著者
藤川 君江 林 真紀 上里 彰仁
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.344-353, 2021 (Released:2021-12-25)
参考文献数
20

本研究は,総務省が指定する過疎地域のうち東北地方,関東地方,四国地方,九州地方,の5町村で暮らす,75歳以上の1人暮らし男性を支えている心理・社会的要因を明らかにすることを目的とした。調査対象者は,自己選択・自己決定が可能でコミュニケーションに障がいのない,1人暮らし男性21人であり,調査方法として半構成的面接を行なった。分析は,内容分析の手法を用いた。分析の結果,1人暮らしを支えている心理的要因は,【生活のなかで見つけた生きがい】,【時間に捉われない気ままな生活】,【根付いた土地での生活】の3つのコアカテゴリーが抽出された。社会的要因は,【子との関係性変化を受容】,【地域コミュニティの絆】の2つのコアカテゴリーが抽出された。 調査地域は,人口減少と高齢化率の上昇によりコミュニティが縮小している。そのため,地域住民で支えあうことは限界があり,社会的に孤立する可能性がある。対象者が身体的衰えを自覚し,老いと向き合わなければならないとき,メンタルヘルスを維持することが,1人暮らしの継続に大きく影響すると考える。本人が望む地域で最期まで暮らし続けるためには,こころのケアができる専門職と行政が連携し,メンタルヘルスを支えるサポート体制の構築の必要性が示唆される。
著者
森 正樹 林 恵津子 Masaki Mori Etuko Hayashi
出版者
埼玉県立大学
雑誌
埼玉県立大学紀要 = The bulletin of Saitama Prefectural University (ISSN:13458582)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.27-34, 2012

障害児保育巡回相談を行う専門職が、幼稚園・保育所との協働関係を構築する際の諸課題について面接法により調査した。その結果、これらの現場で、必ずしも専門職の役割が十分に理解されず、巡回相談の有効活用が進まない状況が示された。また、保育者に現場の実践に根ざした具体的なアドバイスを行うことの難しさも報告された。さらに、専門職と保育者の間に依存的関係が固定化するリスクや、対等な関係構築の困難さも指摘された。 これらを踏まえ、専門職に求められるコンサルテーションの技術に関し、以下の諸点の提言を行った。1.関係性の中に自らの専門性を位置付ける柔軟性、2.保育者の実践に学ぶ姿勢、3.発達障害児等のニーズを包摂する保育実践の再構成への支援、4.保育者の協働性開発への支援、5.保育者による実践の言語化と課題解決プロセスの促進・共有、6.状況把握の俯瞰的視点、7.健全な批判を可能とするパートナーシップの構築、8.保育者が自らの専門性と創造性を開発するための支援。
著者
萩原 政夫 林 泰儀 中島 詩織 今井 唯 中野 裕史 内田 智之 井上 盛浩 宮脇 正芳 池田 啓浩 小沼 亮介 熱田 雄也 田中 勝 今村 顕史
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.3-8, 2023 (Released:2023-02-11)
参考文献数
19

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)オミクロン株流行期において,当院血液内科外来通院中に感染し,発症した11症例について報告する。化学療法が施行中の5例中4例が中等症-II以上となり,内2例はその後重症化し死亡に至った。一方で未施行の6例では1例のみが中等症-IIに進行するも重症化は免れ,残り5例は軽症から中等症-Iに留まった。モノクローナル抗体治療薬が発症から8日以内に投与された4例は全て生存し,投与がされなかった1例と投与が遅れた1例はSARS-CoV2 IgG抗体価が低値のまま死亡に至った。変異株の中では比較的重症化率の低いとされるオミクロン株の感染においても血液悪性疾患,特に化学療法によって免疫不全状態にある場合の重症化リスクは依然として高く,特異抗体の獲得が不十分あるいは大幅に遅延することがあり得るため,抗ウイルス薬に加えて積極的な抗体療法が予後を改善する可能性がある。
著者
鹿角 昌平 小林 史博 芝野 牧子 松岡 慶樹
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.119-127, 2022-07-25 (Released:2023-01-25)
参考文献数
13

医療従事者を対象とした新型コロナウイルス感染症に係るワクチン(以下,新型コロナワクチン)の優先接種に際して,長野中央病院(以下,当院)では感染制御チーム(Infection Control Team:ICT)からのワクチンに関する情報提供や,副反応が生じた際の特別休暇制度を設ける等の対応を行った.当院が行ったこれらの対応や,その他の各種情報が,当院職員の新型コロナワクチン接種に関する意思決定に与えた影響について調査した.“感染学習会やICTからの情報”が意思決定に与えた影響度は有意に高かったが,“特別休暇制度”の重視度は有意に低かった.新型コロナワクチンの接種行動に関して働きかけを行う際には,単に感染の危険性や接種のメリットを訴えるだけでなく,受け手側の特性を十分考慮した上で,効果的な手法を採用すべきであると考えられた.
著者
林 雅敏
出版者
一般社団法人 日本人工臓器学会
雑誌
人工臓器 (ISSN:03000818)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.1569-1582, 1990-12-15 (Released:2011-10-07)
参考文献数
31

骨折治癒過程の補助診断法の一つとして, 伝導音検査法に注目し本法の臨床応用の可能性につき実験的ならびに臨床的に検討した. 骨伝導音検査法は, 骨の破壊強度を表す吸収エネルギー値が骨の固有振動数に二次関数的な相関を有するという理論に基づいて, 周波数分析から骨癒合強度を知ろうとする方法である. ハンマーを用いて経皮的に骨の一端を叩打し骨に振動を与え, 他端のマイクにより音波として受波するものである. 本法を29頭の犬を用いた実験により実証し, 臨床的に57症例に対し本法を行い臨床応用の可能性を検討した. 動物実験の結果, 創外固定例では骨の癒合強度の指標である吸収エネルギー値と骨振動の卓越周波数は二次関数的な相関を示すことがわかった. また動物実験ならびに臨床例で保存的治療群および創外固定群は本法により骨癒合過程の診断が可能であった. しかし, 内固定群では本法による骨折治癒過程の追跡は困難であった.
著者
浅野 豊美 池田 慎太郎 金 敬黙 李 鍾元 木宮 正史 磯崎 典世 山内 康英 太田 修 林 夏生 吉澤 文寿 西野 純也 金 敬黙 小林 玲子 藤井 賢二 長澤 裕子
出版者
中京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

日韓米三国の資料からなる『日韓国交正常化問題資料集』を刊行し、また新規公開資料を利用した最初の本格的な実証研究を、法政大学出版局から『歴史としての日韓国交正常化』上・下、2分冊として、日本学術振興会の出版助成により刊行することが確定した。さらに、研究成果の社会的還元のため、「日韓国交正常化の現代的意味」と題した公開シンポジウムを、東京大学において朝日新聞・東亜日報の後援を得て開催した。また、2008年日本国際政治学会年次大会日韓合同部会の正式企画を担当・運営し、新たな問題提起と専門研究者との討論を行った。国外の国際学会であるアメリカアジア学会(AAS)では韓国の研究協力者と合同しパネルを組織し、日韓米三国の研究者による討論の場を作って報告した。
著者
小林 俊司 光明寺 雄大 辻川 麻実 高橋 未奈 沖田 将慶
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.1-9, 2021-01-15 (Released:2021-02-19)
参考文献数
10

全身麻酔下にレミフェンタニル(RF)とフェンタニル(F)を約3ng/mLの効果部位濃度で維持し,血圧低下・徐脈作用を比較した.80名を対象とし,無作為にRF群,F群の2群に分けた.心拍数(HR),収縮期血圧(SBP),拡張期血圧(DBP),平均血圧(MBP)の最大低下率(%)は,RFではそれぞれ20.3±15.9,39.5±12.8,35.0±12.2,35.7±12.1%,Fでは19.2±15.8,34.9±11.8,28.4±11.7,29.7±11.1%(M±SD)であった.除脂肪体重,年齢,フェニレフリン,アトロピンの影響を精査した結果,RF群とF群で有意差はないと考えられた.
著者
東野 和幸 杉岡 正敏 小林 隆夫 湊 亮二郎 丸 祐介 笹山 容資 大塚 雅也 牧野 隆 坂口 裕之
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会論文集 (ISSN:13446460)
巻号頁・発行日
vol.57, no.664, pp.210-216, 2009 (Released:2009-06-01)
参考文献数
10
被引用文献数
3 2

Liquid Natural Gas (LNG) will be used as propellant of near future space vehicles and rocket engines. Cooling characteristics of engines, especially methane thermal cracking characteristics depend on material candidate for nozzle and chamber cooling passage material temperature. This paper describes these effects on coking and sample analysis method is suggested.
著者
本多 樹 小林 亮太 中尾 敬
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第85回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PM-027, 2021 (Released:2022-03-30)

身体内の生理状態に対する感覚のことを内受容感覚という。自身の内受容感覚にどの程度気づくことができると思うか(内受容感覚の気づき)や,正確に検出することができるか(内受容感覚の鋭敏さ)には個人差があることが知られており,この2つの個人差には関連がないことが報告されている。発表者らは内受容感覚の気づきを測定する尺度として日本語版BPQ-BA超短縮版を作成したが,内受容感覚の鋭敏さとの関連は未検討である。内受容感覚の気づきや鋭敏さには文化差があることが示されているため,本邦におけるこれら2つの指標間の関連は,海外における報告とは異なる可能性がある。そこで,日本人の大学生62名を対象に検討を行った。参加者は日本語版BPQ-BA超短縮版への回答と,内受容感覚の鋭敏さを測定する2つの課題(心拍カウント課題,心拍弁別課題)を実施した。その結果,心拍弁別課題の成績との関連においては弱い正の関連がある傾向が認められたものの(心拍カウント課題 rho=-0.07 p=.61;心拍弁別課題 rho=0.22, p<.10),内受容感覚の2つの指標間には関連がないという海外の報告と概ね一致した結果が認められた。
著者
井原 拓哉 秋本 剛 大林 弘宗 山中 悠紀 浦辺 幸夫
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.357-362, 2010 (Released:2010-09-15)
参考文献数
15

Decrease in the hip extension range of motion (HE-ROM) can cause lumbar hyperlordosis. Hyperlordosis is one of the mechanisms underlying low back pain. A diagnosis of low back pain from hyperlordosis can be used to detect the area in which hyperlordosis occurs more easily—the upper or lower lumbar spine. Twenty-one men were recruited for this study. HE-ROM was measured manually. Lumbar alignment was measured on a bed in a prone position. We extended the subject's hip by bending the bed at 4 angles (0°, 10°, 15°, 30°) and measured the spinal alignment by using a SpinalMouse. The results showed that lumbar lordosis increased at the bed angles of 15°and 30°. Only when the bed angle was changed from 0° to 30°, the increased angle of the lumbar spine was negatively correlated to the HE-ROM (r=-0.46, p<0.05), particularly that of the lower lumbar spine (r=-0.47, p<0.05). These findings suggested that lower lumbar lordosis tends to increase in individuals with poor HE-ROM. Additionally, increase in lower lumbar lordosis is attributed to the tendency to have low back pain in the lower lumbar spine.

1 0 0 0 歌舞伎以前

著者
林屋辰三郎著
出版者
岩波書店
巻号頁・発行日
1954
著者
網中 裕一 吉岡(小林) 徹
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究 技術 計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.77-95, 2020-05-01 (Released:2020-05-13)
参考文献数
37
被引用文献数
3

This study addresses the potential of crowdfunding of scientific research as a complementary source of funding to competitive government-funded research grants. Although a growing number of academic researchers expect scientific crowdfunding to support academic research that is not funded through traditional grants, few studies have investigated the motives of crowdfunding contributors. This study develops hypotheses regarding the relationship between crowdfunding and its returns or emotional motivations. The hypotheses are tested using an internet survey of 3,443 Japanese citizens regarding their willingness to contribute to academic research. We controlled two biases, disinterest and acquiescence, in the responses by applying a randomized experiment method. Our results identify two influential determinants of both an interest in donating and the willingness to contribute, namely, research that increases empathy and research that contributes to global knowledge. We also find that returns from crowdfunding, such as increasing national scientific competitiveness, do not always drive donation behavior. The results confirm the usefulness of crowdfunding in supporting various types of academic research.
著者
林 泰寛 高村 博之 正司 政寿 中沼 伸一 古河 浩之 牧野 勇 中川原 寿俊 宮下 知治 田島 秀浩 北川 裕久 太田 哲生
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.747-751, 2014-03-31 (Released:2014-09-29)
参考文献数
9

劇症肝炎は,その急激な病態の進行から他臓器障害を発症する例にもしばしば遭遇する。今回われわれは劇症肝炎に急性膵炎を合併した2例を経験した。2例の肝障害の内訳はB型慢性肝炎急性増悪1例,原因不明1例であった。2例ともに内科的治療が奏功せず,肝移植を予定した。劇症肝炎に対する治療に並行して膵炎に対する治療も行ったが奏功せず,肝移植を中止せざるを得なかった。劇症肝炎に対する治療は肝移植を含め,一定の成績が期待できるため,他臓器合併症の予防と治療が重要であり,急性膵炎の合併にも十分な注意を払う必要がある。劇症肝炎に合併する急性膵炎においてはB型肝炎ウイルスの関与が知られている。一方で,近年high mobility group box 1の急性膵炎の病態への関与も示唆されており,その特性を利用した治療が期待される。
著者
田中 香織 杉木 知武 林 睦子
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 第28回九州理学療法士・作業療法士合同学会 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
pp.82, 2006 (Released:2007-05-01)

【はじめに】今回、大腿骨頚部骨折後に人工骨頭置換術(以下BHA)を施行した患者を担当した。本症例は、生活意欲は高いが認知面低下の為、転倒・脱臼のリスクを伴い、生活への適応が困難と思われた。今回、生活機能向上を目指し、状況を変えてのADL訓練と環境面を中心に作業療法(以下OT)アプローチを行い、ADL向上が見られたので考察をふまえ報告する。【症例紹介】年齢:84歳 性別:男性 診断名:左大腿骨頚部骨折 現病歴:H17年12月24日に自宅にて転倒し27日にBHA施行。合併症:関節リウマチ(classIII)左片麻痺(Brs-stage:上肢IV・手指V・下肢IVからV)【OT評価】*術後生活状況として1.心身機能:術後左下肢ROM制限・筋機能低下あり、疼痛(左股関節動作時痛・安静時痛+・夜間時痛±)、HDS‐R(17/30点:短期長期記銘力低下あり)。2.活動:Barthel Index(以下BI。20/100点)、食事以外要介助。基本動作全介助。脱臼肢位(股関節屈曲内転内旋位)をとる。3.環境因子:本人・妻・長男夫婦の4人暮らし。週2回デイサービス利用。*術前生活状況としてBI(70点)。整容・入浴・更衣・排尿排便自制は部分介助、T字杖歩行にて転倒あり。基本動作は手すりにて自立。趣味は庭の手入れ。【OTアプローチ】1.活動性向上を目的とした訓練 2.状況を変化させての繰り返しのADL訓練:脱臼肢位の意識付け(口頭指示・視覚刺激)、身体機能向上に合わせてのADL訓練、自助具の工夫。 3.生活への定着:病棟でのADL訓練。環境調整。4.環境面の支援:家族指導、パンフレット作成。【転院時評価:H18年1月27日】BI(65点)時折、足を組む、脱臼肢位での靴着脱・更衣動作などが見られること、要時間の為見守りから軽介助。段差昇降は杖と手すりにて見守りから軽介助。移動はピックアップ型歩行器またはT字杖見守り。【考察】今回、認知症を呈し生活意欲は高いが新たな生活動作への適応困難な症例に対して、ADL向上が見られた。主な要因として、生活者としての意識の高さ・身体機能向上に伴う自助具の操作性向上・繰り返しのADL訓練により学習効果が得られたことと、生活場面での練習・周囲からの意識付けによる生活への定着への関与が考えられる。今後は、施設入所を経て自宅復帰する予定である。生活環境に近い状況・実生活での繰り返しのADL指導・環境面の支援(家族支援、物理的環境の調整)の必要性が示唆される。