著者
碓氷裕紀 森崎修司
雑誌
研究報告ソフトウェア工学(SE)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.8, pp.1-7, 2012-07-12

クラウドソーシングを活用したソフトウェア開発の際に重要となるソフトウェア分割の方法を提案する.本稿で前提とするクラウドソーシングでは分散環境において個々の開発者が非同期型のコミュニケーションをとるため,コミュニケーション量をなるべく小さくすることにより,効率化が期待できる.本稿で提案する分割方法では,コミュニケーション量を減らすことを目的とし,開発者間で相互に更新,参照されるデータの定義を事前に決めておく方法,及び,相互に更新,参照されるデータの参照,更新APIを定義しておく方法,である.提案方法を演習問題として実際に動作させたことのあるオンラインショッピングサイトのソフトウェアに適用し,適切な分割ができるかを試行した.また,分割方法と試行をオンラインショッピングサイトの構築に携わっているソフトウェア開発の熟練者から意見をもらった.
著者
坪井 潤一 寺島 祥子 高野 倫一 森 広一郎 鈴木 俊哉 石原 学 高木 優也 小森 謙次
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
pp.17-00065, (Released:2018-05-15)
参考文献数
22
被引用文献数
1

友釣りおよび投網を用いて879個体のアユを捕獲しEdwardsiella ictaluriのPCR保菌検査を行った。週の平均水温が高いほどE. ictaluriの陽性率が高く,最も陽性率の高かった7/31-8/6には,週の平均水温が25℃以上を記録した。同期間中,投網で捕獲されたアユの陽性率は20.4%であったが,友釣り個体では陽性個体は確認されなかった。日中の平均水温が高いほど友釣りのCPUEが低かった。E. ictaluri感染は友釣りでの漁獲不振を招く可能性があることが示唆された。
著者
堀 京子 森野 清子
出版者
和歌山信愛女子短期大学
雑誌
信愛紀要 (ISSN:03893855)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.29_a-20_a, 1981-02

前報は,和歌山に住む学生の食品の嗜好度と調理頻度を調べたが,今回は調理実習で作成した調理法に対する嗜好度を知ることを目的として,嗜好意欲尺度を用いてアンケート調査を行った。(1)主食料理は,グラタン,サンドイッチ,寿司,炒飯などの嗜好が高く,丼物や麺類の嗜好は普通であった。(2)卵料理は,卵の嗜好が高いにもかかわらず,卵の嗜好度を上まわっていたのは茶碗蒸しのみであった。(3)煮物は比較的嗜好度の低い調理法であった。今回調査した中では肉類を加えたり,油炒めをしたり,甘味の強い味付の調理法の嗜好が高い傾向を示した。(4)酢の物とサラダでは,サラダの方が好まれており,酢の物はすべて平均値が5以下であった。特に,酸味の強い調理法の嗜好が低かった。(5)汁物は煮物と同様に嗜好が低かったが,コーンスープ,かき玉汁などの嗜好が高かった。(6)中国料理では,糖醋丸子や八宝菜,糖醋肉などの嗜好が高く,酸味のある拌三絲や酸辛洋白菜などの嗜好が低かった。(7)菓子は,洋菓子が最も好まれ,平均値はすべて5以上であった。和菓子は餅の嗜好が高く,飴や寒天を用いた調理法の嗜好が低かった。
著者
中森 康浩 安田 卓司 今本 治彦 加藤 寛章 岩間 密 白石 治 安田 篤 彭 英峰 新海 政幸 今野 元博 塩﨑 均
出版者
近畿大学医学会
雑誌
近畿大学医学雑誌 = Medical journal of Kinki University (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.31-40, 2010-03-01
被引用文献数
2

[抄録] 高齢者が多く侵襲度の高い食道癌術後の誤嚥性肺炎は最も危険な合併症のひとつである.高齢者の誤嚥はサブスタンスP(SP)の分泌低下による咳嗽反射低下がその要因とされている.食道癌周術期における血中SP 濃度と咳反射の推移および誤嚥/肺炎の発症との関連を明らかにする.胸部食道癌手術予定で文書により同意が得られた26例を対象とした.術前,術後2日目(POD2),術後7日目(POD7)に血中SP 濃度測定,クエン酸誘発咳嗽反射閾値検査を行い,誤嚥/肺炎の発症との関連を前向き臨床研究で検討する.血中SP の平均値は術前,POD2,POD7の順に108.2pg/ml,66.8pg/ml,62.2pg/mlと推移しPOD2に大きく低下した.クエン酸誘発咳嗽反射閾値は測定可能の23例中19例(82.6%)でPOD2に閾値の上昇(15例)または最大のレベル10(4例)を示した.65歳以上のE群と65歳未満のY群に分けて検討したところ肺炎は3例(E群:2例,Y群:1例),不顕性誤嚥を2例(E群)に認め,全例POD2に咳嗽反射閾値の上昇をみた.E群の誤嚥/肺炎の4例はいずれも術前血中SP 濃度は40pg/ml以下でPOD2においても上昇をみなかった.食道癌術後の誤嚥/肺炎とのリスク因子を検討した結果,E群において術前の血中SP 濃度≦40pg/mlが最も有意なリスク因子と判明した(p=0.008).食道癌術後は血中SP 濃度の低下と咳嗽反射閾値の上昇により誤嚥性肺炎を容易に発症する状態にある.65歳以上で術前の血中SP 濃度≦40pg/mlは術後の誤嚥/肺炎に対するハイリスク群と考えられた.
著者
吉田 健太 桑谷 立 安本 篤史 原口 悟 上木 賢太 岩森 光
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

Geochemical data from geological samples show compositional trends that reflect the material differentiation and assimilation occurred during certain geological processes. These trends often comprise groups in a multidimensional compositional space and are distributed in real space as geological units ranging from millimeters to kilometers in scale (e.g., Ueki and Iwamori, 2017). Therefore, spatial contextual information combined with chemical affinities could provide fundamental information about the sources and generation processes associated with the samples.However, conventional clustering algorithms such as k-means and fuzzy c-means (FCM) cluster analysis do not fully utilize the spatial distribution information of geologic samples. In this study, we propose a new clustering method for geochemical datasets with location coordinates. A spatial FCM algorithm originally constructed for image segmentation was modified to deal with a sparse and unequal-spaced dataset. The proposed algorithm evaluates the membership function modified using a weighting function calculated from neighboring samples within a certain radius.We applied new algorithm to a geochemical dataset of granitoids in the Ina-Mikawa district of the Ryoke belt that was compiled by Haraguchi et al. (2017), showing that samples collected from the same geological unit are likely to be classified as the same cluster. Moreover, overlapping geochemical trends are classified consistently with spatial distribution, and the result is robust against noise addition compared with standard FCM analysis.The proposed method can be calculated in the “GEOFCM” Excel® sheet provided as supplementary material and on our website (http://dsap.jamstec.go.jp). Geological datasets with precise location coordinates are becoming increasingly available, and the proposed method can help find overviews of complicated multidimensional data structure.
著者
原口 悟 上木 賢太 桑谷 立 吉田 健太 モハメド 美香 堀内 俊介 岩森 光
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

2017年のJpGU-AGU(原口ほか,2017)で、日本国内出版文献に掲載されている地球化学データのコンパイルを行うデータベース「DODAI」を報告した。前回報告以降もデータ収集を継続し、2017年末までに224論文5818サンプルの化学データをコンパイルした。今回、これらのデータ収集を通して明らかになった、「フォーマットの統一」に関連する問題点を以下に3点報告する。1つ目は、化学組成の分析に当たって、多くの「分析装置」による様々な「分析手法」が用いられていることである。主要元素は、1970年代までは「湿式分析」が主流であったが、1980年代に入って「XRF」が急速に広まった。この過程で、従来鉄はFe2+ (FeO)とFe3+ (Fe2O3)を分けて分析されていたのが、全FeOまたはFe2O3に一本化する分析に移行した。現在でも全岩化学組成のFe2+とFe3+を分けて分析する手法は湿式分析だけであり、主要元素をXRFで分析していても、Fe2+だけを湿式分析で分析することが行われている。このような鉄の分析のバリエーションが地球化学データベースに含まれていることには注意を要する。2つ目は、分析される微量元素の組み合わせが分析機関により様々なことである。微量元素の分析は、現在ではXRFの他、ICP-MS等の質量分析装置を用いた方法、INAA等の放射化分析等が使われている。XRFは分析が簡便であるため、多くの機関で主要元素とともに分析が行われているが、分析元素の選択が機関・目的により様々である。ICP-MS, INAAは高精度の分析が可能で、多くの微量元素を網羅的に分析することが可能であるが、全ての元素をカバーする分析を恒常的に実施する例が少なく、データ数が少ない。このため、データベースを利用した多変量解析に用いる元素の組み合わせによっては、解析に使用できるサンプル数が激減することがありうる。3つ目は、研究が行われた時期、および研究者が専門とする分野によって地質の解釈が変化することである。例えば、四万十帯に代表される「付加体」の地質構造は、「付加体地質学」の導入により、形成過程の理解が急速に進んだが、個々の岩体の記載は、付加体地質学導入以前の研究に基づくものと、付加体地質学に基づいた新たな解釈によるものがあり、現在でも両者が混用されている。また、付加体中の海洋プレート起源の火山岩は、弱変成作用を受けているため、「緑色岩」とも呼ばれるが、研究者によって「火山岩」「変成岩」と見方が異なっている。シームレス地質図統一凡例(産総研,2015)のように,これらの見方を統一する試みもあるが,依然としてこのような様々な「解釈の違い」が地球化学データに含まれることはコンパイルを行う上での注意点である。本報告では、これらの「フォーマットの不統一」に関係する地球化学データベースが含む問題を取り上げるとともに、不統一の解消を図る方法について考えたい。
著者
鼻崎 将 古森 光 吉田 直人 米澤 朋子
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.2015, no.4, pp.1-4, 2015-01-07
被引用文献数
1

本稿では,壁面へのプロジェクションを用いて,ユーザの歩行状態を判定したうえで,その前方に提示され続ける移動広告システムを提案する.また,背景との相対速度による浮き彫り効果を考慮し,背景画像をユーザの進行方向と逆方向に進めることとした.このことで,広告をより目立たせ,さらに広告の世界観とスピード感を与えることを狙う.このシステムを用いることで,広告への注意をひきつけ,さらに,ユーザの歩行速度変化や方向転換に応じた広告提示位置の内容の変容など,広告とのインタラクションに多様性をもたらすことが期待される.
著者
森 謙作 寺田 雅之 石井 一彦 本郷節之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.129, pp.11-16, 2004-12-20
参考文献数
9

電子価値を公平に交換可能なプロトコルをICカードへ実装し,プロトコルの実用性の検証を行った.実装にあたり,電子財布などの取引アプリケーションからの利用が容易であること,および電子価値の交換を電子商取引として実用的な速度で行えることを目的とした.また,ICカードのI/F設計において分散ICカード環境のためのフレームワークであるTENeTを利用することにより,ICカード間のメッセージのやり取りをアプリケーションから隠蔽し,ICカードとアプリケーションとのI/Fを簡素化することができた.実装の結果,プロトコルのコードサイズは約6KB,プロトコル処理時間は約1.8secであり,現在市販されているICカードを用いて,上記プロトコルを実用的な性能で実現可能であることを示した.This paper reports the result of our implementation of the fair exchange protocol for electronic rights on smartcards. In this implementation, we adopted TENeT, a framework which enables smartcards to directly communicate one another, to simplify the interface between smartcard and application programs. Our implementation built on current smartcards can exchange electronic rights in less than 1.8sec, which is practically sufficient for electronic rights trading markets.
著者
森山 剛 斎藤 英雄 小沢 慎治
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.J82-D2, no.4, pp.703-711, 1999-04-25

本論文では,感情を含むことによって音声に生ずる物理的変動と,そこから 知覚される感情とを線形に対応づけるモデルを提案する. 本モデルでは,日常の感情語と物理パラメータを直接対応づける代わりに, それぞれから抽出した物理的基底及び心理的基底を対応付けに用いている ため,感情語や物理パラメータの選び方に依存しないという特長を有する. また,話し手の抱いた感情ではなく聞き手側に存在する感情のステレオタイプ を基準とすることで,感情を可観測で一般性を有するものとしている. 本研究では統計的な手法を用い,まず種々の感情が含まれた音声の韻律 パラメータと心理実験によって得た主観評価値を用いて,それぞれ物理的 基底(主成分)及び心理的基底(因子)を求めた. 更にこれらの基底空間に写像した物理量及び心理量に重回帰分析を施す ことにより,音声の物理量と感情を双方向に変換することの可能な対応情報 を獲得した.

1 0 0 0 OA 慢性骨盤痛

著者
森村 美奈 野口 愛
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.856-861, 2017 (Released:2017-08-01)
参考文献数
9
著者
尾市雄一 森 直彦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告電子化知的財産・社会基盤(EIP) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1999, no.83, pp.39-44, 1999-10-09
参考文献数
24

NTT電子マネー方式(cas)は、デジタルデータそのものに金銭的価値を持たせた電子マネー方式である。インターネットを介して安全に引出し、支払い、預け入れができるばかりでなく、利用者間でインターネットを介した送金を行うことができるなどの特長を持っている。 Ncashは現在、インターネットキャッシュ実証実験(ww.icash.gr.j)においてインターネット上での商取引のためのシステムとして実装されており、法制度面でも課題の検証及び対処が行われてきた。本稿ではまず、Icashシステムの特長と法律的な取り組みについて述べる。次にIcashシステムを基本システムと想定して、Ncashを国際展開する際の法的課題の存在と対処について、電子マネーによる日本?米国間国際送金を具体例として取り上げ考察する。Ncash is the electronic cash of which digital data is regarded as financial value. It has features that it can be withdrawn, paid, and deposited safely over Internet, and moreover, is transferable between users. Various international financial services can be imagined because it can be transferred to users overseas immediately over network. Now, the ideal of Ncash is realized as a system for the electronic commerce over Internet in Internet Cash Project. Moreover it is legally designed well. Firstly, we explain the feature of Internet Cash and legal design. And assuming Icash system as a basic scheme, we study how the legal design of Ncash international development should be, taking example of international transmittance of electronic money.
著者
秋田 直繁 森田 昌嗣 椎塚 久雄
出版者
Japan Society of Kansei Engineering
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18840833)
巻号頁・発行日
pp.TJSKE-D-17-00019, (Released:2017-07-20)
参考文献数
30
被引用文献数
1

To create innovative ideas, it is important for designers to monitor thought patterns by reflecting upon their thought structure and then control thought. In this study, we visualized the inference process, which includes deduction, induction, and abduction, as well as the associative process. Subsequently, by connecting them radially along the flow of thought, we employed a method of visualizing the inference process of designers on a two-dimensional plane. We conducted an experiment to visualize a part of the thought of designer using the “inference mapping method.” Consequently, we found out that different cognitive biases occurred in designers' deductive, inductive, abductive, and associative thinking processes. From the technical viewpoint of cognitive science, we studied the phenomena and clarified the structure of bias in each thought process. Finally, we proposed a way to visualize cognitive biases and to consciously eliminate them when designers engage in the creative process.
著者
金井 章 渡辺 さつき 小林 小綾香 大瀬 恵子 植田 和也 後藤 寛司 森田 せつ子
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Ab0453-Ab0453, 2012

【目的】 妊婦は、その経過とともに外力の影響を受けやすくなり、子宮破裂、常位胎盤早期剥離、後腹膜血腫などが生じやすい。そのため、災害時における外傷の予防には非常に注意を要する。特に、大規模地震の頻発する本邦では、地震時における妊婦の安全確保のための対策は非常に重要であるにもかかわらず、震災時の妊婦被災状況は明らかになっていないのが実情である。また、2007年より緊急地震速報の運用が始まったことで、数秒から数十秒前に揺れへの対応を取ることが可能となったものの、妊婦のサポートについて十分な検討は行われていない。そこで、妊婦における地震の揺れに備えるための安全な姿勢を検討することを目的として、揺れによる身体への外力の程度について検証した。【方法】 対象は、妊娠経験のある健常女性19名(平均年齢33.4±3.2歳、平均体重54.2±8.1kg、平均身長160.0±4.7cm)とした。被験者は、妊婦を模擬するための妊婦体験ジャケットLM-054(高研社製、重量7.2kg、妊娠8ヶ月から9ヶ月に相当)を装着・非装着の状態とし、起震車(カバヤシステムマシナリー社製)を用いて震度5弱の揺れにより身体へ加わる力を加速度計(WWA-006:ワイヤレステクノロジー社製)を用いて計測した。加速度計のサンプリング周波数は200Hzとし、左右の上後腸骨棘中央に装着した。振動時間は15秒で、中間10秒間について、3軸方向の合成加速度を解析した。計測姿勢は、揺れに備える姿勢として姿勢1:かがむ、姿勢2:膝をついてかがむ、姿勢3:お尻をついてかがむ、姿勢4:四つん這い、姿勢5:四つん這いで頭と胸を床に近づける、姿勢6:机を支えにした立位、姿勢7:壁を支えにした立位の7姿勢とした。得られた結果から、ジャケット装着の有無による差を対応のあるt検定で、姿勢による差を分散分析にて検討した。【倫理的配慮、説明と同意】 被験者へは本研究について説明し、研究への参加承諾を得た。また、本研究は豊橋創造大学生命倫理委員会にて承認を受け実施した。【結果】 平均加速度・最大加速度(単位;mG)は、ジャケット無しで姿勢1:211.6±90.5・497.1±86.3、姿勢2:234.5±99.8 ・566.4±144.7 、姿勢3:295.4±132.2 ・712.4±198.5 、姿勢4:209.5±88.7 ・503.4±149.7 、姿勢5:235.7±98.6 ・584.7±152.0 、姿勢6:248.0±121.6 ・657.6±127.9 、姿勢7:301.2±145.9・789.9±125.3 であった。ジャケット有りでは、姿勢1:200.4±79.0 ・447.1±75.0 、姿勢2:220.4±88.6 ・544.4±131.5 、姿勢3:252.8±109.4 ・607.4±110.5 、姿勢4:169.5±72.6 ・403.4±70.2 、姿勢5:219.0±89.8 ・526.1±61.7 、姿勢6:193.0±98.9 ・544.6±73.5 、姿勢7:225.0±111.8 ・586.6±102.3 であった。両群ともに、姿勢4が最も低い値を示し、ジャケット無しに比べジャケット有りで低い値を示していた。【考察】 妊婦では、平均11kgの体重増加が起こり、腹部と乳房が前方にせり出してくるため、身体重心位置が変化する。また、ホルモン環境の変化により関節が柔らかくなり、可動域が増大するため、立位姿勢が不安定となり、日常生活における種々の動作も制限される。このような状況の中で、地震時に揺れに対応するための、身体へ負担の少ない待機姿勢をとることは非常に重要である。今回の結果では、四つん這いが最も腰部への加速度は低く、負担の少ない姿勢であることが確認された。これは、四つん這いは支持基底面が広く安定した姿勢であり、腰部は揺れを生じている床の部分から一定の距離をとり、上下肢により体幹重量による慣性を利用して揺れを軽減させることができるためであると考えられた。一方で、床におしりをついてかがむ姿勢は最も大きな加速度を示していた。これは、揺れを生じている床の部分から臀部へ直接外力が伝わるため、その影響を受け易い姿勢であると考えられる。また、ジャケット無しに比べ有りで加速度が低くなっていたのは、ジャッケットによる身体重量の増加に伴う慣性力の増加効果によるものと考えられる。ただし、身体状況の変化や、その後の動作への影響などでは不利となることから、さらに検討が必要と考えられる。【理学療法学研究としての意義】 妊婦の揺れに備えるための適切な待機姿勢を明確にすることで、震災時の妊婦外傷を予防することができ、震災に対する不安感を軽減することができる。
著者
森田 裕介 中村 彰宏 室田 高志 瀧川 幸伸 長谷川 秀三 森本 幸裕
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.377-379, 2001-08
参考文献数
14
被引用文献数
2 2

水位変動をともなう冠水, 湛水条件下が近畿地方に分布するヤナギ属8種の成長および生理特性に与える影響評価を行った。冠水, 湛水条件下では, 下流域を中心に分布するカワヤナギ(Salix gilgiana), オオタチヤナギ(Salix pierotii), タチヤナギ(Salix subfragilis)の成長抑制が小さく, 山地に分布するヤマナギ(Salix sieboldiana)は12時間冠水によって枯死した。このように, 分布が氾濫の多い下流域に近いほど, 冠水, 湛水に対する耐性は大きくなることが明らかになった。
著者
濱口 郁枝 山本 存 森 由紀
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2012

<b>目的</b> 近年,若年女子の不必要な減量行動による健康上のリスクが問題視されており,前報では,その背景要因として,メディアによって助長されるおしゃれ意識がかかわることを明らかにした.本研究では,女子大生の購読率の高いファッション雑誌を取り上げ,そこにみられる食事や運動に関するダイエット情報の特徴について検討した.<br><b>方法</b> ファッション雑誌Aにおける2010年8月号から2011年7月号までの1年間に刊行された12冊について,ダイエットに関する特集記事の見出しをデータとし,テキストマイニングの手法を用いて頻出語や特徴ある語句について分析した.<br><b>結果</b> 12冊の中で,ダイエットに関連する記事が掲載されていたものは10冊であった.品詞別の頻出上位3語は,動詞では,食べる,鍛える,太る,サ変名詞では,ダイエット,運動,食事,名詞では,ヤセ,筋肉,脂肪であった.また,複合語では,老廃物,美脚,ムダ肉,前もも,小顔の出現数が上位に入っていた.さらに,対応分析の結果から,やせ,筋肉,脂肪,ダイエットは,多くの発行月号の記事内容を特徴づける語句であったことが示された.記事の全体的な特徴としては,効果,簡単など,手軽に無理なく痩せることを強調する語句を用いることや,芸能人のシェイプアップ方法や海外の有名なモデルが実践しているダイエット方法を示すなど,読者の興味をひくような工夫がなされていた.しかし,遺伝子や血液型によるヤセ効果の高い食べものを掲載するなど,エビデンスが得られていない情報が多いこと,さらにプチ整形を勧めるなど問題点が提起された.女子大学生に対する健康教育として,情報を的確に取捨選択し活用できる能力を身につけさせる必要性が示唆された.
著者
西森 年寿 望月 俊男 椿本 弥生 山内 祐平 久松 慎一 中原 淳 大浦 弘樹
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.309-316, 2014-12-25 (Released:2016-08-11)

筆者らは,大学教育での学生によるレポート課題などにおける問題設定の支援を目的として,映像資料閲覧を支援するための視聴プレイヤーMEET Video Explorerを開発した.教育現場での映像アーカイブ利用が普及し,一人一台環境が実現されるなかで,こうしたツールの利用可能性が高まっている.本研究では実験授業においてこのツールを用い,問題設定に対して映像アーカイブの個別視聴が与える効果と,ナレッジマップ機能の持つ効果について検討を行った.個別視聴活動と講師が説明を行う一斉視聴活動を行った群の比較から,個別視聴群では一部の問題に凝集しない問題設定が行えていることが分かった.また,ナレッジマップの作成により,複数の情報を統合しようとする独創性の高い問題設定が支援できる可能性が示唆された.
著者
森 哲彦
出版者
名古屋市立大学
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.1-11, 2008-06

カントは、1760年代前半の独断的、論理的形而上学期において、伝統的なドイツ形而上学に依存しつつも、真に自立した形而上学者の立場を表明する。統いて1760年代半ば以降の経験的、懐疑的形而上学期では、ドイツの伝統的哲学と関わりながらも、研究に社交的文明精神を導入することにより、人間学的観察と道徳的原則の探究を行うものとなる。このようなカントの新しい思想的「変化」は「カントにおける一つの革命」と評される。本論で取り上げる著作『美と崇高の感情の観察』1764年においてカントは、当時ドイツで紹介されていたイギリス道徳哲学、とりわけハチスンの道徳感情論を取り上げ、伝統的な哲学者としてよりも観察者の眼をもって「美と崇高の感情」に現れる様々な諸相を、美学的、人間学的に分析する。だが文明化した社会の「多様性のただ中の統一性」を観察するイギリス道徳感情論にカントは満足せず、文明化した人間社会を批判するルソーの思想に出会い、新たな転向を迎えるものとなる。カントがルソーの思想を取り上げる著作は『美と崇高の感情の覚書』1765年である。この著作は、前著作『観察』の余白にカント自身によって書き込まれた種々の断片的な文章により構成されている。そこにおいてカントは、ルソーがいうように堕落した文明を批判し、単純で自足した自然にもどることを、提唱するのではなく、文明化した社会を人間、自然、自由、および意志の完全性により啓蒙し、新しい道徳的原則を、志向しようとするものである。