著者
小林 礼奈
出版者
公立大学法人 国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域
雑誌
国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域実習報告論文集 (ISSN:21853983)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.33-69, 2014

本稿では,筆者の在籍する大学院修士課程の2 年次に行われた3 学期にわたる日本語教育実習(秋実習・冬実習・春実習)を通して筆者が行ったアクション・リサーチについて報告する。筆者は,秋実習及び冬実習を振り返り,「学習者の発話量」や「フィードバック」に関する問題点について考察を行う過程で,学習者の口頭表現能力の向上にそれらの要素がどのように貢献しているのかという根本的な疑問を抱き始めた。そのような考えから口頭表現能力を重視した教授法に関する先行研究を調べた結果,学習者の言語的挫折を誘発し,そこに適切な表現を導入する「タスク先行型ロールプレイ」が口頭表現能力を伸ばすために有効な手段であるのではないかと考えた。よって,その実施を春実習の課題とし,春実習では「学習者のレベル把握」「ロールプレイのタスク設定」「フィードバック」を意識したタスク先行型ロールプレイを行った。実施の結果,言語的挫折の誘発やフィードバックが適切に行われた例も見られ,学習者の口頭表現能力にもポジティブな変化が見られた。しかし,考察の結果,今回実施したタスク活動に関する問題点がいくつか挙げられたため,その問題点に対する改善案の提示を行い,今後の課題とした。
著者
小林 由弥 鈴木 雅大 松尾 豊
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.I-L75_1-17, 2022-03-01 (Released:2022-03-01)
参考文献数
63

Ability to understand surrounding environment based on its components, namely objects, is one of the most important cognitive ability for intelligent agents. Human beings are able to decompose sensory input, i.e. visual stimulation, into some components based on its meaning or relationships between entities, and are able to recognize those components as “object ”. It is often said that this kind of compositional recognition ability is essential for resolving so called Binding Problem, and thus important for many tasks such as planning, decision making and reasoning. Recently, researches about obtaining object level representation in unsupervised manner using deep generative models have been gaining much attention, and they are called ”Scene Interpretation models”. Scene Interpretation models are able to decompose input scenes into symbolic entities such as objects, and represent them in a compositional way. The objective of our research is to point out the weakness of existing scene interpretation methods and propose some methods to improve them. Scene Interpretation models are trained in fully-unsupervised manner in contrast to latest methods in computer vision which are based on massive labeled data. Due to this problem setting, scene interpretation models lack inductive biases to recognize objects. Therefore, the application of these models are restricted to relatively simple toy datasets. It is widely known that introducing inductive biases to machine learning models is sometimes very useful like convolutional neural networks, but how to introduce them via training depends on the models and is not always obvious. In this research, we propose to incorporate self-supervised learning to scene interpretation models for introducing additional inductive bias to the models, and we also propose a model architecture using Transformer which is considered to be suitable for scene interpretation when combined with self-supervised learning. We show proposed methods outperforms previous methods, and is able to adopt to Multi-MNIST dataset which previous methods could not deal with well.
著者
田原 寛之 ルドルフ ジェイソン クアリア 林 智広
出版者
公益社団法人 日本表面真空学会
雑誌
表面と真空 (ISSN:24335835)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.141-146, 2019-03-10 (Released:2019-03-10)
参考文献数
33
被引用文献数
1

In this review, we present the current situation of designs of biomaterials using techniques of informatics. In particular, we discuss the prediction the responses of proteins and cells toward materials and data-driven design of new biomaterials. We introduce our recent work, in which we analyzed the correlation among chemical structures of molecules constituting self-assembled monolayers (SAMs), amounts of adsorbed protein, a density of adhered platelets by machine learning using an artificial neural network model. The main conclusion is that the quality of the database is a critical factor in determining the accuracy of the prediction and material design. We also discuss technical issues to develop databases efficiently and systematically to expand the possibility of data-driven strategies to design biomaterials.
著者
余田 翔平 林 雄亮
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.63-74, 2010-07-16 (Released:2014-02-07)
参考文献数
14
被引用文献数
1

本稿の目的は,義務教育修了時以前に父親が不在であること(早期父不在)によって,地位達成にどれほどの格差が生じ,その格差が時代とともにどのように変化してきたのかを明らかにすることである.従来の社会階層・移動研究では,地位達成過程の初期段階で父親がいなかった人々は欠損値として分析から除外されることが多かった.しかし近年,そういった人々の地位達成に着目する動きが見られる. 「社会階層と社会移動調査」を用いて,早期父不在者の教育達成と初職達成を分析したところ,以下の点が明らかになった.(1) 早期父不在者が高学歴化の流れに取り残される形で,短大以上の高等教育機関への進学格差は拡大傾向にあった.(2) 安定成長期以降,早期父不在を経験した人はそうでない人々と比較して,ブルーカラー職として労働市場に参入する傾向が強まり,専門職や大企業ホワイトカラー職に初職で入職できる割合も低かった.(3) 早期父不在者の初職達成上の不利は低い教育達成によって引き起こされていた.
著者
林 正義
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.121-143, 2019 (Released:2021-07-28)
参考文献数
7

大学の学部専門課程で利用される財政学や公共経済学の教科書では,課税が市場に与える効果の一例として,完全競争市場における部分均衡の枠組みを用いた「物品税の効果」が取り上げられている。その典型的な解説は,納税義務が供給者にある場合,物品税によって供給曲線が税率分だけ上方に「シフト」し,シフト後の「供給曲線」と需要曲線との交点が物品税下での新しい市場均衡になるというものである。本稿では,この物品税の効果に関して,1990年以降に出版された財政学や公共経済学の教科書111点がいかなる解説を行っているかを検証する。そして,多くが必ずしも正確に解説しているわけではなく,場合によっては読者(学生)を誤った理解へと誘導しているおそれがあることを指摘する。
著者
小林 庸平 佐藤 主光 鈴木 将覚
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.172-189, 2020 (Released:2022-01-19)
参考文献数
18

地方財政のテキストにおいて固定資産税は「望ましい地方税」の代表例としてあげられる。ただし,その前提は土地に対する課税であることだ。しかし実際のところ,日本の固定資産税は土地に加えて,家屋や機械設備等,償却資産をその対象に含む。とくに償却資産に対する課税は,固定資産税に法人税とは異なる形での資本課税の性格を与えてきた。そこで本稿では資本税としての固定資産税の経済効果を検証する。具体的には工業統計調査および経済センサス活動調査(経済産業省・総務省)の事業所別パネルデータを用いて,固定資産税の償却資産課税が設備投資(有形固定資産の形成)に及ぼす影響について実証した。推定結果からは,固定資産税が設備投資を損なっている(マイナス効果が有意になっている)こと,とくに流動性制約に直面している(キャッシュフローが負の)企業に対するマイナス効果が高いことが明らかになった。
著者
阿部 花南 築舘 多藍 桑宮 陽 横山 幸大 越後 宏紀 小林 稔
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.1547-1557, 2022-09-15

会議やグループワーク等複数人で行われる議論の場において,沈黙が生じることで会議が円滑に進まず,有意義な議論を行うことができないという問題が起こることがある.この原因の1つとして,会議参加者の気持ちが参加者間で共有されず,議論を深めるべきなのか,次の話題に進めるべきか,の判断が困難であることがあると考える.この問題を解決するために本研究では,意思決定型会議を対象に,会議進行に影響する意思を「気持ち」と定義し,賛同します・反対します・意見あります,の3つの気持ちの可視化を支援するボタンを参加者に使用させることで,会議進行を円滑にする方法について検討した.提案システムを用いた評価実験の結果,参加者の主観評価において「活発に議論ができたこと」と「参加者間で意思の疎通が取れていること」の2つの観点で,システムの使用条件と不使用条件の間に有意差が認められた.本論文では,評価実験の結果を報告し,可視化すべき気持ちの種類やユーザインタフェース,議論に与えた影響について議論する.
著者
小林 北斗 山本 晴彦 原田 陽子
出版者
日本時間学会
雑誌
時間学研究 (ISSN:18820093)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.27-36, 2015 (Released:2017-02-28)

現在、小売業や商店街の店舗数は大型スーパーマーケットの存在や後継者不足等の要因で衰退の一途をたどっている。それらに加えて洪水による被害も衰退加速の要因となる場合があり、結果的に多くの店舗で廃業せざるを得ない状況に陥ってしまうこともある。特に、商店街における高齢化は深刻な問題である。そのため、自然災害の被害を受けた店舗への実態を把握し、様々な方面から支援を行うことが大事である。本内容では、現在の商店街における状況把握や今後の防災対策、避難行動へと還元することを目的に、自然災害、特に豪雨によって被害を受けた二つの商店街(2009年台風9号によって8月9日に兵庫県で発生した豪雨の被害を受けた佐用郡佐用町の佐用商店街と、2010年梅雨前線によって7月15日に山口県で発生した豪雨の被害を受けた山陽小野田市厚狭地区の厚狭商店街)についてアンケート調査を実施した。その結果、両商店街において回答の違いが見られ、浸水深の違いが影響していると推察される。また、住民と行政間でコミュニケーションを取り合うことが重要であり、高齢化の進む商店街への対策も併せて考える必要がある。
著者
宮林 茂樹
出版者
関西法政治学研究会
雑誌
憲法論叢 (ISSN:24330795)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.45-73, 1997-12-18 (Released:2018-01-10)

Die Probleme in der Familie, z. B., der Elternmord, der Kindermord, die Prostitution des Machens und der verheirateten Frau haben ein ernstes Stadium erreicht. Die Ursache liegt darin, dass das Familiensystem vom Familienrecht weggestrichten worden war. Das Familiensystem hatte eine Grundlage fur die Anschauung uber die dahingeschiedenen Seelen der Vorfahren gebildet. Deshalb ist das Familiensystem eine japanische Kultur und Tradition. Die Abschaffung des Familiensystem ist eine Zerstorung der Kultur und Tradition.
著者
村上 孝作 吉藤 元 小林 志緒 川端 大介 田中 真生 臼井 崇 藤井 隆夫 三森 経世
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会総会抄録集 第33回日本臨床免疫学会総会抄録集 (ISSN:18803296)
巻号頁・発行日
pp.36, 2005 (Released:2005-10-18)

【目的】 抗Ku抗体は日本人の強皮症(SSc)+多発性筋炎(PM)の重複症候群に見出される自己抗体として報告された.しかし,米国ではSLEに最も多く検出されると報告され,人種ごとの遺伝的背景の違いによると考察されてきた.そこで我々は抗Ku抗体陽性の自験例について臨床的特徴を検討した.【方法】 2001年から2004年までに当院で診療した膠原病とその疑い例1185例の保存血清についてRNA免疫沈降法を施行し,高分子核酸スメアを沈降した血清をさらに35S‐メチオニン標識HeLa細胞を用いた蛋白免疫沈降法を行って抗Ku抗体を同定した.【結果】 70kDa / 80kDa蛋白へテロ2量体を免疫沈降する抗Ku抗体は6例(0.51%)に陽性であり,SLEとPMの重複例2例,SLE 2例(1例はCK値上昇あり),PM 1例,未分類膠原病(レイノー現象・手指硬化症・クリオグロブリン血症・CK値上昇)1例であった.抗Ku抗体陽性6例中,PMないし筋病変は5例に,SLEないしSLE様症状は4例に,両者の重複は3例に認められた.また,多発関節炎が5例に,レイノー現象が4例に,手指硬化などの強皮症様症状が2例に認められた.【結語】 少数例の解析ではあるが,抗Ku抗体は筋炎重複症候群と関連し,特徴的な臨床像を示す可能性が示唆された.
著者
清水 奈緒 大澤 義明 小山 泰代 小林 隆史
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.74, no.639, pp.1059-1066, 2009-05-30 (Released:2009-11-30)
参考文献数
27

The balance of the sexes affects economic and social relationships within a community. The imbalances in the number of men and women may affect marriages and fertility patterns, labor force participation and the sex roles within the society. Therefore, many types of regional and urban planning such as community services requires sex ratios. First, we show the quantitative procedure to evaluate such imbalance based on a test of statistical hypothesis. Then, we measure such an imbalance of prefectures and cities in Japan.
著者
山崎 慎也 澁澤 登 栗林 剛 唐沢 秀行 大日方 洋
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.522-527, 2012-10-15
参考文献数
11

(1) 杏仁をエタノール濃度0&sim;99.5 % (v/v)の水溶液に1&sim;3日間,25℃で浸漬し,アミグダリン量の変化を調べた結果,エタノール濃度10&sim;30% (v/v)の範囲の水溶液に浸漬した杏仁において,特にアミグダリンの低減促進効果が高かった.<BR>(2) 0,20,50% (v/v)のエタノール水溶液に杏仁を浸漬し,アミグダリンの低減における酵素分解と浸漬液への溶出の割合について調べた結果,分解量は20% (v/v),溶出量は50% (v/v)で特に高い数値を示した.<BR>(3) 細胞損傷による酵素溶出がエタノール水溶液による低減の要因である可能性について検討し,エタノール濃度0% (v/v)においてもアミグダリンの減少が見られたことなどから,細胞損傷はエタノール水溶液によるアミグダリン低減機構の直接的な要因ではない考えられた.<BR>(4) 以上の結果から,エタノール水溶液によるアミグダリン低減促進効果の要因の一つとして,杏仁からのアミグダリンの溶出力とエタノール水溶液中での酵素活性のバランスにより,10&sim;30% (v/v)のエタノール濃度で特に高くなったという機構を推察した.<BR>(5) 杏仁を20% (v/v)エタノール水溶液に35℃で2日間浸漬することによってアミグダリン濃度を低減した後,蒸留水に交換してさらに35℃で2日間浸漬し,その後40℃で16時間送風乾燥を行うことで,最終的にシアン化水素残存量を7&mu;g/gまで低減することができた.<BR>本研究の一部は,第58回日本食品科学工学会大会において発表した.
著者
林 侑輝 坂井 貴行 山田 仁一郎
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.67-79, 2022-06-20 (Released:2022-09-17)
参考文献数
29

大学発技術の上市(製品化)を促進するプロセス要因を明らかにするために,日本の技術移転機関(TLO)における39件のプロジェクトを調査した.質的比較分析の結果によると,上市の促進のために重点化されるべき活動は特許出願前の入念なプレマーケティングと,製品開発ステージにおける境界連結活動の2点である.この発見は,科学技術の商業化に関する適合的な価値連鎖パターンが日米で異なることを示唆している.
著者
伊藤 雅 林田 巧
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌C(電子・情報・システム部門誌) (ISSN:03854221)
巻号頁・発行日
vol.124, no.7, pp.1396-1403, 2004 (Released:2004-10-01)
参考文献数
13
被引用文献数
1

This paper presents an optimization method for guitar fingering. The fingering is to determine a unique combination of string, fret and finger corresponding to the note. The method aims to generate the best fingering pattern for guitar robots rather than beginners. Furthermore, it can be applied to any musical score on single notes. A fingering action can be decomposed into three motions, that is, a motion of press string, release string and move fretting hand. The cost for moving the hand is estimated on the basis of Manhattan distance which is the sum of distances along fret and string directions. The objective is to minimize the total fingering costs, subject to fret, string and finger constraints. As a sequence of notes on the score forms a line on time series, the optimization for guitar fingering can be resolved into a multistage decision problem. Dynamic programming is exceedingly effective to solve such a problem. A level concept is introduced into rendering states so as to make multiple DP solutions lead a unique one among the DP backward processes. For example, if two fingerings have the same value of cost at different states on a stage, then the low position would be taken precedence over the high position, and the index finger would be over the middle finger.
著者
佐藤 浩 小野 功 小林 重信
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能 (ISSN:21882266)
巻号頁・発行日
vol.12, no.5, pp.734-744, 1997-09-01 (Released:2020-09-29)
被引用文献数
5

When Genetic Algorithms (GAs) are applied to optimization problems, characteristic preserving in designing coding/crossover and diversity maintaining in designing generation alternation are important. Generation alternation models are independent of problems, while coding/crossover depends on problems. We discuss generation alternation models in this paper. Simple GA is one of the well-known generation alternation models, however it has two problems. One is early convergence in the first stage of search and the other is evolutionary stagnation in the last stage of it. Many improvements and new models have been presented to overcome the above problems. In this paper, we propose a new generation alternation model called minimal generation gap (MGG) which has all advantages of conventional models. As generation alternation models use only information of fitness, alternation of generations can be regarded as a transformation of fitness distributions. We propose a new method of assessing generation alternation models. We measure the ability of avoiding the early convergence and suppressing the evolutionary stagnation by the dynamics of the best value and variance of fitness distributions. From the results of some experiments, we found that MGG is the most desirable model which can avoid the early convergence and suppress the evolutionary stagnation. We also show the efficiency of MGG by applying it to benchmarks in different two domains: function optimization and traveling salesman problems. In the both domains, MGG showed higher performance than the other conventional models especially under small population size.