著者
森下 登史 田中 秀明 井上 亨
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.810-819, 2021-07-10

Point・通常,視床神経核の可視化は困難であるため,典型的な電極留置部位の座標決定方法を学ぶことが大切である.・微小電極記録では,somatotopyと運動誘発電位・感覚誘発電位から電極位置を推測することができる.・治療用電極留置時の試験刺激は,振戦制御効果と刺激誘発性副作用出現閾値を確認する上で非常に有用な手技である.
著者
三河 正彦 吉川 雅博 辻村 健 田中 和世
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集
巻号頁・発行日
vol.25, pp.97, 2009

本研究の目的は,図書館に設置され,図書館利用者と自然言語で会話し,分かりやすい情報提供が可能な図書館司書ロボットを構築することである.本ロボットは,視聴覚センサ等の知覚情報による図書館内の利用者の行動予測に基づく適切な受け付け行動,自然言語対話エンジンによる利用者からの質問や要望に対し適切な受け答え,利用者に理解しやすい情報案内が可能な機能を備える.本システムの特徴は,睡眠や覚醒等の意識状態を表現できる意識モデルを備えることである.複数の知覚センサを備え,知覚情報処理が並列に実行される図書館司書ロボットシステムでは,利用者の検出により覚醒し,その応対に必要な処理を優先して実行するが,利用者がいない時には知覚情報処理の優先順位が下がり,つまり表面的にはロボットが睡眠しているように見え,内部的には覚醒時に蓄積した知覚情報を処理し,実時間処理では得られない長期間蓄積した知覚情報から有益な情報を抽出,記憶する機能を備える.
著者
田中 英之 田村 幸雄 大竹 和夫 中井 政義 金 容 徹
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会構造系論文集 (ISSN:13404202)
巻号頁・発行日
vol.77, no.678, pp.1211-1218, 2012-08-30 (Released:2012-10-15)
参考文献数
17
被引用文献数
1 3

Tall buildings have been traditionally designed to be symmetric rectangular, triangular or circular in plan, but recent tall building design has been released from the spell of compulsory symmetric shape design, and free-style design is increasing. One important advantage for this trend is that rather complicated sectional/structural shapes are good with regard to aerodynamic properties for across-wind responses, which is a key issue in tall building wind-resistant design. A series of wind tunnel tests have been carried out to determine wind forces and wind pressures acting on the large number of tall buildings with various configurations. The results of these tests have led to comprehensive understanding of the aerodynamic characteristics of various tall building configurations.
著者
青景 遵之 中川 慧 河原 裕美 波之平 晃一郎 土田 和可子 藤村 昌彦 田中 英一郎 弓削 類
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.A3P2127-A3P2127, 2009

【目的】重度歩行障害患者の早期歩行Ex.は,設営の煩雑さや多くのマンパワーを必要とすることから,臨床現場における歩行支援ロボットの必要性が高まっている.現在,研究されている歩行支援ロボットは,LokomatやGait trainerといったトレッドミル上での歩行支援ロボットが多く,モビルスーツ型自立歩行支援ロボットとしての研究はほとんど行われていない.モビルスーツ型自立歩行支援ロボットは,トレッドミル上の制限がなく,様々な環境での歩行Ex.が行えることから,歩行障害患者のADLや活動範囲の向上も期待することができる.そのため,現在開発中のモビルスーツ型自立歩行支援ロボット使用時の歩行と通常歩行の健常者における脳活動を比較し,脳機能の視点から歩行Ex.の場面に利用できる可能性を検討することを目的とした.<BR>【方法】対象は,同意の得られた筋骨格系・神経系に障害のない健常男性8名とした.近赤外分光法(near infrared spectroscopy;以下,NIRS)を用い,通常歩行とロボット装着歩行の脳酸素動態を比較した.課題は,安静30秒,歩行40秒,安静30秒のブロックデザインとし,各条件下で5回測定した.歩行速度は,対象者ごとに各条件下で最も快適な速度とした.また,ロボット装着歩行は,非免荷状態での歩行(full-weight robot gait;以下,FW)の他に,転倒と身体への荷重負荷を考慮し,全体重の25%の免荷状態での歩行(partial-weight robot gait;以下,PW)も測定した.NIRSのデータは, 0-10秒と90-100秒の平均を結んだ直線をベースラインとし,前頭前野や運動前野,補足運動野,感覚運動野の領域に分けて加算平均した.また,領域間の比較には,Suzukiらの方法を参考にeffect sizeを使用した. なお本研究は,広島大学大学院保健学研究科心身機能生活制御科学講座倫理委員会の承認を得て行った.<BR>【結果】歩行によって運動に関連する各領域のoxy-Hbが増加し,その増加量は通常歩行,PW,FWの順に大きかった.領域別では,運動前野での増加が最も大きかった.ロボット装着歩行は,PWでは通常歩行に類似したoxy-Hb変化パターンを示していたが,FWでは,前頭前野や補足運動野などの領域でも大きな変化を示した. <BR>【考察】ロボット装着歩行は,歩行に関与する脳領域,中でも運動前野に大きな活動を起こした.運動前野は,運動学習時に重要な役割を担っているといわれており,ロボット装着歩行が歩行動作の学習に役立つツールとなる可能性が示された.特に,免荷状態のロボット歩行では,通常歩行に近い脳活動パターンを示し,運動学習に有効なツールであると考えられた.非免荷状態のロボット歩行でも,同様な効果が期待できるが,現時点では,通常歩行ではあまり必要のない前頭前野の大きな活動なども増加する結果となった.今後,様々な観点からモビルスーツ型自立歩行支援ロボットとしての実用化に向けて更なる開発と研究を行っていきたい.
著者
古江 増隆 山崎 雙次 神保 孝一 土田 哲也 天谷 雅行 田中 俊宏 松永 佳世子 武藤 正彦 森田 栄伸 秋山 真志 相馬 良直 照井 正 真鍋 求
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.119, no.9, pp.1795-1809, 2009-08-20 (Released:2014-11-28)
被引用文献数
1

[目的]我が国の皮膚科受診患者の皮膚疾患の頻度,性別,年齢分布,気候との関連性などを多施設大規模調査によって明らかにすることを目的とした.[方法]全国の大学病院76施設,病院55施設,診療所59施設(計190施設)において,2007年5月,8月,11月,および2008年2月の各月の第2週目を目安に,その週のいずれか1日を受診した初診・再診を問わず外来,および入院中の患者全てを対象に,「性別」,「年齢」,「診断名」を所定のマークシート調査に記録した.各調査期間における調査協力施設地域の気温,および湿度に関するデータは,気象庁・気象統計情報を使用した.[結果]4回の調査すべてに協力いただいた170施設(大学病院69施設,病院45施設,診療所56施設)から回収した67,448票を解析した.上位20疾患を列挙すると,その他の湿疹,アトピー性皮膚炎,足白癬,蕁麻疹・血管浮腫,爪白癬,ウイルス性疣贅,乾癬,接触皮膚炎,ざ瘡,脂漏性皮膚炎,手湿疹,その他の皮膚良性腫瘍,円形脱毛症,帯状疱疹・疱疹後神経痛,皮膚潰瘍(糖尿病以外),痒疹,粉瘤,尋常性白斑,脂漏性角化症,薬疹・中毒疹の順であり,上位20疾患で皮膚科受診患者の85.34%を占めた.疾患ごとに特徴的な年齢分布を示した.性差が明らかな疾患が存在した.気温や湿度と正負の相関を示す疾患が存在した.[結語]本調査によって21世紀初頭の皮膚科受診患者の実態を明らかにし得た.本調査が今後も定期的に継続されることで,社会皮膚科学的視野にたった皮膚疾患の理解が深まると考えた.
著者
田中 雅一
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.82, no.4, pp.863-883, 2009-03-30 (Released:2017-07-14)

本稿の目的は、現代社会が直面する主要な問題のひとつが他者であるという認識に基づき、他者とのあらたな関わり方や共生のビジョンについて、いかに宗教学が貢献できるかを論じることにある。その際、他者を「誘惑する他者」とみなし、「誘惑」という概念の特殊性に注目する。まず、誘惑は、誘惑する側の能動性とされる側の受動性が逆転する、あるいは逆転を求める動詞であることを指摘する。さらに、この逆転は一回限りに終わらず、自他の相互転換や融解へと続く。つぎに、誘惑においては身体が重要な役割を果たしている。誘惑とはなによりも身体的実践であり、それゆえにまた偶発的である。誘惑が導くのはエロスの世界である。誘惑とそれが開示するエロスに注目することで、他者との連帯の可能性を探る。と同時に、あらたな宗教学の可能性を、オリエンタリズム批判、身体・エロスの宗教学の創出、信仰研究の深化に求める。
著者
田中 秀臣
出版者
上武大学
雑誌
上武大学商学部紀要 (ISSN:09156267)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.73-92, 2000-10
著者
田中 実
出版者
人体科学会
雑誌
人体科学 (ISSN:09182489)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.31-40, 2019-07-15 (Released:2019-12-25)
参考文献数
25

発生学的に、細胞では細胞膜が内部陥入して核膜や細胞小器官の膜を形成すると共に、原始本能的脳として機能する。相似的に、人体では表層細胞層(広義の皮膚)が内部陥入して腸(原腸)さらに諸内臓を形成し、原始本能的・情動的・直感的脳として機能する。このような脳として振る舞う細胞膜や皮膚・腸・内臓が、「心しんぽう包・三さんしょう焦は共に名ありて形なし」、「三焦は孤腑、全身をつなぐ油膜」等とされてきた心包(六番目の臓)や三焦(六番目の腑)の実体と考えられることは既に報告した。本報告では、両手両上肢から前胸部の膻だんちゅう中穴へとつながる心包・三焦両経のルートに関する考察を通じて、両臓腑が前傾合掌に象徴される祈りや祭祀そして天人合一(東洋毉 (註1) 学の理想)への道を開くうえで重要な役割を果たす可能性を述べる。
著者
保木 昌徳 横谷 早姫 瀧 奈津江 田中愉加利 濱田 佳奈 Masanori HOKI Saki YOKOTANI Natsue TAKI Yukari TANAKA Kana HAMADA
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.1, pp.209-216, 2011-01-31

【目的】アスリート、男性、肥満女性、マウスを対象としたVAAM配合のヴァーム(R)(明治乳業株式会社)投与の研究では脂肪燃焼促進効果が報告されている。しかし、若い女性を対象とした検討はなされていないため、今回我々は女子大生におけるヴァーム(R)経口摂取による脂肪燃焼促進効果の検討を行った。【方法】ボランティア学生25名を対象にヴァーム(R)または対照飲料投与後30分に自転車エルゴメーターで持久性運動を負荷した。脂肪燃焼促進作用は呼気ガス分析器(ミナト医科学株式会社)で得られたV4 CO2、V4 O2より、脂肪由来のエネルギー消費量を算出(西の方法)し比較検討を行った。分析にはt検定を用いた。【結果】ヴァーム(R)摂取群と対照飲料摂取群を比較したところ脂肪由来のエネルギー消費量に目立った差は得られなかった。しかし、ヴァーム(R)摂取時、体脂肪率28.0%超(過多)の群において、18.0~28.0%(標準)の群より脂肪由来のエネルギー消費量が有意に高値であった(P<0.05)。
著者
田中 佑樹 嶋田 洋徳 岡島 義 石井 美穂 野村 和孝
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
pp.20-021, (Released:2021-06-17)
参考文献数
33

本研究においては、ユーザーからの入力データに基づく自動化された個別フィードバックによって、ストレッサーに応じたコーピングの実行と睡眠の質の改善を促すストレスマネジメントのためのスマートフォンアプリケーションを開発し、労働者を対象としてその有効性を検討することを目的とした。効果検証は、コーピングレパートリー、睡眠の質、心理的ストレス反応を指標として、アプリケーション群、ワークシート群、個別面接群の3群における介入前後の比較が行われた。計63名分のデータを分析した結果、コーピングレパートリーおよび心理的ストレス反応には、アプリケーション群とほかの2群の間に有意な効果の差異は見られなかったものの、睡眠の質は、むしろ個別面接群のみにおいて有意な改善が認められた。したがって、開発されたスマートフォンアプリケーションのコンテンツには改良の余地が残されていることが示唆され、今後の展望に関して考察された。
著者
田中 浩
出版者
日本評論社
雑誌
一橋論叢 (ISSN:00182818)
巻号頁・発行日
vol.100, no.2, pp.p284-306, 1988-08

論文タイプ||論説
著者
石田 康平 酒谷 粋将 田中 義之 千葉 学
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.84, no.761, pp.1579-1587, 2019 (Released:2019-07-30)
参考文献数
13
被引用文献数
1 4

Collaboration is becoming important in design process today. Design was for increasing the efficiency of industry in the past, and the role of design has been changed as the society has developed and as we have had various kinds of needs. The problems of design are getting complex. In order to tackle such problems, the importance of collaboration has increased. In this research, we focused on using VR as a design tool in collaboration, and this paper aims to clarify the possibility of VR which stands for virtual reality in the collaborative design process. We used HMD, which is one of the most famous tools for immersive virtual reality. It can work effectively in design process because it will help to imagine the designed space for many people who join the process and are not necessarily good at imagining the designed space. Design experiment was conducted in order to examine the effect of immersive VR on design process. 12 participants were divided into 6 pairs, and one person who is studying architecture in each group works as a designer, and the other works as a client. Through three critics in one experiment, a house was designed. Three preliminary consideration were conducted in order to analyze the result. First consideration was about virtual reality. Through the consideration, it is examined that the virtual reality experience can be regarded as substantially same as the real space experience, and it was also considered that HMD can give users such virtual experience of space. Second consideration was about experiencing the space with body sensations. The importance of the experience is considered through referring the definition of virtual reality and considering the relationship human body and space. Thirdly, it is pointed out that the move in the VR space is an important aspect of experiencing space. We focused on the design process of pair 1 and pair 6, because they include some noticeable scenes which should be discussed deeply, and three scenes are picked up and discussed. In first scene, we can see that it became easier for users to give feedback to designed architecture based on their own taste or needs. In second scene, it has seen that user’s hidden needs were revealed and the user’s frame of needs has changed through the experience of VR space. In third scene, we can see that it became easier for users to recognize the complex relationship of designed spaces by walking around and looking around in the VR space. It is concluded that immersive VR is the design tool which makes it easier for users to imagine the real space, to join the discussion more actively, to make the frame of user change and to recognize the relationship of multiple spaces through the move in the virtual space.
著者
近藤 尚子 田中 直人 中村 弥生 関口 光子
出版者
文化学園大学・文化学園大学短期大学部
雑誌
文化学園大学・文化学園大学短期大学部紀要 (ISSN:24325848)
巻号頁・発行日
no.52, pp.111-115, 2021-03-31

本資料紹介では、本学所蔵のピエール・カルダン関連資料群について扱う。文化ファッション研究機構では、学内機関で所蔵されているが、リソースとして整理・公開されていない服飾関連資料の調査・デジタルアーカイブ化を進めてきた。そのなかで、2023年に創立100周年を迎える本学には、国内外のデザイナーに関して、実物服飾資料やその研究成果のみならず、交流記録も残されていることが判明した。文化服装学院の名誉教授であるピエール・カルダン氏は、1958〜2010年の間に計10回も来校しファッションショーも開催した、本学と特に関係の深いデザイナーの 1 人である。そのため、所蔵している資料は実物服飾資料、紙資料、画像、映像と多種多様であり、現時点で確認された資料数は1,055件にも上る。またこれら資料の多様性は、これまで資料所蔵機関として認知されていた教育部門、附属機関に加え、事務部門とも連携し調査を行えた結果でもある。このような部門を超えた連携は、研究の多様化や分野を超えた共同研究が進むなかで重要な意義を持つものであると考え、ファッション分野におけるオーソドックスな研究対象である実物服飾資料のみならず、その他の資料情報も併せて紹介する。
著者
田中 拓 内藤 純行 長島 梧郎 加藤 晶人 上村 美穂 藤原 正三 馬野 由紀 田北 無門 平 泰彦
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.585-590, 2015-08-31 (Released:2015-08-31)
参考文献数
10

アルコール摂取に伴う意識障害,ならびに迷惑行為は救急医療機関にとって避けられない問題である。今回,2012年1月から2013年9月までの21カ月間に,当院へ救急受診した急性アルコール中毒166例を対象に振り返り,これらについて性別,年齢,エタノール血中濃度,意識レベル,外傷の有無,暴言・暴力の有無について検討した。平均年齢は45.1±19.3歳,男性120人,女性46人であった。エタノール濃度が計測されている症例は129例あり,平均エタノール濃度は207.9±99.6mg/dLであった。約10%の16例で,医療従事者に対する暴言・暴力行為があり,うち4例が警察介入を要した。暴言・暴力などの迷惑行為のあった16例のうち14例は男性であり,平均年齢は36.2±17.4歳と若く,血中エタノール濃度は253.9±85.3mg/dLと高い傾向にあった。急性アルコール中毒は時として重大な転帰をたどることもあり,また,医療従事者にも被害を及ぼすことのある病態である。日常的に多く遭遇する症例であり,適切な対処を院内共通の認識とする必要がある。
著者
田中 哲朗
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.3470-3476, 2007-11-15
参考文献数
4
被引用文献数
1

「シンペイ(SIMPEI)」は高橋晋平氏が考案し株式会社バンダイが2005 年7 月に発売したボードゲームである.縦横斜めに駒を並べることを目標とする点は,n 目並べの多くのバリエーションと共通しているが,盤面を「上の世界」と「下の世界」の二つに分けている点や,挟んだ駒を自由に移動できる点に特徴があり,高いゲーム性を有している.この点が評価されて,2006 年のGPCC(Games and Puzzles Competitions on Computers)の課題問題に選ばれた.「シンペイ」は二人完全情報零和ゲームなので,すべての局面の理論値(勝ち,負け,引き分けのいずれか)を決定することが可能である.本論文では,後退解析(Retrograde analysis)をベースにしたプログラムを用いてすべての局面の理論値を求めた.そして,「シンペイ」の公式ルールの初期配置が後手必勝であること,1手目を自由に置くことが許されれば先手必勝であることを確かめた.また,勝ちに要する最長手数が49 手であること,「シンペイ」のゲームにツークツワンク(ZugZwang)が存在することや,単純なサイクルが存在し,その周期は1,3,4 の3 通りしかないことなど,いくつかの興味深い性質を求めることができた."SIMPEI" is a board game, which was designed by Simpei TAKAHASHI. It was released in July 2005 by BANDAI. Although it is similar to other n-stones-in-a-row games, it has two unique features. The first one is the two separated worlds in a board, the upper world and the lower world. And the second one is to move in free the opponents piece which is clipped by one player's pieces. This game is selected one of the problems of this year in the GPCC (Games and Puzzles Competitions on Computers). Because "SIMPEI" belongs to perfect information two player zero-sum games, in a theoretical sense, all states in the game can be decided as winning, losing or in draw. We practically analyzed all game states with a program based on retrograde analysis. In this paper, we show the result of the analysis. We found that the second player can always win in the "SIMPEI" official rule. And we present some other interesting features of the game.
著者
田中 博
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.521-532, 2011 (Released:2011-12-01)
参考文献数
4
被引用文献数
3 2 3

「国民一人ひとりの生涯にわたる健康医療電子記録」であるElectronic Health Record(EHR)のわが国での実現形態,すなわち「日本版EHR」の実現をめぐって現状,諸課題,将来の方向を述べた。まず欧米での各国独自なEHR構築状況を紹介した後,わが国における現在の問題として「地域医療の崩壊」状況を示し,再生すべき医療の基本方向を論じた。さらに現在の国の取り組みの現状や,地域医療の再生を担う地域EHRの実現を通して日本版EHRを達成する長期的戦略について述べ,そのための具体的方針を提示した。