著者
小田原 亨 永田 智大
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 = The journal of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.97, no.9, pp.806-811, 2014-09

本稿では,携帯電話ネットワークの仕組みを使って,日本全国の現在人口を継続的に推計できるモバイル空間統計について述べる.モバイル空間統計は人口の地理的分布を示す人口分布,地域ごとの現在人口の時間推移を示す人口推移,性別・年齢・居住地に基づく人口構成を推計し,社会や産業の発展に寄与していく.防災計画,地域活性化,まちづくり分野などの公共分野と,大規模店舗の商圏分析,出店計画といった産業分野でのモバイル空間統計の活用例を具体的に述べつつ,その特徴を明らかにする.
著者
寺本 千恵 永田 智子 成瀬 昂 横田 慎一郎 山本 則子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.336-345, 2018

<p><b>目的:</b>救急外来受診後30日以内の再受診例に関し,再受診の原因や経緯からパターンを見いだすことを目的とした.</p><p><b>方法:</b>診療録による比較事例研究の手法で分析した.2013年2月~12月に都内1大学病院救急外来を受診した患者のうち30日以内に再受診をした者を対象とした.事例―コードマトリックスによる分析から事例をパターン分類し,パターン別に群間比較した.</p><p><b>結果:</b>136事例は,初回受診時に医師から再受診を促された【予定再受診】,帰宅後に再受診を促された【医療職者の指示による再受診】,同じ症状が悪化した【医療が必要になった再受診】,異なる症状が出現した【異なるエピソードでの再受診】,再受診の必要性が低いと思われる【軽症での再受診】の5つのパターンに分類された.</p><p><b>結論:</b>本研究では,救急外来の再受診には5つのパターンがあること,初回の救急受診時に患者のパターンを把握し,それぞれに必要な支援をすることの重要性が示唆された.</p>
著者
永田 智子 鈴木 真理子 稲垣 成哲 森広 浩一郎
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.31, no.Suppl., pp.161-164, 2008-02-10 (Released:2016-08-04)
参考文献数
4
被引用文献数
4

現職教師がデジタル・ティーチング・ポートフォリオを作成する活動とそのためのブログ環境を設定し,実践,評価した.実践では4名の現職教師が理科の授業についてブログに書き込みを行った.実践に参加した現職教師へ行ったインタビューから,本ブログ環境はおおむね使いやすいものであり,活動は授業の振り返りに役立つことがわかった.それに加えて,教師が実践や振り返りを継続するために,「日々のデータの蓄積」「蓄積されたデータの再利用」「他教師との比較による刺激」「実践継続の励み」「課題の提示」という機能が必要であり,ブログ環境や支援活動に組み込む必要があることがわかった.
著者
牧田 利枝 永田 智子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, 2015

<b>1 目的</b><br><br>近年、路線バスの廃線や減便などにより、「買い物弱者」といわれる日常の買い物にも困る人々が出現している。今後急速に進展する高齢社会では、クルマを運転できない高齢者が増加し、健康・福祉問題にも大きな影響を及ぼすと考えられる。また、環境保全からも公共交通を利用する社会のほうが望ましく、公共交通の確保は喫緊の課題である。<br><br>「交通すごろく」は「自らの日常生活の行動が周辺環境に影響を与える事実に気づき、環境との観点から自らの暮らし方を変える必要性の気づきになる」ことを意図して遊びながら行動変容を促すものである(松村2006)。先行研究では小学校の総合的な学習の時間や社会科で「交通すごろく」を実施し、「CO2削減に役立つから公共交通を利用すべき」というような環境学習の側面が強い。しかし、CO2削減からのアプローチでは徒歩や自転車通学の高校生に対する公共交通利用の動機づけは弱い。よって、家庭科の「まちづくり」や「高齢者福祉」「共生」などの領域を学習したうえで環境学習を絡めた「交通すごろく」を実施することが望ましいのではないだろうか。<br><br>そこで本研究では、「交通すごろく」を活用した授業実践とそれによる生徒の意識変容等をとおして、高等学校家庭科で地域の「公共交通」を扱う意義について考察する。<br><br><b>2 方法</b><br><br>・実施時期 平成27年2月10日~24日<br>・対象クラス 商業科2年生全クラス(7クラス)256名<br> <br>・地域の「公共交通」を扱う授業は以下の手順で実施された。<br>(1)家庭科教師による「交通すごろく」の実施<br>(2)交通政策室による出前授業の実施(バス利用等の意識についてのアンケート)<br>(3)家庭科教師による「交通すごろくの仕組み」の再確認(振り返りの実施)<br><br><b>3 アンケート結果</b><br><br>「交通すごろく」をやってみて、もっとバスを使ってみようと「とても思った」「少し思った」と回答した生徒186名について利用意向の増加数を算出した。<br><br>・交通すごろくをきっかけに、もっとバスを使ってみようと思った人数186名(72.7%)<br>・これからバスを使おうと思う回数の平均0.148(回/人・日)<br>・普段バスを使っている回数の平均0.169(回/人・日)<br>・(0.169-0.148)&times;186(回/186人・日)<br>=0.021&times;189(回/186人・日)<br>=3.906(回/186人・日)<br>&rArr;1426(回/186人・年)となり、商業科2年生全体で年間約1400回バス利用が増える見込みとなった。また、自由記述では公共交通は環境に優しいといった感想が多かった。<b></b><br><br><b>4 生徒の振り返り</b><br><br>「交通すごろくの仕組み」を再確認し、振り返りをさせたところ、バス利用促進に肯定的な記述が多くみられた。しかし、生徒は高齢者の「移動のしにくさ」について教師が期待するほど記述できていなかった。<br><br>また、自転車通学の生徒は、費用負担の割にはバス便の数が少なく混雑するバス利用にさほど魅力を感じていないが、バス利用の必要性がわかったと記述している。出前授業のアンケートからはわかりにくいが、振り返りからは、現状をすぐには変えることができない生徒の葛藤を読み取ることができた。<br><br><b>5 結果と課題</b><br>アンケートや振り返りから、生徒は「交通すごろく」を通して、地域の「公共交通」の重要性に気づき、利用促進についての実践的態度が育まれたことがおおよそ確認できた。<br><br>また、生徒は「交通すごろく」により、買い物、通院、通学などの生活基盤を踏まえて「わがまち」を捉えることができた。つまり、「公共交通」を切り口として高齢社会における「まちづくり」を身近に感じることが期待される。<br>以上のことから、家庭科で地域の「公共交通」を学習することで領域横断的な学習が可能であることが示唆された。次年度(平成27年度)は、高齢者・障がい者、子育て中の若い親などの「移動のしやすさ/しにくさ」を考えさせるように改善する。<br><br>&nbsp;参考文献<br><br> 西田純二ら(2014)まちづくりDIY,pp.118-124,学芸出版社<br><br>桐谷正信(2014)小学校社会科におけるモビリティ・マネジメント教育の特質,埼玉大学<br><br><br><br><br><br><br><br><br>
著者
永田 智子 藤原 容子 山本 亜美 潮田 ひとみ
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.59, 2016

【研究目的】<br>&nbsp;&nbsp;家庭科の研究指定を受けている小学校の教員でさえ,ミシン指導に不安を抱えている(永田・鈴木2014).そこで永田ら(2015)は,将来の小学校教員である初等教員養成課程の学生に対し,ミシン使用の技能と指導の自信を高めるよう工夫した授業を実施した.その結果,ミシン使用の技能と指導の自信を一定程度高めることができたものの,改善の余地はあり,より詳細に検討する必要性が示唆された.そこで授業を改善し,その効果を詳細に検討することとした.<br>&nbsp;【研究方法】<br>&nbsp;&nbsp;研究対象は,2015年度にH大学で開講された小学校教諭の普通免許状授与のための必修科目「初等家庭科教育法」である.この科目を履修した学生(学部2~4年生,大学院生,計217名)のうち,被服実技に関する授業を3単位時間(1単位時間=90分)受講し,事前・事中・事後アンケートのすべてに回答した117人を分析の対象とした.また2014年度受講生の171人分を比較対象とした.<br>&nbsp;&nbsp;2014年度は,第1校時には,基本的なミシン操作に重点をおくため,糸をつけずに紙を空縫いさせる練習をした.第2校時には,糸の通し方から説明をはじめ,糸調子や裏表がわかるようにするため,上糸と下糸で色の違う糸をつけて紙を縫う練習をした.その後,ポケットティッシュケース作りをした.ティッシュの出し口は,手縫いで並み縫いと返し縫いさせ,両端はミシンで直線縫いさせた.<br>&nbsp;&nbsp;2015年度は2014年度に実施した授業の前に,手縫いを中心とする授業を1単位時間増やした.並み縫い・返し縫いに加えて,玉結び・玉どめ・ボタン付けを学習内容として新規に追加した.<br>&nbsp;&nbsp;また2015年度は事中・事後アンケートの質問項目を詳細にし,自信の程度を4件法(自信がある4~自信がない1)で尋ねた.<br> 【研究結果】<br>&nbsp;&nbsp;2015年度は,ミシンに関する自分自身の技能について,授業後は,直線縫いの自信が大きく向上した.一方で,糸かけや糸調節については,事前よりは自信は高まったといえるものの,直線縫いほど大きくは高まらなかった.またミシン指導に対する自信についても同様の傾向であった.直線縫いに関しては,紙の空縫いから始めて,練習を繰り返したことが奏功したと思われる.<br>&nbsp;&nbsp;手縫いに関して,2015年度は自分自身の技能についての自信は,授業後はどの項目も平均3点以上に高まった.これは2014年度に比べて授業時間を1単位時間分増やしたためと思われる.また,指導に対する自信についても,どの項目も高まったが,特にボタンつけについて3点以上に高まった.これは,ボタンのつけ方のみ児童用ビデオ教材を視聴させたことに起因していると考えられる.<br>&nbsp;&nbsp;以上のことから,今回行った3単位時間の授業を通して,ミシン縫いと手縫いの技能およびその指導に対して自信が高まったといえる.特に,紙の空縫い,紙の直線縫い,布の直線縫いと回数を重ねたミシンの直線縫いは,技能への自信を高めることがわかった.また手縫いは,時間を増やしたこともあり,全般的に技能に対する自信が高まった.特に児童用ビデオ教材を用いて説明したボタンつけは指導に対する自信も高まったことがわかった.一方で,実際に体験しなかったミシンの糸かけや糸調節,手縫いの返し縫いについては指導の自信が低いままであった.<br>&nbsp;&nbsp;今後,技能及びその指導に対して自信が低かった内容について効果的な指導法を検討し,さらなる授業改善を図りたい.<br>【引用文献】<br>&nbsp;&nbsp;永田智子・鈴木千春(2014)小学校家庭科教育研究指定校の教員が抱える不安,日本家庭科教育学会第57大会(岡山大学)<br>&nbsp;&nbsp;永田智子・藤原容子・潮田ひとみ(2015)ミシン使用の技能と指導の自信を高める初等教員養成課程『初等家庭科教育法』の工夫,日本家庭科教育学会第58大会(鳴門教育大学)
著者
永田 智子 藤原 容子 潮田 ひとみ
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, 2015

<b>【研究目的】</b>永田・鈴木(2014)の研究において,家庭科の研究指定を受けている小学校の教員でさえ,ミシン指導に不安を抱えていることが示された.現職研修も必要であるが,本来は教員養成課程の段階で自信を持ってミシン指導できる知識や技能を身に付けている必要がある.しかし家庭科の学習内容における教育学部生のつまずきで最も多いものが「ミシンの使い方(54.8%)」であり,その要因として,「機会が足りない」「方法・手順が複数ある」「教え方が不適切だった」「コツが分からない」「役割やしくみが分からない」「内容や作業が複雑だった」などが挙げられた(小林・伊藤2013).<br>&nbsp; そこで本研究では,将来の小学校教員である初等教員養成課程の学生に対し,ミシン使用の技能と指導の自信を高めるため,つまずきの要因をできるだけ排除した授業を工夫し,実践を通して効果を検証することとした.<br><b>【研究方法】</b>研究対象は,2014年度にH大学で開講された小学校教諭の普通免許状授与のための必修科目「初等家庭科教育法」である.この科目を履修した学生(学部2~4年生,大学院生,計217名)のうち,被服実技に関する授業を2単位時間(1単位時間=90分)受講し,事前および事後アンケートの両方に回答した171名(2年137人,3年4人,4年1人,大学院29人.男78人,女93人)を分析の対象とした.<br>&nbsp; 被服実技に関する授業では,第1校時には,縫い始めたい場所にミシン針をおろしてから押さえをおろすといったミシンの縫いはじめと縫い終わりの動作説明に重点をおくため,糸をつけずに紙を空縫いすることから始めた.第2校時には,糸の通し方から説明をはじめ,上糸と下糸の色をかえ,糸調子や裏表がわかるようにするなど,ミシンの仕組みや役割がわかるように,2段階で指導することとし,最終的に直線縫いでポケットティッシュケースを完成させる授業展開とした.<br><b>【研究結果】</b>事前アンケートより,小学校家庭科における手縫いやミシン縫いは多くの学生が経験していたが,中学,高校と校種が上がるにつれ減少していた(小学手縫い88.9%,小学ミシン88.3%,中学手縫い58.5%,中学ミシン57.3%,高校手縫い25.7%,高校ミシン26.9%).また,針と糸は自分のものを所有している学生は多いが(80.1%),自分のミシンを所有している学生は少なく(3.5%),家族所有もないとする学生も4分の1いた(26.9%).一方,家庭でミシンを作った物づくりは半数強が経験していた(52.6%).<br>&nbsp; 授業の理解度について「わかった」を4点,「わからなかった」を1点とした4件法で尋ねた,平均点を算出したところ,手縫い3.3点,ミシン3.2点と,おおむね授業は理解できたことがうかがえた.<br> &nbsp; 手縫いとミシン縫いの技術と指導の自信について,授業前後でのアンケート結果を比較した.手縫いは2.8点から2.8点,手縫い指導は2.1点から2.7点,ミシン縫いは2.5点から2.7点,ミシン指導は1.9点から2.5点へと向上した.事前において他の項目に比べて高かった手縫い以外の3項目が有意に高くなった(p<.01).以上のことから,今回行った授業において,手縫いおよびミシン縫いの技術と指導の自信が高まったことが検証された.しかし,授業後も自信がないとする学生が少なからずおり,さらなる授業の改善が求められる.<br><b>【引用文献】 </b><br>&nbsp; 小林歩,伊藤圭子(2013)家庭科における子どもの「つまずき」要因の検討一大学生の学習経験をもとに一,初等教育カリキュラム研究 (1), 69-79, 2013-03-31,広島大学大学院教育学研究科初等カリキュラム開発講座<br>&nbsp; 永田智子・鈴木千春(2014)小学校家庭科教育研究指定校の教員が抱える不安,日本家庭科教育学会第57大会(岡山大学)
著者
小林 裕子 永田 智子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.59, 2016

&nbsp;【研究目的】自然災害大国の我が国において,児童生徒に対し実践的かつ継続的な災害学習の実施は必要不可欠である。本研究の目的は中学校家庭科で「災害時の食」を扱った授業を開発し,授業実践を通して有効性と適切性を評価することである。研究の第一段階として,小林・永田(2015)は中学生に災害に関する質問紙調査を実施した。その結果,中学生は「災害時の食」への不安は大きいが,災害に関する知識や家庭での備えが不足していることが明らかとなった。この結果を基に,小林・永田(2016)は,「災害時の食」を扱う3時間構成の授業を開発し,実践した。実践は兵庫県公立中学校2学年の生徒5クラス164人を対象に,2016年2月に行った。 【授業評価の結果】 開発した授業の有効性と適切性を検証するため,以下の4つを実施した。 1)授業前後に行った「災害時の食」に関する知識アンケート 「「災害食」と「非常食」の違い」,「ローリングストック法」を「分かる」と回答した生徒は,事前3.7%から事後61.8%へ,事前2.5%から事後70.4%へとどちらも授業後大幅に増加した。 2)授業終了1ケ月後自由記述感想 「各時間の授業」,「学習の内容・活動」に関してカテゴリに分類した。また生徒の「~したい」の記述は,「災害時の食」と主体的にかかわろうとする意欲の表れで重要ととらえ,これも抽出しカテゴリに分類した。「各時間の授業」について記述した生徒は70.1%であった。その内2時間目について記述した生徒は59.3%で最も多く,次いで1時間目が50.0%で,3時間目は1.9%と少なかった。「学習の内容・活動」を記述した生徒は72.7%であった。その内「災害食」・「ローリングストック法」を記述した生徒が50.0%と最も多く,次いで「ツナじゃが調理」,「ポリ袋を用いた炊飯」が各40.2%,36.6%であった。「献立作成」は4.5%と少ない結果であった。「~したい」を記述した生徒は66.9%で,「作りたい」28.2%,「備えたい」20.3%,「実践したい」11.7%,「家族で話し合いたい」11.7%であった。 3)授業終了1カ月後アンケート 「授業後,本授業について家庭で話しあった」生徒は65.1%で,思春期の中2としてはかなり多い結果であった。「授業後,「災害時の食」に関する意識や考えに変化」があったと答えた生徒は75.7%と多く,変化の内容は「節水の大切さを考えるようになった」74.8%,「「非常食」より「災害食」が便利で役立つと考えるようになった」66.1%が上位であった。 4) 有識者対象アンケート調査 家庭科教育を専門とする大学教員7人に,開発した授業のアンケートを実施し,5段階尺度で各授業の「目標設定」,「内容や方法」,「生徒の興味・関心」の適切性,「開発した3時間の授業の総合的な適切性」を尋ねた。3つの項目の平均値がほぼ4以上の評価を得,総合的な適切性も平均値は4.6と高評価であった。 【まとめと今後の課題】 1)~3)の結果から,「災害時の食」の基本的な知識の習得,備えや対策を考えること,学習内容を家庭で共有することについては,大半の生徒が達成したと考えられる。また多くの生徒が本授業を積極的に評価し,「災害時の食」について主体的に考えることができるようになったことが分かり,授業としての有効性が認められたと言える。有識者からは本授業を家庭科で扱うことは適切であるという評価を得ることができた。以上のことから,本研究で開発した授業は有効であり適切であることが示唆された。今後の課題は,まず災害時の献立を考える授業の難しさを解消するべく,授業内容や活動の改善を図ることである。家庭や地域と連携した「災害時の食」の授業開発や実践を行うことも目指したい。
著者
牧田 利枝 永田 智子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.54, pp.77, 2011

目標に準拠した評価では、「めざす姿」(行動目標)として、到達規準を設定し、ルーブリックによって評価基準を明確にし、教育評価がなされている。しかし、「意欲・関心・態度」のような情意面の「見えにくい学力」は、行動目標として表すことに適さず、評価しにくいという問題が指摘されている。また、中村ら(2006)は調理実習おける教師の情意面での評価が行動観察に偏り、ワークシートの記載内容の判定については、指導者より、生徒を知らない教師が判定したほうが客観性が高かった事例があったことを報告している。本研究では、高等学校家庭科における調理実習に対する「意欲」を学習の意義認知という認知的な動機づけ理論にもとづいて、調理実習に強く関連している興味(内発的動機づけ)を自律的に発達させ、さらに活用力に繋がる高度な認知領域である「思考・判断・表現」の学力形成とともに「動機づけ」が継続される様な授業デザインを実証的に検討することを目的としている。1年目(08年度)は高等学校家庭科における実習―実習以外の学習における価値づけを「主観的課題価値(subjective task value)」理論にもとづいて調査し、「役立ち感」「有用感」を高めることで調理実習の意義を認知させ、価値の内在化を促すことで意欲向上が期待できるという仮説をたてた。2年目(09年度)はこの仮説にもとづき、自己評価と組み合わせる「意義認知ワークシート」を開発し、その効果を検証した。3年目(10年度)は「意義認知ワークシート」を改良し、調理実習の意欲を高める「意義認知ツール」としての生徒の記述活動を構造化しその全体像としての授業デザインに取り組んだ。「意義認知ツール」における「意義認知ワークシート」への記述の質の変化が確認され、意欲の向上とともに、家庭での実践的態度に結び付くと考えられるような記述も見られたことから、調理実習が授業だけでなく、日常生活にいかされていると考えられた。また、教師が評価基準表を作成し、点数化した「意欲」と「テストの点数をとる」こととは、必ずしも一致しないことが確かめられた。さらに、09年度と10年度の「授業評価(自己評価)」をそれぞれクラスター分析した結果を比較すると、09年度では、「授業規律class rule」は協調性や公共心とは独立しており、教師が行う提出物や忘れ物チェックといった外的な統制の影響をうけていたが、10年度は「授業規律」が「協調性」「公共心」と相関がみられた。このことは、10年度においてクラス・グループの関係性依存的な学習態度が形成され、その結果、生徒の実習に対する意欲が向上したためと推測された。以上のことから、調理実習の「楽しさ」は情意面で強く表れやすいが「意欲」が高まった生徒の姿は生徒の自己統制的かつ主体的な学習態度と重なっており、「楽しい」といった初発の内発的興味を持続・発達させるためには、クラス・グループの関係性に依存した学習形態であることに配慮した授業デザインが望ましいことが確認された。また、「意義認知ツール」では生徒が1学期末の成績以降、意欲を減退・消失するような問題が生じなかったため、「関心・意欲・態度」の向上を見通した計画的な指導―評価が可能となり、日常生活で活用するなどの活用型の学力向上が期待される等、「意義認知ツール」の有効性が示された。
著者
永田 智子 赤松 純子 榊原 典子 鈴木 真由子 鈴木 洋子 田中 宏子 山本 奈美
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, 2013

1.問題の所在と研究の目的  家庭科教員を取り巻く現状は厳しい。小学校においては継続的に家庭科の実践研究を行う教員は少なく,家庭科授業の手本を示してくれる先輩教員や情報交換できる同僚が身近にいないことが多い。別の方法で小学校家庭科の授業者を支援する手立てが必要である。  小倉ら(2007)は,全国の小中学校における日々の理科授業の改善に役立てるため,優れた特徴をもつ理科授業をビデオ収録するとともに,その実践の何が優れているかを具体的に示すことによって,理科を指導する教師が参考にすることを目的とした研究を行った。本研究の基本的な発想は小倉らの研究に依拠する。つまり家庭科授業をビデオ収録し,その指導案を集めるだけでなく,家庭科教育の有識者が,その授業の何が優れており,何が課題なのかを具体的に示すことによって,家庭科の授業実施や改善を支援できると考えた。  ただし,小倉らの研究では,授業ビデオと報告書に掲載された評価コメントを,視聴者自身が対応付けながら視聴しなければならない点で不自由がある。そこで,共有された授業風景動画の特定場面と討論中の発言内容の対応を明示化する動画共有システムVISCO(小川ほか2009)を利用することにした。VISCOではコメントを具体的な映像場面に直接付与すると,吹き出しのように表示することなどが可能になるため,視聴しやすくなることが期待できる。  そこで,小学校家庭科授業の実施・改善を支援することを目指し,優れた点や課題点などのコメントを授業ビデオとともに閲覧することのできる動画共有システムと家庭科授業ビデオを一つのパッケージとして開発することを本研究の目的とした。 2.パッケージの開発手順と特徴  今回開発したパッケージには,VISCOおよび7本の小学校家庭科授業の動画ファイル,各授業の指導案が含まれている。   VISCOはWindows7を推奨環境とするシステムで,動画の映像場面にコメントを付与すると,インターネットを通じてコメント情報がサーバに蓄積される。視聴時には,インターネットを通じて,蓄積された複数人のコメント情報を動画上に吹き出しの様に重ねて表示させることができる。またコメントはリスト表示され,そこからコメントを挿入した場面に動画を移動させることもできる。  小学校家庭科授業およびその指導案は日本家庭科教育学会近畿地区会の有志によって収集・編集された。授業は学習内容A~Dから各1本以上とし(A=1本,B=2本,C=3本,D=1本),題材(テーマ)は重ならないように調整した。授業は学校長の許諾を得た上で撮影し,かつ子どもの名前や顔にはモザイク加工を施した。音声が聞き取りにくい場面にはテロップを付け,授業内容がわかる程度の長さにカットした(最短約16分,最長約38分,平均約24分)。  このように編集された7本の授業ビデオに,教員養成系大学・学部で家庭科教育に携わる研究者7名が分担して,VISCOを使って優れた点や課題・助言,解説等のコメントを付与した。1本当たりのコメント者数は3名,コメント数は平均48.3±11.5件であった。 3.今後の課題 小学校と同様の手続きで中学校・高等学校家庭科教育のパッケージを開発するとともに,研究者の付与したコメントの妥当性や有効性を検証することが今後の課題である。 本研究はJSPS科研費 24531124の助成を受けたものである。参考文献 小倉康ほか(2007)優れた小中学校理科授業構成要素に関する授業ビデオ分析とその教師教育への適用,平成 15 年度~18 年度科学研究費補助金 基盤研究(A)(1) 研究成果報告書 小川修史・小川弘・掛川淳一・石田翼・森広浩一郎(2009)協調的授業改善を支援するための動画共有システムVISCO 開発に向けた実践的検討,日本教育工学会論文誌,Vol.33, Suppl., 101-104
著者
山城 雄一郎 大塚 宜一 永田 智 清水 俊明
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

インフォームド・コンセントの得られた川崎病患児14例中9例の小腸粘膜から,患児末梢血単核球を有意に刺激する4種のグラム陰性桿菌,3種のグラム陽性球菌,3種のグラム陰性球菌を検出した.このうち患児2例からはスーパー抗原活性を有するS.aureusが検出された.また検出された細菌のうち1種は偏性嫌気性菌で通常の咽頭/後鼻腔,便培養では得られない細菌群であった.これらの培養上清を同一患児血清と反応させ,Western blottingにより反応した蛋白成分をIgG抗体を用いて検出した.その結果,9例全例からγグロブリン投与前の血清で検出されなかった各細菌の産生物に対するIgG抗体が投与後の血清にて検出されていた.以上より,小腸粘膜から検出された細菌の産生物が,患児単核球を増殖させ,何らかの免疫学的活性をもたらしていること,しかもその細菌産生物の産生時期は川崎病急性期であること,γグロブリンによりその中和抗体が供給されたことより,川崎病が治癒を迎えた可能性が大きいことが推測され,これら細菌産生物が川崎痛の原因物質であることを強く示唆する結果と考えられた.これらのうち2例から得られた56kDa,47kDa,37kDaの3種のバンドについてのみアミノ酸分析が行い得たが,これらはいずれも細菌の内因性蛋白であった.以上のことから,川崎病の病原菌は単一なものではなく極めてheterogeneousなものであることが推察された.
著者
永田 智 清水 俊明 大塚 宜一
出版者
東京女子医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

肥満群の便では健常児と比較してビフィズス菌の有意な減少と便中酢酸濃度の明らかな低下が認められた。肥満群は、観察期間の前半6ヶ月を食事・運動療法のみ、後半6ヶ月は乳酸菌シロタ株含有飲料を飲用させたところ、飲用1ヶ月後に有意な体重減少が得られた。また、飲用3カ月後に中性脂肪値の有意な低下、1カ月後にHDLコレステロール値の上昇傾向、飲用3カ月後に便中ビフィズス菌の有意な増加と酢酸濃度の有意な上昇が認められた。以上より、シロタ株には肥満抑制効果があることが示唆され、その効果は、シロタ株が腸内のビフィズス菌の増殖を促進して、その代謝産物である酢酸などが脂質代謝に影響している可能性が考えられた。
著者
松村 成一 永田 智
出版者
日経BP社
雑誌
日経ドラッグインフォメーションpremium
巻号頁・発行日
no.177, pp.PE13-16, 2012-07

順天堂大学医学部附属静岡病院小児科は、大学病院としての高度医療を心掛けながら、静岡県東部の地域医療の拠点として小児の救急・時間外診療にも積極的に取り組んでいる。「患児の中には、短期間であっても『薬が飲めない』という子が多くいるので、薬剤師の方々には、飲みやすい味の後発品の提案や賦形の工夫など、小児科のチーム医療の一員として積極的に診療に関わっていただきた…
著者
清家 剛 三牧 浩也 原 裕介 小田原 亨 永田 智大 寺田 雅之
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 = Papers on city planning (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.451-456, 2011-10-25
参考文献数
5
被引用文献数
9

急速な人口減少や高齢化に直面し、我が国では詳細な人口変動分析に基づく都市の再構築が必要になっている。しかし、国勢調査などの既存の基幹統計では、都市内部における人口変動を十分に捉えることができない。NTTドコモのモバイル空間統計は、携帯電話サービスを提供するために必要な運用データから時間毎に変化する人口の地理的分布を推計した統計情報であり、都市解析の新たな手段となることが期待される。本稿では、千葉県柏市におけるケーススタディを通じて、モバイル空間統計の信頼性の検証並びに、まちづくりにおける活用可能性の検討を行った。
著者
白木 邦彦 河野 剛也 安宅 伸介 永田 智
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

レーザースペックル眼底血流計はこれまで主に視神経乳頭での血流測定に使用されてきた。視神経乳頭上の太い網膜血管を測定領域から除外すれば、視神経乳頭の組織血流量をレーザースペックル眼底血流計のSBR値が反映する。眼底血流測定に際しては、レーザースペックル眼底血流計は網膜と脈絡膜の両者の組織血流を反映するとされる。そこで、網膜循環に影響を及ぼさない脈絡膜病変では脈絡膜循環の異常を反映すると考えられるが、微小な脈絡膜循環の異常を把握しているかは不明である。今回、網膜血管を有しない家兎眼底において、臨床で日常的に施行されている豆まき状の光凝固を施行し、凝固部位間の非凝固部位領域の脈絡膜血流量の変化を経時的に検討した。さらに、沃素酸ナトリウム投与によって網膜色素上皮を障害し、続発的に生じた脈絡膜毛細血管の変性・萎縮領域に関してレーザースペックル眼底血流計にて経時的にSBR値の変化を検討した。レーザー光凝固部位ではSBR値の顕著な低下が早期よりみられ、経過観察期間中持続していたのに加えて、凝固部位間の非凝固部位でも3ヶ月、6ヶ月後にSBR値の低下、すなわち血流の減少がみられた。また、沃素酸ナトリウム投与例での網膜色素上皮障害部では、投与1ヶ月後には71%にSBR値が低下し、6ヶ月後にはさらに58%にまで低下し、持続的な脈絡膜血流量の低下がみられた。以上より、レーザースペックル眼底血流計を用いて眼底の脈絡膜の微小循環変化の検討が可能であることが明らかとなった。
著者
永田 智大 鈴木 俊博 小林 基成 カーン アシック 趙 晩熙
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NS, ネットワークシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.31, pp.79-84, 2008-05-08

本論文では,我々が新世代ネットワークとして提案する仮想ネットワーク技術を実現する際,単一ノードが支援する技術について検討を行う.仮想ネットワークはリンク資源,処理資源を統合的に扱うため,単一ノードでは仮想マシン技術を応用することで,効率的な資源割当てを実現できると考える.資源割当が正しく行われた仮想マシンが相互に連携して仮想ネットワーク全体の資源分割を支援する.そこで,我々はまず仮想マシンの資源利用状況を監視し,単一ノード内で実際に使われていない資源を,資源が足りていない仮想マシンに割当てることで,資源の利用効率やサービスのスケーラビリティ向上を目指す.また,その応用例として,仮想マシンの再起動に対する冗長性について検討を行う.再起動の原因に応じて資源割当てを変化させることで,仮想マシンが提供するサービスを効率的に継続して提供できる.