著者
田中 国夫 松山 安雄
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.8-14, 1957-02-25

社会的態度を因子分析のQテクニックの方法を用いて,解明しようとするのが我々の主題である。本研究に.於ては,次の2つの点に問題をおいた。第1は,青年掌.生集団に於ける,天皇及び親二対する態度類型を見出すこと,第2は,被験者を家族という小集団に求めて,アメリカ及び新中国に対する態度の個人間の態度布置を見出すことである。第1の問題については、先づ141名の大学生に,天皇と親に対する態度尺度を与え,平均的傾向を算出した。その結果は,天皇に対しては中立的,親に対しては比較的好意的である。尚天皇に対する態度と,親に対する態.度との間の相関は,γ=0,086で,その関係は全くみられない。次に上記被験者より30名を選び,天皇及び親に対する態度尺度に含まれる各意見を,各自の好みに従い品等させ,個人間の相関を求めた。その結果を因子分析すると,次の如き類型を見出し得た。即ち,天皇に対する第1の類型は,家父長的信頼型因子であり,第2の類型は,天皇制否定型因子である。親に対する第1因子は,純敬愛型因子であり,第2の因子は,批判的愛情型と解釈された。叉天皇に対して第1類型に属する者が,親に対しては第2類型に属するという如く,天皇と親に対する態度が,同一個人内に於て統一した体系をなして居られぬ事が見られる。第1因子とも第2因子ともつかぬ,明確な判断を欠く者は女性に多かった。第2の問題については,被験者を2つの家族に選定した。大阪市在住と神戸市在住の家庭で,成員はいずれも5名である。各家族成員に,アメリカ及び新中国に対す一る態度尺度に含まれている意見を与え,品等させ,Qテクニックにもとづき因子分析したその結果碍た因子行列を直交座標上にプロットすると次の事が判った。両家とも,アメリカに対する類型は,アメリカの対目政策を批判し乍らも,世界の文化のリーダーとして敬愛する一類型と,徹底的に批判乃至非難する類型との2つの因子がある。中国に対する態度は,両家族ともに同一方向に群り,家族成員問に対立的布置が余りみられないで,皆同一類型に属している様子が見られる。今日の中国に対するマス・コミュニケーションのあり方の一端をも伺い得て興味深いものがある。
著者
李 熙馥 田中 真理
出版者
Japan Society of Developmental Psychology
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.527-538, 2013

ナラティブ(Narrative,語り)には,ある出来事をどのように組織化し,意味づけるのかに関する構成の側面と,聞き手となる他者にどう伝えるのかに関する行為の側面がある。本研究は,空想のストーリーであるフィクショナルナラティブ(Fictional Narrative:以下FN)に注目し,自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder:以下ASD)児の構成と行為の側面における特性について検討を行った。その結果,ASD児のFNは典型発達児と比べて,FNの組織化において登場する人や場所,時間,行動的状況に関する言及である「セッティング」や,ストーリーの結末を明確にする「結果」に関する言及が少ない,登場人物の言動と心的・情動的状態との因果関係に関する言及が少ない,言動の主体を明確にし,主人公の一貫した観点からFNを構成することが少ないことが示された。一方,行為の側面においては,参照的工夫の言及においては典型発達児との間に有意な差はなく,参照的工夫の行動においては小学生のASD児の方が小学生の典型発達児よりFNを行う際に聞き手をみる行動が多かったことが示され,ASD児は聞き手に伝えようとする意識を有していた可能性が考えられた。今後は,聞き手の状態や働きかけに対し,どのようにナラティブを調整するのかに関する検討が必要であると考えられる。
著者
木村 純子 田中 洋
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

環境が急激に変わったとき、あるいは変化しないとき、人々はその変化をどのように受け止め、どのようにアイデンティティを変化させていくのであろうか。本研究は既存の消費文化と新たな消費文化が入り混じっている「文化の汽水線」を見ていった。対象として茶会という伝統的な消費者行動、および近年起こった大きな消費変容事態(event)の当事者としての原発避難民の消費者行動を取り上げた。(1)儀式に基づきながら中身を刷新していく伝統的消費者文化、および(2)消費によって自己同一性を維持することを強いられている難民の物質的消費者文化の2つのありようを見いだした。
著者
松浦 正人 田中 正晴
出版者
日経BP社
雑誌
日経ニューメディア (ISSN:02885026)
巻号頁・発行日
no.1381, pp.13-14, 2013-08-12

ジュピターテレコム(J:COM)とジュピターエンタテインメントがケーブルテレビ事業者向けに展開するIP-VODサービス「milplus(みるプラス)」が、ZTVを皮切りに、2013年8月に始まった。既にZTVを含む11社が採用を決め、2014年春までにサービスを開始することになった…
著者
酒井 たか子 加納 千恵子 李 在鎬 小林 典子 関 裕子 田中 裕祐 河野 あかね 清水 秀子 加藤 あさぎ 甲斐 晶子 董 然 孫 辰 杜 暁傑 阿部 宥子
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

多言語背景で日本語を学習している年少者の学習支援に役立つ情報を提供する目的で、教科の学習に必要な語彙調査研究を行った。理科に関しては、小学校3年生から6年生の教科書の分析、教員による重要度判定を行い重要語彙の表を作成した。また学習言語を中心として日本語力診断テスト(SPOT、漢字SPOT、漢字テスト)を作成し、インターナショナルスクールでの縦断的研究、公立小学校での調査を行い、テストの有効性を確認した。
著者
本井 幸介 中村 心也 田中 直登 山越 憲一
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.268-275, 2013-08-10 (Released:2013-12-11)
参考文献数
25

Recently, the freak accidents in home have been increased and they are caused by the asphyxiation, drowning, falling, fire, and toxicosis. Especially in bathroom, the accident frequently arise and thus the healthcare monitoring and the accident detection system can be useful for attainment of safe and untroubled daily life. While some monitoring systems for moving state using infrared ray and ultrasonic wave were already developed, these methods distinguish only whether or not a bather is moving. Also, detailed motion analysis using CCD camera has the problem of privacy for the practical use. From these viewpoints, we designed the monitoring system for the electrocardiogram and respiration signal using bathtub-installed electrodes, showing its usefulness for the healthcare and the drowning alarm during taking a bath. However, the range over which this method is possible is limited in the bathtub and thus the detection in washing place are impossible. To solve this drawback, we developed a new system capable of detecting the accident in the washing place together with the pulse and respiration rate using a bath mat type multipoint pressure sensor located in washing place of bathroom. From the results of the accuracy evaluation in 20 healthy subjects, it is demonstrated that the present system can accurately detect the accident [60/60, 100%]and show the good correlation between the pulse [r=0.99] and respiration [r=0.95]obtained from the system and those obtained from the conventional methods using the sensors attached to the body surface.
著者
大竹 茂登 田中 弘敬 宝示戸 貞雄
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.241-246, 0000

オーチャードグラスの育種における早期検定の可能性についての知見を得るため,産地および採種年次を異にするオーチャードグラス4群8品種系統を1967年5月と8月の2回にわたり播種し,それぞれ短日区(自然日長8時間),長日区(自然日長8時間に補助光朝夕4時間ずつを加え計16時間)および対照区について幼苗期の形質発現の調査を行なった。1.幼苗期においても日長効果は大きくあらわれ,長日では葉が伸長するが,出葉間隔および分げつ出現間隔は長くなり,したがって葉数,分げつ数が少なくなった。短日ではその逆であった。しかし地中海産のPortugal2倍体だけはこの傾向がむしろ逆で,短日でもよく伸長する品種である。2.幼苗期の調査項目としては,葉長(または草丈),総葉数,総分げつ数が調査が容易な点からも適当と考えられる。葉幅も日長の影響は少ないが,品種間差は明らかであり,重要である。3.採種年次の古い種子では生育がおとる例が見られ,あらかじめ種子の活力の検査が必要と認められる。4.以上の結果を総括して考えると,幼苗期に一定時間の日長条件を与えることは,品種間差の検出を容易にし,試験の再現性もあるようなので,早期検定の条件として利用できそうである。
著者
高村 真一 鈴木 靖夫 日江井 鉄彦 島田 永子 中島 伸夫 田中 純二 三宅 弘治 三矢 英輔
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.453-457, 1987-03

A case is presented of priapism resulting from disseminated intravascular coagulopathy (DIC), which was diagnosed by pathological studies of the amputated penis and skin biopsy. To our knowledge, this is the first case reported in Japan. This 72-year-old-man visited a hospital complaining of fever and cough, and was administrated for treatment of bronchitis and liver cirrhosis. A few days after admission, multiple purpura with edema and pain appeared over the skin regions on the bilateral knee joint, foot joint and upper extremities. A week after purpura appeared, priapism began. Regardless of irrigation and aspiration of corpora cavernosa and glans-cavernosa-fistula creation, penile necrosis developed. We had to perform penile amputation. The pathology of the amputated penis and skin, and blood coagulative examination suggested that DIC resulted in priapism. DIC was controllable by the use of FOY and heparin. He was discharged and is an outpatient.
著者
田中 靖
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.10-16, 2005-01-01

日本人の海外旅行者数は90年代を通じて順調に伸張してきたが,01年の9.11テロや03年のSARS流行で大きく落ち込み回復が遅れている.本稿では20代女性人口の減少,企業の海外進出の増加など,最近の状況変化を踏まえて海外旅行の動向を示すとともに,訪日外客の動向についても言及する.
著者
田中 望美 セージ クリスティー
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
人間文化論叢 (ISSN:13448013)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.113-129, 2006

本研究はSageとTanaka(2006b)によるTOEFL^[○!R] iBTとセンター試験の聴解を比較・対照した前研究に引き続き、テスティングを真正性の面からさらに深く考察してゆく。センター試験のための学生に対して不利になりうる教育を懸念し、センター試験の問いと基準(若しくは、対象言語領域)がこれまでの研究や理論及びTOEFL^[○!R] iBTの特徴に基づいて、厳密に調査されている。本研究の構成は、1)過去の研究における真正性と相互性に関する概念、2)テストにおける伝達能力の側面、3)センター試験とTOEFL^[○!R] iBTのテストの問いと対象言語領域の比較及び分析、4)聴解の真正性の今後の方向性と提案、となっている。要するに、TOEFL^[○!R] iBTが対象言語領域で必要とされる能力を測定している点、また統合テスト形式を採用しているという2点から、本研究はセンター試験の聴解はTOEFL^[○!R] iBTの特徴に倣ってさらに改定していくことができると示唆する。
著者
田中 功二
出版者
青森県農林総合研究センター林業試験場
雑誌
林業試験場報告 (ISSN:1349242X)
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.14-27, 2008

青森県十和田市の林業試験場十和田ほ場に、平成15年から19年に掛け、育種種子を生産・販売する目的で、昭和29年から45年にかけて選抜された精英樹を主な構成クローンとするヒバミニチュア採種園を0.35ha造成した。この5年間の造成を第一期として区切り、これまでの採種園造成に関わる基礎的なデータとして、ヒバさし木発根性と採種園の概要を今後の研究及び事業の参考に資するために取りまとめた。
著者
田中 圭介 西野 哲朗
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. COMP, コンピュテーション
巻号頁・発行日
vol.94, no.26, pp.51-60, 1994-04-27

否定数限定回路とは,回路中で使用できるNOTゲートの個数をlog(n+1)に制限した組合せ回路である.本稿では,n変数を反転する否定数限定回路(反転回路)の複雑さについて考察する.本研究以前に知られている反転回路のサイズの最良の上界は,O(n^2(logn)^2)である.本稿ではまず,この上界をO(n(logn)^2)に改良できることを示す.次に,反転回路のサイズと深さに関してそれぞれ,5n+3log(n+1)-6および4log(n+1)+2の下界を示す.さらに,n変数を反転する否定数限定回路にある種の制約を加え,その回路サイズが超線形下界をもつような二つの特殊な場合を紹介する.
著者
下山 正一 木下 裕子 宮原 百々 田中 ゆか里 市原 季彦 竹村 恵二
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.105, no.5, pp.311-331, 1999-05-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
57
被引用文献数
7 9

従来の第四紀地殻運動論では, 九州のほぼ全域を隆起地域と解釈してきた.最近, 九州北部各地に沈降域があることが明らかになったので, 堆積相・貝化石群集・生痕化石などの古水深指標と広域テフラに基づいて九州各地の最終間氷期最高海面期(ステージ5e)の旧汀線高度を比較し, 過去約12.5万年間の九州の地殻運動を見直す作業を行った.その結果, 過去12.5万年間の動きは別府~島原地溝帯を境に, 九州北部は全て沈降地域である.また, 九州南西部にも沈降地域があることが判明した.特に佐伯から川内にかけて九州を北東-南西に横切る1本の顕著な沈降軸(佐伯~川内沈降軸)が存在する.九州南東部は顕著な隆起地域であることを再確認した.沈降地域や隆起地域の隣接分布は, 現在の九州の海岸地形と極めて調和的である.中期から後期更新世にかけて地殻運動が逆転したと考えられる地域が存在する.これは九州の複雑な地殻運動史を示している.