著者
武藤 崇
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.810-818, 2012-09-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
19
被引用文献数
2

本稿の目的は,アクセプタンス&コミットメント・セラピー(Acceptance and Commitment Therapy:ACT)の実証的な症例報告,すなわち「トリートメント評価」の実際を示すことであった.なぜなら,サイコセラピーが今後さらに「社会を動かす」ためのアカウンタビリティを向上させていくためにはランダム化比較試験(RCT)だけでなく,従来のようなエピソードのみによる症例研究とRCTをつなぐ情報,つまり「再現性のあるテーラー・メイド化」のプロセスに関する情報が必要となってくるからである.本稿におけるトリートメント評価の症例は,慢性うつ病によって,10年以上にわたって休職と復職を何度も繰り返していたクライエントに対するACTトリートメントによる復職支援である.
著者
武藤,義信
出版者
東京動物學會
雑誌
動物学雑誌
巻号頁・発行日
vol.66(2・3), 1957-03-15
著者
武藤 文夫
出版者
教育哲学会
雑誌
教育哲学研究 (ISSN:03873153)
巻号頁・発行日
vol.1983, no.47, pp.38-42, 1983-05-15 (Released:2009-09-04)
参考文献数
4

1、戦後思想の根底の問題-「人間」と「国家」-2、民主主義社会実現の問題-住民自治との関りにおいて-3、「経済大国」決意の問題-一九五〇年代末からの動向-4、人間主義の回復-人間の全体性の回復-「戦後教育における人間像」に関してこのような筋において発表したい。教育における人間縁はその根底においてその時代の思想に強く影響を受ける。戦後思想の根底 (というより戦後思想の出発というのがふさわしいと考える) は、「人間」と「国家」との関係をどうとらえるかにその核がある。民主主義社会実現の問題もそのことを抜きには不可能なことであり、あらためて再認識しておく問題と考える。今日の深刻な諸問題は (特に教育にとって) 一九五〇年代末にその源泉があることはほぼ常識となっている。「軍事大国」と「経済大国」とを交替すれば明治国家のとった政策と極めて類似し、より問題は深刻な様相を呈している。強力な中央集権国家主義のもたらす管理社会化の透徹は、教育を「自明の理」のごとき国家統制の教育に囲い込んでいく。一方、「経済大国」のもたらした「快適」原理は、八割方の日本人を中流意識に導き、自律的人間の破壊にも通じている。教育における人間像、その反省をふまえての展望は、戦後思想の出発であった「人間主義」に回帰し、新たな「人間の全体性の回復」をめざすことが不可欠である。以下の諸側面より考察した。・民主主義社会の形成者として-民主主義の質的向上の問題として-・自分 (達) のことは自分 (達) で決められる・「地域」の再確認・自立と連帯 (自律的人間)・生態系の認識と実践として・「生産第一主義」から「生活第一主義」へ・自分 (達) を自分 (達) でひきうける人間 (自律的人間)・快適原理に埋没しない人間性 (生物的.心理的・社会的に解放されることの必要性)・経済的側面として・「アジア」を踏み台としての高度成長・人的能力・能力主義・人間の部分品化・都市化・核家族化・「商品主義」の浸透とその克服 (自律的人間) 。科学史の示す「科学」の問題・科学偶像視の否定・「進歩」の幻想 (人間性の視座)「自律的人間」は今日あらためて教育のめざす人間像であり、「人間の全体性の回復」の指標である。今日その内実は、行動する市民、自らの生活を創造していく人間、「一様な序列性」の否定としての個性的人間、解放された健康な人間、等々である。とりわけ「生活を創造していく人間」こそはその核心といえよう。右のような要旨にそって課題である「戦後教育における人間像-反省と展望-」について発表をした。発表における重点は1~3におき4は要項を参照として展望である「自律的人間」について少しふれた。ここで再整理することも含め発表の概要を述べてみたい。
著者
武藤 文夫
出版者
教育哲学会
雑誌
教育哲学研究 (ISSN:03873153)
巻号頁・発行日
vol.1980, no.42, pp.41-55, 1980-11-25 (Released:2010-01-22)
参考文献数
19

An attempt is here made to examine through his major works Inoue's viewpoint within the frame of philosophy of education. The paper is divided into three parts : (1) the philosophic-educational meaning of the Coplimental Theory (sôho sestu);(2) the philosophic-educational foundation of this Theory;(3) a critical appraisal of the same Theory.The Complimental Theory seems to attach more importance to accurate practicality rather than to logical originality, and emphasizes a teaching process in which, on the basis of 'learning by discovery', drill, problem solving methods and the project method are employed. As the logical basis a typological theory is stressed which may be called 'additive typology'. This appears as the logical development of discontinuity abstracting from the element of continuity. Another outcome is that the evaluation of eclecticism is turned into the viewpoint of 'elasticity.'In Part (3) the philosophial standpoint has been examined which exhibits very much a logical characteristic of producing a discrepancy between desire and the concrete.
著者
武藤 美香 河内 繋雄 福澤 正男 斎田 俊明
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.110, no.10, 2000

薬疹におけるリンパ球刺激試験(DLST)の診断的価値について検討した.DLSTが施行された薬疹の報告例812例について,発疹型別,薬剤系統別, 個別薬剤別にDLST陽性率を解析した.全症例におけるDLST陽性率は42%であった.発疹型別では,陽性率は中毒性表皮壊死症型(61%),紅皮症型(52%)で高く,紫斑型(11%),光線過敏症型(21%),固定薬疹型(30%)で低かった.蕁麻疹型でも38%の陽性率が認められた.薬剤系統別では,総合感冒剤(72%),抗結核剤(56%),抗てんかん剤(54%),解熱消炎鎮痛剤(53%)で高く,痛風治療剤(22%),合成抗菌剤,循環器官剤(ともに29%)で低い傾向が認められた.塩酸ミノサイクリン(13例),アリルイソプロビルアセチル尿素(8例)ではDLST陽性例は認められなかった.また,薬剤アレルギー検査法としてのDLSTの特異性を明らかにするために,同意のえられた健常人4名を被験者として,主としてDLST陽性率の高い薬剤についてDLSTを試行し,非特異的陽性反応(偽陽性反応)の有無について検討した.その結果,スパクロ■(クロレラ製剤),パリダーゼオラール■,シオゾール■は高率に偽陽性反応を呈し,PL顆粒■(総合感冒剤),ビオフェルミン■(乳酸菌製剤)も偽陽性反応を呈し得ることが判明した.これらによる薬疹では,DLSTが陽性であっても原因薬剤ではない可能性があるので注意を要する.
著者
高山 哲治 五十嵐 正広 大住 省三 岡 志郎 角田 文彦 久保 宜明 熊谷 秀規 佐々木 美香 菅井 有 菅野 康吉 武田 祐子 土山 寿志 阪埜 浩司 深堀 優 古川 洋一 堀松 高博 六車 直樹 石川 秀樹 岩間 毅夫 岡﨑 康司 斎藤 豊 松浦 成昭 武藤 倫弘 冨田 尚裕 秋山 卓士 山本 敏樹 石田 秀行 中山 佳子
出版者
一般社団法人 日本遺伝性腫瘍学会
雑誌
遺伝性腫瘍 (ISSN:24356808)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.93-114, 2020 (Released:2020-09-25)
参考文献数
62

Cowden症候群/PTEN過誤腫症候群は,PTEN遺伝子の生殖細胞系列の病的バリアントを原因とする常染色体優性遺伝性の希少疾患である.消化管,皮膚,粘膜,乳房,甲状腺,子宮内膜,脳などに過誤腫性病変の多発を特徴とする.巨頭症および20歳代後半までに多発性皮膚粘膜病変を発症することが多い.ときに小児期に多発する消化管病変,自閉スペクトラム症,知的障害が診断の契機となる.また,がん遺伝子パネル検査によって診断される可能性がある.乳癌,甲状腺癌,子宮内膜癌,大腸癌,腎細胞癌などの悪性腫瘍を合併するリスクが高く,適切なサーベイランスが必要である. 本診療ガイドラインでは,小児から成人にかけてシームレスに,正確な診断と適切な治療・サーベイランスが行われるよう,基本的事項を解説し,4個のクリニカルクエスチョンと推奨を作成した.
著者
松本 主之 新井 正美 岩間 達 樫田 博史 工藤 孝広 小泉 浩一 佐藤 康史 関根 茂樹 田中 信治 田中屋 宏爾 田村 和朗 平田 敬治 深堀 優 江﨑 幹宏 石川 秀樹 岩間 毅夫 岡﨑 康司 斎藤 豊 松浦 成昭 武藤 倫弘 冨田 尚裕 秋山 卓士 山本 敏樹 石田 秀行 中山 佳子
出版者
一般社団法人 日本遺伝性腫瘍学会
雑誌
遺伝性腫瘍 (ISSN:24356808)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.79-92, 2020 (Released:2020-09-25)
参考文献数
52

若年性ポリポーシス症候群は全消化管に過誤腫性ポリープである若年性ポリープが多発する,希少疾患である.SMAD4あるいはBMPR1A遺伝子の生殖細胞系列バリアントが原因として報告されている.約75%は常染色体優性遺伝形式を示すが,約25%は家族歴のない孤発例である.また,がん遺伝子パネル検査によって診断される可能性がある. ポリープの発生部位により全消化管型,大腸限局型,胃限局型に分けられ,胃限局型ではSMAD4の病的バリアントを原因とすることが多く,胃癌のリスクが高い.また,SMAD4の病的バリアントを有する症例では,遺伝性出血性毛細血管拡張症を高率に合併し,心大血管病変の定期検査も考慮する. 本診療ガイドラインでは,小児から成人にかけてシームレスに,正確な診断と適切な治療・サーベイランスが行われるよう, 基本的事項を解説し,3個のクリニカルクエスチョンと推奨を作成した.
著者
山本 博徳 阿部 孝 石黒 信吾 内田 恵一 川崎 優子 熊谷 秀規 斉田 芳久 佐野 寧 竹内 洋司 田近 正洋 中島 健 阪埜 浩司 船坂 陽子 堀 伸一郎 山口 達郎 吉田 輝彦 坂本 博次 石川 秀樹 岩間 毅夫 岡﨑 康司 斎藤 豊 松浦 成昭 武藤 倫弘 冨田 尚裕 秋山 卓士 山本 敏樹 石田 秀行 中山 佳子
出版者
一般社団法人 日本遺伝性腫瘍学会
雑誌
遺伝性腫瘍 (ISSN:24356808)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.59-78, 2020 (Released:2020-09-25)
参考文献数
88

Peutz-Jeghers症候群は,食道を除く全消化管の過誤腫性ポリポーシスと皮膚・粘膜の色素斑を特徴とする希少疾患である.STK11遺伝子の生殖細胞系列の病的バリアントを原因とし,常染色体優性遺伝形式をとる.また,がん遺伝子パネル検査によって診断される可能性がある. 本症候群でみられる過誤腫性ポリープは小腸に好発し,ポリープが大きくなると出血,腸閉塞,腸重積の原因となる.初回の消化管サーベイランスは症状がなくても8歳頃を目安に行い,10〜15mm以上の小腸ポリープは内視鏡的ポリープ切除術を行う.消化管,乳房,膵,子宮,卵巣,肺,精巣などに悪性腫瘍の発生が認められ,適切なサーベイランスが必要である. 本診療ガイドラインでは,小児から成人にかけてシームレスに,正確な診断と適切な治療・サーベイランスが行われるよう, 基本的事項を解説し,4個のクリニカルクエスチョンと推奨を作成した.
著者
武田 宏司 武藤 修一 大西 俊介 浅香 正博
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.107, no.10, pp.1586-1591, 2010-10-05
参考文献数
24

機能性ディスペプシア(FD)治療に用いられる代表的な方剤である六君子湯は,食欲不振に対する効果を手がかりとして,そのユニークな作用機序の解明が進んでいる.六君子湯の作用機序としては,従来,胃排出促進および胃適応弛緩の改善が知られていたが,摂食促進ホルモンであるグレリンの分泌を亢進させることがごく最近明らかとなった.シスプラチンや選択的セロトニントランスポーター阻害薬(SSRI)投与は,消化管粘膜や脳内のセロトニンを増加させ,セロトニン2Bあるいは2C受容体を介してグレリン分泌を抑制することがその副作用の発現に関わっているが,六君子湯はセロトニン2Bあるいは2C受容体に拮抗してグレリン分泌を改善する.六君子湯のグレリン分泌促進作用は,FDに対する効果に関わっている可能性も示唆されている.また,六君子湯は高齢動物の視床下部でレプチンの作用と拮抗することにより食欲を改善させる機序も有しており,今後さらに多くの作用点が見出される可能性が高い.<br>
著者
宮本 教雄 武藤 紀久 吉川 博
出版者
The Japanese Society for Hygiene
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.1045-1055, 1988-02-29 (Released:2009-02-17)
参考文献数
11

冬期における日常生活の中で,手足が冷えて苦痛に感じている人が,意外に数多く存在して,中には手足の指先の触感の欠如など,かなり深刻な問題として悩んでいる人もいるようである。そこでこの手足の冷えを合理的に防止あるいは回復するため,厳寒期において,実際の手足の皮膚温がどの程度で推移して,その低下している皮膚温が暖房によってどのように回復していくか,またソックスの着用が皮膚温の回復にどのように寄与しているかを,女子学生20名について調べ,次のような結果を得た。1.25°Cの温暖環境に入室後,素足の状態で90分間に渡って測定したところ,手母指掌側先端部皮膚温の経時的変化によって,被験者は次の3群に分類される。1) 低温群:測定開始時にかなり低い22°C程度の温度を示し,90分経過後も室温程度にしか上昇しない。2) 中温群:測定開始時に比較的低い20∼26°C程度の温度であるが,30分以内には30°C以上に急上昇して,暖環境に反応する。3) 高温群:測定開始時にすでに30°C以上の高温状態にあって,90分間その状態を維持する。2.低温群は手指先のみならず,足指先においても皮膚温が低く,90分経過しても室温にも達しない。ソックスを着用すると,手指先は回復する傾向をみせるが,足指先は依然と上昇しない傾向が強い。被験者本人も,非常に冷えやすいことを,日頃から感じており,かなり堅固な冷えの状態である。3.中温群の手指先皮膚温は,急上昇して環境の変化に反応し,ソックスを着用すると,その反応は一層強いものとなる。4.中温群の足指先皮膚温は,暖環境にあまり反応を示さない。ソックス着用時には,約半数が反応して皮膚温が上昇するが,あとの半数は反応を起こさず,素足時と同じ反応である。5.高温群は他の群とは異なり,最初から手指先は30°C以上であり,足指先も比較的初期に上昇する。平常時にすでにかなり高い皮膚温を保っていると推測され,ソックス着用時でも,素足時とほとんど傾向は変わらない。6.同じ暖環境温度に対して,群によって反応が異なり,同一被験者においても部位によって反応形態が異なる。7.ソックス着用が皮膚温の経時的変化に与える影響は,直接被覆されている足部よりも,直接被覆されていない手部に強くあらわれる。