著者
余野 聡子 西上 智彦 壬生 彰 田中 克宜 萬福 允博 篠原 良和 田辺 曉人 三木 健司 行岡 正雄
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.H2-162_2, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに、目的】中枢性感作(Central Sensitization:CS)とは中枢神経系の過度な興奮によって,疼痛,疲労,集中困難及び睡眠障害などの症状を引き起こす神経生理学的徴候である。CSを評価する指標として,末梢器官に対して侵害刺激を連続して加えたときに見られる痛みの時間的加重(Temporal summation: TS)が用いられている。また,CSが関与する包括的な疾患概念として中枢性感作症候群(Central Sensitivity Syndrome: CSS)が提唱されており,CSおよびCSSを評価する質問票としてCentral Sensitization Inventory (CSI)が用いられている。CSが病態(疼痛)に関与していると考えられている疾患の代表格である線維筋痛症(Fibromyalgia:FM)において,健常人と比較してTS,CSIがともに高値であることが報告されている.しかしながら,これまでにTSとCSIのどちらがCSを評価する上で,より精度が高い評価法であるか明らかでない.本研究の目的は,これらの評価指標の精度を比較し,その臨床的有用性について検討することである。 【方法】米国リウマチ学会(2010)の診断基準を満たす線維筋痛症患者26名(FM群, 男性3名,女性23名,平均年齢49.3±10.5歳)および健常人28名(健常群,男性7名,女性21名,平均年齢51.8±13.5歳)を対象とした。疼痛はBrief Pain Inventory (BPI)にて評価し,CSに関する指標としてTSおよびCSIを評価した。TS評価では,利き手側の橈側手根伸筋に対して圧痛閾値(pressure pain threshold: PPT)での圧刺激を10回反復し,1回目と10回目の疼痛強度(Numeric Rating Scale: NRS)の差をTSとした。これらの評価項目について,Mann-WhitneyのU検定を用いて群間比較した。また,PPT, TSおよびCSIについてReceiver operating characteristic (ROC)分析を行い,各指標のArea Under the Curve (AUC)の比較検定を行なった。また,FM群と健常群を判別するカットオフ値を算出した。統計学的有意水準は5%とした。【結果】BPI (pain intensity/pain interference), TSおよびCSIは健常群に比べてFM群で有意に高値であった(p < 0.05)。PPTは健常群に比べてFM群で有意に低値であった(p < 0.05)。ROC曲線のAUCは,TSに比べてCSIで有意に高値であった(TS: 0.66, CSI: 0.99, p < 0.0001)であった。各指標のカットオフ値はPPTが12.1N(感度64%, 特異度89%, 陽性反応的中度84%, 陰性反応的中度73%), TSが3(感度60%, 特異度67%,陽性反応的中度63%,陰性反応的中度84%), CSIが37点(感度96%, 特異度100%,陽性反応的中度100%,陰性反応的中度97%)であった。【結論(考察も含む)】TSおよびCSIの精度を比較した結果,TSよりもCSIの方が精度は高かった。FM患者はCSによって生じる多彩な臨床症状を呈することから,機械刺激への過敏性を評価するTSよりも,包括的かつ症候学的な評価であるCSIの精度がより高くなった可能性がある。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は甲南女子大学倫理委員会の承認を得て実施した。事前に研究目的と方法を十分に説明し,同意が得られた者のみを対象とした。
著者
山家 雄介 中村 聡史 アダム ヤトフト 田中 克己
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌データベース(TOD) (ISSN:18827799)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.88-100, 2008-06-26
被引用文献数
2

ブログなどの普及により情報発信の裾野が広がるにつれて,Web 検索結果から有用なページを発見するのは困難になる一方である.最近ではユーザのブックマーク行動を集約することによって価値のあるページを抽出する,ソーシャルブックマークのような取り組みがさかんになりつつある.本稿では,ソーシャルブックマークにおけるページのブックマーク数などの情報を用いて,検索結果のページの内より有用なものを上位に提示する再ランキング手法を提案する.次に,提案手法を多数のクエリに対して適用し,検索結果に含まれるページの順位変動率や,ページの種類などを調査・分類し,どのような検索目的に本アプローチが有効なのかを明らかにした.With the rise of blogs and other web applications, it is getting easier and easier to publish information. At the same time, it is getting more difficult to discern informative pages from web search results. Recently social bookmarking systems, which discover valuable pages by aggregating the bookmarking activities of many users, are getting popular. In this paper, we introduce a re-ranking method for web search results that makes use of the number of bookmarks registered with a social bookmarking service. Then, we apply our method to a number of search queries, analyze and classify characteristics of the search results, and make it clear what kind of search can be performed effectively by the method.
著者
田中 美加 池内 眞弓 松木 秀明 谷口 幸一 沓澤 智子 田中 克俊 兼板 佳孝
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.8, pp.386-398, 2018-08-15 (Released:2018-09-14)
参考文献数
42

目的 不眠症状を訴える高齢者は多い。高齢者の不眠症状に対しては,非薬物的アプローチが優先されることが望ましい。不眠に対する認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy for Insomnia: CBT-I)が不眠症患者に有効であることが多くの臨床研究で示されていが,地域高齢者の睡眠の改善にも役立つかは十分に示されていない。我々は,看護職でも実施可能な簡易型CBT-Iが地域高齢者の睡眠を改善させ,睡眠薬服用者の服薬量を減らす効果があるかを調べることを目的に無作為化比較試験を行った。方法 60歳以上の地域高齢者を対象に,看護職が,集団セッション(60分)と個人セッション(30分)からなる簡易型CBT-Iを実施した。主要アウトカムは,ピッツバーグ睡眠質問票(Pittsburgh Sleep Quality Index: PSQI)の得点と不眠重症度指数(Insomnia Severity Index: ISI)得点の介入前後の変化量,副次アウトカムは,介入前後の不眠症有所見者(ISI得点8点以上)の割合と,睡眠薬使用者における減薬の有無とした。フォローアップ期間は3か月間とした。結果 介入3か月後のPSQI得点は,対照群(38人)に較べ介入群(41人)で有意に改善し,介入の効果量(Cohen's d)は,0.56(95% Confidence interval [CI], 0.07 to 1.05)であった。ISI得点も,介入群で有意に改善し,介入の効果量は,0.77(95%CI, 0.27 to 1.26)であった。サブグループ解析において,不眠改善に対するNumber Needed to Treat(NNT)は2.8(95%CI, 1.5 to 17.2),睡眠薬の減薬に対するNNTは2.8(95%CI, 1.5 to 45.1)であった。結論 簡易型CBT-Iは,地域高齢者の主観的睡眠の質を改善させ,不眠症状を軽減させることが示唆された。また,簡易型CBT-Iは睡眠薬の減薬に対しても効果的な介入であることが示唆された。睡眠の問題を抱える地域高齢者は多いことから,地域保健活動における簡易型CBT-Iの方法や効果についてさらなる検討が必要と考える。
著者
秦 淑彦 廣瀬 竜男 中西 吉洋 田中 克己
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌データベース(TOD) (ISSN:18827799)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.14-26, 2001-03-15
被引用文献数
4

多数のカメラで撮影され相互に時間同期した多視点映像の応用として,運動会やコンサートなどのイベントにおいてユーザが興味を抱いた被写体を,ユーザが見ているシーンと比べ``よりよく''写している映像シーンを検索することが考えられる.このような応用に対する1つの技術課題は,検索の仕方や被写体に関する十分な知識を持たない一般ユーザが,興味ある被写体を見つけ簡単に問合せを形成できる仕組みを提供することである.もう1つは,ユーザが注目した被写体を``よりよく''写す映像,たとえばズームアップした映像や反対側から撮った映像シーンを探して表示する機能の実現である.本論文ではこれらの課題に対して,カメラメタファに基づく多視点映像の問合せ検索方式を提案する.まず,我々が慣れ親しんだカメラ操作を問合せ形成のためのメタファとする検索カメラを考え,検索カメラのファインダに写る被写体を観察し,興味あるものを探して指定する.次に,興味対象を指定した際の検索カメラの撮影時刻と撮影範囲を問合せ情報として,撮影時刻と撮影範囲をメタデータとして有する多視点映像を時空間上で検索し,興味ある被写体を``よりよく''写している映像区間の集合を得る.検索結果には映像実体データ以外に被写体の写り具合を計算するための情報が含まれ,ユーザの好みに応じた映像を選択して表示する.さらに,提案方式をプロトタイプとして実装し,時空間検索アルゴリズムに対する実験評価を行う.Suppose that, in an event such as a sports meeting or a concert, a user searches and gets video scenes taking interesting objects ``better'' from multiple perspective video that means a collection of mutually-synchronized video data taken by a lot of cameras. For such applications, one of the most important research issues is how to provide a mechanism that a user can find out interesting objects and create appropriate queries easily to get video scenes taking such objects, even if the user does not have enough knowledge about the objects and how to query them. Another issue is how to search video scenes that take the objects ``better''. In this paper, we propose a novel query method with camera metaphor for multiple perspective video. We consider ``query by camera'' with metaphor of video camera operations familiar with an ordinary user in order to create queries. A user finds out and specifies interesting objects while looking at scenes through a query camera's finder. Query parameters are time and focused object areas of the video interval taken by a query camera. Then multiple perspective video data with metadata of their time stamps and focused object areas are searched spatio-temporally. A user can get multiple stream video data taking focused objects and data indicating how the objects are taken in each video scene. We also describe a prototype of our query method and some experimental results of its search algorithm.
著者
木下 泉 青海 忠久 田中 克
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

四万十川河口内で浅所と流心部の仔稚魚と魚卵の出現状況から,アユ,ハゼ科等の河川内で孵化し,成長した後,河口内浅所に接岸するグループ,カサゴ,ネズッポ科等の河口付近で孵化するが,その後他の水域へ移動するグループ,ボラ科,ヘダイ亜科等の沖合で孵化し,成長した後,河口内浅所に接岸するグループの3つに分けることができる.河口内浅所のアマモ場,非アマモ域と河口周辺の砕波帯を比べると,アマモ場と砕波帯には各々特徴的な種がみられた.本河口内には海産魚類の仔稚魚が多く出現し,砕波帯にも共通している.しかし主分布域は種独特の塩分選好性により河口内浅所と砕波帯に分かれ,河口内浅所はプロラクチン産生等で低塩分適応を獲得した特定の仔稚魚が成育場としていると考えられる.河口内浅所と砕波帯との共通種の加入サイズは一致し,これら仔魚は砕波帯を経由せず沖合から直接河口内に移入し,浅所に接岸すると考えられる.本河口内と沖合との間には著しい塩分勾配がみられ,河口内への仔稚魚の移入に塩分の水平的傾斜が関与している可能性が高い.成育場での仔稚魚郡集は滞在の長短によりresidentグループとmigrantグループに大別されるが,本河口内浅所の仔稚魚の多くは前者に属する.この点で殆どがmigrantグループである砕波帯の仔稚魚相とは大きく異なる.しかし河口内浅所におけるresidentグループには成長に伴ってアマモ場に移住する種が多い.一方,アマモ場は本河口内浅所が仔魚から若魚期に至る成育場として重要な環境要素となっている.本河口内で生活する仔稚魚は枝角類・橈脚類に加え,流心部に多く分布するハゼ科・アユ仔魚を多く摂餌している.浮遊期仔魚は浮遊甲殻類に比べて,はるかに質的に重要な餌生物であろう.以上のように,本河口域浅所は豊富で独特な餌料環境を形成するとともに,逃避場所や定着場所として利用されるアマモ場が周年存在することにより,低塩分環境に適応した特定の魚類にとって,初期生活の大部分を過ごすことができる重要な成育場となっていることが分かった.
著者
佐藤 真 田中 克明 赤石 美奈 堀 浩一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. KBSE, 知能ソフトウェア工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.159, pp.19-23, 2007-07-17

蓄積された電子文書を活用するために,物語構造モデルに基づき,複数の文書にまたがる話題の連鎖を抽出し,情報にアクセスする手法を提案する.ある話題を含有する場面を表す特徴量として共起依存度行列と吸引力ベクトルを定義する.これに基づき場面間の類似度を求め,これに場面の連鎖関係を抽出する.検索語間の場面連鎖関係を探すことで,場面連鎖の組み合わせを検索結果の候補として提示する.
著者
服部 峻 湯本 高行 田中 克己
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告データベースシステム(DBS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.68, pp.553-560, 2005-07-14
被引用文献数
1

WWWやモバイル端末の普及に伴い,いつでも,どこからでも,様々な種類の地域情報にアクセスすることが可能になって来た.また,測位機能付きのモバイル端末を用いれば,ユーザの現在位置に依存した情報を取得することもできる.しかし,実空間を特徴付ける要素として,従来研究のように,地理的位置だけを用いていたのでは,地理情報データベースに登録されている地理語の粒度に限界があるため,ユーザの現在いる実空間により相応しい情報を呈示することは困難である.この問題に対して,本研究では,実空間内に在る展示物や建物の名称や説明,ポスターの内容,デバイスの出力情報などの実世界コンテンツが発信している情報を取得し活用することで,ユーザの現在いる実空間により相応しい情報を検索することを可能にする.本稿では,ユーザの現在いる実空間を地理語と特徴キーワードとで表現する.そして,これらの検索クエリーに対して情報がどのくらい相応しいかを測る尺度として,情報の実空間相応度を定義し,この評価値に基づく情報ランキング手法を提案する.As use of the World Wide Web(WWW) and mobile devices spreads and becomes more advanced, people can increasingly access various kinds of local information for use in daily life. And moreover, using mobile devices equipped with geo-positioning facilities, we are able to retrieve information related to our current location. But, we cannot get information more adapted to real world environment near around user, only inputing user's geo-position as a query to an information retrieval system. In contrast, we propose an information retrieval method that searches for more local information than the degree of granularity of geographical word converted from user's current location, taking advantage of real spatial contents and activities around user. In this paper, we define the notion of Spatial Fitness that is a measure of how fit information is for real space in which user is now.
著者
馬強 松本 知弥子 田中 克己
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告データベースシステム(DBS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.67, pp.515-522, 2002-07-18
被引用文献数
6

インターネットやデジタル放送の急激な進歩と普及によって,多くのユーザが多種多様な情報を受信・発信できるようになり,情報資源の量は日々増加し続けている.ユーザが大量の情報の中から,適切な情報を検索することは困難な作業である場合がある.特に,特定のユーザのみが興味を持つ,地域密着情報のようなローカル的な情報を獲得したり,排除するには,従来の情報検索やフィルタリング手法のみでは不十分である場合がある.本論文では,Webページがどの程度地域に密着しているかを計る尺度としてローカル度を定義し,その抽出手法と応用システムについて述べる.また,ローカル度の定義を評価するための予備実験の結果を示す.The vast amount of information is available on the WWW(World Wide Web). Usually, users use the information filtering technologies or search engines to acquire their favorite information. However, it's still not easy to acquire or exclude local information with the conventional search engines and information filtering technologies. In this paper, we propose a new notion localness to discover local information from the WWW. We also propose some useful applications based on localness and show some results of our preliminary evaluation.
著者
田中 克己 タナカ カツミ Katsumi Tanaka
雑誌
史苑
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.28-41, 1959-12
著者
宮本 一夫 宇田津 徹朗 田中 克典 三阪 一徳 小畑 弘己 上條 信彦 米田 稔 欒 豊実 靳 桂雲
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

研究代表者が提起する東北アジア初期農耕化4段階説の内、第2段階の山東半島から遼東半島へのイネの伝播仮説を、土器圧痕調査で実証した。同段階の偏堡文化の朝鮮半島無文土器文化の成立への影響を、山東半島・遼東半島の土器製作技術の調査によって明らかにした。また、この段階の山東半島の水田の存在について楊家圏遺跡のボーリング調査によって示した。さらに第4段階の北部九州の弥生文化の成立年代を炭化米の年代によって明らかにした。
著者
田中 克 堺 俊克 岡本 信治 清水 康夫
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会年次大会講演予稿集 2010 (ISSN:13431846)
巻号頁・発行日
pp.6-11-1-_6-11-2_, 2010-08-31 (Released:2017-05-24)

We have developed the compact high resolution CRT for HDTV viewfinder. By using phosphor thin-films, the horizontal resolution of 900 TV lines was obtained by optimizing the device structure of CRTs and the growth condition of phosphor thin-films.
著者
壬生 彰 西上 智彦 田中 克宜 山田 英司 廣瀬 富寿 片岡 豊 田辺 曉人
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】変形性膝関節症(膝OA)において,身体知覚に関わる2点識別覚,固有受容感覚および運動イメージの低下や異常が認められており,身体知覚異常が慢性痛に関与する可能性が報告されている。腰痛患者に対して身体知覚異常を評価するために開発されたThe Fremantle Back Awareness Questionnaire(FreBAQ)を基に,日本語版The Fremantle Knee Awareness Questionnaire(FreKAQ-J)を作成し,膝OA患者の身体知覚評価質問票としての信頼性および妥当性を検討した。さらに,Rasch解析を行い,心理測定特性を検討した。【方法】日本語版FreBAQの質問項目にある'腰'を'膝'に置き換えて英語へ逆翻訳し,FreBAQの原著者へ内容的妥当性を確認したうえで暫定版FreKAQ-Jを作成した。対象は,膝OAと診断された65名(男性15名,女性50名,平均年齢68.5±9.1歳)を膝OA群,膝OAの既往がない64名(男性14名,女性50名,平均年齢66.7±7.2歳)を対照群とした。評価項目は,安静時および動作時の疼痛強度(Visual Analogue Scale;VAS),能力障害(Oxford Knee Score;OKS),破局的思考(Pain Catastrophizing Scale;PCS),運動恐怖(Tampa Scale for Kinesiophobia;TSK)及び身体知覚異常(FreKAQ-J)とした。統計解析は,FreKAQ-Jの合計点の群間比較には対応のないt検定を,膝OA群においてFreKAQ-Jの合計点と各評価項目との関連にはSpearmanの順位相関係数を用いた。初回評価より2週間以内にFreKAQ-Jの再テストを行い級内相関係数を求めた。有意水準は5%未満とした。さらに,Rasch解析により,Cronbachのα係数,項目適合度,評価尺度としての一元性,targetingを検討した。【結果】FreKAQ-Jは,対照群に比べて膝OA群で有意に高得点であった(膝OA群12.4±7.6,対照群3.6±4.4)。また,膝OA群においてFreKAQ-Jは安静時痛(r=0.27,p=0.02),運動時痛(r=0.37,p=0.002),PCS(r=0.70,p<0.001),TSK(r=0.49,p<0.001),HADS不安(r=0.46,p<0.001)およびHADS抑うつ(r=0.32,p=0.01)と有意な正の相関を,OKS(r=-0.41,p=0.001)と有意な負の相関を認め,評価尺度としての基準関連妥当性を有することが示された。級内相関係数は0.76であり,高い再テスト信頼性が認められた。Rasch解析の結果,Cronbachのα係数は0.87であり,高い内的整合性が認められた。身体イメージに関する項目7及び9に不適合(misfit)が認められたが,評価尺度としての一元性が認められた。また,FreKAQ-Jは身体知覚異常が高度である対象者をtargetingしていることが示された。【結論】FreKAQ-Jは,膝OA患者の身体知覚異常を評価する質問票として十分な信頼性,妥当性をおよび心理測定特性を有することが示された。今後,本質問票を活用し,膝OA患者の身体知覚異常と疼痛の関連についてさらなる検討を行うとともに,身体知覚異常の改善を目的とした介入の効果検証についても行っていく必要がある。
著者
Ambara R. Pradipta 田中 克典
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.137, no.3, pp.301-306, 2017-03-01 (Released:2017-03-01)
参考文献数
20
被引用文献数
1

Acrolein, a highly toxic α, β-unsaturated aldehyde, occurs as pollutant in the environment (e.g., tobacco smoke and exhaust gas) and is ubiquitously generated in biosystems (e.g., the lipid peroxidation process and metabolism of polyamine or amino acids). High accumulation of acrolein in biosystems is often linked pathologically with several oxidative stress-related diseases, including cancer and Alzheimer's disease. Accordingly, acrolein holds great potential as a key biomarker in oxidative stress-related diseases, and direct measurement of acrolein in biological samples is important to provide information for diagnostic and therapeutic purposes. Recently, we have serendipitously discovered the unrecognized reactivity of phenyl azide to acrolein. Phenyl azide can rapidly and selectively react with acrolein in a “click” manner to provide 4-formyl-1,2,3-triazoline through 1,3-dipolar cycloaddition. We have successfully utilized the acrolein-azide click reaction as a simple but robust method for detecting and visualizing acrolein generated by live cells in the context of oxidative stress processes. In addition, we also serendipitously discovered novel cycloaddition reactions of N-alkyl-α,β-unsaturated imines derived from acrolein and biogenic amines (e.g., polyamines, norepinephrine, and sphingosine), to yield 8-membered cyclic compounds. We then examined the biological functions of the cyclic products and revealed for the first time their roles in the oxidative stress mechanism and inhibition of amyloid β(1-40) fibrillization.
著者
山下 裕 西上 智彦 古後 晴基 壬生 彰 田中 克宜 東 登志夫
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.H2-198_2, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに、目的】頚部痛患者において,単に筋や関節由来だけでなく,様々な要因が能力障害に関与することが明らかになっている.外傷性頚部痛は非外傷性頚部痛よりも,臨床症状がより重度であることが報告されているが,それぞれの能力障害に関与する要因は未だ明らかではない.近年,他害的な外傷や痛みに伴う不公平感を定量するInjustice Experience Questionnaire(IEQ)や,頚部の身体知覚異常を包括的に評価するFremantle Neck Awareness Questionnaire(FreNAQ)といった新たな疼痛関連指標が開発されているが,外傷性,非外傷性頚部痛それぞれの能力障害にどのように関与するか明らかでない.本研究の目的は,外傷性と非外傷性頚部痛の疼痛関連因子の比較及びそれぞれの能力障害に影響する因子を検討することである.【方法】対象は, 頚部痛患者119名(外傷性頚部痛患者74名,非外傷性頚部痛患者45名)とした.評価項目として,疼痛期間,安静時・運動時痛,能力障害はNeck Disability Index (NDI),不公平感は IEQ,身体知覚異常はFreNAQ,破局的思考は短縮版Pain Catastrophizing Scale(PCS6),運動恐怖感は短縮版Tampa scale for Kinesiophobia(TSK11),うつ症状はPatient Health Questionnaire(PHQ2)を調査した.統計解析は,Mann-Whitney U検定を用いて外傷性頚部痛と非外傷性頚部痛における各評価項目の差を比較検討した.さらに,NDIを従属変数とした重回帰分析を用いて,外傷性頚部痛,非外傷性頚部痛におけるそれぞれの関連因子を抽出した.【結果】2群間比較の結果,疼痛期間において有意な差を認めたが[外傷性頚部痛: 30日(0−10800日); 非外傷性頚部痛: 300日( 2−7200日),p<0.001],その他の項目に有意な差は認められなかった.重回帰分析の結果,NDIと有意な関連が認められた項目として,外傷性頚部痛ではIEQ(β=0.31, p =0.03)と運動時痛(β=0.17, p =0.01),非外傷性頚部痛においてはFreNAQ(β=0.79, p =0.002)のみが抽出された.【結論(考察も含む)】本研究の結果から,外傷性頚部痛患者と非外傷性頚部痛患者において,能力障害に影響を与える因子が異なる可能性が示された.したがって,外傷性頚部痛患者では不公平感を軽減する介入が必要であり,非外傷性頚部痛患者においては身体知覚異常を正常化する介入が必要である可能性が示唆された.【倫理的配慮,説明と同意】対象者には研究の主旨と内容を口頭および書面で説明し,同意を得て研究を実施した.なお本研究は西九州大学倫理委員会の承認を得ている(承認番号:H30 − 2).
著者
熊本 忠彦 河合 由起子 田中 克己
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.94, no.3, pp.540-548, 2011-03-01
被引用文献数
6

筆者らは,コンテンツを見たり聞いたりしたときに人々が感じる印象をコンテンツそのものから抽出する手法の研究開発を行っている.本論文では,新聞記事を例として取り上げ,記事を読んだ人々が感じる印象を記事そのものから抽出するテキスト印象マイニング手法を提案する.具体的には,新聞記事データベースを解析し,記事に現れる各単語が記事の印象に及ぼす影響を数値化した印象辞書を構築するとともに,この印象辞書を用いて記事の印象値を算出する手法(算出法)を開発する.更に,この算出法が記事から算出する印象値と人々がその記事を読んだときに感じる印象値との対応関係を回帰分析により調べ,その結果得られる回帰式を用いて算出した印象値を補正するという方法で高精度なテキスト印象マイニングを実現する.ただし,提案手法により抽出される印象は,「楽しい⇔悲しい」,「うれしい⇔怒り」,「のどか⇔緊迫」の3種類であり,それぞれの印象に対し7段階の評価尺度(印象尺度)を設定している.提案手法の有効性を検証するために行った被験者実験では,それぞれの印象尺度における平均誤差が0.69, 0.49, 0.64となり,特に「うれしい⇔怒り」に対しては高い精度を得ている.
著者
北村 新三 浦 慶 田中 克己
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.38, pp.92-93, 1989-03-15

観測データからシステムの内部状態を求める逆問題は第一種Fredholm積分方程式を解くことに帰着することが多い。しかし、第一種Fredholm積分方程式には解析解がないので、数値解法として差分近似の連立方程式を解くことで対処するかが普通である。1960年代に入り、Tikhonov、Phillips、Twomeyらによって、一種の近似解の解法が確立された。これらの解法では通常測定データに誤差が入ると解が振動するため、これを滑らかにすることを目的として、Lagrange未定常数を導入している。この常数の選び方あるいは最適値については、多くの研究がされているが、最もよい方法がないのが現状である。本研究ではニューラルネットワークを用いて第一種Fredholm積分方程式の新しい近似解法を提案する。本手法は積分方程式の性質を、実例を用いてニューラルネットワークに学習させ、ネットワークのニューロン間の結合係数に覚えさせ、そして、誤差を含んだ未学習の測定データ(ネットワークの入力)に対しても、安定な解(出力)を得るものである。