著者
中山田 真吾 田中 良哉
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.162-168, 2019-06-30 (Released:2019-08-22)
参考文献数
15

関節リウマチ(RA)の治療では,メトトレキサート(MTX)などの従来型合成抗リウマチ薬(csDMARD),及び,生物学的抗リウマチ薬(bDMARD)による早期からの適切な治療介入により,臨床的,構造的,機能的な寛解が目標となった.しかし,これらの治療でも治療抵抗性の症例が多く存在する.Janus kinase(JAK)阻害薬は,サイトカインシグナルを媒介するキナーゼのJAKを選択的に阻害し,関節リウマチ(RA)の病態へのマルチターゲット作用により臨床効果を発揮する.高分子の蛋白製剤であるbDMARDは静脈内または皮下注射での投与に限定されるのに対し,JAK阻害薬は内服可能な分子標的合成抗リウマチ薬(tsDMARD)であり,bDMARDと同等の効果を有する.本邦では,2013年にトファシチニブ,2017年にバリシチニブがRAに対して上市された.実臨床でのJAK阻害薬の優れた臨床効果が確認されつつあるが,JAK阻害薬の安全性への懸念が少ないわけではなく,生物学的製剤と同様,感染症などの十分なスクリーニングのもと導入すべきである.これまでの臨床試験や市販後調査で蓄積されたJAK阻害薬の有効性と安全性の知見をもとに,リウマチ専門医によるJAK阻害薬の適正な使用が望まれる.
著者
嶌田 知帆 長島 啓子 高田 研一 田中 和博
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.422-428, 2013 (Released:2014-12-11)
参考文献数
24
被引用文献数
1 2

本研究では,先駆種,遷移中・後期種の混植を用いた通称自然配植技術による植栽が行われた法面(奈良県岩井川ダム道路の採石場跡法面)において,先駆種が優占する初期緑化目標群落が形成されているか,及び階層構造が発達しつつあるかを確認するためのモニタリング調査を行った。現地調査はH18~H19 年にかけてヤマハゼ,エドヒガン,ハゼノキ,ヤマザクラ,ケヤキ,イロハモミジ,モミ,ヤブツバキ,モチノキ等の植栽が実施された防鹿柵内の全ての木本植物43 種を対象にH23 年に行った。H23 年調査時の生残率は66.1%であった。調査は過去にH21 年にも行われ,樹高階別本数分布をH21 年のモニタリングデータと比較すると先駆種と中期種は全体的に樹高階の高い方へ移行していた。一方,後期種は両年とも低い樹高階に分布していた。また,樹冠面積割合では先駆種が59.0% と最も大きく,中期種は36.1%,後期種は4.9% と,遷移段階の間に差がみられ,樹冠投影図では主に先駆種が林冠を占めていた。以上のことから,対象地が初期緑化目標群落を形成し,複層林化が進んでいることが示された。
著者
田中 観自 渡邊 克巳
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

ギャンブル依存症は今や大きな社会問題となっているが,健常者がギャンブル依存に陥る過程は未だに不明な点が多い.本研究では,感情抑制が後のギャンブル課題時のリスク選択に及ぼす影響を検討した.実験では,お笑い動画を実験刺激として呈示し,健常な実験参加者を自由に視聴させる統制群と笑うことを我慢させる実験群に分類した.動画視聴後,参加者は複数のリスクを考慮しながらサイコロの出目を選択できるギャンブル課題を行った.各リスクの選択回数に対して,実験条件と複数の性格特性を含めたモデリングを行ったところ,自己抑制ができると自己評価している参加者は,実験条件に関わらず低リスクの選択をする傾向にある一方で,統制群は実験群に比べて,全体的に低リスクの選択をしていることが明らかとなった.つまり,健常者は感情抑制を受けることで,性格特性とは半ば独立した形で,ギャンブル課題時に低リスクを選択しなくなることが示唆された.
著者
田中 克枝 神薗 洋子 氏田 直子 成田 智
出版者
弘前医療福祉大学紀要編集委員会
雑誌
弘前医療福祉大学紀要 (ISSN:21850550)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.41-48, 2013-03-29

先天性聾児や難聴児に2000年以降、人工内耳装用が目覚ましい。本研究の目的は人工内耳を装用している子どもの養育者の思い、特に子どもの聴覚障害の告知後の受け止め、治療・訓練、日常的な育児に関しての思いとその時のサポート状況を明らかにすることである。研究方法は研究趣旨の了承の得られた5 名に半構成的インタビューの面接を行った。結果として、【障害が診断された時の不安、ショック】、【初期対応の仕方に対する不満と納得】【初期の母親の心理的支援の不足】【交流の場がない】【心の支えになった教育相談】子どもの発達時期における【幼児期の関わりの難しさ】【小学校選択の葛藤】【自立への援助の葛藤】などが挙げられた。よりよい支援を考えるにあたり、初期対応は母親の思いをくみ取る丁寧な対応、障害が分かってから教育相談までをつなぐ「橋渡し」、障害への価値観差のより個別的なサポートが必要であると示唆された。
著者
丸山 成和 丸山 典彦 伊藤 宏 田中 良和 植松 典昭
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.330-333, 1983-06-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
12
被引用文献数
1

牛以外の動物, とくに人と豚のアカバネウィルスに対する抗体の保有状況を知る目的で, 両者の血清について, 赤血球凝集抑制 (HI) 反応, 中和 (NT) 試験による調査を実施した. なおHI価10以上, NT価4以上を反応陽性とした.調査期間は人では1977年6月~1979年4月, 豚では1978年9月~1979年2月であった. 調査地域は人では県内8市5町, 豚では9市4町であった. その結果以下の成績を得た.1) 人血清1, 348例のうち1.3%(17/1, 348) がHI陽性であった. これらの陽性例は県東部の隣接田園地区に集中してみられた. 陽性例のHI価は10~40, NT価は4~32であった. なお豚のHI陽性率の高い地域の養豚従事者19人では1例が陽性 (陽性率5.3%) で, そのHI価およびNT価はそれぞれ10および8であった.2) 豚血清1, 134例 (4~5ヵ月齢の肥育豚654頭, 繁殖豚480頭) についてHI価を測定したところ, 1.4%(16/1, 134) の陽性率であった. このうち肥育豚は0.8%(5/654), 繁殖豚は2.3%(11/480) の陽性率であった.陽性例のHI価は10~20, NT価は4~64であった.豚および人は, Vectorの動物嗜好性によることも考えられるが, 牛にくらべて本ウイルスの感染をうけにくいものと推測される.
著者
原田 二郎 田中 孝幸
出版者
農林省北陸農業試験場
巻号頁・発行日
no.25, pp.65-78, 1983 (Released:2011-03-05)
著者
田中 信介 渡辺 言夫 宮沢 博 芦原 義守
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.582-587, 1982

妊婦145名についての風疹抗体測定を, 近年開発されキット化されたRUBEHSA<SUP>&reg;</SUP>を用いて行い, HIと比較した. また, 青年女子25名に風疹ワクチンを接種し, そのうち18名について抗体価を測定, その副反応も検討した.<BR>結果は, RUBELISA value 0.14以下を抗体陰性とすると, 抗体保有率は74.1%であった. HIでは23名が8倍未満で, 抗体保有率は84.7%であった. これら2方法の一致率は88.0%であり, 相関係数は0.85であった. 1977年秋の風疹ワクチン接種開始時すでに16歳以上であった予防接種対象外の者が現在妊娠可能年齢層となっており, いまだに妊婦の風疹感染の可能性が残されていると考えられた.<BR>青年女子のワクチン接種では8名32%に副反応を認め, すべてが関節症状を呈し, 関節痛6, 関節腫脹と痛み2であった. 抗体価は測定全例で上昇し, 平均HI価は25.1であった。年齢の高い女子の場合には, 副反応としての関節症状が重要であることが注目された.
著者
田中 健太郎 宮崎 浩一
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.1-13, 2011-07-20

本研究では,オプションのデルタヘッジ戦略への利用をふまえて,将来の実現ボラティリティを予測するモデルを提案し,既存モデルに基づく場合とデルタヘッジ戦略の収益性を比較検討する.提案モデルは,実現ボラティリティとインプライドボラティリティの比に関する時系列データを利用したものであり,デルタヘッジ戦略の収益性は,既存モデルによるものよりも高い.実証分析では,この結果がどのようなメカニズムから生じるかについても詳細に検討する.
著者
真下 いずみ 田中 和宏 橋本 健志
出版者
日本作業療法士協会
巻号頁・発行日
pp.372-379, 2020-06-15

要旨:4年間自閉的生活を送っていた重症統合失調症患者に,生活行為向上マネジメント(MTDLP)を用い,患者の希望する生活行為である「働くこと」を支援した.作業療法士が,就労継続支援B型事業所内(以下,事業所)に出向いて認知機能,精神症状,身体機能を評価した.多職種連携プランを立案し,事業所職員と協働した結果,患者は通所に至った.また介入前後で機能の全体的評定,社会機能評価尺度,WHO/QOL 26の得点が向上した.以上から,重症度によらず患者が希望する生活行為を遂行することが,社会機能と主観的QOLの向上をもたらすと考えられた.作業療法士が地域に出向いて患者が希望する生活行為に介入することの有用性が示された.
著者
根津 朋実 井上 正允 田中 統治
出版者
日本カリキュラム学会
雑誌
カリキュラム研究 (ISSN:0918354X)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.107-120, 2004-03-31 (Released:2017-10-17)

This is a case study on a six-year secondary school in Japan, aimed to clarify the function of leadership development within its school festival, especially "Music Festival" that has been done since about 40 years ago. In Japan, there is little study that focus on extra-curricular activities of six-year secondary school. Because the school, called "Chu-Kou-Ikkan-Kou" (in Japanese), is not popular so much in secondary education, though it has been increased little by little within these 5 years. We approached this important research question by case study method, using teacher records, school newspaper, participant observation, and informal interview. In this case, the school, attached to Univ. and boys 6year secondary has almost 50 years history and practice; above all, it has produced a lot of leaders in many fields. The academic achievement of its student is one of the highest in Japan, but we focused on its extra-curricular activities, not academic curriculum, since high academic achievement does not assure student's matured personality at all. We found three facts. (1) The extra-curricular activities of the school has two dimensions of articulation between junior- and senior- high, one is "smoothing" and the other "separating". These dimensions also can be seen in academic curriculum. (2) "Music Festival" has a function as "initiation", especially on junior-high students. (3) The festival has a judgment system with some professional musicians from outside the school. About leadership development, our results are following: a) The school orders each class to elect many leaders. In case of "Music Festival", including conductor, piano player, and committee, b) Many students have experienced some activities as leaders, and then they come to learn that "To be a leader is too difficult without followers". After "Music Festival", they feel like this seriously, and notice the importance of cooperation with other classmates, c) 12-18 years students work hard together for "Music Festival", and their performances of chorus are shown on the same one stage. It represents the range of development strongly to students' mind, especially of junior-high. They become to see high-school student as their "role model" through the festival.
著者
北村 勝哉 吉田 仁 池上 覚俊 佐藤 悦基 田中 滋城 井廻 道夫
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.565-569, 2009-05-31 (Released:2009-07-07)
参考文献数
10

本邦の急性膵炎診療ガイドラインでは,急性胆石性膵炎における緊急内視鏡治療は,胆道通過障害や胆管炎合併例に推奨されているが,治療時期や方法は施設間で相違がある。当施設において,入院72時間以内に内視鏡的逆行性膵胆管造影(endoscopic retrograde cholangiopancreatography:ERCP)を施行した急性胆石性膵炎25例を対象に治療成績を検討した。年齢は,30歳から89歳,男性が14例,女性が11例であり,厚生労働省急性膵炎旧重症度判定基準における軽症・中等症が11例,重症が14例であった。胆道通過障害や胆管炎合併を有する急性胆石性膵炎に対し,早期にERCPを用いた内視鏡治療を施行することで,膵炎の病態は改善した。しかし,内視鏡的胆管ドレナージ術(endoscopic biliary drainage:EBD)単独と内視鏡的乳頭括約筋切開術(endoscopic sphincterotomy:EST)併用EBD,および早期結石除去術と待機的結石除去術において,入院期間,結石除去率,偶発症発生率に有意差を認めなかった。偶発症として,EST後出血,およびEBD後胆嚢炎に注意する必要がある。
著者
大濱 俊彦 佐藤 愛 田中 聡 石塚 恒夫 勝盛 弘三
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.34-39, 2012 (Released:2012-02-09)
参考文献数
8

20年前に1型糖尿病と診断されインスリン加療中の54歳の男性が,全身倦怠感,脱力感にて当院救急室を受診した.受診3日前より食後の心窩部痛を自覚し,摂食すると嘔気嘔吐がみられたため,食事摂取もできず,受診2日前からインスリン注射を中断していた.受診当日,コーヒー残渣様嘔吐を認め,その後全身脱力感,意識レベル低下を認めたため救急車要請となった.救急車内でモニター上10秒程度のVT波形となり,血圧も低下した.到着時意識障害を認め,心電図波形で高カリウム血症性変化を認めた.血液検査にて血糖値1435 mg/dl, K 8.6 mEq/l,アシドーシスを認め糖尿病ケトアシドーシス(Diabetic ketoacidosis,以下DKAと略す)と高カリウム血症にて緊急入院となった.その後の集学的治療にて病態をコントロールすることができた.翌日の上部消化管内視鏡にて上部消化管に出血性潰瘍を認めた.DKAから高カリウム血症を認めることはあるが,K 8.6 mEq/lという著明な高カリウム血症はあまり報告例をみない.本症例は消化管出血や腎前性腎不全も併発していたために致死性不整脈が生じるほどの血清カリウムの上昇につながったと思われる.糖尿病罹病期間の長いDKAで著明な高カリウム血症を認めた場合,背景に消化管出血を合併している可能性があり,本症例のように早急な治療が求められることが多いため注意を要する.