著者
井元 万紀子 刀坂 公崇 北口 響子 白川 雅之 奥田 志保
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.321-327, 2020 (Released:2020-05-26)
参考文献数
25

症例は73歳の右利き男性.ヘルペス脳炎を発症し,重度のウェルニッケ失語を含む認知機能低下が残存した.病前に描画の習慣はなく,妻の勧めで始めた塗り絵をきっかけに,発症数年後より風景写真の模写を始めた.その作品は写実的傾向が強く,病巣は左半球であり,獲得性サヴァン症候群の特徴を有していた.描画能力の向上に伴い,買い物や公共交通機関の利用などの手段的日常生活動作(instrumental activities of daily living; IADL)も向上したが,標準失語症検査などの神経心理学的検査では著変を認めなかった.本症例では,描画活動で得られた達成感や支援者とのコミュニケーションがきっかけとなり,IADLの向上につながった可能性が考えられた.
著者
村上 理都子 白田 昭
出版者
日本蠶絲學會
雑誌
日本蠶絲學雜誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.135-142, 1998-10-27
参考文献数
15
被引用文献数
1

クワ暗斑病菌, <i>Myrothecium roridum</i> が生産する毒性成分はセイタカアワダチソウ, ヨモギ, ギシギシ, エノコログサなどの雑草を含む46種の植物に毒性を示した。その中で, クズ, ヤブガラシ, ツキミソウには強い毒性を示し, オオバコ, ドクダミ, ススキ, ササには極めて弱い毒性しか示さず, 本毒性成分は選択毒性をもつことが示唆された。また, 本毒性成分の植物への毒性は展着剤の添加により著しく高まった。本成分の生産に適した培地はジャガイモ・スクロース・寒天培地, 培養温度は25-30℃であり, 水で容易に抽出できた。また, 熱安定性であることから, 80℃3分間で殺菌しても活性は低下しない。本毒性成分の雑草への毒性, 生産性, 植物の選択性等の性質は除草剤としても適しており, 有用な資材となる可能性がある。
著者
小薮 智子 白岩 千恵子 竹田 恵子 太湯 好子
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.59-71, 2009

本研究は,緩和ケア病棟の看護師97名,一般病棟の看護師248名,一般の人429名,大学生244名,合計1,018名を対象とし,スピリチュアリティという言葉のイメージを明らかにすること,また4つのグループ別に認知の有無と,イメージの特徴を明らかにすることを目的とし,質問紙調査を行った.スピリチュアリティという言葉を認知している人は全体で421名(41.4%),緩和ケア病棟の看護師が83名(85.6%),一般病棟の看護師が136名(54.8%),一般の人が92名(21.4%),大学生が110名(45.1%)であり,スピリチュアリティという言葉は未だ一般の人に認められた言葉ではないことが示された.得られたイメージを内容の類似性で整理した結果,【超越的】【内的自己】【人間存在】【死生観】【ビリーフ】【Well-BeingとPain】【他者や環境】の7コアカテゴリーが抽出された.その内容からスピリチュアリティは幅広いイメージを与え,主観的で抽象的であることが確認できた.またこれらは既存の学術的概念と類似していた.カテゴリーに分類されなかった「その他」には〈マスメディア〉〈超常現象〉〈否定的イメージ〉が含まれ,スピリチュアリティをスピリチュアルブームという大衆文化の中でとらえている人がいることが明らかになった.7コアカテゴリーは4グループすべてで抽出され,その中でも【超越的】と【内的自己】が共通して最も多かった.緩和ケア病棟の看護師はスピリチュアリティに幅広い,多くのイメージを持っていた.また一般病棟の看護師の約1割と大学生の約2割が〈マスメディア〉をイメージしていた.一般の人の【他者や環境】のイメージは,日本人の中・高齢者の特徴と考えられた.
著者
前川 義量 阿部 武志 秋山 庸子 三島 史人 白井 みどり 西嶋 茂宏
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.836-842, 2011-12-10 (Released:2012-04-10)
参考文献数
13

In the field of nursing care for the elderly persons, understanding of their somatic sensation such as pain is very important for care workers to provide appropriate care. However, it is not always easy for elderly person with declined verbal function. Therefore, the objective evaluation method of pain intensity without verbal communication is required. In this study, pain evaluation system which can be used in daily life without verbal communication was developed. The system is noninvasive, because the information corresponding to pain intensity is extracted from facial expression. In order to digitalize the facial expression, the images of facial expression were extracted from the web cam on real time, and were analyzed sequentially. Pain stimulation test was carried out for healthy adults by dipping their hand into ice water (cold pressor test). A strong correlation was observed for young adults between pain face factor calculated from the facial expression digitalized by the system and sensory evaluation score of pain, VAS value. It indicates the validity of this system for estimation of pain intensity.
著者
乾口 雅弘 白井 正志 坂和 正敏
出版者
The Society of Instrument and Control Engineers
雑誌
計測自動制御学会論文集 (ISSN:04534654)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.720-728, 1994-06-30 (Released:2009-03-27)
参考文献数
17
被引用文献数
1

In this paper, the concept of stochastic dominance is introduced to Dempster-Shafer theory of evidence and several kinds of evidential dominance are proposed. In Dempster-Shafer theory of evidence, the expected utility is obtained as an interval. The seven kinds of inequalities between intervals are defined. The relationships among these seven inequalities are investigated. Using these inequalities, seven kinds of evidential dominance are defined. A necessary and sufficient condition for each evidential dominance is discussed. The usefulness of each evidential dominance is examined by a numerical simulation.
著者
白井 克憲
出版者
関西学院大学
雑誌
人文論究 (ISSN:02866773)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.p15-30, 1993-12
著者
伊藤 登茂子 浅沼 義博 白川 秀子 久米 真 ITO Tomoko ASANUMA Yoshihiro SHIRAKAWA Hideko KUME Makoto
出版者
秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻
雑誌
秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻紀要 (ISSN:18840167)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.29-36, 2009-10-01

膵癌の治療成績は不良であり, 現在においても, 膵頭部癌切除例の生存期間の中央値は12.3ヶ月, 5年生存率は13.0%と低値である. 浸潤性膵管癌は膵癌の大多数を占めるものであるが, 同診断により手術を受けたのち, 19年が経過したサバイバーに, 病気との向き合い方についてインタビューする機会を得た.1) 疾病の理解, 2) 病気に対する自分自身の構え, 3) 病気への対処行動と予防行動について, その語りを健康生成論的視点で分析したところ, 首尾一貫して健康のベクトルを健康軸に向けるよう, 自分はこれでは死なないと信じて, 病名告知がない状況で自ら文献を調べて疾患を理解し, 回復手段を考え, 便秘やガス貯留が無いように代替療法を取り入れるなど, 主体的かつ積極的に過ごしてきたことが分かった. また, 入院中の生活で感じたさまざまな不合理や, 職業的背景や価値観を尊重した対応がされなかった際に感じた疎外感については, 今後のケアで留意すべき示唆となった.\nThe prognosis of invasive ductal pancreatic cancer is not satisfactory even at present. The median survival is reportedly 12.3 months, and 5 year survival rate is as low as 13.0% in patients who underwent pancreatoduodenectomy.We interviewed a pancreatic cancer patient who survived for more than 19 years following pancreatoduodenectomy, with regard to the way he coped with the disease. We have analyzed the interviewfrom a salutogenic standpoint such as 1) understanding of the disease, 2) his own preparedness, 3) manageability and preventive approach to the disease.As the result, we realized that he maintained a proactive and positive attitude : he had a strong sense of coherence to maintain his health, he believed that he would not die from the disease, he examined the literature to comprehend the disease (since informed consent had not been achieved sufficiently in those days), and he managed constipation and abdominal distension well by resistance training, special supplements and devised abdominal massage. Furthermore, he sometimes felt irrational and alienated during his hospitalization, because his value judgment fostered through his long career of journalist was not respected during his treatment. This should be given consideration in future.
著者
影山 照雄 鮫島 恭夫 小島 孝昭 澤津川 勝市 白石 武昌
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.339-346, 1994-12-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
13

「耳鍼療法」は, 肥満 (症) 治療の一つとして時に劇的に減量効果を及ぼすという。その健常者の体重に及ぼす影響を検討した。6週間の「耳鍼留置」により, 漸次体重は減少し, 有意 (p<0.01) な体重減少者は増加した。その体重減少効果は抜鍼後 (2週) にも及んだ。抜鍼後2~3月後には概ね実験開始前の値に復し,「耳介鍼刺激」は体重減少作用があることを確認した。「耳介鍼刺激」による減量作用と食欲減少には相関がみられ, 実験動物 (ラット) での実験で明らかとなった耳介刺激が視床下部ニューロン活動を修飾することが非肥満, 健康者でも示唆された。
著者
白鳥 美和 江口 睦志 仲 大地
出版者
日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
雑誌
日本プロテオーム学会大会要旨集
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.119, 2005

生命活動において蛋白質は様々な相互作用を介して機能しており,今後,膨大なゲノム情報を生かしつつ,新たな機能を有する蛋白質を効率的かつ有効に見出す手法が望まれる。特にDNAやRNAの解析が,PCR等によりin vitroで簡便に増幅して行うことが出来るのに対し,目的とする活性を指標に精製された蛋白質は直接増幅させる手段はなく,その過程で収量が減少するなど解析は一般的に容易ではない。この問題を解決するアイディアとして,蛋白質とそのアミノ酸配列情報をコードした遺伝子が直接結合している分子の利用が考えられる。なぜなら蛋白質の機能に基づいて選択操作の後,その核酸部分を増幅させることにより,選択された蛋白質を簡便に同定することが可能となるからである。 無細胞タンパク質ディスプレー法(CFPD法/IVV法)は,生物由来あるいはランダムに合成された核酸ライブラリーを用い,これらから転写されたmRNAとその翻訳産物である蛋白質が共有結合した分子(対応付け分子)をin vitroで形成させる技術である。本技術はチロシルtRNAの3'末端と類似した構造をもつピューロマイシンの特性を利用している。この分子をリンカーを介してmRNA の3'末端に連結し,これを無細胞蛋白質合成系で翻訳させると,mRNAと結合したピューロマイシンは合成されたペプチド鎖のC末端に取り込まれる。その結果,mRNAと翻訳された蛋白質が共有結合で連結した分子が形成されるのである。例えば,この技術を利用して対応付け分子のライブラリーを調製後,目的の物質に対する選択操作とその核酸部分の増幅による再ライブラリー化の工程(濃縮サイクル)を繰り返すことによって,この物質に対して相互作用する蛋白質を高度に濃縮し,これを同定することが可能となる。さらにこの技術は全ての操作を無細胞系で行うため,細胞を使用する際に生じる形質転換効率等の制限が全く生じない。そのため,一度に大規模な分子数を有する核酸ライブラリー(約1013分子_から_)を対象に,簡便かつ迅速に目的とする蛋白質を選択し,これを増幅することができる。本発表ではこの技術の応用例として,創薬ターゲット分子に対して相互作用する蛋白質の解析例,薬剤標的蛋白質の解析例を紹介するとともに,蛋白工学的手法として機能性ペプチドを探索したり,高活性な蛋白質を創造したりするための様々な応用について紹介する。
著者
長塚 正晃 齋藤 裕 白土 なほ子 藤原 紹生 小塚 和人 奥山 大輔 千葉 博 矢内原 巧
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.777-783, 1999-09-01
参考文献数
23
被引用文献数
4

目的 : Insulin-like growth factor-I (IGF-I)は思春期の身体発育に密接に関与し, 性ステロイドホルモンと強い関連を示すことが知られている. なかでも強い生理活性を有するこれらの遊離型血中濃度の推移が初経発来と身体発育のkeyとなっている可能性がある. そこで今回, 初経発来周辺期で連続追跡し得た思春期女子の身体発育と血中遊離型(f)-IGF-Iと性ステロイドホルモンの推移を, 初経発来を中心に検討した. 方法 : 9歳から12歳の健康な女子20名を対象に4年間連続追跡した. アンケート調査により, 対象の初経発来時期, 1年間の身長増加量(身長増加速度)を求めた. また血中f-IGF-IはSep-PakC_<18>カラムを用いて酸エタノール法により抽出後RIA法により測定した. 血中free testosterone, estradiol値はRIA法で, sex hormone binding globulin (SHBG)をIRMA法で測定した. 成績 : 1)身長増加速度は初経発来前3年(5.6±1.0cm/year, mean±S.D.)から初経発来前1年(7.3±1.6)まで有意(p<0.05)に増加し, 初経発来後2年(3.1±1.3)まで有意に減少した(p<0.01). 2)血中f-IGF-I値は初経発来前3年(3.9±2.0ng/ml)から初経発来前1年(8.1±2.6)と有意(p<0.05)に増加し, 身長増加速度と同様初経発来後2年(3.9±1.5)まで有意(p<0.05)に減少した. 血中free testosterone値は初経発来前3年から初経発来後2年まで有意に増加する一方, 血中SHBG値は初経発来前3年(75.0±13.2nmol/lから初経発来前1年(39.7±14.5)まで有意(p<0.01)に減少した. 3)身長増加速度は血中f-IGF-I値と有意な正の相関(p<0.01)を認める一方, 血中free testosterone値とは初経発来前の身長増加速度にのみに有意な正の相関(p<0.05)を認めた. 結論 : 初経発来周辺時期の身長増加に血中f-IGF-I値が強く関与していることが示された. また初経発来前の身長増加にはtestosteroneの生理活性の増加が密接に関与することが初めて示された.