著者
渡辺 雅子
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.333-347, 2001-09-30 (Released:2009-10-19)
参考文献数
27

本研究は, 日本と米国の小学生の説明のスタイルが具体的にどう異なるかを4コマの絵を使った実験により明らかにする.説明のスタイルを調査する方法として, 一連のできごとを説明するのに, どのような順番でものごとを叙述するかに注目した.4コマの絵を使った実験では, 同じ絵を見てそこに表されたできごとを説明するのに, 日本の生徒は生起順にできごとを並べて時系列で説明をする傾向が強いのに対し, 米国の生徒は時系列とともに結果を先に述べた後, 時間をさかのぼって原因をさぐる因果律特有の説明の順番に従う傾向があることが明らかになった.また理由付けをする場合には, 米国の生徒は結果にもっとも影響を与えたと思われるできごとのみを述べて他を省略する傾向が見られたのに対して, 日本の生徒は説明の場合と同様に時系列でできごとを述べる傾向が見られた.さらに日本の生徒は, 一連のできごとを述べた後, 社会・道徳的な評価で締めくくるのに対し, 米国の生徒は因果律の観点から, 与えられた情報をもとに説明を補足する特徴が見られた.時系列と因果律という叙述の順序の違いは, 個々のできごとの軽重の判断や一連のできごと全体の意味付けに重大な影響を及ぼしている.説明のスタイルの違いが理解や能力の問題として把握される可能性は大きく, 教育の現場においては複数の説明スタイルの違いの存在を意識することが必要である.
著者
渡辺 伸一
出版者
環境社会学会
雑誌
環境社会学研究 (ISSN:24340618)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.129-144, 2001-10-31 (Released:2019-03-12)

環境の保護は,社会的に重要な課題である。しかし,環境保護の実際をみると,学術的な重要性や,保護が生み出す受益のために,特定の少数者に過重な負担や受忍を強いる例が散見される。「奈良のシカ」の事例は,こうした問題がみられてきた典型例である。奈良のシカは,「奈良公園の風景の中にとけこんで,わが国では数少ないすぐれた動物景観をうみ出している」とされる天然記念物であり,奈良における最も重要な観光資源の一つでもある。が,当地では,このシカによる農業被害(「鹿害」)を巡り,シカを保護する側(国,県,市,春日大社,愛護会)と被害農家との間での対立,紛争が長期化し,1979年には被害農家による提訴という事態にまで至ってしまった。本稿では,まず,鹿害問題の深刻化過程をみた後に,紛争長期化の背景を,「シカが生み出す多様な受益の維持」「保護主体間の責任関係の曖昧性」「受苦圈と受益圈の分離」「各保護主体にとっての保護目的の違い」等に着目しながら検討した。鹿害訴訟の提訴と和解(1985年)は,被害農家が長期に亘って強いられてきた状況を大さく改善させる契機となった。しかし,この新しい鹿害対策も,十分には機能してこなかった。そこで,後半では,鹿害対策の現状に検討を加えた上で,依然として問題の未解決状態が続いている理由と問題解決への糸口について考察した。
著者
山内 健生 渡辺 護
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.13-16, 2013-05-25 (Released:2019-04-10)
参考文献数
16

富山県の山地(標高330m, 664m, および1,120m)にて,Townes型マレーズトラップを2009年7月から9月まで連続して設置し,スズメバチ類の捕獲を行なった.その結果,2亜科16種を捕獲した.捕獲個体数がもっとも多かったのはシダクロスズメバチで,全個体数の59.1%を占めた.ツヤクロスズメバチがこれに次いだ(15.7%).3地点とも最優占種はシダクロスズメバチであったが,種構成は標高によって異なっていた.アシナガバチ亜科に関しては,標高の高い地点ほど捕獲種数と個体数が少なく,標高1,120 m地点ではまったく採集されなかった.一方,スズメバチ亜科では標高が高い地点ほど捕獲種数と個体数が多かった.
著者
清水 駿 渡辺 亮
出版者
公益社団法人 計測自動制御学会
雑誌
計測自動制御学会論文集 (ISSN:04534654)
巻号頁・発行日
vol.51, no.11, pp.763-768, 2015 (Released:2015-11-21)
参考文献数
12
被引用文献数
1

This paper proposes a novel steering operation model scheduled by vehicle velocity. The model is constructed via the H∞ loop shaping. In order to improve driving safety, driver assistance systems have been focused on recently. The analysis by using a driver model is indispensable to design efficiently driver assistance systems. The proposed model must be scheduled by vehicle velocity since the driver's operation characteristics vary according to vehicle velocity. The model shows excellent course following performances in single/double lane change simulations with velocity change.
著者
渡辺 玲
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.505-512, 2016 (Released:2016-12-31)
参考文献数
69
被引用文献数
1 3

生体内のmemory T細胞分画に関して,近年一旦組織に移行した後循環に戻らずその組織に留まり続けるresident memory T細胞(TRM)の存在が明らかになり,研究が活発に進められている.TRMは細胞表面にCD69,CD103を発現し強いエフェクター機能を有する分画としての報告が多く,消化管,皮膚,呼吸器,生殖器上皮などバリア組織における異物侵入防御に働く他,脳神経系,腺組織,リンパ組織,肝臓,腎臓,膵臓,関節といった非バリア組織においても主にマウスモデルでその存在が報告され,慢性炎症性疾患,自己免疫疾患などにおける病態発現との関与も強く考えられるようになった.腫瘍免疫における役割も報告されつつある.本稿ではresident memory T細胞に関する現在までの知見をマウスとヒトの報告に分け,その構築,分布,疾患との関わりについて整理した.このT細胞分画の機能に関する理解を深める足がかりとしたい.
著者
高木 浩光 山口 利恵 渡辺 創
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報 (ISSN:00221260)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.171-184, 2013
被引用文献数
14

日本政府は、「社会保障と税の番号制度」の創設を進めており、法整備に続いて、番号連携機能を備えた「情報連携基盤」の構築を計画している。本稿執筆時点で「情報連携基盤」の技術設計は案が公表されているものの未決定の段階であり、設計案に対しては「符号の存在意義が不明確」といった指摘もある。本稿では、「情報連携基盤」の番号連携機能の技術方式について再検討し、従来方式より合理的な設計の別案を提案し、プライバシー保護と情報セキュリティ技術の観点から従来方式と比較検討する。
著者
小田 寛 大野 道也 大橋 宏重 渡辺 佐知郎 横山 仁美 荒木 肇 澤田 重樹 伊藤 裕康
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.33, no.9, pp.1231-1236, 2000

慢性透析患者では心血管系合併症, とくに虚血性心疾患 (IHD) の発症頻度が高い. 今回, 血液透析 (HD) 患者と持続性自己管理腹膜透析 (CAPD) 患者の凝固, 線溶系の各因子を測定し, IHDとの関連性について検討した.<br>平均年齢48.5歳の健常者20名 (男性9名, 女性11名), 平均年齢52.7歳のHD患者20名 (男性8名, 女性12名), 平均年齢47.8歳のCAPD患者30名 (男性18名, 女性12名) を対象とした. 平均透析期間は45.2か月と43.8か月で, 基礎疾患はいずれも慢性糸球体腎炎である. 凝固系因子として第XII因子活性, 第VII因子活性, フィブリノーゲン, トロンビン・アンチトロンビンIII複合体 (TAT) を, 線溶系因子としてプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1 (PAI-1), α<sub>2</sub>プラスミンインヒビター・プラスミン複合体 (PICテスト), Dダイマーを測定した. またIHDは, (1) 心筋梗塞, 狭心症の有無, (2) 無症候性心筋虚血は運動負荷, 薬物負荷後のタリウム心筋シンチグラフィーの所見から診断した. 以下の成績が得られた.<br>(1) 健常者に比較して透析患者の第VII因子活性, TAT, フィブリノーゲンは高値を示し, 凝固亢進状態にあった. またHDに比較してCAPD患者の第VII因子活性とフィブリノーゲンはさらに上昇していた. (2) 透析患者のPIC, Dダイマーは高値を示し, 線溶亢進状態にあった. なおHDとCAPD患者の間に線溶系因子に有意差は認められなかった. (3) IHDを有する透析患者の第VII因子活性, フィブリノーゲンは上昇していた. この傾向はCAPD患者でより顕著であった.<br>以上より, 透析患者の凝固・線溶系は亢進状態にあり, この傾向はCAPD患者で顕著であった. なかでも第VII因子とフィブリノーゲンはIHD発症の危険因子であることが示唆された.
著者
道堯 浩二郎 平岡 淳 鶴田 美帆 相引 利彦 奥平 知成 山子 泰加 岩﨑 竜一朗 壷内 栄治 渡辺 崇夫 吉田 理 阿部 雅則 二宮 朋之 日浅 陽一
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.641-646, 2018-11-20 (Released:2018-11-28)
参考文献数
16

HBs抗原の測定法が改良され検出感度が高くなっているが,HBs抗原低値陽性例では偽陽性が危惧される.偽陽性の疑われる例を判定困難例とし,HBs抗原濃度別の判定困難例の頻度を明らかにすることを目的とした.41,186検体を対象にHBs抗原を化学発光免疫測定法で測定し,後方視的に検討した.判定困難例の基準をHBc抗体,HBe抗原・抗体,HBV-DNAすべて陰性,後日採血された検体でHBs抗原が陰性,の全条件を満たす例とし,HBs抗原濃度別の判定困難例の頻度を検討した.HBs抗原は1,147検体(2.8%)で陽性であった.判定困難例は6検体で,HBs抗原濃度(IU/ml)は,全例0.05以上0.20未満であり,0.20以上例には基準を満たす例はなかった.以上より,HBs抗原低値陽性例は偽陽性の可能性に留意する必要があることが示唆された.
著者
渡辺 訓江 近藤 肇
出版者
一般社団法人 日本ゴム協会
雑誌
日本ゴム協会誌 (ISSN:0029022X)
巻号頁・発行日
vol.90, no.4, pp.210-214, 2017 (Released:2017-06-27)
参考文献数
13
被引用文献数
1

Natural rubber (NR) is polyisoprene with 100% of cis-1,4 structure on main chain. NR is a natural resource derived from a tropical tree called Hevea brasiliensis (para rubber tree) that produces latex. NR is an industrial raw material, and global NR production and consumption are about 12 million ton per year (2014) which are about 40% in total rubber usage. Since NR shows superior physical properties such as break strength or durability comparing with synthetic rubber, NR demand is expected to rise in the future. In this review, we describe the present state, trend of new research and development of NR.
著者
伊藤 弘 仲谷 寛 沼部 幸博 鴨井 久一 辰已 順一 栗原 徳善 渡辺 幸男 池田 克已
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.417-428, 1993-06-28 (Released:2010-08-25)
参考文献数
36
被引用文献数
2 1

本研究の目的は, 垂直性骨欠損においてコラーゲンより精製した吸収性膜を組織再生誘導法 (GTR法) に応用し, 臨床的な評価を検索することである。慢性辺縁性歯周炎と診断され, 歯周初期治療終了後, 外科処置の必要性がある垂直性骨欠損を有する31名の患者に対してGTR法を応用した。GTR法は通常のフラップ手術に準じて行った。すなわち, 粘膜骨膜弁にて剥離, 翻転した後, 骨欠損部にコラーゲン膜を完全に覆うように調整し, 歯肉弁を復位し縫合を行った。術後3カ月, 6カ月に各々臨床評価を行った。その結果, 術後3カ月では術前と比較して骨変化量は, 1.15mmの増加, 付着の獲得量は, 1.52±1.81mmの増加, また, ボケットの深さは2.75±1.54mmの減少を認めた。術後6カ月では術前と比較して骨変化量は, 1 . 26mmの増加, 付着の獲得量は, 1.68±1.75mmの増加, また, ポケットの深さは2.84±1.54mmの減少を認めた。以上の結果より, 歯周組織の再生を目的としたGTR法におけるコラーゲン膜の応用は有用な処置方法であることが示唆された。

1 0 0 0 OA 陸奥宗光

著者
渡辺修二郎 著
出版者
同文館
巻号頁・発行日
1897
著者
富永 和作 越智 正博 谷川 徹也 渡辺 俊雄 藤原 靖弘 押谷 伸英 荒川 哲男
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.783-790, 2009-07-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
11
被引用文献数
1

目的:脳腸相関に鑑みたfunctional dyspepsia(FD)の病態生理として,日常ストレスが関与し,その認知は自律神経系や各種メディエーターを介して,運動機能をはじめとする消化管機能に影響を及ぼし,消化器症状を誘発することが推察される.そこで,ストレス負荷が与える消化管運動機能への影響と,自律神経機能の関与,その治療効果について検討した.方法:8週齢Wistar系雄性ラットに5日間の水浸ストレス負荷を与え,体重,相対臓器重量および血中カテコラミンなど,胃排出能を測定した.FD患者にストレス負荷度を問診し,24時間心拍変動解析を行った.高周波成分(HF:0.15〜0.40Hz)は副交感神経機能を,低周波成分(LF:0.04〜0.15Hz)との比LF/HFは交感神経機能の指標とした.(1)24時間全体,(2)覚醒時,睡眠時の比較,(3)食事負荷,(4)自律神経刺激前後での変動および回復度,(5)ディスペプシア症状程度と相関性について検討した.成績:1)ストレス負荷は,体重・相対胸腺重量を有意に低下させたが,副腎重量は有意に増加した.2)血漿ACTH,コルチコステロン,アドレナリン,ノルアドレナリンは増加し,胃排出時間は短期負荷では遅延し,長期負荷では充進した.3)ストレス負荷24時間では,総グレリンおよびデスアシルグレリンの増加を認め,その後の低下と同時期にアシルグレリンの増加を認めた.4)FD群では,24時間平均での副交感神経機能の有意な低下を認め,相対的交感神経系の亢進状態を示した.5)食後30〜60分の副交感神経系ならびに食後90分以降の交感神経系の変動が,FD群では約半数に認められなかった.6)自律神経作動薬での自律神経系アンバランスと消化器症状の改善効果が認められた.結論:FD症例ではストレス負荷による自律神経系の変動と胃機能不全が存在し,外的刺激に対する修正機能の脆弱性が示唆された.自律神経調節薬の有効性が示された.
著者
山下 太 福山 英一 下田 晃嘉 渡辺 俊
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

National Research Institute for Earth Science and Disaster Resilience (NIED) has been conducting friction experiments with meter-scale rock specimens using a large-scale shaking table. We have presented a result that the work rate at which the meter-scale rock friction starts to decrease is one order of magnitude smaller work rate than that of the centimeter-scale one (Yamashita et al., 2015, Nature). Mechanical, visual and material observations suggested that the difference of frictional properties between centimeter and meter scale is caused by slip-evolved heterogeneous stress concentration on gouge bumps generated with the frictional slip. We confirmed that numerical simulation based on the observations is fully consistent with the experimental results. However, it should be noted that the natural fault zone generally involves gouge layer in it. Therefore, it is crucial to investigate which the scale dependence of frictional property can be seen or not under such a condition. To answer this question, we conducted meter-scale gouge friction experiments using the large-scale shaking table. We used metagabbro blocks from India as driver blocks. The contacting area was 1.5 m long and 0.1 m wide. As the simulated gouge, we ground metagabbro blocks by the jet mill, so that the average diameter of the gouge particle is approximately 10 μm and the maximum diameter of that is less than 200 μm. We roughened the fault surface by sandblasting after polishing the surface so that the fault surface can grip the gouge particles. We distributed the simulated gouge with a thickness of 3 mm on the fault and then sheared at a constant or step-change velocity after applying normal stress up to 6.7 MPa at maximum. We will present basic experimental results at the meeting.