザメ C.squamosus,へラツノザメ D.calcea,ニセカラスザメ E.unicolor,および,ビロウドザメ S..squamosus では,複数の位置にモードがみられ,モードの位置より小さい側で漁獲個体数が少ない。これは,漁具の選択性によるものと考えられる。へラザメ A platyrhynchus とフトカラスザメ E. princeps は資料が少なくモードの位置は明確でない。 b.全長と体重の問には,明瞭な曲線関係が存在する。両者の関係は,Table14の通りである。へラツノザメ D.calceaの雌では,調査した月(5月と10月)によって体重の相違が認められたが,どの種についても全長と体重関係の調査月による相違は肯定できなかった。 C.肝重比(体重と肝臓重量の比)は種によって異なる。また,同種であっても個体間のバラツキが大きい。へラザメ A platyrhynchus の平均肝重比は10%に満たない。フジクジラ E.lucifer は約12~13%であるが,アイザメ Centrophorus 属のサメ類では20数%に達し,この海域で漁獲されたツノザメ Squalidae 科のサメ類の申で最も大きい。サメ類の肝臓機能(Baldridge,Castro,Compagno)を考えると,肝重比の大小は,種による行動能力の強弱を強く反映しているものと考える。また,へラツノザメ D.calceaとフジクジラ E.luciferの肝重比は,明らかに調査した月によって相違が認められた(Fig.32参照)。 d.胃内容物の目視観察を行った結果、深海性サメ類は,底層を基盤として生活するサメ類であるが,底層から表層付近に至る幅広い生物を捕食していた。アイザメ Centrophorus属のサメ類,および,へラツノザメ D.calceaからは,表層および中層性の魚類が観察された。落下物を捕食した可能性もあるが,これらのサメ類の肝重比は大きく,行動能力との関連が考えられる。 e.一般に,この海域で漁獲されたサメ類の性成熟の大きさは雌の方が大きい。フジクジラ E.lucifer,および,ニセカラスザメ E.unicolorなどで明瞭な相違が認められた。年を通してみた,この海域における大部分のツノザメ Squalidae 科のサメ類の性比は1:1であるが,へラツノザメD.calceaとフジクジラE.luciferでは調査した月によって違いが認められた。 繁殖生態に関する調査と観察の結果,オシザメ P.microdonlの産仔様式が非胎盤性胎生(卵胎生)であること,胎抒の栄養吸収方は卵食性でないことが確認された。 また,交接器,子宮,生殖巣を観察した結果,タロウザメC.acus,および,モミジザメ C.squamosusは,未熟個体に限られた。大部分のへラツノザメ D.calceaは未熟であったが,成熟した雌2個体が確認された。へラザメA platyrhynchus(卵性)の輸卵管内には周年卵殻が観察された。また,フジクジラE.luciferは8月に胎仔が,どの季節にも大型卵巣卵,子宮内下降卵が観察された。ニセカラスザメ E.unicolorでは4月に胎仔が,5月と10月に大型卵巣卵が観察された。これらのサメ類の雄の精巣は膨大していて,周年精液が確認された。このように,種によって繁殖生態の一端を知ることができたが,多くの種については,断片的な資料にとどまり,多くの未解明な事項がのこされた。今後の課題として他梅域を含む調査と研究が望まれる。 13.深海底延縄漁業は,他の漁業との競合が少なく,地形的制約を受けることも少ない。また,小人数で小型の船を用いて行うことができる。したがって,現在,利用度のきわめて低い熊野灘海域における深海漁場の開発とその利用は、現漁業の延長として十分考えることができる。また,深海性サメ類は,残された数少ない未利用水産資源の一つであり,その適正な漁獲と利用は,今後の地域漁業の発展を考える上に取組まなければならない重要な課題の一つと考える。This study was performed in the Kumano-nada region along the Pacific coast of Japan, mainly, by fishing tests using bottom longline, in order to clarity distribution and ecological characteristics of deep-sea shark and their relationship with deep-sea bottom longline. The following are the results obtained. 1. Areas of fishing tests are located at 5 - 15 miles lrom the coasts of Nagashima, Owase and Atawa. Marine environment (water temperature and salinity) of deep-sea in these regions (200 - 1,100m) was stable the whole year, and difference among fishing grounds were also quite small. The dissolved oxygen was 1.6 - 1.7mL/L, and it, reached to 2.1mL./L at 1,500m - depth. Bottom topgraphy of the fishing ground of Nagashima and Owase offshores was relatively plateau at a distance from a submarine valley, but the region of the fishing ground of Atawa offshore was just over the valley or over uneven steep slopes around the valley. Sea bed was covered with fine mud. 2 . Shapes of branch-lines of bottom longline on the sea bed is an impor tant facter for the evaluation of efficiencies of fishlng gear, and it is determined by buoyancy of floats and ropes, their current-resistance, the fixing power of sinker and its current-resistance and the speed of current on the sea bottom. Theoretical calculation based on our data showed that branch-lines on the sea bottom would be almost in a vertical position. 3 . Deep-sea sharks, confirmed for their inhabitation in Kumano-nada region through this study, reached to 31 species covering 24 genera of 8 families ( 3 families, 10 genera, 19 species by bottom longline and 7 families,13 genera, 17 species by bottom gill net) including known, new and rare species in this region. Among them, dogfish sharks (18 species of 9 genera)were compared with the sharks of squalidae reported so far in different region (Choshi-offshore and Suruga-Bay; Taniuchi, Tanaka and Yano ).Commonness of the species in adjoining region were high compared to those in the separated regions (Choshi and Kumano, separated by Suruga-Bay). 4 . Needle dogfish, Centrophorus acus, and birdbeak dogfish, Deania calcea, were the highest catches and the first dominant species in fishing grounds of Nagashima and Owase offshores (former species ) and Atawa offshore (latter one ), relatively. Second and less dominant species varied depending on the fishing ground. When content of the species were compared by the Morisita's Cλ fishing ground of Nagashima and Owase offshores showed quite high similarity, while Atawa offshore showed a low similarity compared to the former two grounds. Consequently, the shark biota were clearly different depending on the fishing grounds in terms of both the contents in their species and amounts. 5. Hooked-rate at different sea depths (distribution) were checked on deep-sea sharks (mainly dogfish shark ) independently of the species. A peak ofthe hooked-rate was found at 300 ~ 500m in each fishing ground. The ratio deereased gradually as the depth exceeded this level, but increased again; alayer with quite high hooked-rate was found at more than 1,000m-depths at the Nagashima fishing ground. This could be an indication that there wouldbe a layer (s) with high density of sharks under futher deepend area. These change in the depth were basically the same in all the studied fishing grounds, although the species-content was different. ln addition, these results corresponded well with another result of fishing tests of Forster et al. (1970) performed in a western area of the Indian Ocean. As regarding the species, their distribution areas were overlapping, their areas of high hooked-rate differed and the species with frequent catchingwere spesified by the fishing ground and sea depth. Catches in number regarding species and their varibility differed depending on the fishing ground. It was also found that shark biota changed with sea depth. 6. The main distribution region of needle dogfish , Centrophorus acus, was located around the axes of the valley and leafscalegulpershark, Centrophorus squamosus, were located around the ridg of countourelines, respectively. A negative correlation was found between the two species on their simaltaneous catching. Aiso, no overlap was found with regard to the distribution of great lanternshark, Etmopterus princeps, and Brown lantern shark, Etmopterus unicolor, clearly indicating their habitat segregation. Deep-sea shark, thus, were forming their habitat independent from each other by each own specific conditions of topography and depth. 7. Based on the catching tendency along the longline, it was found that spatiai distribution of deep-sea sharks on the sea bed is approximated atrandom. Based on the catching tendency along the branch-line, it was found that dogfish sharks were not always leading a bottom-clinging life; all speciesshow feeding activity asending over 10 meters from the sea bed. 8 . Results of an examination on the relationship between marine environ ments and catches indicated that the adaptation ability of deep‐sea sharksinto marine environments was relatively high. lt seems reasonable that the topographic characteristics, but not a marine envirornent, are concerned with these specific species or deep - sea shark asfactors which restricted and identified them into one group. 9. Hooked‐rate for night operation was remarkably high compared to day operation. This result indicate that feeding activity of dogfish sharks is morefrequent at night than day. 10. Scavengers were found to be the most frequent natural enemy of dogfish sharks judging from the signs of damage, in addition to some sharks as the enemy fish. No prey‐predator correlations, however, were found among caught sharks. Rate of damaged sharks was low (5.2% in average). This result seem to indicate that sharks are highly tolerant againist natural enemies. 11. Biological examination and observation a) Positions of mode or T.L.. composition were clearly different between male and female (female was bigger) in the case of birdbeak dogfish, Deania calcea and blackbelly lanternshark, Etmopterus lucifer. Two modes were observed for needle dogfish, C. acus, leafscale gulpershark, C. squamosus, birdbeak dogfish, D. calcea, brown lanternshark, E..unicolor,and velvet dogfish, Scymnodon squamulosus,.Their catches in number were low at smaller side of the mode's position, although the results could be explained as matter of selecting the rishing gear. The Position or the mode of spatularsnout catfish, Apristurus platyrhynchus, and great lanternshark, E.princeps, were unclear because of insufficient data. b) A distinct relationship on a curved line was observed between the total length and weight. The equational relationship is shown in Table 14. The relationship varied depending on the investigated months (season) in the case of birdbeak dogfish, D. calcea, and blackbelly lanternshark, E.lucifer. c) L/B (ratio of body weight to liver) was species‐dependent, but the rate fluctuated widely even among strain of the same species. Mean valuesof the L/B of spatularsnout catfish, Apristurus platyrhynchus, and blackbelly lanternshark, E..lucifer, were below 10% and 12 ~ 13%, respectively. Sharks of the genus Centrophrus showed over 20% of the rate; this was the highest value among sharks of family Squalidae which had been fished in this region. Based on the liver function of sharks (Baldridge, Castro and Compagno) the size in the L/B seemed to be reflecting strongly each species strength of action ability. In addition, obvious changes in the L/B were observed depending on the investigated month (season) in the case of birdbeak dogfish, Deania calcea, and blackbelly lanternshark, E. lucifer (see Fig.32). d) Macroscopic observation of stomach contents indicated that deep‐sea sharks were praying upon many creatures ranging from the sea bottom to the surface layer despite the fact that they were deep‐layer living sharks. Surface‐living fishes, were found in stomachs of birdbeak dogfish, D.calcea,and sharks of the genus Centrophorus. The L/B of these sharks were high, reflecting their high action abilities. e ) The size of sexual maturation was generally large in females among sharks fished in this region, and this difference was remarkable especially in blackbelly lanternshark, E. lucifer, and brown lanternshark, E..unicolor.Most sharks of fhe family Squalidae in this region showed a sex ratio of 1: 1 for a whole year, although some monthly (season) variations were found in bridbeak dogfish, D. calcea, and blackbelly lanternshark, E..lucifer. The mode of reproduction of false catshark, Pseudotriakis micrdon, was the mode of non-placental type and the nutritional type of embryo was not oophagous. Observation of the clasper, uterus and sexual gland confirmed that all the examined strains of needle dogfish, C. acus, and leafscale gulpershark, C.squamosus, were immature. Most birdbeak dogfish, D. calcea, were immature, and only two matured females were observed. The egg case was observed for a whole year in the oviduct of spatularsnout catshark, Apristurus platyrhynchus, (oviparous ). In the case of blackbelly lanternshark, E. lucifer, embryo was found in Augast and large ovarian eggs and fertilized eggs were observed for a whole year. In the case of brown lanternshark, E. unicolor, an embryo and large ovarian eggs were observed in April and in May and October, respectively. Testis of the male of these sharks was swelling, and seminal fluides were observed for a whole year. But the data on most species were still fragmentary. In order to fulfill these unsettled term, further studies are required expanding the investigation regions. 12. Bottom longline in the deep-sea has very little competitions with other fisheries, topographic limitations are negligible and it can be performed bya small number of people using a small boat. Therefore, development and application of deep-sea fishing ground in the Kumano-nada region, which has very little utility value at present, can be considered as an extention of present fisheries. Since deep-sea sharks are one of the few remaining fisheries resources undeveroped, proper fishing control and application will be the important subjects we have to solve considering future developments of local fisheries.
著者
飯島 健太 今泉 祥子 青木 直和 小林 裕幸
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会冬季大会講演予稿集 (ISSN:13434357)
巻号頁・発行日
no.2013, pp.1-2-1-"1-2-2", 2013-12-18

Aiming an automatic method for creation of pixel art, four Imaging processes, Lanczos-Resampling, MDA-Clustering, Canny Edge Detector, and Coloring of Contour process were used. The last process is particularly new proposal of pixel art and results in an expression almost like 16-bit video-game console.
著者
冨岡 勉 三ツ林 裕巳 赤枝 恒雄 新谷 正義 羽生田 俊 大隈 和英 田村 憲久 河野 太郎 河村 建夫
出版者
一般社団法人 日本移植学会
雑誌
移植 (ISSN:05787947)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.001-006, 2016-03-10 (Released:2016-03-25)
参考文献数
2

It has been five years since the revised Organ Transplant Act went into effect, but the number of organ transplants has not increased; indeed, there has been a decreasing trend in the number of cases. Because of that, we have decided to respond by establishing a Parliamentarians' League for Consideration of Organ Transplants in the parliament. Although various measures have been undertaken up to now, we express our renewed determination to execute stronger measures, in cooperation with medical societies, the Japan Organ Transplant Network, and other groups, with the aim of increasing the number of transplants to over 200 cases within five years.
著者
小林 裕史 前川 聡 浦久保 孝光 玉置 久
出版者
一般社団法人 システム制御情報学会
雑誌
システム制御情報学会 研究発表講演会講演論文集 第50回システム制御情報学会研究発表講演会
巻号頁・発行日
pp.16, 2006 (Released:2006-12-01)

本講演では,球体内部に搭載したジャイロの角運動量を制御することによって駆動トルクを発生・制御する構造の球体ロボットについて,球体ロボット本体および操縦インタフェースの設計・製作,シミュレーションおよび実機実験による性能評価結果を報告する.また,実機におけるニューテーションや外乱の影響についても考察・検討する.
著者
林 裕二
出版者
日経ホーム出版社
雑誌
日経マネー (ISSN:09119361)
巻号頁・発行日
no.284, pp.36-39, 2006-09

もうすぐ第1四半期決算発表。軍師! 決算書から勝利のヒントをつかむための解読法を教えてください。はい。私は今回軍師なんですね(笑)。四半期決算の情報開示が上場企業に義務化されたのは'04年。歴史は浅いんです。四半期決算で開示される書類は厳密には決算書という名前ではなく「四半期財務・業績の概況」。本決算の「決算短信」に比べ簡略化された書類になります。
著者
小林 裕子 俣野 修身 後藤 真康
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.p449-453, 1984
被引用文献数
2

酢酸グアザチンguazatine triacetate [1, 1′-iminodi-(octamethylene)diguanidinium triacetate]はアルカリ溶液中において, りんごおよびぶどう中の成分に結合しやすい.そこで, りんごおよびぶどう中のどの成分に結合するかを検討した.その結果, フルクトースがグアザチンに結合する要因物質の一つであることが判明した.また, フルクトースのどの位置がグアザチンとの反応に関与しているかを検討した結果, C_1位およびC_2位における水酸基およびカルボニル基が関与していると推定できた.