著者
田中 由浩
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.21-26, 2017 (Released:2018-02-01)
参考文献数
34

振動は触覚において様々な感覚に関わり極めて重要な情報である.我々の触覚は,対象と皮膚との力学的相互作用により皮膚で発生した変形や振動,熱の変化に基づく.また,触覚の受容と運動の間には双方向の関係がある.したがって,触覚には皮膚の力学的特性や運動特性が大きく関与する.本稿では,これらの観点のもと,振動と触覚との関係を,皮膚特性,触知覚,運動特性から,概観したい.皮膚特性では皮膚で生じる振動の周波数特性や,指紋や皮下組織の構造と振動との関係を,触知覚では粗さの感覚と振動との関係を,運動特性では個人差や粗さ知覚における運動調整を主に紹介する.
著者
渡邉 博史 松岡 潤 梨本 智史 古賀 良生 大森 豪 遠藤 和男 田中 正栄 縄田 厚 佐々木 理恵子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Ab1344, 2012 (Released:2012-08-10)

【目的】 静的ストレッチング(以下ストレッチ)の効果的な持続時間については、10~30秒や最低20秒以上必要、または長時間の方が有効で60秒程度の効果が大きい等、諸家により異なっている。今回、ストレッチの持続時間とその効果について検討したので報告する。【対象】 膝疾患の既往がない健常成人20名、女性10名(21-54歳、平均30.3±8.7歳)、男性10名(22-35歳、平均28.8±3.8歳)を対象とした。【方法】 右下肢を対象側とし、膝屈曲90°の等尺性最大膝伸展筋力(MVC)を下肢筋力測定・訓練器(アルケア社製、以下QTM)で測定した。ストレッチ前の運動負荷として60%MVCの等尺性膝伸展運動(膝屈曲90°、収縮時間6秒、10回)をQTMで行った。運動後、大腿四頭筋の他動的ストレッチを行い、ストレッチ前後の大腿四頭筋緊張度(以下Q-tension)を測定した。Q-tensionは対象を左側臥位にて体幹・骨盤を壁面に押し付け固定し、右下肢を股関節伸展0°、膝関節屈曲135°で保持し、他動的膝関節屈曲時の下腿に生じる膝伸展反発力を足関節近位部でQTMにて測定した。ストレッチ持続時間は10秒、20秒、60秒(以下10S、20S、60S)の3種類で、日を変えて行い順番はランダムに選択した。そして3種類のストレッチについて、運動負荷後におけるストレッチ前後のQ-tensionの変化を性別に比較した。統計的解析は対応のあるt検定を用い、有意水準を5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は対象者に研究の趣旨を十分に説明し同意を得て行った。【結果】 女性のストレッチ前後のQ-tensionの変化は、10Sではストレッチ前2.3±1.3kg、後2.1±0.7kgで、ストレッチ後統計的に有意な低下を認めなかった。20Sと60Sでは、20Sのストレッチ前2.4±0.8kg、後2.0±0.7kg、60Sのストレッチ前2.3±1.0kg、後2.0±0.8kgで、20Sおよび60Sともストレッチ後統計的に有意な低下を認めた。男性のストレッチ前後のQ-tensionの変化も、10Sではストレッチ前3.7±1.9kg、後3.3±1.7kgで、ストレッチ後統計的に有意な低下を認めなかった。20Sと60Sでは、20Sのストレッチ前3.7±2.0kg、後3.2±1.7kg、60Sのストレッチ前3.9±2.3kg、後3.2±1.8kgで、20Sおよび60Sともストレッチ後統計的に有意な低下を認め、女性と同様の結果であった。【考察】 我々は先行研究において、床反力計を用いたQ-tensionの定量的評価で、ストレッチによってQ-tensionが低下することを報告している。本研究においても、男女ともストレッチ後Q-tensionが低下しており、一致した結果であった。しかし、10Sでは、男女とも統計的に有意な低下を認めなかった。このことから、ストレッチの持続時間として10秒では、不十分であることが示唆された。20S、60Sでは、男女とも統計的に有意な低下を認め、ストレッチの持続時間として、20秒~60秒は有効であることが考えられた。今回、20Sと60Sとの効果の差については、男女とも明確にすることはできなかった。これについては、対象者の変更等をして、今後検討が必要と考える。スポーツ現場等でのコンディショニングにおけるストレッチでは、多数の筋肉をストレッチする必要があるため、効果的でかつ短時間であることが望まれる。そのため60秒では長すぎると思われ、一般的に20秒程度を適当としていることは妥当と考える。【理学療法学研究としての意義】 理学療法においてストレッチは、臨床的によく行われている治療法であり、その効果的な持続時間を検討することは、ホームエクササイズとしてストレッチを指導していく上で、とても重要である。そして今後は、ストレッチの反復回数等の影響や、ストレッチ効果の持続性について検討していく必要がある。
著者
村上 裕晃 田中 和広
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.415-433, 2015-11-30 (Released:2016-02-01)
参考文献数
49
被引用文献数
1 3

島根県津和野地域では,塩濃度の高い鉱泉水がガスを伴い自噴している。この鉱泉水とガスについて,湧出箇所と地化学的特徴を調査した。津和野地域の鉱泉水は最大で海水の約半分程度の塩濃度を示す。自噴するガスは二酸化炭素が主成分である。これらの特徴に加え,鉱泉水の水素・酸素同位体比は天水線から外れる組成を示し,希ガス同位体比からマントル由来のヘリウムの混入が示唆される。これらの地化学的特徴と周辺の地質構造から津和野地域の高塩濃度流体の成因を考察すると,津和野地域の高塩濃度流体には地下深部から供給される流体が含まれていると考えられる。しかし,津和野地域の高塩濃度流体に深部流体が含まれているとしても,その寄与量は最大でも4分の1程度である。また,高塩濃度流体の指標となる塩化物イオンのフラックスが活断層周辺で最も高いことから,高塩濃度流体は活断層を主要な水みちとして移動していると推測される。ただし地表付近において,高塩濃度流体は活断層周辺の亀裂も利用していると考えられる。
著者
田中 稔彦 石井 香 鈴木 秀規 亀好 良一 秀 道広
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.54-57, 2007-01-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
6
被引用文献数
2

24歳,男性.初診1年半前から運動や精神的緊張によって多発する小円形膨疹を主訴に来院した.皮疹は激しい痒みをともなっていた.コリン性蕁麻疹と診断し,種々の抗ヒスタミン薬を投与したが皮疹は改善しなかった.サウナ浴によって同様の皮疹が誘発され,回収した本人の汗による皮内テストで陽性を示した.また健常人および本人の汗から精製した汗抗原で末梢血好塩基球からの著明なヒスタミン遊離が生じ,汗の中の抗原にIgE感作されていることが明らかとなった.本人の汗から回収した抗原による減感作療法を行ったところ皮疹の程度が軽減し,本人のQOLも徐々に改善した.末梢血好塩基球の汗抗原に対するヒスタミン遊離の反応性も経時的に低下し,汗抗原による減感作療法が奏効したと考えられた.
著者
田中 雅一
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.90, no.2, pp.55-80, 2016 (Released:2017-09-15)

本稿の目的は、侵犯的な宗教性について理解することである。ここで取り上げる供犠は、おおきく聖化と脱聖化の儀礼に分かれる。前者は神に近づき、聖なる力を獲得する道を提示するのに対し、後者は罪や不浄を取り除く。聖化では、神の力が充溢している供物の残滓を分配し、消費する。脱聖化では、残滓に罪や不浄が吸収され、家屋や寺院の外に放置される。しかし、儀礼の目的が脱聖化かどうか不明だが、残滓が摂取されない場合がある。それはヴェーダの神々や、憤怒の相を表す下級の神々を鎮めるための儀礼である。シヴァ神については、残滓はニルマーリヤと言い、これを受け取るのはチャンダとかチャンデーシュヴァラと呼ばれる聖人だけである。彼はシヴァの聖者の一人である。本来忌避すべきニルマーリヤを受け取るのは、侵犯的な信愛(バクティ)の表れの一つと言える。本稿では、供犠の残滓に注目することで規範の侵犯に認められる宗教的性格について考察する。
著者
西村 多久磨 瀬尾 美紀子 植阪 友理 マナロ エマニュエル 田中 瑛津子 市川 伸一
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.197-210, 2017 (Released:2017-09-29)
参考文献数
40
被引用文献数
4 8

本研究では, 中学生を対象に学業場面に対する失敗観の個人差を測定する尺度を作成した。その際, 子どもにとって身近で回答しやすい失敗場面を想定し(問題場面, 発表場面, テスト場面, 入試場面), これらの場面の高次因子として「学業場面の失敗観」を想定するモデルを提案した。中学生984名から得られたデータに対して探索的因子分析を行った結果, 失敗観は「失敗に対する活用可能性の認知」と「失敗に対する脅威性の認知」の2因子から構成されることが, 各場面に共通して示された。また, これら4つの場面の高次因子として「学業場面の失敗観」を想定したモデルの適合度は十分な値であった。この結果から, 高次因子モデルによって失敗観を測定するアプローチの妥当性が支持された。さらに, 理論的に関連が予想された変数との相関関係も確認され, 尺度の妥当性に関する複数の証拠が提出された。最後に, 作成された尺度を用いた今後の研究の展望について議論がなされた。
著者
田中 博 村 規子 野原 大輔
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.1-18, 2004-01-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
22
被引用文献数
2 3

本研究では,福島県下郷町にある中山風穴の冷気の成因解明のために, 2001年夏季と冬季の2回にわたり現地観測を行った.夏季の風穴循環は斜面上部の温風穴から吸い込まれた外気が崖錐内部で冷やされて下方の冷風穴から吹き出すと考えられている.夏季の観測ではそれを実証するために,CO2を用いたトレーサー実験を行った.その結果,温風穴から吸い込まれた外気は約1.5時間で140m下方の冷風穴から噴出することが実証された.この実験で得られた循環速度2.6cm/sから総質量フラックスを計算し,気流の温度変化を掛け合わせることで,夏季に約4×1012Jという熱量が崖錐に蓄えられるものと推定された.一方,冬季の風穴循環は逆転して,下方で寒気を吸い込み上方の温風穴から暖気を吹き出す.冬季の温風穴での地表面熱収支観測の結果,地中から上向きに約150W/m2の地中熱流量が観測された.これにサーモグラフィーで調べた温風穴の全面積を掛け合わせると,冬季に崖錐から放出される総熱量は約5×1012Jとなり,上記の値とオーダー的に一致した.以上の結果から,中山風穴の冷気は,冬季に活発な対流混合で蓄積された寒気が,夏季に重力流として穏やかに流出する,という対流説で定量的に説明できることが示唆された.したがって,風穴保護の観点からは,温風穴の位置をサーモグラフィーで見極め,その周辺の植生を伐採して崖錐表面の目詰まりを解放させてやることが,効率的で有効な保護対策と考えられる.
著者
田中 敏弘
出版者
The Japanese Society for the History of Economic Thought
雑誌
経済学史学会年報 (ISSN:04534786)
巻号頁・発行日
vol.38, no.38, pp.45-51, 2000 (Released:2010-08-05)
参考文献数
19

This essay treats the author's study in the current of the studies of the history of American economic thought in the United States and Japan. First, the essay discusses why the history of American economic thought is regarded as exceptional, and what is ‘American-ness’ in the history of American economic thought. J. Dorfman's landmark 5-volume series, The Economic Mind in American Civilization, 1606-1933 (1946-59) and the development of its study after that in the United States are briefly surveyed.Second, the main studies of it in Japan are evaluated in the following articles by the author: “Joseph Dorfman and the Studies in the History of American Economic Thought in Japan” (1994), “Thorstein Veblen Studies in Japan: A Bibliography” (1997), and “The Studies in American Institutional Economics in Japan” (1999).Third, the author's main works on American Neo-Classical economics, especially on J. B. Clark, and on Old Institutional Economics are placed in the current of the studies in the United States and Japan. This includes 16 articles on J. B. Clark, including “The Economic Thought of J. B. Clark: An Interpretation of ‘The Clark Problem’ ”in Perspectives on the History of Economic Thought, ed. by D. E. Moggridge (1990); “The Correspondence of J. B. Clark Written to F. H. Giddings, 1886-1930” with an introductory essay, “The Development of J. B. Clark's Economic Thought and F. H. Giddings” in Research in the History of Economic Thought and Methodology, ed. by W. J. Samuels, JAI Press, 2000; and A Study on the History of American Economics: Neo-Classical School and Institutional Economics (1993, written in Japanese).Fourth, the so-called institutionalization of the study and teaching of this field and the organization of the studies in Japan by the author are explained in, for example, an introduction to a lecture on the history of American economic thought as a regular subject at Kwansei Gakuin University; the founding of the Japanese Society for the History of American Economic Thought in 1995; and the publication of the first essays in this field in Japan- one year after the publication of the essay Economic Mind in America, ed. by M. Rutherford (1998), Economic Thought of the Americans: A Historical Development- ed. by the author (1999, written in Japanese), which contains 9 essays from Hamilton to Shumpeter with the editor's introduction, “The Development of Economic Thought in the United States”.
著者
糸賀 知子 千葉 浩輝 高橋 浩子 奈良 和彦 田中 耕一郎
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.123-126, 2017 (Released:2017-10-20)
参考文献数
7

54歳介護士 26歳,29歳時腹式帝王切開術,31歳時左卵巣嚢腫に対し,腹式左付属器切除術,41歳時,子宮筋腫に対し,腹式単純子宮全摘術の既往がある。腹式単純子宮全摘術後より,腸閉塞による入退院を繰り返しており,約10年間大建中湯を内服していた。X 年5月,大建中湯を内服しても便秘,腹痛が改善せず,首から上の熱感が出現したため来院。舌診では,舌は淡紅色,黄苔,裂紋を認め,舌下静脈は怒張していた。診察所見より,瘀血証,熱証と考え,桂枝茯苓丸2.5g/日を開始し,内服1週間後には症状の改善を認めた。昨今,大建中湯はイレウスに対して広く使用されているが,長期投与することによって,熱症をきたすということはほとんど知られていない。 漢方を処方する医師に対し,病名処方一辺倒になることに警告を鳴らし,一定の東洋医学的な知識の習得の重要性や副作用を未然に防ぐための注意喚起していく必要があると考えた。
著者
田中 高史
出版者
国立極地研究所
巻号頁・発行日
2020-12-01
著者
田中 大介
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.40-56, 2007-06-30 (Released:2010-03-25)
参考文献数
36
被引用文献数
1

本論文は,日露戦争前後の電車内における身体技法の歴史的生成を検討することによって,都市交通における公共性の諸様態を明らかにすることを目的としている.電車は明治後期に頻発した群集騒乱の現場になっていたが,同時期,法律から慣習のレベルまで,電車内の振る舞いに対する多様な規制や抑圧が形成された.これらの規制や抑圧は,身体の五感にいたる微細な部分におよんでいる.たとえば,聴覚,触覚,嗅覚などを刺激する所作が抑圧されるが,逆に視覚を「適切に」分散させ・誘導するような「通勤読書」や「車内広告」が普及している.つまり車内空間は「まなざしの体制」とでもよべる状況にあった.この「まなざしの体制」において設定された「適切/逸脱」の境界線を,乗客たちは微妙な視線のやりとりで密かに逸脱する異性間交流の実践を開発する.それは,電車内という身体の超近接状況で不可避に孕まれる猥雑さを抑圧し,男性/女性の関係を非対称化することで公的空間として維持しつつも,そうした抑圧や規制を逆に遊戯として楽しもうとする技法であった.
著者
田中 眞奈子 原田 一敏 星野 真人
出版者
昭和女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、研究代表者らがこれまで確立してきた放射光X線を用いた鉄鋼文化財の非破壊分析技術を日本刀の作刀技法の解明のために応用し、刀剣の専門家や博物館、放射光分析の専門家他と学際的な研究グループを組織し、作者や流派、時代に焦点を絞り5年間で120振を超える価値ある日本刀を体系的に分析することで最終的に日本刀の黄金時代と言われる鎌倉中期の作刀技術を解明する。
著者
田中 里奈 若林 たけ子 東中須 恵子
出版者
奈良学園大学
雑誌
奈良学園大学紀要 = Bulletin of Naragakuen University (ISSN:2188918X)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.113-121, 2016-09-30

本研究では、入院中の患者が衣服を選択する理由について明らかにし、その衣服が闘病意欲に与える影響について考察することを目的とした。 対象は衣服の自由選択を前提に病衣貸与体制を導入しているY総合病院に入院中で、研究協力に承諾が得られた患者62名。方法は患者のベッドサイドで質問紙に基づいた聞き取り調査を行った。対象となった入院患者62名中、妊婦を除く男性24名、女性30名の計54名を分析対象とした。分析は Microsoft Excel を用いた統計処理とt検定、χ2検定、及び記述的に分析した。 対象の特性は、病衣選択者74.1%で、t検定5%水準で女性の方が病衣の着用が有意に高い集団であった。これは入院対象者が家族と同居している割合が88.9%と高く、そのうち85.2%が家族に洗濯を依頼していたことが影響しているものと考える。私服を選択する理由は、病衣に対する抵抗感と、デザインやカラー、サイズが選べて動きやすい、着心地が良いために落ち着くなどの私服としての得点に二分されていた。病衣に対して不満を持っている割合は50%であったが、性別では女性のほうが男性よりも20%以上高かった。これは、一般的に合理性を重視するといわれている男性特有の性格的なことが影響しているのではないかと考える。病衣に対する不満理由は恥辱感、個の尊厳の喪失感、不合理性、不快感の4つの因子とその他で構成されていた。これは不満理由として女性から多く挙げられていたことと、清潔、耐久性、利益などの病衣としての特徴を備えていることではないかと考える。衣服と闘病意欲と性別との関係では、男性よりも女性のほうが闘病意欲は高く、病衣と私服と闘病意欲の関係では病衣のほうがχ2検定1%水準で有意に低かった。これは女性のほうが、退院後にも家庭での役割を持つためと考えられる。また、私服は社会性を維持していくために影響しているものと考えられた。 以上から入院中でも、個の尊厳を維持できる衣生活を心がける事が重要である。
著者
山本 敦也 菅野 貴久 町田 善康 中束 明佳 鈴木 雅也 田中 智一朗 金岩 稔
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.125-131, 2020-03-28 (Released:2020-04-25)
参考文献数
27
被引用文献数
1

北海道美幌町内の小河川において越冬中の外来種ウチダザリガニ抱卵個体を選択的に捕獲することにより,より高い駆除効果を得ることを目的とし,ウチダザリガニの抱卵個体に電波発信器を装着して放流し,越冬中に再捕獲することによって越冬環境について調査を行った.同時に,ドローンに電波受信器を搭載して河道上空を飛行させることにより電波発信源をある程度特定し,その後指向性アンテナを用いて詳細な電波発信位置を特定する方法の開発も行った.2017 年 10 月に 3 個体に電波発信器を装着して放流し,同年 12 月にドローンと八木式アンテナを用いて 3 個体全ての越冬場所を特定,回収した.抱卵個体は河岸より 1-2 m,表土から 60-90 cm の地点の蛇行区間の内側の土中で発見され,越冬環境は蛇行区間の内側といった高水敷全体に広がるものと思われた.そのため,越冬中の抱卵個体の選択的な捕獲は現実的に不可能と思われた.一方で,ドローンと八木式アンテナを用いた電波発信源の特定方法は土中かつ水中でも有効であることが示され,今後の応用が期待される.