著者
金森 雅夫 鈴木 みずえ 山本 清美 神田 政宏 松井 由美 小嶋 永実 竹内 志保美 大城 一
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.659-664, 2001-09-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
17
被引用文献数
12 14

デイケアに通所する痴呆性老人のうち, 事前に動物の嗜好, 飼育体験, 動物のアレルギーを聞き, 本研究に関する本人と家族の同意・承諾を得られた7名 (男性2名, 女性5名: 年齢69~88歳, 平均年齢79.43歳 (±6.06) に対し動物介在療法 (Animal Assisted Therapy: AAT) を実施した. 期間は平成11年7月27日から10月12日までの隔週計6回, 場所は対象者が普段利用するデイケア施設にて行ない, 以下の結果を得た.(1) MMSの平均値を比較すると11.43 (±9.00) から12.29 (±9.69) と僅かに上昇した. コントロール群では10.20 (±7.04) から9.50 (±6.26) と僅かに低下が認められた.(2) N-ADLでは, 28.43 (±14.00) から29.57 (±14.47) とわずかに上昇したが, コントロール群では29.70 (±11.02) から28.95 (±10.92) とわずかに変化した.(3) Bhave-ADではAAT群の合計は11.14 (±4.85) から7.29 (±7.11) と有意な下降を示していた (p<0.05). コントロール群は5.45 (±3.27) から5.63 (±3.59) と僅かに上昇していた. AAT群は「D. 攻撃性」,「G. 不安および恐怖」,「全体評価 (介護負担)」において3カ月後は有意に下降していた (p<0.05).(4) 表情分析によるコミュニケーション行動評価では, AAT群は28.71 (±2.87) から28.14 (±3.76) とわずかに下降していたが, コントロール群では, 26.55 (±4.95) から25.35 (±5.58) と有意に下降していた(p<0.05). コントロール群では「うなずき」,「会話量」,「会話内容の適切性」,「接近行動」の4項目においてコントロール群が有意に下降していた (p<0.05).(5) 精神ストレス指標であるクロモグラニンA (CgA) の評価ではAAT群の平均値は0.327 (±0.043) から0.141 (±0.115) とt検定によりやや差のある傾向が認められた (p=0.084). コントロール群において平均値は0.316 (±0.145) から0.377 (±0.153) と有意ではないが, 僅かに上昇していた.本研究は, AATの評価手法を検討することを目的に既存の評価尺度とCgAの測定を用いた. 既存の評価方法を組み合わせることにより患者の変化の側面を捉える可能性が示唆された.
著者
光森 幸子
出版者
広島大学英文学会
雑誌
英語英文學研究 (ISSN:02882876)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.11-27, 2014

Alice Walker focuses on the lives of sharecroppers suffering under Jim Crow laws in the post-Civil War South in her first published novel, The Third Life of Grange Copeland, by realistically delineating the life of Grange Copeland. Facing everyday hardships, Grange's main concern is to survive the crop-lien system, which was de facto slavery by another name, through its rigidly hierarchical structure. It is reasonably assumed that his violence against his wife and his son, Brownfield, is deeply rooted in white supremacy. Therefore, in previous studies, Grange's behavior has been mostly construed as the reactions of an archetypal black male against white male dominance. Even the incident of Central Park in New York has been considered from such dichotomous perspective. Grange shows a remarkable self-development when he happens to see the breakup between a pregnant white woman and a soldier in the park. Feeling deep sympathy for the white people for the first time in his life, regardless of the danger, as an equal human being he tries to cross racial boundaries in order to console the grieving woman. Consequently, her refusal of his approach and her hatred of blacks cause her to slip into a pond and die. Despite the fact that he had got a glimpse of the human bonding beyond race, after she releases his rescuing "black" hand, Grange lets her die in the frozen pond. However, it should not be overlooked that, whereas the white woman's death restores his manhood and rekindles his racial pride, his flash of inspiration "to save and preserve life is an instinct" continues to haunt him, and he accuses himself of this "murder" for the rest of his life. After Grange returns to Georgia, his emotional growth becomes reinforced by understanding the lonely battle of his son's wife, Mem. She is more marginalized than Brownfield, living in a cabin on a white man's plantation. Mem represents any anonymous sharecroppers' wife, who is a victim of racism and sexism in society as well as at home, an archetypal black female who has no chance to develop her inner self. However, through Ruth's eyes, Walker implies Mem's unyielding resistance against falling victim to the Sachiko Mitsumori 27 system. That Mem voluntarily gets shot by Brownfield should be given more consideration. She thought her violent act against her brutal husband as horrifying but necessary for survival, to protect her children from him and also to liberate him from "new slavery." By giving up her life in atonement for her "sin," she tried to put an end to the chain of violence. Grange understands her struggle for finding human bonds in the segregated social milieu and guides Ruth by regarding Mem as her role model. Thus, Walker places Ruth as a witness to Mem's silent resistance, and leaves her the future responsibility to embody collective voices of black people. Through his unconditional love of Ruth, Grange realizes that he was once trapped in the system by creating a white destructive "God" inside him, and that he made himself a slave by abandoning his responsibility for his family. The understanding Grange has obtained in his life can be interpreted as his own "emancipation proclamation." Whereas Grange thus achieves selfrealization by overcoming his own racism, Brownfield becomes an agent of white supremacy-"living dead" who regards a white judge as his God and uses his power to get Ruth back to him. On the surface, Grange's killing of Brownfield is "kin killing" in a racist society. When Grange shoots Brownfield to protect Ruth from him, at the same time, he is determined to give up his life, for he had already learned that his life was not only his own. It was passed on to him through generations and it must continue in the next generation. Hence, in condemning violence, Grange voluntarily takes responsibility for breaking off his human bonds in the same way that Mem did. As a result, Grange's achievement of his full humanity, which is "a state of oneness," is firmly passed on to Ruth.
著者
森谷 渕
出版者
一般社団法人 日本原子力学会 バックエンド部会
雑誌
原子力バックエンド研究 (ISSN:18847579)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.57-65, 1997

米国ワシントン州にあるHanfordのDOE施設は、第二次大戦中から戦後の米ソ冷戦構造の間、核兵器開発の中心的存在であった。東西対決も終わり、核兵器の廃絶が進められている中で、かつてのPu生産炉や再処理施設の環境回復が大きな問題としてクロースアップされてきている。   ここでは、Hanford核兵器開発の歴史を振り返り、Pu生産とそれに伴う再処理廃棄物の発生と管理状態、177基に及ぶ廃棄物タンクの現況とクリーンアップの計画などについて、その概要と問題点について紹介する。   1996年9月以降DOEは、Project Hanford管理契約(PHMC)とタンク廃棄物回復システム(TWRS)により、Hanford Tank Waste Cleanupを民間請負化することで、その進捗を計ろうとしている。

1 0 0 0 OA 稲妻

著者
Strindberg, August. 著 森鴎外 訳
出版者
通一舎
巻号頁・発行日
1915
著者
山崎 愛理沙 中村 達朗 大森 啓介 村田 幸久
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.149, no.5, pp.204-207, 2017 (Released:2017-05-09)
参考文献数
11
被引用文献数
1

肥満細胞は免疫細胞の1つであり,顆粒を大量に含むその形態学的特徴からこの名がつけられた.この細胞は,ヒスタミンなどの炎症性物質を大量に放出(脱顆粒)することで,アレルギー性疾患の発症に関わる主な免疫細胞として長らく認識されてきた.しかし,近年研究が進み,肥満細胞は脱顆粒後に起こる種々のサイトカインやケモカイン産生・放出を通して,アレルギー性疾患以外の様々な疾患の発症や進行にも関与することが分かってきた.我々の研究室では,現在アレルギー疾患の他,創傷治癒,急性炎症,がんの発症や進行において,この肥満細胞が果たす役割の解析を進めている.特に肥満細胞が脱顆粒後に大量に産生する脂質メディエーターであるプロスタグランジンD2の役割について焦点をあてて研究を進めてきた.本稿ではその一部を紹介したい.
著者
益岡 了 尾関 圭 小森 久栄 尾崎 洋
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第55回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.181, 2008 (Released:2008-06-16)

現在、3DCG の技術は以前と比べ、コンピューターの性能向上、ソフトウェアの技術向上により急速な発展を遂げ、より精微な表現が可能となった。そこで日本画を調査、研究し、現代の3DCG 技術を使い日本画の持つ独特な表現を再構築することで、新しい日本画的3DCG表現の可能性と、視覚的な親和を目指した。3DCG アプリケーションをそのまま使用しただけでは、日本画的な表現の再現が困難であるために、レンダリング表現の一つである、トゥーンレンダリング技術の活用について検討した。そして基本的なトゥーンシェーダーを改良し、「筆画風トゥーンシェーダー」の開発を行い、輪郭線線の幅を手描きのように自然な風合や日本画の持つ柔らかい陰影表現を含んだ日本画的な表現を可能にした。日本画と西洋的な技術を持った3DCG の融合は、日本独自の芸術表現形の可能性の一つであると考える。
著者
永井 祐吾 勝見 正治 田伏 克惇 田伏 洋治 青山 修 江川 博 野口 博志 小林 康人 森 一成 山上 裕機 中井 健裕
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.28, no.7, pp.1511-1518_1, 1986

当教室ではじめて開発した内視鏡的マイクロ波凝固療法を早期胃癌25例に行い,本法による局所的癌完全消滅の可能性について検討した. 14例は根治手術予定の症例であり,術前内視鏡検査時に病巣の部分または全域凝固を行い切除標本にてマイクロ波凝固の影響を検討した.部分凝固群7例においては,凝固部はulII~IVの潰瘍となり,潰瘍底にはviableな癌細胞は認められなかった.全域凝固群7例中,3例においては,摘出標本の連続切片のいずれの部位にも腫瘍細胞は認められず,本法による局所根治例と考えられた.残りの4例中2例は凝固後の潰瘍底のsm層に,あとの2例では辺縁粘膜に,いずれも微少な癌病巣が残存していた. 内視鏡的治療のみを行った11例のほとんどは高齢や重篤な併存疾患のために手術の適応外となった症例であった.生検にて悪性所見が消失するまでに1~6回の凝固療法を要し,2~50カ月(平均17カ月)の経過観察中2例にのみ再発を認めた.再発例にはさらに凝固を追加し,再び悪性所見は消失した. 以上より局所的癌完全消滅という点においては,本法はsmまでの浸潤胃癌にまで有効であり,現時点においては,手術不適応となった早期胃癌の治療法として期待できると考える.
著者
森村 豊 千葉 聖子 荒木 由佳理 添田 喜憲 塚原 孝 柴田 眞一 古川 茂宣 添田 周 西山 浩 藤森 敬也
出版者
The Japanese Society of Clinical Cytology
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.110-115, 2012
被引用文献数
1

<b>目的</b> : ベセスダ方式に準拠した細胞診報告様式では, 適正標本は 8,000 個以上の扁平上皮細胞の採取が条件である. 子宮頸がん集団検診標本でこの条件に関する検討を行った.<br><b>方法</b> : 2008 年の子宮頸がん集検の標本 69,584 例について, ベセスダ方式による不適正例数を算出し, 従来の独自の基準で判定した不適正率と比較した. 2004 年に, 従来基準で「細胞数が少なく不適正だが評価可能」としていた 120 例でその後, 重篤な病変が検出されていないか調査した. その従来の不適正だが評価可能とした症例の細胞数について計測した.<br><b>成績</b> : ベセスダ方式で不適正と判定された例は 590 例, 0.85%で従来方式の 77 例, 0.11%に比して有意に不適正率が高かった. 不適正だが評価可能とした 120 例で, その後の受診が確認され, 1 例のみ軽度異形成が検出された. 不適正だが評価可能とした 120 例の細胞数の中央値は 500 個であった.<br><b>結論</b> : 子宮頸がん集検の検体に, ベセスダ方式を厳格に適応すると, 不適正標本を増加させ実務上問題がある. 暫定的に一定数以上の細胞数の検体を「不適正だが評価可能」とし, 今後, 細胞採取者に適正な検体を提出するよう十分な教育が必要である.
著者
西岡 直子 中川 真次 木村 浩子 森本 遥 中野 貴文 山﨑 佳歩 小谷 廣信
出版者
日本赤十字社和歌山医療センター
雑誌
日本赤十字社和歌山医療センター医学雑誌 = Medical journal of Japanese Red Cross Wakayama Medical Center (ISSN:13419927)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.67-72, 2017-03-31

平成26年4月の特定共同指導において「再指導」という結果を受けたことから、特定共同指導ワーキング(以下、WGという)を立ち上げ、指摘事項について協議を行った。医療情報管理課は、カルテ監査及び医学管理料(以下、管理料という)の監査を担当した。診療報酬点数表より管理料の算定要件を精査し、医師による管理料算定の徹底を院内に周知した。管理料オーダの中で、算定要件を満たしているものを「適正」、満たしていないものを「不適正」とし、不適正オーダについて日々督促を行い、毎月開催されたWGで適正率ならびに不適正オーダに対する督促数、不適正オーダの修正数等を報告した。その結果、平成27年2月の個別指導では、「経過観察」となった。管理料の監査については、個別指導後も日々行っており、平成28年5月の管理料の適正率は98%であった。個別指導後も、高い適正率は保っているものの不適正オーダの未修正オーダも残存しているので、再督促の徹底が急務である。
著者
森村 豊 千葉 聖子 荒木 由佳理 塚原 孝 佐藤 美賀子 柴田 眞一 古川 茂宣 添田 周 渡辺 尚文 藤森 敬也
出版者
The Japanese Society of Clinical Cytology
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.330-334, 2013-07-22
参考文献数
16
被引用文献数
1

<b>目的</b> : ベセスダ方式の導入で, 標本の適正・不適正が評価されるようになった. 不適正標本の減少のため, 検体採取医にみずからの不適正発生率を通知し, 改善効果を検討した.<br><b>方法</b> : 福島県内の子宮頸がん集団検診で, 施設検診を行った 114 施設に, 2009 年 4 月∼2010 年 3 月の各施設の不適正率を報告した. 次いで 2010 年 4 月∼2011 年 3 月の 114 施設の不適正率の推移を比較した.<br><b>成績</b> : 2009 年 4 月∼2010 年 3 月の不適正率は 51,863 件中 3,529 件, 6.8%であったが, 2010 年 4 月∼2011 年 3 月は 56,162 件中 1,875 件, 3.3%で有意に減少した.<br>不適正標本が有意に減少した施設は 54 (47.4%), 有意ではないが減少した施設は 42 (36.8%) であった.<br>改善施設では, 一部は綿棒採取をやめたことで, 不適正検体が著しく減少した施設もあったが, 従来からスパーテル, ブラシ採取であった施設でも多くで改善がみられた.<br><b>結論</b> : 施設ごとの不適正発生率を報告することで, 検体採取医が採取器具を変更したり, 検体採取時に留意を促すことで, 不適正標本の減少が期待できる.
著者
秋保 信彦 遠藤 希之 井沢 路世 熊谷 勝政 長嶋 真紀 武山 淳二 八重樫 弘 渡辺 みか 森谷 卓也
出版者
特定非営利活動法人日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.323-331, 2007-11-22
参考文献数
30
被引用文献数
2 4

目的:乳腺における「細胞診および針生検の報告様式(日本乳癌学会)」に従った細胞診成績を導入前と比較し,導入の意義を検討した.方法:15470検体を新報告様式導入前後で2期に区分し,(1)診断区分ごとの比率,(2)新報告様式の数値目標,(3)英国乳腺スクリーニング基準(QA)による感度・特異度などの係数,を比較検討し,(4)癌例において,細胞診で初回に悪性判定できなかった症例の診断確定までの追跡を行った.成績,(1)新報告様式導入により悪性疑い症例の比率が増加し,検体不適正率・鑑別困難率が低下した.(2)新報告様式の目標値では悪性疑い症例中のがん症例の割合と,(3)QAの基準値では偽陰性率(Fls-)が,導入前後を通じ目標に到達しなかった.(4)診断確定のための追加検査のうち,再度の細胞診で悪性判定されたのは18.5%だった.結論:数値変化の原因として,新報告様式の導入効果(組織型推定と根拠となる細胞所見の記載・臨床への判定理由フィードバック)が考えられた.新報告様式の数値目標は精度管理上有益で,QAや文献データとの比較が可能となった.
著者
吉村 恂 石森 富太郎 波多江 一八郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.82, no.9, pp.1156-1159, 1961-09-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
11

福岡県内の花コウ岩地帯の一部である糸島半島(福岡市長垂を含む)の海岸線に部分的に集積している主として磁鉄鉱を含んだ黒砂の中からモナズ石およびジルコンをかなり普遍的に見いだし,その化学分析の結果および放射能の測定などによって検討した結果,それぞれ (Ce,La) PO4, ZrSiO4 という理想式に近いものであることを明らかにしたみさらにこれらの鉱物について予備的にその生成年代の推定を試み,モナズ石について 3.8 億年,ジルコンについて 4.3~11.6 億年という値が得られた。