著者
橋本 健二
出版者
東京大学
雑誌
東京大学教育学部紀要 (ISSN:04957849)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.249-257, 1988-02-10

The state is one of the central problems in a recent social science. There are two key problems in theories of the capitalist state. One is determinant of forms and functions of the state, another is functions of the state to the structure of capitalist society. Many theorists have been engaged in these problems in various way. We need to unify these previous approaches and have a more generalized theory. I try to this by distinguishing Levels of Analysis and Modes of Determination. Functions of the state, to secure reproduction of structure of capitalist society, can be analized on four levels of analysis : levels of mode of production, class structure, social formation, and concrete society. Determinants of functions of the state can be understood as complex of structural limitation, conducts of members of state apparatus and influences of social classes. These theoretical considerations are part of sociology of state activities in general.
著者
矢野 正 橋本 健次郎
出版者
一般社団法人照明学会
雑誌
照明学会誌 (ISSN:00192341)
巻号頁・発行日
vol.82, no.11, pp.895-901, 1998-11-01
被引用文献数
3

A woman's complexion color is an important and familiar factor in the evaluation of preferred color appearances under illumination. For this reason, a new method of estimating preference for Japanese complexion color under illumination is proposed is the present study. T clarify the relationship between preference for Japanese woman complexion under illumination and the chromaticity coordinates of the complexion on the CIE 1976 u' v' chromaticity diagram, we analyzed subjective evaluation data obtained by evaluating the color appearance of 40 complexions by using seven evaluation categories in detail. A new preference index PS for Japanese complexion color under illumination was derived from the experimental results. It was clarified that the new index PS correlated well with not only the experimental data but also with preference for Japanese woman complexion color under illumination produced by various kinds of light sources adopted. The new index PS can evaluate the preferences concerning Japanese woman complexion color related to light sources better than the standard illuminant D_<65>, which can not be evaluated by the present index R_a proposed by CIE and JIS. The preference index for the complexion color PS proposed in the present study will be useful related to a practical estimation index of the color rendering properties of light sources from the viewpoint of preference of complexion color.
著者
森本 卓爾 橋本 健二 石原 靖哲 藤原 融
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. DE, データ工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.131, pp.109-114, 2007-06-25

本稿ではXPath部分クラスの問い合わせを,木埋め込み関係に基づいたXMLスキーマ進化に応じて正しく変換する手法を提案する.正しい変換とは,進化前スキーマに従うXML文書に対する問い合わせ結果と,進化後スキーマに従うように変換した任意のXML文書に対する問い合わせ結果が等しい変換を言う.提案した手法が正しい変換を行っていることを証明する.
著者
森本 卓爾 橋本 健二 石原 靖哲 藤原 融
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告データベースシステム(DBS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.65, pp.109-114, 2007-07-02

本稿では XPath 部分クラスの問い合わせを、木埋め込み関係に基づいた XML スキーマ進化に応じて正しく変換する手法を提案する。正しい変換とは、進化前スキーマに従う XML 文書に対する問い合わせ結果と、進化後スキーマに従うように変換した任意の XML 文書に対する問い合わせ結果が等しい変換を言う。提案した手法が正しい変換を行っていることを証明する。A method is proposed for translating queries in a subclass of XPath according to XML schema evolution based on the tree-embedding relation. A query translation is said to be correct if the result of every query to an XML document valid against the schema before evolution is equal to the result of the translated query to the XML document valid against the schema after evolution. Correctness of that the translation method is correct is proved.
著者
小田将之 橋本健二 楫勇一 関浩之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.37, pp.1-6, 2014-02-27

近年,利用者の位置に応じた情報を提供する位置情報サービスが注目されている.しかし,位置情報の改竄によりサービス提供者や他のユーザが不利益を被ることがある.また,位置情報はユーザのプライバシー情報であるため,その保護についても十分配慮しなければならない.このような理由から,ユーザの位置情報が正しいことをユーザのプライバシーをできるだけ開示せずに証明するための位置証明プロトコルが提案されてきたが,改竄防止等のため位置証明書生成に関わる参加者全てに PKI 等の基盤を仮定しており運用面からは必ずしも簡便とはいえない.本研究では,位置証明プロトコルとデバイスペアリングを組み合わせたプロトコルを提案し,従来手法と比較してプロトコルの軽量化が可能であることを示す.また,提案プロトコルの安全性やプライバシーなどの性質について議論する.さらに,我々が既に開発済みの,人間の動作に基づく共通鍵生成法をデバイスペアリングとして利用し,Android モバイルデバイス上で動作するアプリケーションとして提案手法を実装した.実証実験の結果,正当なユーザに位置証明書を発行できる確率は 93.2%,正当でないユーザに発行してしまう確率は 0%であった.また,位置証明書の生成と検証にかかる実行時間はそれぞれ平均 37 ミリ秒,7 ミリ秒であった.
著者
橋本 健夫 川上 昭吾 戸北 凱惟 堀 哲夫 人見 久城 渡邉 重義 磯崎 哲夫
出版者
長崎大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

社会の成熟に伴って多様な価値観が存在するようになった。その中で一般に勝ち組、負け組と言われる二層が存在するようになり、それが教育格差をも生じさせている。また、学校教育においては、いじめ、不登校などの問題が深刻になるとともに、数学や理科における学力の低下という新たな課題も生まれてきている。特に後者は、科学技術創造立国を掲げる日本社会にとって憂慮すべき課題である。本研究は、それらの指摘を踏まえた上で、科学技術創造立国を支える学校教育のあり方を追究したいと考えた。平成17年度は社会が学校に何を期待するかや諸外国の学校事情等を調査し分析した。本年度においては次の調査等を行い、研究テーマに迫りたいと考えた。(1)子ども達の理科に対する意識調査(2)韓国や中国等における自然科学教育の実態調査(3)日本・中国・韓国の研究者を招いてのシンポジウムの開催これらを総合的に討議した結果、自然科学をバックボーンにした従来の理科学習に代わって職業観の育成等を組み込んだ理科学習や、現行の小・中・高の学校制度を見直す時期に来ているとの認識で一致した。この認識の是非を小中学校の教員に尋ねたところ、半数以上の教員が賛同を示した。二年間の研究期間ではあったが、学校教育の中における自然科学教育の課題を浮かび上がらせ、その解決に向けた提案をすることができたと考えている。
著者
横川 博一 定藤 規弘 田邊 宏樹 橋本 健一 吉田 晴世 原田 康也
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

平成28年度は,外国語処理における繰り返し接触による気づき・注意機能の発現と自動化に関する理論的・実証的研究として,主として以下の3つの研究課題を設定し,次のようなことが明らかとなった。(1)「相互的同調機能の発現が日本人英語学習者の第二言語産出に及ぼす影響」を研究課題として設定し、日本人英語学習者を対象にプライミング手法を用い、相互的同調機能を支えるメカニズムである統語的プライミング効果について検証した。その結果,英語母語話者を対象とした実験で見られた、プライムを音声提示、ターゲットを音声または文字産出した際の統語的プライミング効果が日本人英語学習者に対しても見られることが明らかになった。(2)「日本人英語学習者の文理解における統語構造および意味構造の構築の検証」を研究課題として設定し、初級および中級熟達度の日本人英語学習者を対象に、目的格関係節文と受動文とを用いて、音声提示および文字提示で心理言語学的実験を行った。その結果、中級熟達度の学習者は、意味役割の再付与はある程度自動化しており、音声と文字とでは同程度に処理ができるが、複雑で複数の統語処理が必要な場合、文理解が困難になることがわかった。一方、初級熟達度の学習者は、意味情報に依存して文を理解し、意味役割の再付与に困難性があり、統語構造の構築が困難であることがわかった。また音声のほうが文字よりも処理が困難であることが判明した。(3)「タスクによる注意機能が第二言語文理解時における言語情報処理に与える影響:自己ペース読み課題による検討」を研究課題として設定し,句構造規則違反では、低熟達度群は統語情報に注意を向けなければ意味主導の処理を行っていることが、また、意味違反では、高熟達度群は意味情報から注意をそらしても意味違反を即座に検出したが、依然として日本人英語学習者は意味主導の処理を行っていることが明らかになった。
著者
橋本 健広
出版者
関東学院大学経済経営研究所
雑誌
関東学院大学経済経営研究所年報 (ISSN:13410407)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.97-103, 2013-03

グローバル化が進み企業における英語の必要性が高まる中,中小企業を独自のコンテキストをもつ言語コミュニティととらえて研究することが望まれる。本研究では,広域京浜地域の中小製造業に関して,企業活動で使用される英語および他の言語についての調査を行った。中小企業は海外展開や外国語の使用が難しい状況にあるものの,多くの中小製造業が国際語としての英語および共通語としての日本語を使用して海外企業と企業活動を行なっていることがわかった。
著者
橋本 健一
出版者
千葉県立衛生短期大学
雑誌
千葉県立衛生短期大学紀要 (ISSN:02885034)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.25-32, 2007

1.授業の展開にワークシートを活用することにより,学習者は授業の流れを把握でき,教師は学習者の反応を考えながら設問を設定するため,効果的な授業の展開が期待できると思われる。2.ワークシートを「授業中の設問や学習者の作業を特定の流れに沿って配置し,学習者がそれらに対し,シート上に記入していきながら,ある理解に到達することを目的とした教材」と定義した。すなわち,この教材の展開にあたっては,教師の指導を前提とし,学習者の自学自習を目的としたものではない。3.わかりやすく,学習者に興味・関心を持たせるワークシートとして,次のような配列で設問を設定することを提案した。(1)導入または知識の確認の設問(2)ある事象に対し,一般的にどのように認識されているかに関する設問(3)一般的な認識に関し,疑問を生じるような設問または作業(4)生じた疑問に関し,新たな発見があったり,疑問を解決するような設問または作業(5)新たに得られた知識や理解を整理する設問(6)発展的な学習や知識・理解を定着させるような設問
著者
長井 千枝子 籔内 智 橋本 健一 菅井 康祐 横川 博一
出版者
全国英語教育学会
雑誌
ARELE : annual review of English language education in Japan (ISSN:13448560)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.61-70, 2010-03

This study investigated the use of verb subcategorization information during sentence comprehension by Japanese EFL learners, using a self-paced reading task with the embedded anomaly technique. In order to observe when the syntactic structure was determined, filler-gap sentences were constructed as stimuli. Four types of verbs were used: simple transitive verbs, dative verbs, infinitive complement verbs and intransitive preference verbs. The plausibility of the direct object of the embedded verb was also manipulated. The results demonstrate that the high proficiency learners utilize verb subcategorization information of simple transitive verb; however they do not use it automatically as natives. The results also indicate that they cannot utilize that of other types of verbs. The low proficiency learners show the difficulty in processing the sentences with long-distance dependencies.
著者
矢野 正 下村 容子 橋本 健次郎 金谷 末子
出版者
一般社団法人日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.107-118, 1993-08-01
被引用文献数
12

照度レベル, および, 光源の光色が高齢者と若年齢者の色識別性に与える影響を調べるために100hueテストを用いて実験検討した。実験条件は, 照度レベルが10, 100, 1000lxの3条件で, 相関色温度が3000, 5000, 6700Kの3段階で, 光源として3波長域発光形蛍光ランプを用いた。その結果, (1)照度レベルが1000lxの場合は, 高齢者, 若年齢者ともに光源の光色によって色識別性に差はなかったが, 照度レベルが100lxの場合は, 高齢者のみで, その識別性が3000Kと6700Kとで差がみられ, 照度レベルが10lxでは, 高齢者, 若年齢者ともに光源の光色によって色識別性に差が生じた。(2)高齢者は若年齢者の色識別能カよつどの色相でも劣り, 特に紫赤色系で劣った。(3)各色票に対するエラースコアは, 隣合う色票の色相差と関係があった。(4)高齢者が若年齢者と同等に色識別を有するためには約1.5倍の色相差が必要であった。
著者
塩沢 昌 田野井 慶太朗 根本 圭介 吉田 修一郎 西田 和弘 橋本 健 桜井 健太 中西 友子 二瓶 直登 小野 勇治
出版者
Japan Radioisotope Association
雑誌
Radioisotopes (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.323-328, 2011-08-15
被引用文献数
10 31

福島第一原子力発電所事故で放射性物質が多量に降下してから約2か月後に,耕起されていない水田の深さ15cmまでの表土を厚さ1~5cmの6層に分割してサンプリングし,放射性セシウム(<SUP>134</SUP>Csと<SUP>137</SUP>Cs)の鉛直濃度分布を求めた結果,放射性Csの88%が0~3cmに,96%が0~5cmに止まっていた。しかし,量的に大半は表面付近に存在するものの,15~20cmの層まで新たに降下した放射性Csの影響が及んでいた。濃度分布から求めた放射性Csの平均移動距離は約1.7cmで,70日間の雨量(148mm)から蒸発散量を引いて体積含水率で割った水分子の平均移動距離は約20cmと推定され,土壌への収着により,Csの移流速度は水の移流速度に比べて1/10であった。しかし,文献にみられる実験室で測定した収着平衡時の土壌固相と土壌水との間の分配係数から計算される移流速度よりは2~3桁大きく,現場の移動現象が収着平衡からほど遠いことを示している。一方,耕起された水田では,表層の高濃度の放射性セシウムが0~15cmの作土層内に混合されて平均値(約4000Bq/kg)となっていた。
著者
橋本 健一 飯島 和子 小川 賢一
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.201-206, 2008-11-25 (Released:2009-03-18)
参考文献数
23
被引用文献数
1

The photoperiodic response curve for pupal diapause induction of the white cabbage butterfly, Pieris rapae crucivora Boisduval was determined in several populations of the Japan Archipelago. Larvae were reared under different photoperiods ranging from 8L16D to 16L8D at 20±0.5°C. The critical photoperiods for pupal diapause induction were 14 h 40 min for the Iwamizawa population (43°10′N), 13 h 15 min for the Sendai population (38°15′N), 13 h 10 min for the Nagaoka population (37°23′N), 12 h 08 min for the Okayama population (34°39′N), 11 h 50 min for the Matsuyama (33°50′N) and Kagoshima (31°35′N) populations and 11 h 15 min for the Naze population (28°23′N). The critical photoperiod increases as latitude increases. This result suggests that adaptation to a cool climate in a higher latitude region shifts the critical photoperiod for pupal diapause induction towards a longer range. The developmental zero for the larval stage in the Sapporo (43°03′N) and Matsuyama populations was calculated as 9.8°C and 9.6°C for the larval stage, respectively. These results are discussed in relation to seasonal adaptation for each population.
著者
田野井 慶太朗 橋本 健 桜井 健太 二瓶 直登 小野 勇治 中西 友子
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.317-322, 2011 (Released:2011-08-29)
参考文献数
4
被引用文献数
11 14

著者らは,2011年3月11日の東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故由来の放射性物質の麦への蓄積様式について,γ線放出核種の同定及び分布について明らかにした。5月15日のコムギについて核種分析したところ,134Csと137Csが検出され,これらを足した放射性セシウム濃度は,枯葉で約284500Bq/kgと穂の約300Bq/kgと比較して約1000倍と突出して高い値であった。次に,5月26日のコムギについて,各葉位,穂及び茎に分けて同様に測定したところ,放射性セシウム濃度は,事故当時既に展開していた葉において高く,事故後展開した葉も含め,古い葉の順に高い値であり,穂が最も低い濃度であった。これら放射性物質の分布を可視化したところ,既に展開中の葉においてスポット状に強いシグナルが観察された。これらの結果から,事故時展開していた葉で高濃度に検出される放射性物質は,放射性降下物が直接付着したものが主であることが示唆された。一方で,事故時展開していなかった葉においても,古い順に放射性セシウム濃度が高かったことから,植物体内において葉へ移行した放射性セシウムは転流(再分配)されにくいことが示唆された。
著者
遠西 昭壽 川上 昭吾 大高 泉 吉田 淳 平野 俊英 楠山 研 森本 弘一 磯崎 哲夫 橋本 健夫 劉 卿美 遠西 昭壽
出版者
愛知教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

アジアの中で発展が急な韓国、中国、台湾、シンガポール4ヶ国、中国については教育特区の北京、上海、香港の理科教育の実態を調査した。アジア各国は例外なく理科教育の充実に努めている。特に、韓国では英才教育院、科学英才教育院において英才教育が進められていること、シンガポールでは2007年に「シンガポール大学附属理数高校」(National University of Singapore High School of Math and Science)、理数教育に特化した高校が開校していることが特記すべきことである。コンピュータ教育の充実も盛んに行われている。特に、シンガポールでは国が力を入れ、コンピュータはインターネット、電子黒板等多面的に利用されている。いじめがあるのは日本で、韓国では問題になりつつある。その他の国ではこの問題はない。3年間の本研究で、韓国、中国(北京、上海、香港)、台湾、シンガポールの研究者との交流を深めることができ、国際シンポジウムを開催することもできて、今後の研究交流の基盤が整備されたことは、大きな成果であった。
著者
橋本 健二
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では,2足歩行ロボットの足部に着目し,砂利道や砂地などの脚接地面が変形するような路面に対する適応歩行の実現を目指し,接地面積が大きく確保でき,路面との接地圧を分散可能な足部機構を開発することを目的とする.しかし,足部機構単体だけではそのような路面すべてに対応することが困難であると考えられるので,歩行を安定化させる制御の開発も必要に応じて行う.計画の前半である平成19年度では,以下の2点について研究を推進した.(1)路面形状保持機構の考案路面の凹凸にならう際に接地面積が大きく確保でき,路面との接地圧を低減させることが可能な路面形状保持機構を考案した.これはスチールボールと永久磁石からなり,路面の凹凸にスチールボールがならい,ロック時にはそこに磁場をかけ,路面形状を保持するというものである.(2)着地衝撃緩和を目指した不整路面適応制御の構築これまでに考案してきている着地軌道修正制御は,そのアルゴリズム上の問題のため,歩行時における着地衝撃が問題となり,継続的な歩行安定性に悪影響を及ぼすという問題点があった.そこで,不整路面に適応しつつ,着地時における衝撃力を緩和する歩行安定化制御のアルゴリズムを考案した.着地時におけるならい動作および着地衝撃緩和に関しては,遊脚中にモータの位置ゲインを下げることにより脚部コンプライアンスを上げ,足底6軸力センサにて測定される力の微分値の立ち上がりにより着地を検知し,運動量保存則に従い,足先速度を0にすることで衝撃緩和を図った.この手法により,従来用いていた着地軌道修正制御においておよそ1000N程度発生していた着地時における衝撃を,およそ400N程度と,自重の30%程度にまで低減させることに成功した.
著者
橋本 健史 岡田 泰昌
出版者
慶應義塾大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

【目的】:下肢組織をin vitroで保存するための条件を発見し、電気刺激実験系を確立することを本研究の目的とした。【対象と方法】対象は、幼若ラット群(9日齢)5例、若齢ラット群(16日齢)5例、成熟ラット群(生後3ヶ月以上)3例とした。麻酔下に開胸および開腹を行い、大動脈経由で人工的に下肢を灌流・維持できるようにした。自発呼吸活動をモニターした。標本を22℃〜36℃の様々な温度条件下で、至適灌流条件を検索するとともに、灌流液を室内気平衡条件下と高酸素平衡条件下とした場合の標本生存性を比較検討した。成熟ラット群については、腸骨動脈内へカテーテルを挿入し、下肢のみの人工的灌流を行うとともに、至適灌流条件についての検討も行った。吸引電極を用いて足部の各種の遠心性末梢神経の電気刺激を行うことによりin vitroにおいて様々な足運動を再現させることを試みた。【結果】幼若ラット群、若齢ラット群では、適当な条件下では長時間にわたって神経活動を維持・確認しえた。灌流温度としては28-32℃が適していると思われた。また、灌流液組成としては、ブドウ糖30mM,塩化ナトリウム126mM,塩化カリウム5mM、重炭酸ナトリウム26mM、硫酸マグネシウム2mM、塩化カルシウム2mM,燐酸二水素ナトリワム1mMとしそれを、それを酸素95%,二酸化炭素5%で平衡させた条件(pH=7.4)で、満足しうる標本維持結果を得ることができた。【結論】今回の結果から、28-32℃の灌流温度と一定の灌流液組成および至適pH=7.4で摘出下肢組織標本を経動脈的に灌流・維持することにより、神経の電気刺激にも十分、反応するin vitro実験系を確立することができた。これらの成果は、第30回日本足の外科学会と第3回国際足の外科学会で発表予定である。