著者
道上 正規 清水 正喜 矢島 啓 檜谷 治 白木 渡 宮本 邦明
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

わが国では、現在では2000を越えるダムが存在しており、地盤条件あるいは降雨条件の厳しいわが国では、地震あるいは豪雨によって貯水池周辺で大きな崩壊が生じる確率は無視できず、崩壊土が貯水池に流入する可能性は低くない。多量の崩壊土が貯水池内に流入すると、イタリアのバイオントダムのように巨大な波が発生し、大災害を引き起こしかねない。このような災害は、大崩壊の発生確率とともに、貯水池数に依存しており、わが国でのその発生確率は年々高くなっていると考えられ、貯水池の流域管理が重要な課題である。そこで、本研究は、このような貯水池内での大崩壊にともなう段波形成について検討することを目的としたものであり、具体的には1)災害事例(特に眉山災害)に関する研究2)土砂崩壊の予測法に関する研究3)崩壊土砂の運動特性に関する数値解析的研究4)崩壊土塊の水域流入に伴う段波の形成と伝播遡上特性に関する数値解析的研究を実施するとともに、最終的に上記の研究を総合し、200年前島原で発生した眉山の大崩壊に伴う災害の数値シミュレーションを試み、大崩壊に伴う段波災害をある程度予測することが可能であることを実証した。
著者
辻 裕丈 近藤 直英 山本 亜紀子 藤田 嘉子 西田 卓 鈴木 淳一郎 米田 厚子 宮崎 みどり 清水 由美子 安田 武司 伊藤 泰広
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.651-659, 2008 (Released:2008-10-30)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

急性期の脳卒中患者のトリアージと,特にt-PA療法の適応のある脳梗塞患者のトリアージを目的にして,救急隊と脳卒中プレホスピタルスケール(TOPSPIN:TOYOTA prehospital stroke scale for t-PA intravenous therapy-経静脈的t-PA療法のためのトヨタ脳卒中プレホスピタルスケール-)を導入した.今回,このTOPSPINに連動し,特に超急性期t-PA療法に対する院内体制の迅速化,標準化を計るため,(1)救急外来で脳卒中の鑑別と,特に脳梗塞ではt-PA療法の適否決定のための諸検査を実施するパス(TOPSPIN path),(2)ICUでt-PA療法を遂行するパス(TOPSPEED:TOYOTA path for stroke with t-PA therapy after emergency evaluation and decision-緊急評価と決定後のt-PA療法のためのトヨタ脳卒中パス-),(3)ICU/SUで後療法を行うパス(TOPSTAR Jr.:TOYOTA path for stroke treatment, activity and rehabilitation judged by reexaminations-再評価で決定された治療,活動度,リハビリテーションのためのトヨタ脳卒中パス-)からなる,電子パス診療システム(3 TOP system)を構築した. 2007年4月1日の3 TOP system導入後,96例がTOPSPINで搬送され,11例でt-PAが投与された.TOPSPINと,これに連動した3 TOP systemは,t-PA療法の迅速・確実な診療に有効である.
著者
清水 孝郎 桑島 正道 河野 典夫 垂井 清一郎
出版者
一般社団法人 日本臨床化学会
雑誌
臨床化学 (ISSN:03705633)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.1-8, 1981-03-25 (Released:2012-11-27)
参考文献数
20
被引用文献数
1
著者
平野 俊二 塩坪 いく子 山口 正弘 苧阪 直行 室伏 靖子 清水 御代明
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1987

本研究は人および動物の環境への適応機制に関する心理学的研究である。入力情報の処理から高次の概念獲得、目標定位行動に至る諸側面について、比較的・発達的要因を含めた検討を重ねた。1.視覚入力情報処理(1)乾はパタンの表現と構造化に関して強調と競合による可塑的神経回路網の計算理論を提案した。与えられた2次元画像強度デ-タから画像生成過程を産出する並列多段階モデルである。(2)苧阪は空間周波数パタンの感受性に及ぼす中心・周辺視処理システムの促進と抑制の効果、および、漢字、かなの読書における有効視野面に相互作用が働くことを明らかにした。2.概念の獲得(1)清水は言語文脈による概念の獲得を検討した。母語にない概念を言語文脈のみによって獲得することの困難をはじめ、既知の概念をあてはめようとする傾向、反証事例は必ずしも有効に用いられないが、定義を与えられると獲得可能となることが示された。(2)室伏はチンパンジ-に図形パタンと数字による物、色、数の符号化訓練後に、さまざまな対象について般化テストを行い、高次力デゴリ-としての概念の形成が色、物、数の順に難かしくなることが分った。3.目標定位(1)塩坪は目標定位に及ぼす発達的要因を調べた。10ヶ月乳児に手伸ばしと這行による対象選択を求め、反応は異なっても共通の特徴がみられること、対象の空間的配置や呈示順序が選択に影響することが見出された。(2)山口は目標定位と選択行動に関わる神経機構について、上丘損傷ラットの回りこみ行動を解析した。走行中の目標定位は損傷後も保持されるが間隙により再定位を要するとき、損傷の阻害効果が顕著となることが示された。(3)平野はラットの音刺激継時非見本合せで海馬損傷の影響を検討し、刺激差小、刺激間間隔大のときに障害が認められることを示した。
著者
清水 哲雄
出版者
滋賀大学
雑誌
彦根論叢 (ISSN:03875989)
巻号頁・発行日
vol.285, 1993-11-30
著者
清水 長正 山本 信雄
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.339, 2013 (Released:2013-09-04)

地下の空隙から冷風を吐出する風穴(ふうけつ)は全国の山地・火山地の地すべり地形・崖錐斜面・熔岩トンネルなどに多数ある。信州の稲核(現・松本市)では江戸期から風穴が利用されていて,幕末期に蚕種を風穴に冷蔵して孵化を抑制し養蚕の時期を延長させる手法が稲核で開発され,その後の明治期における蚕糸業の振興に伴い蚕種貯蔵風穴が全国へ普及し,大正期までに各地に280箇所以上が造成された。明治後期には風穴の機構に関する日本で最初の研究が稲核で始められた。さらに現在でも風穴の利用が持続しているという,自然現象(地形・表層地質・気象)を巧みに利用した山村文化をもつ場所である。
著者
清水 幹人 甲田 亨 中辻 裕司 緒方 英紀 吉良 潤一 望月 秀樹
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.41-44, 2017 (Released:2017-01-31)
参考文献数
8
被引用文献数
4 5

症例は21歳男性である.2015年4月頃両側足趾のしびれで初発し,6月下旬に歩行障害が出現,8月には高度な姿勢時振戦を認めた.電気生理検査では脱髄性末梢神経障害を認めた.また頭部MRIで複数の小病変を認め,抗neurofascin 155(NF155)抗体が陽性であったため中枢末梢連合脱髄症と診断した.免疫グロブリン大量静注療法,ステロイドパルス療法の効果は軽微であったが,単純血漿交換療法では症状の改善と抗体価の低下を認めた.近年,中枢末梢連合脱髄症と抗NF155抗体との関連が報告されており文献的考察を加えて報告する.
著者
板谷 一宏 井上 学 飯塚 奈都子 清水 裕樹 結城 伸泰 市川 博雄
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.633-636, 2016 (Released:2016-09-29)
参考文献数
10

症例は17歳の男性である.徐々に上下肢の筋力低下を自覚し,走った際にバランスを崩すようになった.加えて姿勢時に手指の振戦が出現した.典型的慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチーの病型に加えて,上肢の振戦と下肢の運動失調を認めたことから抗neurofascin-155抗体の関与を疑い,陽性であった.同抗体陽性である慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチーの詳細な症例報告論文としては本邦初であるが,振戦,免疫グロブリン大量静注療法抵抗性といった,比較的類似した臨床像を持つ一群である可能性が指摘されてきており,同抗体の検討は有効な治療選択の一助となる可能性がある.
著者
東 芳一 跡見 順子 清水 美穂 跡見 友章 藤田 恵理 長谷川 克也
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第31回全国大会(2017)
巻号頁・発行日
pp.4L22, 2017 (Released:2018-07-30)

「身心一体科学」教育プログラムとは、自分自身の「身体性」に着目し、生命科学、脳科学などの科学的知見に基づいた「理解」、実験実習や身体運動による「実践」、結果に対する科学的手法による「評価」をサイクルとして、自身に生じた変化を「言語化」する新しい教育工学的手法である。本研究では、現在大学などで実践しているプログラムとその効果について報告し、科学的思考の醸成における「身体性」の重要性について検討する。
著者
石田 貴文 古澤 拓郎 大橋 順 清水 華
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

インドネシアで新たな公衆衛生的課題となっているストレスやうつ病を進化医学的に分析し、リスク要因としての遺伝的多型と、社会の個人主義化の影響を明らかにする研究である。セロトニン・トランスポーター遺伝子やオピオイド受容体遺伝子等の多型がうつ病やストレスと関係することが知られているが、最近の研究によればこのリスク型はアジアの集団主義的社会に多く、そのような個人が個人主義社会に移住することや、人間関係の急変により疾病を発症する可能性が指摘されている。個人主義化が進むインドネシアにおいて、国立中核病院等を拠点としたケース・コントロール研究と、地域社会での横断的研究を用いた研究デザインにより、この因果関係を検証する画期的研究であると同時に、その成果から健康社会の在り方を提案する社会実装型研究である。現在、マカッサルのハサヌディン大学と共同研究を推進しているが、他の研究協力校を開発するため、スマトラのメダンを訪問した。また、トラジャ族を調査対象集団としているが、マカッサルの南西に住むカジャン族の集落の現状を視察した。セロトニントランスポーターをコードするSCL6A4遺伝子のプロモーター領域内に位置する挿入欠失多型(5-HTTLPR)は、うつ病との関連が、μオピオイド受容体をコードするOPRM1 遺伝子エクソン1に位置するアミノ酸置換(rs1799971) は統合失調症との関連が報告されている。インドネシア人患者サンプル46名について、SCL6A4遺伝子の5-HTTLPR 多型をPCRと電気泳動 により、OPRM1 遺伝子のrs1799971をTaqMan法により遺伝子型を決定した。一方、ストレス指標としてテロメア長をPCRで定量した。
著者
山田 哲夫 田口 裕功 清水 章治 信太 隆夫
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.47-51, 1985-01-30 (Released:2017-02-10)

約10年間にわたり難治性の膀胱刺激症状を有し, 膀胱壁の好酸球増加を伴った間質性膀胱炎の1治癒例を経験した.この症例は13歳頃より扁桃炎を反復し生来アレルギー素因も有していた.扁桃局所々見や扁桃誘発試験などから発症に扁桃の関与が示唆された.扁桃摘出後約2週間で膀胱の潰瘍性病変が消失し, 術後約6年の経過を観察しているが全く異常は認められず, 扁桃性病巣感染の関与が証明された.
著者
阿曽 かずき 岩田 宏美 清水 史子 小川 睦美 Kazuki ASO Hiromi IWATA Fumiko SHIMIZU Mutsumi OGAWA
雑誌
學苑 = GAKUEN (ISSN:13480103)
巻号頁・発行日
vol.818, pp.27-30, 2008-12-01

In order to examine and compare the content of resistant starch (RS) under different conditions, the amount of non-starch polysaccharides (NSP) in boiled rice (A. boiled, B. boiled and frozen and defrosted), purchased bread (A. just after purchase, B. frozen and defrosted), and retort rice (A. microwaved, B. microwaved and frozen and defrosted) were measured using the Englyst method. The results were as follows: There was no difference in the content of NSP in the boiled rice A and B. The amount of NSP content in the purchased bread A was lower than that in the purchased bread B. Therefore, we could not calculate the amount of RS. The NSP content of the retort rice B was higher than that of the retort rice A. The RS content of the retort rice was 1.0±0.8 (g/100 g). The NSP content of the purchased bread was significantly higher than that of the boiled rice and retort rice.
著者
稲見 和典 中山 実 西方 敦博 清水 康敬
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.107-117, 1997-09-20 (Released:2017-10-20)
参考文献数
7

英単語学習において,英和辞典としてCD-ROM辞書を利用した場合と,印刷英和辞書を用いた場合の学習成績を比較した.その結果,制限時間内に辞書による単語検索回数を自由とした場合の,日本語の意味の記憶試験では1%,英語のスペル試験では5%水準の有意差で,CD-ROM辞書使用時の正答率が高いとの結論を得た.また,制限時間を設けずに辞書の利用回数を各英単語につき1回に制限した場合には,学習成績に差はなく,CD-ROM辞書を用いた方が,1単語ごとの記憶時間が長いことがわかった.次に,アンケートによる主観評価について因子分析を行い,「おぼえやすさ」,「学習のしやすさ」,「操作性」,「持続性」,「見やすさ」の5因子を抽出した.これらの因子評価点と学習成績との関係を調べたところ,「おぼえやすさ」と成績の間に相関関係があることがわかった.
著者
土田 龍郎 清水 幸生 伊藤 春海
雑誌
核医学画像診断 (ISSN:09124195)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.16-17, 2002-11-01

福井医科大学 放射線科52歳女.鼻腔内に発生した悪性リンパ腫に対する化学療法のため入院加療を行った.入院時には血液生化学検査には特に異常を認めなかった.化学療法第3クール開始3日目ではFDG-PETにて明らかな異常集積は認められなかったが,化学療法第8クール終了7日後において椎体,胸骨,長管骨の骨髄に著明なFDGの集積を認めた.本症例では化学療法による骨髄抑制に対し,G-CSFを投与されており,2回目のFDG-PETにおける骨髄へのFDG集積増加はG-CSF投与による骨髄糖代謝の亢進によるものと考えられた.FDG-PETを化学療法中において施行する際には,G-CSFの投与とのタイミングを計り,病変が隠されることがないように留意することが大切であると考えられた原著論文/症例報告