- 著者
-
小林 雅之
- 出版者
- 日本歯科大学
- 雑誌
- 奨励研究(A)
- 巻号頁・発行日
- 1995
I.歯科医師の正立顔写真および倒立顔写真のテスト映像に対する小児の眼球運動をビジコンアイカメラ用いて測定した。そして,被験者を6歳未満の低年齢児群と6歳以上の高年齢児群とに二分して分析し,以下の結論を得た。1.年齢差を認めたのは,視線の走査した範囲,飛越運動の角度,視線の方向性,輪郭線を通過した回数などであった。2.低年齢児群は視線の走査する範囲が狭く,顔の内部に視線が集まり,高年齢児群は視線の走査する範囲が広く,顔の輪郭を越えて背景と顔とを視線が運動した。また,低年齢児群は水平方向に次いで垂直方向の視線の動きが多く,高年齢児群は水平方向に次いで斜め方向の視線の動きが多かった。II.歯科医師,歯科衛生士そして小児患者個々の母親が登場する診療室での小児の見えを再現したビデオ映像を作成し,さらに,そのビデオ映像に三者のことばかけを加え,テスト画像が視覚刺激から視聴覚刺激へと変化した場合の小児の眼球運動の変化について実験を行い,以下の結論を得た。1.視覚刺激での最終停留点の部位は,歯科医師48.9%,それ以外51.1%、母親21.3%,それ以外78.7%,歯科衛生士27.7%,それ以外72.3%であった。2.ことばかけ(視聴覚刺激)による視線の動きは,歯科医師走査群76.6%,非走査群23.4%,母親走査群63.8%,非走査群36.2%,歯科衛生士走査群51.1%,非走査群48.7%であった。3.最終停留点で歯科医師,母親,歯科衛生士の三者それぞれに停留した被験児の割合と,三者それぞれの走査群の場合とを比較すると,三者のいずれも話しかけにより走査群は増加し,視覚刺激が視聴覚刺激に変わると,小児は視聴覚刺激を多く見ることがわかった。