著者
豊田 雪乃 小林 正法 大竹 恵子
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.92.20002, (Released:2021-03-31)
参考文献数
37
被引用文献数
1

This study compared the intent to help in response to nonverbal and verbal stimuli that described people in need of help to clarify the conditions and generality of effects that promote the intent to help. Participants were randomly assigned to a help-imagining group, a no-help imagining group, or a control group. In Study 1, the participants evaluated verbal stimuli. In Study 2, they evaluated visual stimuli as illustrations developed for this study. The results of both studies indicated that the group imagining they were helping scored significantly higher for the intent to help than the other two groups, suggesting that improving imagination about helping increased helpful intentions, regardless of the stimuli type. Also, we found that different aspects of different stimuli affected the intent to help: the effect of evaluating the recipient’s emotional state on the intent to help was only observed for visual stimuli, and visual stimuli compared to verbal stimuli, were less likely to influence an individual’s imagination and past experience on the intent to help.
著者
大渓 隆弘 渡邊 直純 井上 真 大渓 彩香 林 達彦
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.81, no.5, pp.845-849, 2020 (Released:2020-11-30)
参考文献数
17

目的:中心静脈ポート(CVポート)造設時のリアルタイムエコーガイド下(リアルタイム法)内頸静脈穿刺の有用性を検討した.方法:2010年1月から2019年12月までに当院でCVポート造設を施行した173例を対象とした.リアルタイム法による内頸静脈穿刺92例(内頸群)とランドマーク法による鎖骨下静脈穿刺81例(鎖骨下群)に分け,臨床所見と合併症を比較検討した.結果:内頸群で右側穿刺が多く(P< 0.01),手術時間が長かった(P < 0.01).鎖骨下群で手術時合併症が6例(7%)に認められたが(気胸/動脈穿刺/穿刺困難:3/1/2例),内頸群では認められず,有意に少なかった(P < 0.01).内頸群の方が観察期間は短いものの(P < 0.01),術後合併症も有意に少なかった(P = 0.024).結語:CVポート造設時のリアルタイム法による内頸静脈穿刺は手術時合併症を減らし,術後合併症も減らす可能性がある.
著者
岡崎 龍太 栗林 英範 梶本 裕之
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.335-343, 2016 (Released:2016-09-09)
参考文献数
24

Listening music with mobile devices is now a part of our daily life. With the aim of generating vibration-based feedback to enrich musical listening experiences with mobile devices, we have applied a frequency shifting method, which was proposed previously in the literature for mixer manipulation or cross-modal relationship between tactile and auditory stimuli. Experimental results showed that the proposed method significantly increased the listener's evaluation of sound consisting of high-frequency components.
著者
横瀬 久芳 佐藤 創 藤本 悠太 Maria Hannah T. MIRABUENO 小林 哲夫 秋元 和實 吉村 浩 森井 康宏 山脇 信博 石井 輝秋 本座 栄一
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.119, no.1, pp.46-68, 2010-02-15 (Released:2010-05-21)
参考文献数
80
被引用文献数
7 20 1

To understand the submarine volcanism surrounding the Tokara Islands, a submarine topographic analysis and 67 dredge samplings were carried out. Prior to the submarine investigations, we reviewed comprehensively geological and geophysical data on this region and confirmed the complexity of both volcanic activity and tectonic setting of the Tokara Islands. In contrast to the homogeneous subaerial volcanic rocks comprising predominantly two-pyroxene andesite lava flows, the dredged samples vary from basaltic andesite to rhyolite in composition. Furthermore, we reveal that dacitic and rhyolitic pumices are abundant and broadly distributed throughout the submarine area. The recovered volcanic rocks were mainly subangular to angular cobble-boulder fragments of lava, scoria, and variably vesiculated pumice. Volcanic rocks with hornblende phenocrysts occur only north of the Tokara strike-slip fault, which is a major tectonic element of volcanism. The pumices can be classified into three categories based on the size and abundance of the phenocrysts: aphyric pumice, fine-grained porphyritic pumice, and coarse-grained porphyritic pumice. Occurrences, such as amount in a dredge, shape without extensive abrasion, large fragment size, and bulk rock chemical compositions of the major pumice fragments suggest that they are in situ, rather than originating as drifted pumice or air fall, exotic pyroclastic fragments derived from the four super-eruptions of Kyushu Island. Because dredged samples contained fresh volcanic glass in the groundmass, and are not covered by iron-manganese oxide crust, they appear to have originated from the Quaternary eruptions. Indeed volcanic islands have developed above the submarine erosional terraces (indicated as knick points at approximately 110 m in depth), which is assumed to have formed during the last glacial age. K-Ar age dating on the representative pumice samples resulted in ages of 0.60 ± 0.20 Ma and < 0.2 Ma, respectively. These newly obtained submarine data support that acidic volcanisms occurred around the submarine calderas during the Mid-Pleistocene age.
著者
小林 健彦
出版者
新潟産業大学経済学部
雑誌
新潟産業大学経済学部紀要 (ISSN:13411551)
巻号頁・発行日
no.57, pp.81-103, 2021-01

日本では、古来、様々な自然災害や人為的災害が人々を襲い、人々はその都度、復旧、復興させながら、現在へと至る地域社会、国家を形成、維持、発展させて来た。日本は列島、付属島嶼を主体とした島嶼国家であり、そこでは「水災害」が多く発生していたが、こうした地理的理由に依る自然災害や、人々の活動に伴う形での人為的な災害等も、当時の日本居住者に無常観・厭世観を形成させるに十分な要素として存在したのである。文字認知、識字率が必ずしも高くはなかった近世以前の段階でも、文字を自由に操ることのできる限られた人々に依った記録、就中(なかんづく)、災害記録は作成されていた。特に古い時代に在って、それは宗教者(僧侶や神官)や官人等に負う処が大きかったのである。正史として編纂された官撰国史の中にも、古代王権が或(あ)る種の意図を以って、多くの災害記録を記述していた。ここで言う処の「或る種の意図」とは、それらの自然的、人為的事象の発生を、或る場合には自らの都合の良い様に解釈をし、加工し、政治的、外交的に利用、喧伝することであった。その目的は、災害対処能力を持ちうる唯一の王権として、自らの「支配の正当性、超越性」を合理的に主張することであったものと考えられる。それ以外にも、取り分け、カナ文字(ひらがな)が一般化する様になると、記録としての私日記や、読者の存在を想定した物語、説話集、日記等、文学作品の中に於いて、各種の災害が直接、間接に記述される様になって行った。ただ、文学作品中に描写された災害が全て事実であったとは言い難い。しかしながら、それも最初から嘘八百を並べたものではなく、素材となる何らかの事象(実際に発生していた災害)を元にして描かれていたことは十分に考えられるのである。従って、文学作品中には却って、真実としての、当時の人々に依る対災害観や、ものの見方が反映され、包含されていることが想定される。都が平安京(京都市)に移行する以前の段階に於いては、「咎徴(きゅうちょう)」の語が示す中国由来の儒教的災異思想の反映が大きく見られた。しかしながら、本稿で触れる平安時代以降の段階に在って、それは影も形も無くなるのである。その理由に就いては、はっきりとはしていない。しかしその分、人々に依る正直な形での対自然観、対災害観、対社会観の表出が、文学作品等を中心として見られる様になって来るのである。本稿では、以上の観点、課題意識より、日本に於ける対災害観や、災害対処の様相を、意図して作られ、又、読者の存在が意識された「文学作品」を素材としながら、文化論として窺おうとしたものである。作品としての文学に如何なる災異観の反映が見られるのか、見られないのかに関して、追究を試みた。今回、具体的素材としては「伊勢物語」を取り上げながら、この課題に取り組んだものである。
著者
若林 秀隆
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.256-259, 2020 (Released:2021-01-15)
参考文献数
5

狭義の腸管リハビリテーション (以下リハ) は,≒腸管機能改善と使用されることが多い. 一方, 広義の腸管リハは, 腸管不全障害のある方の生活機能やQOLを最大限高めることである. 広義の腸管リハには, リハ栄養の考え方が有用である. リハ栄養とは, 国際生活機能分類による全人的評価と栄養障害・サルコペニア・栄養素摂取の過不足の有無と原因の評価, 診断, ゴール設定を行ったうえで, 生活機能やQOLを最大限高める「リハか, みた栄養管理」や「栄養からみたリハ」である. 低栄養は, GLIM基準で診断する. サルコペニアは, Asian Working Group for Sarcopenia2019基準で診断する. 腸管不全患者では, 加齢, 低活動, 低栄養, 疾患とサルコペニアの原因をすべて認めることがある. 腸管不全患者では, 複数の原因による栄養素の摂取不足を認めることがある. リハとは, 機能訓練や機能改善だけでなく, 生活機能やQOLをできる限り高め, その人らしくいきいきとした生活ができるために行うすべての活動である. 狭義と広義, 両者の腸管リハがさらに発展することを期待したい.
著者
小澤 秀介 小林 愛子 高津 亜希子 神田 博仁 山折 大 塩沢 丹里 大森 栄
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.202-208, 2016-03-10 (Released:2017-03-16)
参考文献数
20

We report the case of a 35-year-old pregnant woman treated with the calcium channel blocker, nifedipine, for maintenance tocolysis. She was hospitalized due to preterm labor at 21 weeks of gestation by her previous physician. A rash appeared following ritodrine hydrochloride administration for maintenance tocolysis. After changing to magnesium sulfate, a rash appeared again. As these rashes were suspected to have been induced by ritodrine hydrochloride and magnesium sulfate independently, consecutive treatment with these drugs was difficult. Therefore, she was transferred to our hospital for follow-up. At 28 weeks 6 days of gestation, treatment with nifedipine for maintenance tocolysis was started after receiving written informed consent, and the medication was approved by the institutional review board of our hospital. The attending pharmacist considered fetal/neonatal adverse effects of nifedipine, such as teratogenicity, fetotoxicity, and neonatal complications, as well as maternal side effects, such as headache, constipation, and excessive blood pressure drop. The pharmacist provided drug information about nifedipine to the attending physicians and nurses, and gave medication counseling to the patient. Following oral administration of 80 mg of nifedipine daily (20 mg every 6 hours), headache and constipation were evident but gradually improved. Neither excessive blood pressure drop nor exacerbated uterine contraction was observed throughout the period of nifedipine treatment. This medication was finished at 34 weeks 5 days of gestation and the patient was discharged at 36 weeks 2 days of gestation. She delivered a baby at 40 weeks 3 days of gestation.
著者
小林 勝年 儀間 裕貴 北原 佶
出版者
大阪大学大学院 大阪大学・金沢大学・浜松医科大学・千葉大学・福井大学連合小児発達学研究科
雑誌
子どものこころと脳の発達 (ISSN:21851417)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.3-10, 2020 (Released:2020-09-24)
参考文献数
12

療育とは児童福祉の精神に依拠しながらも「不治」という医療の限界を超えた課題に対する教育との架橋的試みから始まり,医療と育成の合成語として誕生した.これまで,医療モデルと生活モデルという異なる障害モデルより療育の目標や方法なども異なる療育が実践されてきた.しかし,今日では人間発達における生物心理社会モデルの浸透などにより生活モデルに集約される傾向にあり,「発達の最適化」が療育の共通目標として認識されつつある.すなわち,発達的可能性をどのように保障しているかという点に注目が寄せられたが,その議論を前進させるのは研究デザインによって位置づけられるエビデンスレベルと療育実践におけるエビデンス検証である.が,こうした包括的アプローチにおいては安易な時間的展望の中で処理されたり,低いエビデンスレベルのまま実践されるという陥穽が用意されていることを忘れてはなるまい.
著者
林 淳
出版者
愛知学院大学
雑誌
人間文化 : 愛知学院大学人間文化研究所紀要 (ISSN:09108424)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.39-51, 2005-09-20

近世の陰陽道は、木場明志氏、高埜利彦氏が着手して以来、大いに進展した研究領域であろう。地方史料を使用した陰陽師の研究も、高原豊明氏、梅田千尋氏、山本義孝氏などによって着実な進展を見せている。しかしそのなかで東北は、まだ陰陽道研究の空白地である。より正確に言うと、陰陽道の空白地であったと見るべきであろう。東北の宗教史においては、全般に寺院や修験の影響が濃厚にあって、陰陽師などの宗教者が食い入る余地はなかったように思われる。しかし東北において陰陽道がまったくなかったかというと、それは正確な歴史認識とは言えない。東北の宗教史において陰陽道は、地域的にわずかに点在する形ではありながらも、わずかに入りこんでいたからである。われわれは、今までその痕跡を見落としてきただけであった。宮城県の岩出山町史編纂室が編纂した『天文暦学者 名取春仲の門人たち』は、近世の仙台藩の天文学が、どれほどの分厚い社会層によって支えられ、継承されていたかを初めて世に知らしめたものであった。それとともに土御門家の安家神道が、天文学という形で伝えられていたことを知る機会になった。これまで研究者は筆者をふくめて、近世の陰陽道を、土御門家の地方配下支配という観点から探究することが多かったが、東北の場合には、天文学として陰陽道が地域に浸透してきたようである。筆者は、渋川春海に関心を抱き、和田光俊氏とともに春海の年譜を作成したことがあった。和田氏を通じて、仙台藩の天文学史を研究し、岩出山町の名取家文書の公刊に尽力していた黒須潔氏と知り合うことができ、『天文暦学者 名取春仲の門人たち』を賜った。そして安家神道 (陰陽道) が天文学に結びついて、受容されていることを筆者は知った。それ以降、岩出山町史編纂室、東北大学図書館を訪れて、史料を閲覧することができたが、史料の内容を分析するほどには至っていない。この小論では、岩出山町の史料を参照しながら、東北地方の陰陽道をスケッチすることにしたい。
著者
小林 茂 桑久保 亮太 松井 茂 大谷 芳之 張 心祈 仁泉 大輔
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第34回全国大会(2020)
巻号頁・発行日
pp.1G3ES504, 2020 (Released:2020-06-19)

本研究では、美術作品の鑑賞に対する積極的な評価と機械学習技術の発展に対する関心の高まりを背景に、機械学習を活用した美術作品の新しい鑑賞方法を提案する。20世紀前半に活躍し、独特の構図と色合いで知られるイタリアの画家Giorgio Morandiをテーマに選び、画家のモチーフを再現した物体を鑑賞者が自由に配置して構図を決め、機械学習(pix2pixおよびCycleGAN)によって画家の色合いを再現した画像を生成して表示する体験型展示を開発した。29人を対象としたアンケート調査の結果より、この作品を体験することにより画家に対する関心が深まったことが確認できた。
著者
小林 真琴 小林 秀子 石川 みどり 横山 徹爾
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.159-169, 2015 (Released:2015-12-26)
参考文献数
33
被引用文献数
1

【目的】長野県を例に,食事等生活習慣及び高血圧等のリスク要因と脳血管疾患死亡の地域差との関連について,保健医療資源及び社会経済的因子の影響を考慮して明らかにし,併せて効率的かつ効果的な対策の方向性を検討する。【方法】県内11保健所管轄区域を単位として,目的変数を脳血管疾患標準化死亡比の経験ベイズ推定値(EBSMR),説明変数を食事等生活習慣及び高血圧等のリスク要因,保健医療資源,社会経済的因子としてステップワイズ法による重回帰分析で検討した。生活習慣等のリスク要因は健康日本21(第二次)の循環器疾患分野の指標とし,県民健康・栄養調査データから保健所管轄区域ごとに年齢調整割合または年齢調整平均を計算して分析に用いた。特定健診受診率は全保険者分データで県全体を基準とした標準化比,保健医療資源は医師,一般病床,一般診療所,救急医療施設,就業保健師,行政管理栄養士・栄養士,食生活改善推進員,保健補導員等,社会経済的因子は人口,転出入の差,高齢者世帯,出生,婚姻,離婚,課税対象所得,完全失業者,第一次・二次・三次産業就業者とした。【結果】男性は特定健診受診率が低いほど,また,一般病床数が低いほど,女性は食塩摂取量が多いほど,EBSMRが有意に高い関連が認められた。【結論】長野県の脳血管疾患予防のための取組として,男性では保健医療の介入,女性では食生活の改善の重要性が示唆された。
著者
高山 義浩 西島 健 小林 智子 小澤 幸子 岡田 邦彦
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.66, 2007

【緒言】佐久総合病院は長野県東部の農村地域に位置するエイズ治療拠点病院である。1986年から2006年までに85人の新規HIV感染者の受診があったが、とくに最近5年間では39人と急速に増大傾向となっている。そもそも長野県は新規HIV感染が人口10万人あたり1.26人/年(2002-2006年)であり、これは東京都の3.02人/年に次いで第2位と重点的に対策すべき地域に国により指定されている。ところが、佐久総合病院の診療圏については人口10万人あたり3.90人/年となることから、実は長野県のなかでも都市部ではなく、とりわけ農村部においてHIV感染が拡大している実態が浮き彫りとなる。こうした状況を受けて、長野県では『信州ストップエイズ作戦』が2006年より展開しており、県民へのエイズ危機への周知とHIV検査への誘導が一定の成果を収めつつある。しかし、全県的なHIV予防と診療の取り組みにもかかわらず、そのフレームによって救われない人々がいる。それは、外国人、とくに無資格滞在外国人である。農村地域におけるHIV感染の拡大を止めるためには、日本人のみならず外国人へも公平に保健医療サービスを提供してゆくことが重要であると我々は考えている。第1報では、まず具体的症例からその実態を紹介する。<BR>【症例】42歳、タイ人男性。約10年前に来日し、肉体労働に従事している無資格滞在外国人。2005年10月より倦怠感と咳を自覚。11月中旬、近医受診したところ、肺に結節影を指摘され、結核を疑われると同時にHIV抗体検査を施行された。同陽性のため、翌22日、当院紹介受診となる。精査により、脳結核腫を含む播種性結核により発症したエイズ(CD4 43/μL)と診断し、4剤による抗結核療法を開始した。約3ヶ月の治療経過で結核は軽快したが、抗HIV療法を含むこれ以上の治療継続は医療費の面からも困難と判断し、2006年4月に現地医療機関への紹介状を持たせてタイへ帰国させた。しかし、現地では医療機関を受診しないまま経過しており、東北部出身の村において2007年1月に永眠されたことを確認した。<BR>【考察】佐久総合病院の診療圏には、長野オリンピックをきっかけとした出稼ぎ目的の流入により無資格滞在の無保険外国人が多く、最近は親族不明の経済困窮者が目立つようになってきた。こうした人々のなかには、HIV感染者もいるが、エイズ発症ぎりぎりまで受診行動につながらない者が多い。本症例もまた、医学的・社会的に困難なエイズ発症例であったが、佐久総合病院で結核を含む日和見感染症の急性期治療をおこなった。その後は帰国支援により治療継続を期待したが、現地の医療につなげることができなかった。本症例のように、エイズ発症で医療機関を受診しても結局は死亡させてしまう経験を繰り返していると、「病院へ行ってもエイズは死ぬ病気」というイメージを外国人らに定着させてしまい、さらに受診行動を鈍くしてしまう結果となる。これは、本人の救命のみならず、感染拡大防止のための介入チャンスをも失わせるものである。よって、さらに現地の医療事情を把握し、現地の適切な医療機関、また経験豊富なNGOと密に連携してゆくことが求められている。しかし同時に、増加している無資格滞在外国人の健康問題について、国もしくは自治体行政による包括的対応も期待したい。
著者
埴岡 大輝 竹林 崇 竹内 健太 島田 眞一
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.333-340, 2020-06-15 (Released:2020-06-15)
参考文献数
25

Mirror Therapy(以下,MT)は,脳卒中後の上肢機能障害に対してエビデンスが示されてきた治療である.今回我々は,脳卒中による重度の上肢機能障害に対して,エビデンスが確立されている電気刺激療法やロボット療法などを複合的に実施したが,手指の随意伸展運動が全く出現しない症例を経験した.その症例に対して,回復期後期にMTを実施した結果,示指の随意伸展運動の改善を認め,麻痺手単独での課題指向型練習が可能となり,生活の一部で麻痺手を補助的に使用することが可能となった.MTの回復メカニズムに未だ不明な点はあるが,重度上肢機能障害に対するMTを併用した複合療法は,上肢機能の改善の一手段となる可能性がある.

7 0 0 0 OA 東北の方言

著者
小林好日 著
出版者
三省堂
巻号頁・発行日
1944