著者
小寺 祐貴 横尾 慶紀 矢部 勇人 小橋 沙也香 田中 康正 山田 玄 高橋 弘毅
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.301-305, 2016-07-25 (Released:2016-08-06)
参考文献数
15

背景.先天性食道閉鎖症は多くに気管食道瘻を合併する.多くは新生児期に手術療法を行うが,小児期に食道気管瘻が再開通することがある.症例.35歳女性.新生児期にGross C型先天性食道閉鎖症の手術を受けた.しかし,高校生の頃から肺炎を繰り返すようになった.近医で気管支拡張症と診断されていたが,肺炎を反復するために当科に精査入院となった.胸部X線では左下肺野に浸潤影を認め,胸部CTでは左下葉に限局する囊胞状の気管支拡張症と内腔の液面形成を認めた.また周囲には肺炎像も伴っていた.気管支鏡では気管膜様部に瘻孔を認めたため,気管食道瘻の再発を疑い上部消化管の精査を行った.上部消化管内視鏡では上部食道の前壁に瘻孔を認め,食道造影検査では造影剤が食道瘻孔を通じて気管から左下葉気管支へ流入する所見を認めた.以上から気管食道瘻の再開通と診断し,食道瘻孔部直接縫合閉鎖術を行った.気管支拡張症は長期間の感染の反復により形成されたと考えた.結論.先天性食道閉鎖症の手術歴のある患者が呼吸器感染症を繰り返す場合は,気管食道瘻の再開通の可能性がある.
著者
田中 重好 鈴木 聖敏
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.2, pp.35-44, 1992

1992年9月28日午後5時から7時にかけて,津軽地方を強風とともに襲った台風19号は、東北電力弘前営業所管内の85.0%にのぼる世帯を停電させた。本研究は、停電に関連した情報の流れを整理し、停電をめぐる「情報ニーズと情報提供」の問題にしぼって、経験的に検討した。今回の台風災害の経験を踏まえて、今後、どういった情報提供がなされるべきなのかを、考えておきたい。第1は、高度情報化社会を迎えて、災害時ではあれ、情報ニーズはきわめて高いという事実を確認すべきである。第2は、電話社会との関連の問題である。これまで、災害時にはさまざまな形で、電話が輻輳し、混乱をきたすことが指摘されてきた。しかしながら、この対策が、電話会社によるトラヒック制御という観点からのみ取り上げられて、地域のコミュニケーション・シムテムの設定という観点が不足していた。電話の輻輳をラジオ放送が低減することは可能であるはずであり、これが可能となれば、本当に必要な情報は電話をとおして連絡できるようになる。第3に、こうしたコミュニケーション・システムという観点は、今後、公共機関からマスメディアをとおして住民に情報を伝達するという一方向モデルではない、さまざまな形のフィードバック回路を組み込んだモデルを構想してゆくことにつながるはずである。最後に、そのさい、各メディア間を、いかに「仕切る」かが重要な課題となる。たとえば、ラジオは災害情報の地域内の流れを「仕切る」可能性をもっている。「ラジオが災害情報の地域内の流れを『仕切る』」とは、具体的にいえば、たとえば次のようなことが考えられる。東北電力に殺到した住民からの電話のうち、特定のものに関しては連絡を自粛してもらうように呼びかける(一般的呼びかけ型)とか、地域ごとの復旧見通しをきめ細かくラジオで放送することにより、電話での問い合わせの一部を減少させる(情報提供型)とか、停電を強いられている住民に対して補完的手段をとるように呼びかけることにより、停電による生活障害や心理的負担感を軽減する(補完的手段提示型)といったやり方である。
著者
田中 潔 五十嵐 透 三橋 啓了
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1985, no.11, pp.2120-2125, 1985-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
13
被引用文献数
1

2,2,2-トリクロロ-5-トリフルオロメチル-2,2,2,3-テトラヒドロ-1,3,4,2-オキサジアザホスホールと種々の求核試薬との反応から,2-位に対応する置換基をもつ新規テトラヒドロオキサジアザホスホール誘導体を合成した。たとえば,TMS-p-クレゾールなどの酸素求核試薬との反応では2,2,2-三置換テトラヒドロオキサジアザホスホール誘導体が得られるのに対し,N-メチルアニリンとでは塩素原子を一つ残した2,2-二置換2-クロロテトラヒドロオキサジアザホスホールが,またp-アニシジンとではテトラヒドロオキサジアザホスホール環をもつホスファゼンが得られた。また,トリクロロテトラヒドロオキサジアザホスホールをNt-フェニルトリフルオロアセトヒドラジドと反応させ,二つのテトラヒドロオキサジアザホスホール環で構成された,リンをスピロ原子にもつ新規スピロ環化合物を合成した。以上得られたテトラヒドロオキサジアザホスホール誘導体の構造についてリンの化学シフト値を基に考察した。また他のスペクトルの結果についても考察した。
著者
関口 海良 田中 克明 赤石 美奈 堀 浩一
雑誌
SIG-SAI = SIG-SAI
巻号頁・発行日
vol.3, no.5, pp.1-9, 2007-11-26

多元的な世界とは,真理,価値,世界観などの多様性を認める世界である.これを実現するためには,人と人の対話を支援することが有効であると考えられる.ロボット・ネットワークを用いれば,人とロボットの同期対面(ミクロ)の対話と,ネットワークを介した人と人の非同期非対面(マクロ)の対話の両方を,効果的に支援することができる.本論文ではコンセプトを提案し,研究開発中のプロトタイプを紹介する.
著者
大塚 香奈子 伊藤 久生 時澤 佳子 田中 正純 八谷 直樹 荒牧 真紀子 猪口 哲彰 大泉 耕太郎 Masahiro Yoshida
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.11, pp.833-837, 1994-11-30 (Released:2011-08-04)
参考文献数
13
被引用文献数
1

症例は54歳, 女性で1968年特発性血小板減少紫斑病 (ITP) と診断され副腎皮質ホルモン投与されていたが, 1971年に慢性関節リウマチ (RA) を併発した. 1979年尿糖および高血糖が出現し, 糖尿病と診断され, その後ITPの増悪により副腎皮質ホルモン (プレドニン) を30mgに増量し, インスリン注射を開始した.この時点での尿中C-ペプチド (CPR) は36μ9/日であった. 1989年頃より血糖コントロールは徐々に悪化し1991年には尿中CPRが10μ9/日以下となり, グルカゴン試験も無反応を示した.また, 既往に流早産を数回経験し, 検査所見ではICA, RA因子, 抗血小板抗体, およびループアンチコアグラントが陽性を示した. 以上より時間的に推移しながらITP, RAおよび抗リン脂質抗体症候群にslowly progressive IDDMなどの自己免疫疾患を合併したもので, 免疫学的背景を考える上で興味ある症例と思われた.
著者
梯 絵利奈 田中 さつき 崔 庭端 日比野 治雄
出版者
Japan Society of Kansei Engineering
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18845258)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.465-472, 2018 (Released:2018-08-31)
参考文献数
29

We aimed to reveal typical-color effects to visual search for pictogram. We assumed that the typical colors shorten the response time of the visual search compared to the non-typical colors in the high color-associativity pictograms. In order to verify this hypothesis, we investigated typical colors and color- associativity of each pictogram in the first experiment and measured the response time of the visual search tasks. We analyzed the data through the color- associativity and the complexity of components perspective. As a result, we obtained the two conclusions as follow; 1) typical colors do not always affect response times, 2) response time is shortened in the typical colors pictograms that have the high color-associativity and consist of only one component. These results contribute to proposing the color design which permits efficiency in searching for pictograms in the facilities.
著者
十時 詠吾 山口 信一 田中 敏則 伊藤 一将 大穀 晃裕 森本 茂雄
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌D(産業応用部門誌) (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.141, no.10, pp.763-770, 2021-10-01 (Released:2021-10-01)
参考文献数
34
被引用文献数
1

This paper presents a new configuration for the concentrated windings of permanent magnet motors in order to reduce the torque ripple. There are limited choices for the concentrated windings in conventional permanent magnet motors when selecting the numbers of poles and slots, which results in winding factors for harmonics that cannot be zero and the corresponding torque ripple remains. Unlike conventional concentrated-winding motor, whose teeth are all wound with one coil, the proposed concentrated-winding motor has some teeth with multiple coils wound around. The number of turns for each coil can be optimized to reduce its winding factors for harmonics to nearly zero so that the corresponding torque ripple could be significantly reduced. Prototypes of the conventional and proposed motors were constructed, and the experimental results are compared. Simulation and experimental results confirm the torque reduction effect of the proposed concentrated-winding motor.
著者
田中 雄祐
出版者
政治哲学研究会
雑誌
政治哲学 (ISSN:24324337)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.56-80, 2016 (Released:2019-09-05)
参考文献数
30
著者
中村 雅俊 池添 冬芽 梅垣 雄心 西下 智 小林 拓也 藤田 康介 田中 浩基 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

<b>【はじめに,目的】</b>臨床において,腸腰筋の短縮による股関節伸展制限や股関節屈曲拘縮は問題となることが多く,腸腰筋の伸張性を維持・改善するためにストレッチングがよく行われている。ストレッチングの基本的な方法は筋の作用と反対方向へ伸張することであり,腸腰筋のストレッチングとしては股関節を伸展する方法がよく用いられている。しかし,腸腰筋には股関節屈曲作用に加えて,腸骨筋では股関節外転および内旋,大腰筋では股関節内転および外旋作用があると報告されている。そのため,股関節伸展に加えて股関節の内・外転もしくは内・外旋を加えることで,より腸腰筋は伸張される可能性が考えられる。近年,せん断波エラストグラフィー機能により,組織に伝わるせん断波の速度を測定し,組織の硬度(弾性率)を算出することが可能になり,弾性率は筋の伸張の程度を反映していることが報告されている。そのため,この弾性率は腸腰筋のような深部筋の伸張程度を非侵襲的に評価できる有用な指標とされている。本研究の目的は,股関節伸展に股関節内・外転や内・外旋を加えることで腸腰筋をより伸張できるかどうかを明らかにすることである。<b>【方法】</b>対象は下肢に神経学的及び整形外科的疾患を有さない健常若年男性10名(平均年齢23.6±2.2歳)の利き脚(ボールを蹴る)側の腸腰筋とした。対象者をベッド上,背臥位にて安静にした安静時と,ストレッチング肢位は反対側の股関節を最大屈曲することで骨盤を後傾位に固定し,検査側の膝関節は大腿直筋の伸張の影響を考慮し,軽度屈曲位とした状態を基準とした。その後,対象者が痛みを訴えることなく最大限耐えうる角度まで他動的に股関節伸展する条件(伸展)と対象者が最大限耐えうる角度まで股関節内転,外転,内旋・外旋した状態から最大限股関節伸展する条件(内転,外転,内旋,外旋)の計5条件とし,安静を加えた6条件の施行は無作為の順番で行った。腸腰筋の弾性率(kPa)の評価は,SuperSonic Imagine社製超音波診断装置のせん断波エラストグラフィー機能を用い,大転子の高さの鼠径部で腸腰筋を同定し,測定を行った。弾性率の測定は各条件2回ずつ行い,その平均値を解析に用いた。弾性率は筋の伸張の程度と高い相関関係を示すことが報告されており,弾性率が高いほど,筋は伸張されていることを意味している。統計学的検定は,各条件における腸腰筋の弾性率をBonferroni補正におけるWilcoxon符号順位検定を用いて比較した。なお,有意水準は5%未満とした。<b>【倫理的配慮,説明と同意】</b>本研究は所属施設の倫理委員会の承認を得て(承認番号E-1162),文書および口頭にて研究の目的・趣旨を説明し,同意を得られた者を対象とした。<b>【結果】</b>腸腰筋の弾性率は安静時24.6±19.4kPa,伸展71.7±45.0kPa,内転60.9±27.2kPa,外転78.3±45.1kPa,内旋115.8±49.9kPa,外旋93.5±45.7kPaとなった。統計処理の結果,安静時に対して伸展,内転,外転,内旋,外旋のすべてのストレッチング条件で有意に高値を示した。また,伸展の弾性率と比較すると,内旋では有意に高値を示したが,内転と外転および外旋では有意差は認められなかった。<b>【考察】</b>本研究の結果,安静時と比較して全てのストレッチング条件で弾性率は有意に増加したことから,本研究で用いたストレッチング肢位はいずれにおいても腸腰筋を伸張することが可能であることが明らかとなった。また,伸展と比較して内旋で有意に増加したことから,一般的によく用いられている腸腰筋のストレッチング法である股関節伸展方向へのみのストレッチングよりも股関節伸展に内旋を加えることで,より腸腰筋を伸張できることが示唆された。その理由として,腸腰筋のなかで大腰筋は股関節外旋作用を持つと報告されており,股関節伸展に内旋を加えることで大腰筋がより伸張された可能性が考えられる。一方,他の肢位で腸腰筋がより伸長出来なかった理由として,腸骨筋は安静時には外転の作用があるが,内転すると内転作用に変化するため,内転することで腸骨筋が緩んだ可能性が考えられる。また,股関節伸展に外転・外旋を加えると腸骨大腿靭帯が伸張されるため,股関節伸展に外転や外旋を加えたストレッチング条件の最終可動域では腸腰筋よりも腸骨大腿靭帯が伸張され,腸腰筋の弾性率の増加にはつながらなかった可能性が考えられる。<b>【理学療法学研究としての意義】</b>臨床において腸腰筋のストレッチングは股関節伸展が用いられることが多いが,股関節伸展に内旋を加えることで,より効果的に腸腰筋を伸張することができることが示唆された。
著者
野島 啓子 林田 哲郎 藤谷 順子 田中 こずえ 三島 佳奈子
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.33-40, 2000

<p>ジストニアが出現した後,嚥下障害が徐々に悪化した症例に対し,リラクゼーションと寒冷刺激を中心とした訓練を実施し,藤島の嚥下Grade5Aから7Aに改善する成果が得られた.症例の嚥下透視検査を分析し,考察を加えた.</p><p>〈症例〉18歳男性.8歳時,ギランバレー症候群の加療中に無酸素性脳障害発症.後遺症として,四肢体幹失調,仮性球麻痺,下肢筋力低下,action myoclonusが残るものの車イスにてADLはほぼ自立していた.しかし17歳5ヶ月でジストニア出現を契機に,他院にて嚥下訓練をうけたものの徐々に嚥下障害が悪化し,11ヶ月後誤嚥性肺炎をきたし当院入院.</p><p>〈経過〉摂食状態の観察,嚥下透視検査結果から咽頭期障害として嚥下反射惹起大幅遅延,食道入口部開大不十分,嚥下反射と食道入口部開大の連動不全等が認められた.嚥下障害の背景として①ジストニア,②嚥下パターン形成器(いわゆる嚥下中枢)への入力の障害,③飲み込もうとする過剰な努力を考え,円滑な嚥下運動が可能な条件を作ることを目標に訓練を実施した.嚥下状態は徐々に改善し,入院後約3ヶ月で全粥軟菜極キザミ食が40分以内で摂取可能ととなった.</p><p>〈分析結果と考察〉嚥下透視検査のビデオ映像の分析から嚥下反射惹起までの時間の短縮と嚥下運動パターンの変化(舌骨,喉頭の動く方向が上方から前方に変化)が認められた.これらの変化について嚥下パターン形成器の概念を用いての説明を試みた.また本例の嚥下障害は無酸素性脳障害発症後長期間経てからの脳幹の二次的変性によるものと考えられた.</p>
著者
田中 聡子
出版者
The Linguistic Society of Japan
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.110, pp.120-142, 1996-12-20 (Released:2007-10-23)
参考文献数
14

This paper presents an analysis of the polysemic structure of the verb‘mire (see)’. The word is used with various meanings. But all of its meanings, including those which seem to be arbitrarily extended, can be proved to be motivated and characterized by the nature of human cognition.Its meanings are not discrete but in their typical uses they are discernable by semantic features. The fundamental meaning (m.1) of ‘mire’may be expressed in terms of the semantic features: <visual‹ <perception› . This assumption is supported by the fact that it is usually received in this meaning when it lacks the object word i.e. in the default case.The other meanings can be accounted for based on three principles of derivation which can be said to be psychologically valid: (1) incorporation of interpretive inferences into lexical meaning, (2) metaphor, and (3) metonymy.principle (1) ...... m.2: <visual‹ <perception› <judgement‹ ; m.3: <judgement› ; m.4: <visual‹ <perception› <judgement‹ <taking measures›principle (2) ...... m.5: <non-visual‹ <perception› <judgement‹principle (3) ...... m.6: varying from <experience of a state of affairs› to <occurrence of a state of affairsThe variations of m.6 reflect the degrees of “subjectification”(Langacker 1990: 316) of the viewer construed by the conceptualizer.
著者
本屋敷 美奈 杉原 亜由子 永井 仁美 高山 佳洋 森定 一稔 柴田 敏之 森脇 俊 笹井 康典 田中 英夫
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.174-185, 2021

<p><b>目的</b>:大阪府における自殺未遂者相談支援事業(以下同事業)を評価し,自殺未遂者本人(以下本人)の支援者との関係の改善につながる効果的な支援方法と内容を明らかにする.</p><p><b>方法</b>:本研究は二段階で実施した.第一段階ではフォーカスグループインタビューにて介入の効果についての仮説とアウトカム指標を定義した.第二段階では仮説に基づく評価を行った.調査対象は2014年 4 月から2015年 6 月の間に府内 5 つの保健所において同事業への同意が得られた自殺未遂者192人のうち,支援が終了した113人の中で,支援記録が入手できた102人とした.調査期間は2015年10月から12月とした.調査方法としては支援記録からケースワーカーが情報を抽出した.分析方法では,援助希求行動,信頼関係,支配性を個々の支援者との関係に影響を与える要素と定義した上で,個々の本人と支援者との関係について各要素を0-4点で数値化し,得点の合計が 6 点以上の場合を支援者との良い関係があるとした.過去の自殺未遂歴や精神科受診歴,保健所相談歴,年齢,性別を調整した上で支援(方法・内容)を説明変数とし,支援者との良い関係の介入後の増加を従属変数としてロジスティック回帰にて分析を行った.</p><p><b>結果</b>:対象者の平均年齢は40.7歳,女性は67.6%であった.良い関係を持つ支援者の数が増えた対象者は64人(62.7%)であった.ロジスティック回帰分析にて有意となった支援は,方法では本人・家族両方への面接(調整オッズ比(以下AOR)13.33;95%信頼区間(以下95%CI)2.44-72.81),内容では本人心理支援の内,ニーズの傾聴(AOR5.87;95%CI2.00-17.22),支援方針の説明と合意形成(AOR5.69;95%CI1.88-17.23),心理教育(AOR3.26;95%CI1.13-9.36),医療機関に関する支援では治療継続支援のみを行った場合(AOR4.72;95%CI1.42-15.71)であった.受療支援・治療継続支援両方ありに該当した 5 人の対象者全員に良い関係のある支援者数の増加が見られた.</p><p><b>結論</b>:仮説及びアウトカム指標の設定は本人の支援に関しては妥当であった.保健所での支援において,本人・家族両方との面接,本人との共同した意思決定,丁寧な受療支援の必要性が示唆された.今後は自殺未遂者・支援者関係の質的評価や対照を設けての評価が課題である.</p>