著者
清水 義雄 岸口 武寛
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1227-1229, 2008-12-15

はじめに 過敏性腸症候群(IBS)の診断基準は,慢性的に腹痛や腹部不快感があり,下痢あるいは便秘などの便通異常を伴い,症状を説明する器質的疾患や生化学的異常が同定されないものと定義されている3)。IBSでは緊張場面での症状出現や予期不安による行動制限がよくみられ,IBSとパニック障害との関連については詳しく報告されている2,9)が,意外なことに社会不安障害(SAD)との関連についての報告は乏しい。今回我々は,IBSの背景にSADの存在が明らかとなり,その治療について示唆に富む症例を経験したので報告する。
著者
坂本 真樹 小野 正理 清水 祐一郎
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第26回全国大会(2012)
巻号頁・発行日
pp.2N1OS8c2, 2012 (Released:2018-07-30)

病気の症状はしばしば「ずきずき」といったオノマトペで直感的に表現される.痛みの強さに比べ,痛みの質は定量化が難しいとされてきた.痛みの量と質の両者を表現できるオノマトペは,電子化されてきた医療への導入が期待される.本研究では,オノマトペの音韻特性と医療用尺度の印象評価値の関係を特定する被験者実験によりデータベースを作成し,オノマトペによって表される症状を定量的に推定し出力するシステムを作成した.
著者
木田 耕太 清水 俊夫
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.1083-1085, 2014 (Released:2014-12-18)
参考文献数
10
被引用文献数
3 3

Fasciculation potential(FP)は,筋萎縮性側索硬化症(ALS)の筋電図診断において非常に重要な意義を持つ.運動ニューロンの自発放電に由来するこの現象は,神経変性のもっとも早期からおきると考えられており,FPをいかに正確に検出するかが,ALSの早期診断には重要である.また5相以上のものをcomplex form FP(CFP)と呼ぶ.CFPはALS以外では出現することが少ない.CFPの発生部位は,多くが軸索遠位部であると考えられており,軸索膜の興奮性の増大や不安定性と関連した現象であり,脊髄前角細胞や神経根から生じていると考えられる他疾患のFPと性状がことなり,診断的価値が高いものと考えられる.
著者
清水 信宏 エフレム テレレ 岡崎 瑠美 三宅 理一
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.83, no.750, pp.1579-1589, 2018 (Released:2018-08-30)
参考文献数
22
被引用文献数
2

In this paper, “urban” formation manifested in Mekelle, the “palace city” developed since the late 19th century, is analyzed in relation to the traditional settlement techniques of the targeted region spanning from Tigray (northern Ethiopian region) to adjacent Eritrean highland. Through the analysis, it became clear that topography was the essential factor for settlement site selection, and that there was a preferable layout for these settlements in the targeted region. While Mekelle also basically applied similar techniques, several distinctions, such as existence of a strategic network of hillside and flatland settlements and formation of street concept, can be also found.
著者
小林 美沙樹 小田中 みのり 鈴木 真也 船崎 秀樹 高橋 秀明 大野 泉 清水 怜 光永 修一 池田 公史 市田 泰彦 高橋 邦雄 齊藤 真一郎
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.18-23, 2015-01-10 (Released:2016-01-15)
参考文献数
9
被引用文献数
1 2

Hand-foot skin reaction (HFSR) is one of the major adverse effects of sorafenib necessitating discontinuation of the drug, however, no standard interventions for HFSR have been established yet. At our hospital, we are using a urea-containing cream prophylactically for HFSR associated with sorafenib. We carried out this study in 74 hepatocellular carcinoma patients receiving treatment with sorafenib at our hospital between June 2009 and January 2011 to assess the benefit of prophylactic use of urea-containing cream against sorafenib-induced HFSR. Patients with a history of previous use of tyrosine kinase inhibitors or insufficient data in respect of the dose of urea-containing cream were excluded. The patients were divided into a high-dose group (38 patients) and a low-dose group (36 patients) according to the median dose (2.9 g per day) of urea-containing cream used within the first 2 weeks after the start of sorafenib treatment. The frequency of grade 2 or 3 HFSR was 42.1% in the high-dose group and 61.1% in the low-dose group(P = 0.105). The relative dose intensity of sorafenib was 71.1% in the high-dose group and 59.6% in the low-dose group (P = 0.043). No significant difference was observed in the response rate or time to progression between the two groups. In conclusion, prophylactic use of a urea-containing cream might enhance the relative dose intensity of sorafenib, but further prospective studies are warranted to elucidate its usefulness.
著者
金岡秀友 清水乞執筆
出版者
佼成出版社
巻号頁・発行日
1974
著者
清水 泰行
出版者
日本言語学会
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.148, pp.123-141, 2015

この論文は,「熱っ!」のように,形容詞語幹が声門閉鎖を伴って発話され,感動の意味が表現上実現する文(形容詞語幹型感動文と呼ぶ)を扱い,「感動の対象」を表す「主語」をとるかとらないかに着目して考察する。その結果として,形容詞語幹型感動文について,①即応性と対他性による分析から,構造上の「主語」をとらないと考えられること,②「これうまっ!」における「これ」のような形式は,話し手が聞き手に注意喚起を呼び掛けるための「感動の対象」の提示部であること,③形容詞語幹型感動文を構成する形容詞の性質の違い(属性形容詞か感情形容詞か)の観点から,属性形容詞によるものと感情形容詞によるものの二種に大別できること,④属性形容詞によるものも感情形容詞によるものも体言化形式を持ち,名詞句として感動の表出に用いられることで同じ感動文として機能すること,という四点を述べる*。
著者
坂本 将樹 小田切 久恵 三澤 顕次 有澤 準二 清水 孝一
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会技術報告 (ISSN:03864227)
巻号頁・発行日
vol.20, no.72, pp.29-36, 1996-12-21 (Released:2017-10-13)

ELF電界の生体影響を定量的に評価するため、安全基準の中心となる電界感知閾値について、実際の人体を対象に基礎的検討を行った。まず電界の生体作用の機序を理論的・実験的に調べ、電界の交流・直流の違いによる感知閾値の変化を解析した。その結果、ヒトの電界感知の機序としては、体毛の動きによる体表刺激が支配的であること、また交流電界の方が直流電界に比べ感知閾値が低くなることなどが確かめられた。これらの結果に基づき、電界感知閾値の個人差の原因について詳しい解析を行った。これまで電界感知については、電流刺激の場合とは逆に男性の方が女性より閾値が低いと思われてきた。実験的解析の結果、この個人差は男女差というよりは体毛状態の違いに起因することがわかった。また体毛状態が同じ場合には、女性の閾値の方が低くなる可能性も認められた。次に別の個人差の要因として、被験者の心理状態の影響について検討を行った。その結果、電界感知の経験の有無や電界の体表刺激についての知識・情報の有無によっても、感知閾値が変化することが明らかとなった。ただしこれらの変化の幅は、以前に明らかにした相対湿度変化に伴う感知閾値変化の幅に比べると、はるかに小さいものであった。
著者
清水 正嗣 小野 敬一郎
出版者
Japanese Society of Psychosomatic Dentistry
雑誌
日本歯科心身医学会雑誌 (ISSN:09136681)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.41-47, 1991-06-25 (Released:2011-09-20)
参考文献数
12

The records of five oral cancer cases that committed suicide were studied psychosomatically. 4 were diagnosed as S. C. C. histologically and treated by oral surgeons and radiologists between 1959-1980 at the Uni. Hospital of Tokyo Medical and Dental University by Shimizu and others, and the remaining case was treated at a cancer center in Japan and the case history was examined for this study from the book written by the patient herself.The first case was a 50-year-old female with cancer of the upper left gum T4N1M0, which was treated with radiotherapy. Just one year later after the radiation, she committed suicide by jumping into a river, because of jaw pains due to tumor remains.The 2nd case was a 53-year-old male with cancer of the right cheek mucous membrane T3N2bM0, which was first treated with bleomycin, then with radiotherapy for 1. 5 years. After finishing radiotherapy successfully, the patient killed himself by hanging in the hospital due to the pain, although the tumor had clinically disappeared.The 3rd case was a 48-year-old female with cancer on the left side of the tongue T3NOMO. She was treated with interstitial radon seed radiation with success. After discharge from the hospital, she committed suicide by hanging herself at home afler complaining of pain and anxiety.The 4th case was a 55-year-old male with cancer on the right side of the tongue T3NlaMo. He was referred to the tumor conference, where the treating plan was decided to be radiotherapy. Before admission to the hospital, he killed himself by jumping into the Pacific Ocean from a ferryboat because he became pessimistic about the planned radiotherapy.The 5th case was a 59-year-old female novelist. She suffered from cancer on the right floor of the mouth and visited a cancer center, where a surgeon examined her and excised the tumor as a benign lesion. After that she was referred to the radiological department. The result of the radiotherapy was effective, but she thought her tumor would not disappear and hung herself at home due to severe mouth pain and great depression over the imagined future course of the tumor following the first failure of diagnosis and treatment.As causes of suicide by the patients with oral cancer, the side effect of pain during and after radio-therapy was pointed out at first, then the anxiety of the disease as cancer and distrust of the doctor played very important roles. For the future it should be stressed that we must not ignore these points as we examine and treat oral cancer patients.
著者
谷山 智子 清水 千佳子 垣本 看子 小林 典子 Saad Everardo
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.101-109, 2014 (Released:2014-07-11)
参考文献数
9

【目的・方法】がん診療において治療法の優先順位に関する認識を明らかにするため, 乳がん患者, 医師, メディカルスタッフを対象にアンケート調査を行った. 調査項目は1)がん告知後の治療法選択, 2)悪性度の高いがんに対する年齢設定別の治療選択, 3)生存期間(survival time; ST)と生活の質(quality of life; QOL)の異なる治療法の選択とした. 【結果】1)がん告知後の治療法選択について, 医療者より患者の方が, STとQOLのどちらを重視するかがはっきりしている傾向にあった. 2)医師は患者やメディカルスタッフと比べて高齢者に対してもSTを重視する傾向にあった. 3)患者と医師はSTを重視し, メディカルスタッフはQOLを重視する傾向にあった. 【結論】患者と医療者はがん診療に対し異なった意識をもっている可能性があり, その意識の違いを認識する必要がある.
著者
日高 豊彦 日高 亨彦 中村 有伽 清水 英城
出版者
公益社団法人 日本口腔インプラント学会
雑誌
日本口腔インプラント学会誌 (ISSN:09146695)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.276-284, 2019-12-31 (Released:2020-01-30)
参考文献数
46

審美領域においてインプラント治療が患者の満足を得られるためには,歯冠修復と同様に辺縁歯肉と歯間乳頭の位置,およびその長期的安定が求められる.これらを確立するためにはインプラント埋入部位に必要な骨(硬組織)と軟組織を確保することが重要である.生体には固有差があるが,一般的にはインプラントとアバットメントが同径の場合インプラントの頰舌(唇口蓋)側2mm以上,プラットフォーム・スイッチングの場合1.5mm以上の骨を確保し,どちらのデザインのものでもインプラントと天然歯間に1.5mm以上,インプラントとインプラント間に3mm以上の骨を確保すべきであろう.インプラント周囲の軟組織の高さは4mm程度必要と思われるため,インプラント埋入の深さはインプラントとアバットメントが同径の場合辺縁歯肉より3mm程度根尖側方向,プラットフォーム・スイッチングの場合4mm程度根尖側方向に埋入すべきではないかと多くの文献から示唆される.頰舌(唇口蓋)的軟組織の厚みは2mm程度必要だと思われる.上部構造の形態は頰舌(唇口蓋)軟組織の厚みを確保するため,歯肉縁下で凹状に,隣接形態は歯の修復と同様にハーフ・ポンティック・テクニックが応用できる.組織が不足する場合はその造成を行わなければならないが,審美性の長期予後を考えると骨の造成には遅延吸収性または,非吸収性の骨補塡材を用い,軟組織に関しては自家移植による造成が長く維持される.
著者
谷 鉄兵 瀬野 悟史 花満 雅一 清水 猛史
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.1053-1060, 2008-08-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
13
被引用文献数
1

【背景】レーザーによる下鼻甲介粘膜焼灼術は,保存的治療のみでは症状を充分改善し得ないアレルギー性鼻炎に対する外科的治療として広く行われている.レーザーによる手術は鼻粘膜表面を焼灼するが,近年鼻粘膜上皮には影響を与えずに粘膜下を焼灼する高周波手術装置(ENTECコブレーター2サージェリーシステム^[○!R],以下コブレーション)を利用した下鼻甲介手術が報告されている.【方法】対象は,当科にて平成16年11月から平成19年5月までにコブレーションを用いて下鼻甲介粘膜焼灼術を行った29例(男性17例,女性12例,平均年齢37歳)で,手術前後のくしゃみ・鼻汁・鼻閉・日常生活支障度の症状スコアの検討を行い,レーザー手術50例(男性27例,女性23例,平均年齢25例)の術後成績と比較検討した.【結果】手術1ヵ月後の治療成績には差が認められないが,1年後にはレーザー手術では症状が再燃することが多いのに対してコブレーション手術では高い症状改善率(くしゃみ65%,鼻汁71%,鼻閉76%)が維持され,2年後にも同様の良好な成績が得られた.【結果】アレルギー性鼻炎に対してコブレーションによる下鼻甲介粘膜焼灼術により良好な長期成績を得ることができた.
著者
松前 ひろみ 長谷 武志 清水 健太郎
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:21888957)
巻号頁・発行日
vol.2020-CH-122, no.2, pp.1-5, 2020-01-25

ヒトのゲノム情報からは,人類の系統や混血などの歴史を詳細かつ統計的に推定することができる.そうしてゲノムから推定される民族集団史の系統関係と,文化,とりわけ言語の分類には,一定の関連があると考えられてきた.しかし言語の分類のうち,言語族という語彙レベルで近縁な言語間の関係を除くと,遠い言語同士の関係(例えば日本語,アイヌ語,韓国語)を定量的に分析することは,これまで困難であった.私たちは文法の比較法である言語類型論の研究者とともに,文法のデータベースから定量的に語族を超えた言語の特徴の類似性を抽出し,ゲノムに基づく民族集団の関係との関係性を分析することに成功した.データベースに蓄積された文化と生物学の情報を統合的に解析する方法を提案する.
著者
柳本 武美 清水 央子
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.17-29, 1983-06-30 (Released:2009-06-12)
参考文献数
26
被引用文献数
3 1

2次元分割表で,一方の元が順序づけられた目的変数を表わし,他方の元が説明変数によって個体を分類した群を表わすとする.離散型比例ハザードモデルは柔軟で扱いが容易な回帰型モデルを与える割には,未だ良く研究されていない.本稿では明確にモデルを定式化し,推論の規準としての部分尤度と全尤度を比較して,後者の有用性を主張する.またモデルが実用的であることを例をあげて示す.