著者
佐藤 れえ子 御領 政信 小林 沙織
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

猫多発性嚢胞腎の嚢胞形成機序を明らかにするために、腎嚢胞細胞PKD1遺伝子変異によるツーヒット変異を証明し、嚢胞細胞増殖シグナル伝達経路をブロックする分子標的薬を決定して、猫における至適投与量を模索した。その結果、嚢胞ネットワークを通じて全国より血液検体と死亡症例の腎臓を収集でき、PKD1遺伝子のPCR-RFLP法とダイレクトシークエンスによる遺伝子検査の結果、腎嚢胞細胞PKD1遺伝子にホモ型変異を検出し(エクソン29、c.9891)ツーヒット変異が生じていることを明らかにした。治療薬にはcAMP pathwayを抑制するトルバプタンを選択し、短期投与と長期投与を実施して投与量を決定した。
著者
椎貝 達夫 前田 益孝 小林 隆彦 棚瀬 健仁 小林 君枝
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.928-932, 2003-03-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

慢性腎疾患 (CKD) の進行抑制に低たんぱく食 (LPD) は不要という説がある。しかしCKDのうちの非糖尿病性腎症 (NDN) を対象としたLPDのランダム化比較試, 験 (RCT) についてのメタアナリシス (MA) 3篇では, いずれのMAでもLPDは「進行抑制に有用」と結論されている。他領域でも行われているような, RCT一つ一つの質を評価し, 質の高いものだけのMAを行えば, LPDの有用性はさらに高まると思われる。一歩退いて進行抑制にLPDが無効の場合を考えてみよう。WHO/FAOが疾病予防の観点から30年前に発表した一般人の食事についての勧告では, 推奨される1日たんぱく摂取量 (DPI) はたんぱく0.8g/kg/dayであった。しかし先進国では国民のDPIはどの国でも1.1~1.3g/kg/dayである。CKDに対し食生活に何の規制も加えなければ, この一般人のたんぱく摂取量になってしまうだろう。一般人より心血管系リスクがはるかに高いNDN・CKD例がたんぱく制限なしで良いとは到底考えられない。つまりどのような立場であってもDPIのモニタリングをキチンと行い, DPIO.89/kg/day, あるいはDPI0.6g/kg/dayになるような指導を行い, その条件下に降圧療法, レニン・アンジオテンシン系抑制, アシドーシス補正, 腎性貧血の治療などの総合的な進行抑制療法を行うべきだろう。
著者
三島 修治 平林 耕一 清水 公裕 江口 隆 三浦 健太郎 松岡 峻一郎 濱中 一敏 原 大輔
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2023-04-01

本研究では、主に肺腺癌に対する新たな治療戦略の一つとしての新規キメラ抗原受容体発現遺伝子改変T細胞療法(CAR-T療法)の開発を目的とします。私たちはすでに、このCAR-T細胞が新たに標的とする抗原を特定し、この標的に対して特異的に結合しうるタンパク質の遺伝子配列を複数同定しています。本研究では、肺腺癌の腫瘍細胞株を用いた実験に加え、マウスを使った動物実験により、この新規CAR-T細胞の有効性を検証します。
著者
吉川 和男 小林 航 島崎 康信 下村 博之
出版者
一般社団法人 日本写真測量学会
雑誌
写真測量とリモートセンシング (ISSN:02855844)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.258-261, 2021 (Released:2022-11-01)
参考文献数
4

The 2018 Hokkaido Eastern Iburi Earthquake brought about great numbers of landslides in the broad area of the eastern Iburi region, Hokkaido, especially Atsuma town. As emergency disaster response to the earthquake, PASCO Corporation carried out 1) taking oblique aerial photographs, 2) automatic extraction of landslides using optical satellite imagery (SPOT6), 3) detection of surface deformation with DInSAR analysis and 4) field surveys based on DInSAR analysis. This paper introduces the analysis of extraction utilizing optical satellite images with deep learning, which has been actively studied in recent years.
著者
上床 喜和子 須佐美 隆史 井口 隆人 大久保 和美 岡安 麻里 内野 夏子 髙橋 直子 松林 幸枝 阿部 雅修 末永 英之 森 良之 髙戸 毅
出版者
特定非営利活動法人 日本顎変形症学会
雑誌
日本顎変形症学会雑誌 (ISSN:09167048)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.26-36, 2016-04-15 (Released:2016-05-20)
参考文献数
32

Acromegaly is caused by growth hormone excess owing to a pituitary adenoma after completion of growth and tends to lead to mandibular prognathism. In this paper, two patients with mandibular prognathism caused by acromegaly and treated by surgical-orthodontic treatment are reported. The first case was a 36-year-old male who was referred to our hospital to correct mandibular prognathism and malocclusion after resection of the tumor in the pituitary gland. The second case was a 26-year-old male who was referred from an orthodontic clinic for orthognathic surgery. He had not been diagnosed as acromegaly but a typical double-floor of the Turkish saddle was found in the lateral cephalogram. Blood tests revealed acromegaly. Surgical-orthodontic treatments were performed after resection of the pituitary adenoma and confirmation of normal level of blood growth hormone (GH) and somatomedin C. In both cases, multi-bracket appliances were worn and bimaxillary osteotomy (Le Fort I osteotomy for maxillary advancement and bilateral sagittal splitting ramus osteotomies for mandibular setback) was carried out to secure the intraoral space for the enlarged tongue. After post-surgical orthodontic treatment, the treatment results were good and stable in both cases. These cases showed that surgical-orthodontic treatment for patients with acromegaly after pituitary adenoma resection is reliable. The importance of careful examination of the craniofacial shape in patients with mandibular prognathism to detect acromegaly is emphasized.
著者
許 懷哲 絵野沢 伸 小林 英司
出版者
一般社団法人 日本臓器保存生物医学会
雑誌
Organ Biology (ISSN:13405152)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.35-41, 2019 (Released:2019-03-29)
参考文献数
26

近年,再生医療や医療機器開発の分野で,ブタを用いた研究報告の数が増している.背景として,臨床を再現できるサイズメリット,実験向けに育種されたミニブタ,マイクロミニブタといった小型ブタが比較的容易に入手できるようになったこと,そして遺伝子改変ブタの開発がある.また,愛玩動物として古い歴史のあるイヌを実験にあまり用いなくなったことも大きい.研究報告が増すことによって,基盤的な情報やプロトコールが蓄積され,今後,ますます大型実験動物としてのブタの使用が増えることが予想される.本稿では,これまでの報告から,ブタを用いた臓器・組織移植実験における免疫抑制法を紹介する.基本的には,cyclosporine あるいはtacrolimsと,mycophenolate mofetilの2剤併用が多く,一部ではさらにステロイドも投与している.また,胸腺摘出の有効性も報告されている.これらの方法により,同種移植だけでなく,ヒト組織・細胞を含む,異種移植実験も続々と報告されるようになった.
著者
林 貴大 木村 暢佑 中森 いづみ 樋口 嘉久 宮嶋 智子
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.294-295, 2018 (Released:2018-08-16)
参考文献数
5

MethylphenidateはADHDに使用され, 適正使用ガイドには脳血管発作 (脳出血, 脳梗塞, くも膜下出血) の報告例が記載されている. 今回methylphenidate内服中に2回の脳出血を来した13歳男子を経験した. 6歳7か月からmethylphenidate 18mg, 9歳1か月よりatomoxetine 20mgを毎日内服していた. 10歳9か月時に意識障害を生じた. 頭部CTでは左側頭葉に出血が認められた. 血圧, 身体所見, 血小板数, 凝固能, 抗核抗体, 頭部MRIやMRAでは異常所見はなかった. 保存的加療で1か月後の頭部CTでは出血像は消失していた. 薬剤性を考慮し2剤を中止したが, 多動や集中力低下が著明であり出血3か月後からmethylphenidateのみを再開した. 後遺症なく経過していたが, 12歳11か月時トランペット吹奏中に同部位に再出血を来した. 脳血管造影検査では器質的疾患の存在は否定的であった. Methylphenidateは構造や作用がamphetamineに類似している. Amphetamine使用例での脳血管発作の報告例は散見する. 機序として, 血管炎, hypertensive spikesや脳血管奇形の破綻が報告されている. 本症例では, これらの所見は指摘できなかったが, methylphenidateは稀に脳出血を来しうることを考慮する必要がある.
著者
林 利憲
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

有尾両生類であるイモリは精巣を完全に除去されても、再生することができる。精巣の再生は、精巣に隣接する結合組織内の幹細胞から、生殖細胞を含む組織が再形成されるという特徴を持つ。この精巣再生を可能とする仕組み理解することは、哺乳類が精巣を再生できない原因の解明にもつながる。本研究では、自ら確立したイベリアトゲイモリのモデル実験系としての長所を駆使して、1)再生を開始させるシグナルの解明、2)精巣再生に寄与する幹細胞の同定、そして3)再生過程を制御する遺伝子ネットワークを提示して、イモリ精巣再生の機構を明らかにすることを目指す。
著者
齋藤 岳人 樋口 大樹 井上 和哉 小林 哲生
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.93, no.2, pp.139-149, 2022 (Released:2022-06-25)
参考文献数
24

Perimetric complexity, which is a simple metric of character (letter) complexity defined by an image’s area and peripheral length, has been widely used, especially in alphabetic orthographies. We examined whether perimetric complexity is also a valid index for Japanese kana characters (hiragana and katakana) by comparing it with subjective complexity. We obtained evaluations of subjective complexities from Japanese and English speakers and calculated the mean of each character for each type of speaker for character-based analyses. The analyses revealed three main findings: (a) Perimetric complexity was highly correlated with subjective complexity (rs > .85), and its correlation was higher than that between the subjective complexity and other measures for character complexity (i.e., stroke count). (b) The perimetric complexities were highly correlated across different typefaces, except for significantly different typefaces. (c) Subjective complexity was highly correlated between Japanese and English speakers. These findings suggest that perimetric complexity can also be used as an index for Japanese kana character complexity.
著者
西 正孝 山西 敏彦 林 巧
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌 (ISSN:00047120)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.115-120, 2004 (Released:2019-01-31)
参考文献数
36

核融合炉開発は進展し, 国際熱核融合実験炉ITERの工学設計が完成して建設活動を始めるべく準備が進められている。現在, 開発を進めている核融合炉は重水素とトリチウムを燃料とするが, トリチウムは放射性気体であり, また, 天然には稀少であるため, 核融合炉内で消費量に見合う量の生産を行う。このため, トリチウムの有効利用とその取り扱いに係る安全を確保するトリチウム・システムの開発は核融合炉の実現に必要不可欠である。本稿では, 核融合炉のトリチウム・システムについて, ITERのトリチウム・システムの設計とその技術基盤を中心に紹介するとともに, 今後の課題について述べる。
著者
小林 利行
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.2-25, 2023-05-01 (Released:2023-05-19)

NHK放送文化研究所が行った新型コロナに関する3回目の世論調査の結果について報告する。本稿では、感染が長期化する中で人々の意識や生活にどのような変化があったかを考察し、特に去年からの行動制限の緩和などの「ウィズコロナ」に向けた政策が、これまでコロナ禍のしわ寄せを受けていた女性や自営業者などにどのような影響を及ぼしたかに注目する。主な結果は以下の通りである。 感染拡大が『不安だ』という人は84%と多いが、時系列では年々減少している。外出回数は過去に比べて増え、特に「散歩や運動」「買い物」の回復が目立つ。一方で、ストレスを感じる人は少しずつ増加している。過去と同じように女性のほうがストレスを感じる人が多く、「ウィズコロナ」に向けた制限緩和による減少はほとんどみられない。ストレスの原因として「収入が減っていること」を挙げた人は、全体では19%だが自営業者では50%となっている。これは過去と同様の数字で、現時点では回復の兆しはうかがえない。 感染収束後でも、マスクを「前よりは多く着ける」と「できるだけ着ける」が合わせて約75%に上った。その理由の90%は「衛生上の理由」だが、「素顔をさらしたくないから」という人も7%いて、18~39歳では男女とも16%いた。コロナの法律上の扱いを引き下げることに『賛成』は約6割で、『反対』を上回った。賛成の理由は「重症化しづらくなっている」などで、反対の理由は「感染しやすくなるから」などだった。
著者
高柳 明夫 小林 皇 橋本 浩平 加藤 隆一 舛森 直哉 伊藤 直樹 塚本 泰司
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.99, no.7, pp.729-732, 2008-11-20 (Released:2011-01-04)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

症例は32歳, 男性. 両側精巣萎縮と性欲減退を主訴に2006年2月9日に当科を初診した. 問診より1999年からのアナボリックステロイド (AAS) の濫用が判明した. 身体所見では両側精巣容積が13mlと萎縮していた. 内分泌的検査では黄体化ホルモン, 卵胞刺激ホルモン, 総テストステロンは低値であり, 遊離型テストステロン (Free T) は高値だった. また, 後日判明した sex hornomne binding globulin (SHBG) も低値であり, 算出された calculated Bioavailable testosterone (cBAT) も低値だった. 以上の所見からからAASの濫用による低ゴナドトロピン性性腺機能低下症と診断した. AASの中止のみで経過観察を行ったが改善を認めなかったため, 5月18日より週1回のヒト絨毛性ゴナドトロピン (hCG) 3,000単位筋肉注射を開始した. その後6月22日に内分泌学的検査を施行したが自覚症状, 内分泌検査所見ともに改善は認めていない. AASの濫用により低ゴナドトロピン性性腺機能低下症となることが知られており, 一部の患者ではAAS中止後も性腺機能低下症が改善しないことが報告されている. 本症例においてはhCG注射を早期に開始したことが早期に精巣機能を改善するかどうかについて今後の注意深い観察が必要である. また, 本症例の病状を把握する上では free T よりもcBATを用いることが有用だったと考えられた. AASには多くの重篤な副作用があり安易な使用は控えるべきである. またAASの副作用に関しての広い啓発により濫用を防ぐことが必要と考えられた.
著者
林 隆敏
出版者
日本監査研究学会
雑誌
現代監査 (ISSN:18832377)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.32, pp.54-64, 2022-03-31 (Released:2023-09-02)
参考文献数
12

日本の上場会社が公表する非財務情報(およびその基礎にある企業活動)に対して実施されている保証業務の実態を把握し,研究課題を明らかにすることを目的として,TOPIX100構成銘柄発行会社を対象として非財務情報保証業務の実施状況を調査し,入手した94件の保証報告書を分析した。確認した非財務保証業務のほとんどは,国際会計士連盟の枠組みまたはそれに準じる枠組みに準拠したサステナビリティ情報(数値)の基準準拠性または算定の正確性等に関する保証業務であるが,業務実施者ごと,あるいは業務実施基準ごとに特徴的な保証業務も確認された。現行実務の分析結果に基づき,国際会計士連盟の枠組みとは大きく異なるAA1000保証基準に準拠したAA1000アカウンタビリティ原則への準拠性・適合性の保証業務との対比を通じて,記述情報を含む報告書全体の基準準拠性や表示の適正性等の保証に関する研究課題を提示した。
著者
田畑 泰彦 林 壽郎 筏 義人
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1994

本研究の目的は、細胞の分化増殖を促す細胞増殖因子を材料とうまく組み合わせることにより、積極的に細胞を増殖させる機能を備えた生体材料を開発することである。つまり、細胞増殖因子の徐放化技術とこれまでの人工材料とを複合化することによる生体材料の創製を試みる。そのため、その第一段階としての、細胞増殖因子の徐放化の検討を行った。この徐放化技術により、増殖因子のin vivoでの安定性の向上、ならびにその作用を有効に発揮させることができる。そこで、平成6年度には、増殖因子を徐放化するための高分子ハイドロゲルの調整、ならびにハイドロゲルからのモデルタンパク質の徐放化を調べた。タンパク質はその環境の変化により容易に変性失活することから、まず、架橋ハイドロゲルを作製し、その後、タンパク質をハイドロゲル内に含浸させる方法によりタンパク質含有ハイドロゲル製剤を得た。平成7年度においてはハイドロゲル用の生体内分解吸収性の高分子としてゼラチンを取り上げ、グルタルアルデヒドにて化学架橋することによりゼラチンハイドロゲルを作製した。これらの架橋試薬ならびにゼラチンの濃度を変化させることにより、ゼラチンハイドロゲルの分解性はコントロール可能であった。ハイドロゲルからの塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)の徐放を試みたところ、ハイドロゲルの分解とともにbFGFが徐放され、その徐放パターンがハイドロゲルの含水率、つまり分解性により変化することがわかった。本年度はbFGF含浸ゼラチンハイドロゲルから徐放されるbFGFの生物活性について検討した。その一つの方法として、bFGF含浸ゲルをマウス皮下に埋入した後の血管新生効果を評価した。bFGFの水溶液投与群においては全く血管新生が認められなかったのに対して、bFGF含浸ハイドロゲルの周辺には有意な血管の新生が認められ、ハイドロゲルから徐放されたbFGFの生物活性が残存していることが確かめられた。また、微粒子状のゼラチンハイドロゲルを用いた場合にも、同様にbFGFの血管新生作用の増強が見られた。
著者
那須 識徳 山根 伸吾 小林 隆司
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.532-540, 2022-05-18 (Released:2022-07-04)
参考文献数
18
被引用文献数
1

目的:高齢になり運転などの移動手段を変更する必要がある場合に,個人の感情面や態度の準備状況を把握するための自記式質問紙としてAssessment of Readiness for Mobility Transition(ARMT)がある.本研究ではARMT日本語版(ARMT-J)の言語的妥当性を検証することを目的とした.方法:「尺度翻訳に関する基本指針」を参考にして「順翻訳,調整,逆翻訳,逆翻訳のレビュー,認知的デブリーフィング,認知的デブリーフィングのレビュー,校正,最終報告」を実施した.順翻訳と調整は国内の作業療法士3名が行い,逆翻訳は翻訳会社に依頼した.逆翻訳のレビューと認知的デブリーフィングのレビューは開発責任者に依頼し,認知的デブリーフィングは地域在住高齢者5名を対象に行った.結果:順翻訳では5項目,逆翻訳のレビューでは3項目で意見の相違が確認された.特に項目11の原文である「Moving to a retirement community is too restrictive for my desired mobility.」の中の「retirement community」は日本では普及しておらず,翻訳者間で日本語訳に相違を認めた.海外では「retirement community」は高齢者のための居住地域または建物と定義されており,翻訳にかかわった作業療法士3名と開発責任者にて協議のうえ,日本語訳は「高齢者のための住宅」とした.さらに,開発責任者に確認を行い,加齢のため移動手段を変更せざるを得ない場合,居住地域を変更する必要があるという意味が含まれているという補足文書をつけ,ARMT-Jを完成させた.結論:本研究ではARMT-Jの言語的妥当性を検討し,妥当と思われる日本語訳を作成した.
著者
戸田 勝善 林 艾光 矢田 貞美
出版者
The Japanese Society of Agricultural Machinery and Food Engineers
雑誌
農業機械学会誌 (ISSN:02852543)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.70-78, 2002-05-01 (Released:2010-04-30)
参考文献数
17

本研究は, ホタテガイの耳吊り養殖における自動開孔のための左右殻の方向制御方法を開発するために, 着目した力学的現象の解析を行ったものである。著者らは, 適当な条件の下で貝を静水中に投入した場合, 水中において左殻が鉛直方向上側へ向くように回転することを発見し, この現象を動力学的に解析することによって左右殻の方向制御に対する適用可能性を検討した。この運動を表現する動力学モデルを構築し, 運動計測実験により同モデルにおけるパラメータを同定した。同定したパラメータに基づくシミュレーション結果は計測結果と良く一致しており, 動力学モデルの妥当性が確認された。また, 同運動を本モデルに基づいて解析し, その力学的原理を明らかにした。さらに, 構築した動力学モデルをもとに種々の条件下でシミュレーションを行い, 左殻上向き運動の左右殻の方向制御に対する適用の可能性を示した。