著者
武田 尚子
出版者
武蔵社会学会
雑誌
武蔵社会学論集 : ソシオロジスト : Journal of the Musashi Sociological Society (ISSN:13446827)
巻号頁・発行日
no.7, pp.191-216, 2005-03-10

本稿は,広島県福山市内海町(田島と横島の2つの離島から構成される)の町地区を調査対象地とし,1980年代に氏神神社の祭礼に生じた変化を通して,地域社会における「Social Capital」「人と人との関係性の資源」の形成過程について考察した。 1984年に田島の町地区では神輿渡御に際し,隣接する横島地区と神輿ジョイントを実施した。異なる自然村どうしの間で,神輿渡御の合同イベントの企画が実現するのは,稀なことである。この2年前から町地区では,祭礼に特化した機能集団が結成され,地域自治会とは距離をおいて活動していた。当時の地域自治会役員層の祭礼運営の方針とは相容れない神輿ジョイントのアイデアは,この機能集団によって実行されたものであった。機能集団のこの行為は,祭礼慣行を遵守する地域自治会役員層の発想とは乖離するため,この行為をどう評価すべきか,その解釈をめぐっては不安定な要素があったが,機能集団の存在や行為は,次第に地域社会の支持を得ていった。現在では,地域行事の実施にあたって,この機能集団の協力が欠かせない状況になっている。 集落コミュニティが担う機能の中で,祭祀慣行は最も変化しにくいものである[鈴木広1975:127]。このような伝統的な集落の発想をこえる行為の出現を支えた仕組みを明らかにするために,機能集団の中核的人物のライフ・ヒストリーを分析した。その結果,中核的人物は青年の頃から,離島に生きる者としての生き方を模索し,複数のアソシエーション集団の活動に活発に関わることによって,「人と人との関係性の資源」を形成・蓄積してきたことがわかった。また,神輿ジョイント実現にあたっては,自営業主層のネットワークを活用することによって,異なる自然村との間の合同イベントを実行できたことが明らかとなった。 このようにライフ・ヒストリー分析を用いることによって,中核的人物が,アイデア実現のため重要な資源となった「重要な他者」を身辺に獲得し,配置していった過程について,時間的パースペクティブ,空間的パースペクティブをとりいれて考察することができた。つまり,パーソナル・ネットワーク分析でいうところのエゴのパーソナル・ネットワーク形成が,地域社会における「Social Capital」「人と人との関係性の資源」に深化していく様相をとらえることができた。このように,本稿は祭礼が変容する課程を通して,個人史と地域社会構造の関連を解明し,記述する方法を模索してみたものである。
著者
横山 利夫・藤田 進太郎・武田 政宣 藤田 進太郎 武田 政宣
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.169-176, 2015

最近,自動車の自動運転に関する関心が急速に高まってきている.まずは自動運転に対する世の中の期待を紹介する.現在の道路交通条約および自動運転システムのレベル定義を説明した後,自動運転技術の実用化に向けた国際基準調和活動を概説する.その後,自動運転を実現するための主要な技術への取り組みを紹介し,最後に,自動運転実用化に向けた今後の展望を述べる.
著者
福永 祥子 武田 大造 寺澤 真由 升井 洋至
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2015

【目的】高齢者における咀嚼は,QOLに大きく影響を及ぼす要因であることが明らかとなっている。現在,高齢者の食事に関する物性の基準は,厚生労働省のえん下困難者用食品許可基準や日本介護食品協議会のユニバーサルデザインフード(UDF)の自主規格などがある。本研究では,実際に特別養護老人ホームで提供されている食事の物性を測定,これらの基準と比較し,高齢者向けの調理について検討することを目的とした。 <br>【方法】食事試料は,神戸市内の高齢者施設Fより提供を受けた(2012から2014年度)。施設におけるソフトA食:(歯ぐきでつぶせる硬さ,義歯に不具合のある人を対象),ソフトB食:(ソフトA食にあんをかけ,嚥下機能が低下した人を対象)の2種類を試料とした。調理品の物性の測定は,料理品の食材ごとに,山電レオナ―クリープメータ(RE2-3305B)を用いて,UDF等の基準に示されている方法に準じて実施した。なお,測定温度は20&plusmn;2℃または40&plusmn;2℃に統一して行った。 <br>【結果】硬さにおいて,ソフトA・B食ともに測定温度が高温(40℃)で基準内となる割合が高く,ソフトB食のほうがA食より高かった。この一因として,ソフトB食はA食のあんかけによる軟化方法であることがあげられる。低温(20℃)では,多くの食材が硬くなる傾向であった。食材の使用頻度から比較した場合,特に魚で大きな差が見られ,B食の方が軟らかかった。一方,A食の魚は,基準内にある割合が低かった。また,豆腐,ニンジン,ダイコン等の食材で基準を満たす割合が高く,その使用頻度が高かった。これらの食材を高頻度で使用することで,高齢者向けの食事を工夫して提供していると考えられた。
著者
河野 美華 武田 知樹 大平 高正 山野 薫
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.A0076, 2007

【目的】<BR> 自転車エルゴメーターは,下肢関節への負担が少なく筋力増強が得られるため,運動療法の中で幅広く利用されている.しかし,その特性について,臨床で使用が容易な低強度での筋活動,また駆動肢位についての報告は少なく,不明な点もみられる.今回は,自転車エルゴメーター駆動時における,強度や膝関節位置の相違が駆動時の大腿四頭筋活動に与える影響について考察する.<BR>【方法】<BR> 対象は本研究に同意した健常成人4名(男女各2名)とした.平均年齢は24.0±4.0歳,平均身長は171.5±6.5cm,平均体重は62.0±7.5kgであった.自転車エルゴメーターは,Cateye社製ergociserMODEM EC-1000を用い,運動強度は60Watt(1.0kp×60rpm:低強度),120Watt(2.0kp×60rpm:高強度)の2条件を選択した.サドルの高さは膝関節最大伸展時30°に設定した.駆動肢位は,大腿中央-膝蓋骨中央-下腿中央を結んだ線を中間位とし,それより膝が内側へ入った場合(内側位),外側へ出た場合(外側位)の3肢位を設定した.筋活動の測定は,表面筋電図NORAXON社製テレマイオ2400を用い,大腿直筋,内側広筋,外側広筋の筋活動を測定した.得られたデータは全波整流し,1サイクルごとの平均振幅を求め,14サイクル分の平均値を代表値とした.さらに,各筋の最大等尺性収縮時の筋活動量に対する相対値(%MVC)を算出した.肢位別の比較検討では,各筋ごとに中間位の平均振幅値を100%とし,内側位と外側位の活動量を比較した.<BR>【結果】<BR> 強度別の比較において,大腿直筋では低強度10.8%に対し,高強度21.4%であった.外側広筋では低強度23.4%に対し高強度46.6%,内側広筋では低強度46.8%に対し,高強度85.3%であった.低強度は高強度の約半分の活動量であり,最も高値を示したのは内側広筋であった.肢位別に比較した場合,低強度において外側位で大腿直筋の活動量の増加が認められ,同じく内側位で外側広筋と内側広筋に活動量の増加が認められた.高強度では大きな増加はみられなかった.<BR>【考察】<BR> 低強度による自転車エルゴメーター駆動では,筋力増強が得られにくいとされているが,今回の結果より低強度でも内側広筋では約50%の活動量が得られ,他筋と比較して高い活動量を示したことより,内側広筋に対して有効性が示唆された.また,肢位別比較では,二関節筋である大腿直筋の起始・停止の関係が影響していると考えられ,拮抗筋である大腿二頭筋の活動量測定を行う検討の必要がある.高齢者や術後早期の患者に対しては,低強度の施行が多く用いられるが,目的とする筋に対して駆動肢位設定を確認する必要がある.<BR>
著者
山崎 寛 青木 京子 服部 保 武田 義明
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.481-484, 1999-03-30 (Released:2011-07-19)
参考文献数
21
被引用文献数
22 22

里山の高林化と種多様性の増加を目指して, アカマツやコナラなどの高木優占種を残し。照葉低木類, ササ類の伐採等の植生管理を行った。植生調査は, 兵庫県の里山林整備事業地9ケ所に定置調査区12区を設置し, 管理前から管理後最長3年目までの追跡調査を行った。その結果, 管理前後の植生を比較すると, 管理後種数の明瞭な増加が認められた。特に, 日本海側のアカマツーユキグニミツバツツジ群集とコナラーオクチョウジザクラ群集で著しい種数の増加が見られた。また, 植生管理後増加した種は, 里山の主要構成種であるブナクラスの種が中心であった。したがって, このような植生管理手法は, 里山の種多様性を維持・増加させるのに有効であると考えられた。
著者
横山 利夫・藤田 進太郎・武田 政宣
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.169-176, 2015-06-15 (Released:2016-07-30)
参考文献数
17
被引用文献数
1

最近,自動車の自動運転に関する関心が急速に高まってきている.まずは自動運転に対する世の中の期待を紹介する.現在の道路交通条約および自動運転システムのレベル定義を説明した後,自動運転技術の実用化に向けた国際基準調和活動を概説する.その後,自動運転を実現するための主要な技術への取り組みを紹介し,最後に,自動運転実用化に向けた今後の展望を述べる.
著者
吉田 克志 武田 善行
出版者
農業技術研究機構野菜茶業研究所
雑誌
野菜茶業研究所研究報告 (ISSN:13466984)
巻号頁・発行日
no.3, pp.137-146, 2004-03

チャの重要病害である炭疽病の抵抗性検定法を確立するため,付傷接種による抵抗性検定法を検討した。ジャガイモ蔗糖液体培地にメチルセルロース400cPを最終濃度3%(w/v)になるように混合し,これに炭疽病菌分生子を加え,最終濃度が1×10 7個/mlになるように調整した分生子懸濁液を検定に供試した。チャ炭疽病菌分生子懸濁液を付着させた,3mm幅のマイナスドライバーを用いて,充分に硬化したチャ成葉を十字型に付傷すると同時に接種を行った。その後,湿室・暗黒下で26℃,18時間静置した後,オアシス(R)育苗成型培地に接種葉を挿し,湿室条件下で2週間培養すると,その品種の炭疽病拡大抵抗性の強さを反映した,炭疽病の病斑形成が認められた。炭疽病抵抗性の強さを病斑の大きさにより,極強(3mm未満),強(3-5mm未満),中(5-8mm未満)および弱(8mm以上)の4段階に類別した。また,成葉の供試時期の違いにかかわらず再現性の高い結果が得られた。本検定法はチャの拡大抵抗性を調査するもので,圃場抵抗性を直接反映するものではないが,圃場における炭疽病自然発生の程度と本検定法の結果は類似性が高いこと,幼木から採取した成葉も検定法に供試できることから,本検定法はチャ育種における炭疽病抵抗性系統の早期選抜に利用可能であると考えられる。
著者
武田 祐子
出版者
一般社団法人日本遺伝性腫瘍学会
雑誌
家族性腫瘍 (ISSN:13461052)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.3-6, 2008 (Released:2018-12-05)
参考文献数
3

近年,個人情報の取り扱いに対する意識が高まるなか,研究の実施および公表におけるプライバシー保護に対する倫理指針が定められてきているが,貴重な臨床経験をまとめて報告する症例・事例報告に対して適用できる明確な指針はない.そこで,国内学会の和文誌における症例・事例報告の取扱いの現状を概観し,家族性腫瘍に関する症例・事例報告を行う場合の課題を検討した.患者個人だけではなく,家族や家系を対象とする家族性腫瘍の臨床の特性から,①対象者の同意取得,および②プライバシーの保護と科学性の保証について,慎重な検討が必要であると考えられた.
著者
佐藤 敬 高松 滋 作田 茂 水野 成徳 高松 むつ 武田 俊平
出版者
The Japanese Society on Thrombosis and Hemostasis
雑誌
血液と脈管 (ISSN:03869717)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.410-413, 1982-09-01 (Released:2010-08-05)
参考文献数
3

The effects of mefenamic acid on in vitro platelet functions, namely thrombininduced production of thiobarbituric acid-reactive substances (TBARS) and ADP-induced platelet aggregation, were investigated and compared with those of aspirin and flurbiprofen.Mefenamic acid inhibited platelet TBARS production almost comparatively to aspirin and flurbiprofen. The inhibitory effects of these three drugs on platelets from patients with atherosclerotic vascular diseases were smaller than the effects on platelet from normal subjects. Percent inhibition, by mefenamic acid, on platelet TBARS production correlated positively with maximal aggregation in these subjects.Mefenamic acid also strongly suppressed platelet aggregation. In contrast to aspirin and flurbiprofen, of which effects were limited solely on secondary aggregation, mefenamic acid abolished primary aggergation, as well. Therefore, besides being a strong inhibitor of platelet thromboxane generation, mefenamic acid may exert its anti-platelet action through unknown mechanism (s). Antiplatelet action of this drug can be also characterized by the result suggesting that the inhibition tends to be large on platelets with higher aggregatory activity.
著者
武田 文七 山口 文之助
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.1897-1904, 1959-12-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
20
被引用文献数
7

ビニル系,ゴム系,セルロース誘導体系,ポリエステル系,ポリアミド系からそれぞれ試料をえらび,水素,酸素,窒素,炭酸ガスの透過係数(P),拡散係数(D),溶解度係数(S)を温度を変え,圧力差77cmHgにて測定した。気体についてPもDも大体H2>CO2>O2>N2であり分子の大きさからのDの予想順位H2>O2>N2>CO2と一致しない。CO2のDの大きいのは,CO2が膜を拡散するとき,その長軸方向に位置をとり易いためである。Sは気体の臨界温度の高いほど大きい。CO2>O2>N2>H2の順序が予想され多くの膜についてそうである。膜からみた場合Pの大小の順序はDの大小の順序と大体一致するがSのそれとは一致しない。PおよびDの大体の順序は測定した膜について次のようである。天然ゴム,エチルセルロース,テフロン,ポリスチレン,ポリエチレン(比重=0.926),ポリプロピレン,ポリエチレン(比重=0.951),ポリ塩化ビニル,トリアセチルセルロース,ジアセチルセルロース,ジニトロセルロース,塩酸ゴム(ライファン),マイラー,ナイロン。後者ほど分子鎖空間がちみつで,熱運動による孔形成の確率が少ない。透過性と膜の構造との関係についてえられた結果を列記する。(1)高圧法ポリエチレン(比重=0.927)ほ低圧法ポリエチレン(比重=0.951)よりP,Dは大きい。(2)ポリエチレンを冷延伸するとP,Dは減る。(3)ポリエチレン膜にスチレンをグラフトさせると,スチレン%の増大によりPはます。(4)DOPにて可塑化したポリ塩化ビニルおよびエチルセルロースはDOP%増加によりDは増し,Sは減じ,Pは最小点をとおり以後増加する。(5)市販ポリ塩化ビニル膜のPも測った。含有可塑剤に影響される。(6)ポリ塩化ビニルー可塑剤系で2次転移点とPの間に特別の関係認められない。(7)天然ゴムを塩酸化するとP,Dは激減する。(8)DOP,ネオプレンの混入は塩酸ゴムのPをます。(9)ニトロセルロースは硝化度の増加とともにPはまし,水蒸気のときの逆である。(10)エチルセルロース>トリアセチルセルロース>ジアセチルセルロース>ニトロセルロースの順にPは減少する。(11)測定した試料の中では,ポリエステル(マイラー)とポリアミド(6-ナイロン)が最もP,Dが小さい。
著者
武田 知樹 大嶋 崇 尾方 英二 川江 章利 大野 智之 平野 真子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48100442, 2013

【はじめに、目的】 医療分野においても患者中心の医療を推進する流れがますます強まる中,患者満足度(Patient Satisfaction)に関する研究も散見されるようになった. 医療機関において提供されている各種サービスの中でも,理学療法士や作業療法士等が行うリハビリテーションに関連するサービス(以下,リハサービス)は,患者自身の主体的参加が不可欠な点や,患者のモチベーションがそのまま治療効果として反映されるなどの特徴があることから,リハ領域における患者満足度の特徴やその影響性を把握することは効果的なリハサービス実施に向けて重要な知見となる. そこで今回,リハビリテーションに関する患者満足度と患者の運動に対する動機づけとの関連性について検討した.【方法】 調査協力の得られた医療機関を受診している入院および外来患者の内,理学療法を含むリハビリテーションサービスを受療している患者88名(男性23名,女性65名,平均年齢73.8±9.0歳)を対象とした. なお,言語による意思疎通が困難な者または知的機能の低下が疑われる者は対象より除外した. 調査方法は,担当理学療法士によって調査協力の依頼およびアンケート用紙の配布を行い,患者は自室もしくは自宅にて記入後,専用の返送用封筒にて郵送してもらった.なお,その際の回収率は59%であった. 調査内容について,リハビリテーション部門の理学療法サービスに関する患者満足度(以下,リハ満足度)の評価については,田中らが作成した「欲求充足に基づく顧客満足測定尺度(Customer Satisfaction Scale based on Need Satisfaction;CSSNS)」,また,患者が利用した医療機関のサービス全般に対する満足度(以下,病院満足度)の評価は「サービス満足度評価(SERVQUAL)」をそれぞれ使用した. さらに,患者の運動に対する動機付けについては,大友らの先行研究をもとに「高齢者用運動動機尺度(以下,運動動機)」を用いた. また,顧客満足度に関連する要因として,年齢,性別等の基本的属性データも同時に調査した.【倫理的配慮、説明と同意】 調査実施にあたっては,対象者の十分な同意を得るために調査協力依頼書を作成し,研究の趣旨および内容に対し理解および同意が得られた者を対象とした.【結果】1)性別の比較 リハ満足度を示すCSSNS得点(平均値±SD)は,男性20.8±3.4点に対し女性20.6±3.4点で明らかな性差は認められなかった(Unpaired t-test, N.S.). 2)年齢別の比較 中年者(65歳未満)のCSSNS得点は19.7±3.3点,前期高齢者(65~74歳)21.3±3.4点,後期高齢者(75歳以上)20.6±3.4点で年齢別の有意差を認めなかった(Kruskal Wallis test, N.S.).3)リハ満足度別の運動動機の比較 CSSNS得点を低得点グループ(17点以下:低満足),中得点グループ(18~24点:中満足),高得点グループ(25点以上:高満足)の3群に分類した上で,それぞれのグループの運動動機を比較した. 結果,低得点グループの運動動機は35.2±6.1点に対して,中得点グループ39.3±5.1点,高得点グループ43.1±2.4点で,CSSNS得点が高いほど運動動機が高い傾向にあることが確認された(Kruskal Wallis test, p<0.01).4)患者満足度と運動に対する動機付けとの関連性 患者満足度と運動動機との関連性について,CSSNSと運動動機(r=0.48),SERVQUALと運動動機(r=0.42)ともに中等度の相関関係を認めた(無相関の検定 p<0.01). 【考察】 患者満足度に関する性差や年齢差を調査した先行研究では,女性または高齢者で満足度が高くなりやすいとした報告が散見される中,本研究では満足度の性差および年齢差は明確にすることができなかった. リハ満足度別に運動に対する動機付けの高さを比較してみたところ,リハ満足度が高い患者ほど,動機付け(アドヒアランス)が高い傾向にあった. また,それぞれの患者満足度と運動に対する動機付けとの関連性を検討したところ,リハ満足度(CSSNS)のみならず,病院満足度(SERVQUAL)においても有意な相関を示した.つまり,リハ部門のみならず病院全体での患者満足度を高めていく取り組みは,患者の運動に対する動機づけを高める上で有益であることが示唆された.【理学療法学研究としての意義】 リハビリテーションに関する患者満足度が運動に対する動機づけに肯定的な影響を及ぼしていることが示唆された.理学療法士個々人の技能に加えて,リハビリテーション部門および病院全体の取り組みとして良質なサービスを提供することは,患者の運動動機を高めて疾病管理や介護予防を図るうえで有意義であるといえる.
著者
石田 亨 西村 俊和 八槇 博史 後藤 忠広 西部 喜康 和氣 弘明 森原 一郎 服部 文夫 西田 豊明 武田 英明 沢田 篤史 前田晴美
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.10, pp.2855-2865, 1998-10-15

本論文では,国際会議におけるモバイルコンピューティング実験の報告を行い,その役割と効果について分析する.約100台の携帯電話付き携帯端末を用いて,実際の国際会議の参加者に通信/情報サービスを提供し,その際得られたログデータを解析した.ログデータのみでは十分知ることのできないユーザの使用感などは,事後アンケートにより調査した.以下の使用状況が観察されている.(a)ユーザは会議場ばかりではなく,会議後ホテルの部屋へ戻ってからも携帯端末を利用した.携帯端末は通常のデスクトップ型端末と比べて頻繁に使われ,かつ1回の使用時間は短かった.(b)情報サービスは,会議の進行を反映して利用にピークが現れるが,電子メールサービスは会議の進行にかかわらず定常的に利用された.
著者
武田 真一郎
出版者
水資源・環境学会
雑誌
水資源・環境研究 (ISSN:09138277)
巻号頁・発行日
vol.1998, no.11, pp.21-30, 1998-12-25 (Released:2009-04-22)

吉野川第十堰建設事業とは、江戸時代に築かれた現在の第十堰を撤去し、長良川と同様の可動堰を建設するというものである。堰の大きさは長良川河口堰を上回り、徳島県民一人あたり12万円を要する巨大な公共事業である。事業が必要とされる根拠は、せき上げ、老朽化、深掘れという治水上の理由である。しかし、市民団体からは、建設省のせき上げ水位計算は過大であり、実際には水害の危険はないことが指摘されるなど、事業の必要性には疑問が示されている。また、長良川河口堰のように環境や財政に大きな負担をかけることも懸念されている。世論調査の結果では反対意見が53.7%に達しているが、地元の議会は次々と推進決議を行い、建設省の審議委員会も計画を妥当とする意見をまとめた。そこで、徳島市では住民投票によって民意を明らかにするために、住民投票条例の制定を求める直接請求が行われている。
著者
藤澤 宏幸 星 文彦 武田 涼子
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.268-274, 2001-10-20 (Released:2018-09-25)
参考文献数
10
被引用文献数
5

本研究の目的は端座位における側方重心移動時の筋活動と運動力学的関係を明らかにすることである。被験者は健常成人男性10名とし,右側へ側方重心移動した際の左右脊柱起立筋および大殿筋活動,圧中心変動,体幹アライメントを測定した。側方重心移動動作を3分類し,各動作とも速度条件を1)可能な限り速く,2)普通の2条件とした。可能な限り速く側方重心移動した場合,各動作とも初期に圧中心は一旦左側へ移動し,その後急速に移動方向である右側へ移動した。普通の速度という指示で側方重心移動した場合は約半数でこのような機構がみられなくなった。このことより側方重心移動動作における動き始めには各動作に共通する機構が存在すること,またその機構が速度依存性に機能することが示唆された。また,制動に関しては移動側の大殿筋活動および反対側の脊柱起立筋活動が重要であった。脊柱起立筋は高位による活動の違いがみられ,特に下部腰椎部は初期の骨盤運動にも深く関与していると考えられた。
著者
前田 敏樹 田中 明 小河 靖昌 武田 亮二 片岡 正人 向原 純雄
出版者
南江堂
巻号頁・発行日
pp.1234-1237, 2008-11-01

48歳女性。患者は悪心、嘔吐、食欲不振、体重減少、間欠的腹痛を主訴に、はじめ著者らの施設にある内科を受診、腹部単純X線にて腸閉塞を指摘され、精査加療目的で外科へ救急入院となった。立位単純X線では多発する鏡面像と小腸の著明な拡張が認められ、更に腹部造影CTでは小腸の著明な拡張、管腔内の液体貯留、左卵巣の嚢胞がみられた。一方、イレウスチューブ造影では小腸に多発する狭窄を認め、狭窄部ではチューブ先端が翻転し、先進しなかった。保存的治療では限界があったため、イレウス解除術を施行する方針とし、これを行なった結果、手術所見では腸管子宮内膜症による腸閉塞が確認され、狭窄の強い部分のみ切除し、凍結骨盤となっていた子宮内膜症に対しては手術操作を加えなかった。