著者
井田 諭 金児 竜太郎 今高 加奈子 藤原 僚子 勝田 真衣 白倉 由隆 大久保 薫 東 謙太郎 村田 和也
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.143-151, 2021

<p><b>目的:</b>サルコペニア合併高齢糖尿病患者に対する多面的治療プログラムの,筋力,身体機能,及び骨格筋量への影響を検証すること.<b>方法:</b>伊勢赤十字病院,糖尿病代謝内科に通院している65歳以上の糖尿病患者を対象とした.サルコペニアの診断はAsian Working Group for Sarcopenia 2019を元に行った.四肢骨格筋量の測定は多周波生体電気インピーダンス法,筋力は握力,身体機能は5回椅子立ち上がり検査でそれぞれ評価した.多面的治療プログラム(蛋白質摂取量の適正化,レジスタンストレーニング,及びサルコペニアに関する患者教育)開始前と12週後に,筋力,身体機能,四肢骨格筋指数,及びその他パラメーターを評価し,前後比較した.統計処理には対応のあるt検定を用いた.<b>結果:</b>14例(男性3人,女性11人)が本研究の解析対象となった.平均年齢は74.4±4.7歳であった.多面的治療プログラムにより,握力(男性:23.2±5.6 kgから25.6±5.5 kg,P=0.014,女性:15.5±5.0 kgから18.9±5.0 kg,P<0.001),及び5回椅子立ち上がりテスト(11.2±2.5秒から8.6±1.7秒,P=0.002)の有意な改善を認めた.また,HbA1c(8.1±0.7%から7.7±0.9%,P=0.004)の有意な低下も認められた.一方,四肢骨格筋指数の増加傾向はあったものの有意差は認めなかった.<b>結論:</b>サルコペニア合併高齢糖尿病患者に対する多面的治療プログラムにより,筋力及び身体機能の改善が認められた.</p>
著者
白勢 洋平 上原 誠一郎
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

日本列島には花崗岩体に伴い多くの規模の異なるペグマタイトが分布している。しかしながら、Liが濃集するような組成的に発展したペグマタイトの数は限られている。本研究では、東北日本の北上帯に位置する岩手県崎浜、阿武隈帯に位置する茨城県妙見山、西南日本内帯の北部九州に位置する福岡県長垂、西南日本外帯に位置する宮崎県大崩山のLiペグマタイトについて鉱物学的研究を行い、特に電気石の化学組成の変化の傾向について比較を行った。いずれのLiペグマタイトも産状や産出鉱物が大きく異なるが、共通して電気石を多く産する。また、電気石はペグマタイト岩体の縁辺部から中心部にかけて連続的に分布しており、それぞれ産状や肉眼的特徴も異なる(e.g., 白勢・上原2012; 2016; Shirose and Uehara, 2013)。電気石超族鉱物はXY3Z6(T6O18)(BO3)3V3Wの一般式で示され、X = Na,Ca,K,Y = Fe2+,Mg,Mn2+,Al,Li,Fe3+,Cr3+,Z = Al,Fe3+,Mg,Cr3+,T = Si,Al,V = OH,O,W = OH,F,Oなどの元素が入る(Henry et al., 2011)。Liペグマタイト中では、岩体の縁辺部から中心部にかけて電気石のY席中のFe2+が(Li+Al)に置換される組成変化が顕著であり、それはペグマタイトメルトの組成的な発展を反映している(e.g., Jolliff et al., 1986; Selway et al., 1999)。長垂及び妙見山のLiペグマタイトは他のペグマタイトと比較して規模が大きく、Liに加え、Cs、Taの濃集もみられる組成的に発展したペグマタイトである。また、脈状のペグマタイトであり晶洞を伴わないのも特徴的である。電気石は半自形の放射状集合が多く、粒径は小さい。中心部から産するものは白雲母に変質し濁っているものが多い。崎浜のLiペグマタイトは脈状のペグマタイトであり、晶洞を伴う部分もある。電気石は、石英と連晶組織をなすもの、半自形から自形のものがあり、中心部に向かって伸長している。結晶粒径は大きく径10cmに達するものもある。大崩山のペグマタイトはミアロリティックな空隙を伴うREEペグマタイト中の小規模なLiペグマタイトであり、晶洞を伴う。電気石は半自形から自形のものがある。いずれのペグマタイトにおいても電気石は、縁辺部から中心部に向かって、黒色から濃色、淡色へと色が変化している。EPMAを用いて電気石について化学分析を行ったところ、いずれのペグマタイトにおいても、縁辺部から中心部に向かって電気石のY(Fe2+) ↔ Y(Li+Al)の置換が顕著であった。しかしながら、崎浜の電気石についてはYMn2+を特徴的に多く含み、Y(Fe2+) ↔ Y(Mn2++Li+Al)の置換の後に、Y(Mn2+) ↔ Y(Li+Al)といった置換反応が顕著に生じている。YMn2+の含有量の変化については、産地ごとに異なる組成変化の傾向を示し、大崩山の電気石は晶洞の結晶中で急激にYMn2+に富む(Figure 1)。また、長垂についてはYZn2+の含有(<0.2 apfu)が特徴的である。これらの化学的特徴は共生鉱物とも調和的であり、崎浜では益富雲母の産出が特徴的にみられ、長垂では亜鉛を含有する電気石の周囲に亜鉛スピネルが産出する。電気石の化学組成の変化の傾向を比較することでペグマタイト岩体の持つ化学的な特徴をより詳細に比較することができる。
著者
白石 和弥 石森 裕康 奥村 一 下薗 健志 糸山 享
出版者
関東東山病害虫研究会
雑誌
関東東山病害虫研究会報 (ISSN:13471899)
巻号頁・発行日
vol.2017, no.64, pp.122-125, 2017

<p>神奈川県におけるミナミアオカメムシの分布状況を明らかにするため,2015年から2016年の2年間にわたり,同県内の複数地点の圃場における発生を調査した。2015年の調査では,川崎市において神奈川県内では初めてとなるミナミアオカメムシの発生を確認した。2016年の調査では,川崎市に加えて藤沢市,横浜市でも発生を確認し,小田原市に設置された予察灯への誘殺も確認した。以上の結果から,日本国内での分布域を拡大しているミナミアオカメムシが神奈川県においても定着している可能性があるため,今後の継続的なモニタリングが必要と考えられた。</p>
著者
岡野 レイ子 有村 昌子 堀口 怜子 白澤 奈津紀 大江 豊 橋口 大毅 瀬戸口 香澄
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.167, 2011

【はじめに】<BR> 当院回復期リハビリテーション病棟(以下回復期病棟)では、今年度の目標として「患者1人1人の生活を意識したチーム作り」をテーマとして掲げている。その為、多職種が個々の専門性を活かしながら協力し合い、患者のケアに取り組んでいんでいく必要があると考える。今回、目標に対して他職種間及び各個人の間で、情報共有やゴールの統一ができているのかを調査し、その中でいくつかの問題点や課題が抽出された。これらを踏まえ、今後の取り組みの検討を重ねたのでここに報告する。<BR>【対象・方法】<BR> 回復期病棟において患者に関わるスタッフ35名(NS10名・CW5名・MSW3名・PT8名 OT3名・ST6名)を対象に、カンファレンスの意義や満足度・情報の共有化・目安表の利用状況・ADL表の活用・家族指導・教育制度等についての意識調査を実施した。<BR>【結果】<BR> 昨年から患者の状態把握及びリスク回避のため、取り組んでいる目安表の作成については役立てているという結果であったが、情報の共有化と目標やゴールの統一化という点では、共有できていないことや各職種間での意識の差があることがわかった。<BR>【まとめ】<BR> 今期目標に対し、定期ミーティングで具体的内容としてカンファレンスの充実が挙げられた。しかし、今回の意識調査の中で取り組み内容の把握ができていない職種や、各個人においても意識の差がみられた。現在、当院回復期病棟では、患者の状態を把握し方向性を統一していくために目安表・ホワイトボードの活用、デモやビデオを利用しての動作統一、症例検討会を現在行っているが、まずは、回復期スタッフが同じ目線で取り組みを進めていけるよう考えていく必要があることがわかった。そのための取り組みとして、カンファレンス用紙の変更・カンファレンスチームを編制し、同時に"当院における回復期リハビリテーション病棟とは"というテーマで各職種の専門性の向上と共通理解を図るため勉強会を開催することとした。これらにより知識・観察の視点拡大や情報の共有化による方向性の統一、取り組みに対する姿勢の改善に繋がると考える。今後の問題点として、職種によってはスタッフ不足で個々の負担が大きく取り組みに参加できていない現状がある。これらの検討も今後の課題であると考える。
著者
大久保 敏子 丸山 貴美子 白木 康浩
出版者
信州大学医学部附属病院看護部
雑誌
信州大学医学部附属病院看護研究集録 = Annals of nursing research, Shinshu University Hospital (ISSN:13433059)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.60-67, 2018-03

医療材料の管理においては、病院経営の効率化に加えて感染防止と医療安全のリスク管理が重視されている。当院で使用している閉鎖式輸液ラインは、複数のメーカーの関連製品を組み合わせて使用しており、部署により異なっていた。そのため閉鎖式輸液ラインの関連製品の種類が多かった。そこで、関連製品を多く使用している部署の状況を調査し、部署の要望を取り入れながら、閉鎖式輸液ラインとその関連製品の標準化に取り組んだ。各部署で使用しているコネクターや延長チューブなどの関連製品を院内で標準化することにより、その品目数を減らし、すべてを在庫品として中央管理することが可能となった。これにより、輸液ラインの接続箇所が減り、専用のデバイスが必要なくなり看護業務の効率化につながった。今まで、部署ごとにおこなっていた取り扱い方法などの看護師への教育は、シンプルとなり病院全体でおこなうことができるようになった。また、閉鎖式輸液ライン関連製品の年間購入金額は、およそ167万円(関連製品の購入額合計の約15%に相当)を削減でき経済効果も得られた。
著者
白峰 旬
出版者
別府大学史学研究会
雑誌
史学論叢 (ISSN:03868923)
巻号頁・発行日
no.46, pp.129-150, 2016-03

高橋陽介氏が著書『一次史料にみる関ヶ原の戦い』(1)を昨年(2015年)11月に自費出版された。高橋氏からは筆者に対して謹呈送付していただき、感謝している。早速のその内容を拝読したところ、関ヶ原の戦いに関する高橋氏の新説による見解と、筆者(白峰)による私見との間に解釈の相違がある箇所も見られるので、本稿では、そうした点も含めて、高橋氏の新説を検証していきたい。 高橋陽介氏の著書『一次史料にみる関ヶ原の戦い』(以下、高橋本と略称する)の内容は、以下のような構成になっている(目次とあとがきは省略する)。1 やはり「問い鉄炮」はなかった(6~9頁)2 一次史料のみによって考えるということ 九月十五日付徳川家康書状を読む(10 ~ 13頁)3 では実際にはどうだったのか 九月十七日付吉川広家書状の別解釈 九月十七日付吉川広家書状の別解釈①(14 ~ 17頁) 九月十七日付吉川広家書状の別解釈②(18 ~ 20頁) 九月十七日付吉川広家書状の別解釈③(21 ~ 23頁) 九月十七日付吉川広家書状の別解釈④(24 ~ 27頁) 九月十七日付吉川広家書状の別解釈⑤(28 ~ 30頁) 九月十七日付吉川広家書状の別解釈⑥(30 ~ 33頁) 九月十七日付吉川広家書状の別解釈⑦(33 ~ 40頁)4 山中における西軍の布陣について(41 ~ 45頁)5 なぜ西軍は関ヶ原へ向かったのか 九月十二日付石田三成書状を再考する 九月十二日付石田三成書状を再考する①(46 ~ 50頁) 九月十二日付石田三成書状を再考する②(50 ~ 53頁) 九月十二日付石田三成書状を再考する③(53 ~ 56頁) 九月十二日付石田三成書状を再考する④(56 ~ 59頁) 九月十二日付石田三成書状を再考する⑤(59 ~ 68頁)6 南宮山からみた東西両軍の布陣 九月十二日付吉川広家書状による裏付け(69 ~ 77頁)7 島津軍の中央突破・「島津退き口」について(78 ~ 82頁) 以下、順を追って、内容を検証していきたい。
著者
三宅 なほみ 三宅 芳雄 小笠原 秀美 土屋 孝文 白水 始
出版者
中京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、人が新しい分野に挑戦し数年という長い時間をかけて、徐々に専門性を身につけるような積極的な知識構築の過程を、認知科学を対象に実践的に明らかにすることを目的としている。18年度は最終年度であったため、3年間で整備してきた「2年間実施用カリキュラム」を一旦完成させ、報告書にまとめる準備をした。大学で2年間に亙るカリキュラムを展開できる環境は、現実には少ないため、本研究の成果を整理して、1年で同様の学習効果を狙う短縮版カリキュラムについても検討した。以下の3点について成果が上がった。(1)17年度に行った体験型の協調作業(認知研究で扱う課題について、実際納得のいくまで体験し、その過程を話し合うなど協調的に振り返る作業)の課題の検討を継続し、振り返りから研究資料の内容理解へとつながりのある授業展開を試みた。人間にとって「自然にうまく出来る」認知過程を振り返り、協調的に吟味するための具体的なカリキュラム・セットをまとめるための材料が揃いつつあり、これを報告書にまとめる。(2)2年春期から秋期に行う、認知科学の基礎的な考え方を総括的に理解するためのジグソー方式について、素材と、具体的な活動方式について具体的なカリキュラム・セットをまとめるための材料が揃いつつあり、これを報告書にまとめる。(3)上記の体験型協調作業の一部と基礎文献の協調的な理解のためのカリキュラム・セットの一部を組み合わせ、半期(1セメスタ15コマ程度)で実施できるパッケージを作成し、集中講義ならびに他校でのワークショップの際に実際に実施して、他機関への転用可能性を検討した。最終報告書には、これまで発表してきた研究成果に加えて、上記のカリキュラム・セットをまとめ、これらの実施成果を踏まえて、学習者の長期に亙る知識統合を目指した学習理論について報告する。
著者
川本 晃平 金澤 浩 白川 泰山
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101846, 2013

【はじめに、目的】 スポーツ選手はスポーツ外傷および障害を予防するために、日々のコンディショニングが必要不可欠であり、その手段の一つとして物理療法が挙げられる。筆者らがコンディショニングに積極的に用いる機器の一つにINDIBA activ(インディバ・ジャパン)がある。この装置の特徴は0.5MHzの周波数を発し、コンデンサーの原理により温熱刺激を発生させるため、皮膚付近にハイパワーの集中照射をせずに、体内深部の組織まで生体刺激を生み出すことができる点である。また骨や腱など抵抗の高い部位に用いるレジスティブモードと軟部組織やレジスティブモードの前処置に用いるキャパシティブモードの2種類のモードがあり、治療目的によってこれらのモードを組み合わせて実施する。筆者らはこの装置を筋緊張の軽減や疼痛の緩和を目的に軟部組織に用いることで、良好な治療成績を得ている。 本研究では、INDIBA activと他の温熱療法とを比較し、軟部組織の筋硬度および筋伸張性への即時効果の有効性を検証することを目的とした。【方法】 対象は、下肢に整形外科疾患のない健常成人男性10名とした。対象の年齢は24.8±1.9歳、身長は170.5±8.7cm、体重は59.8±1.7kgであった。INDIBA activおよびホットパック(Cat-berry、山一株式会社)を用いた2種類の方法と、コントロールを比較した。方法は、ベッド上にて10分間安静腹臥位となり、大腿長の遠位50%部位の大腿二頭筋の筋硬度の評価を軟部組織硬度計 (伊藤超短波株式会社、OE-220)を用いて行った。また大腿二頭筋の伸張性評価として膝関節伸展位における股関節最大屈曲位での他動的股関節屈曲角度(以下SLR)を測定し、その際の大腿二頭筋の伸張痛をVisual Analog Scale(以下VAS)を用いて評価した。評価後、それぞれの方法を20分間実施し、終了後、評価前と同様に3項目の評価を行い、実施前後での各評価項目および各評価項目の変化率の比較を行った。それぞれの方法について、INDIBA activでは始めの10分間はキャパシティブモードを使用し、その後10分間はレジスティブモードを行った。ホットパックでは20分間バンドを用いて大腿部に固定して行い、コントロールは20分間安静腹臥位をとった。実施時の室温および測定時刻を統一し、各施行の間隔は3日以上あけ、順序は無作為にて決定し、1日に1回のみ実施した。また対象には測定2日前より過度な運動は避けさせるようにし、測定時に大腿二頭筋に疲労感がないことを確認した。 統計学的分析にはそれぞれの方法の実施前後の各評価項目の比較に対応のあるt検定を、各評価項目の変化率の比較に一元配置分散分析を用い、危険率5%未満を有意とした。【倫理的配慮、説明と同意】 対象にはあらかじめ本研究の趣旨、および測定時のリスクを十分に説明したうえで同意を得た。本研究は、医療法人エム・エム会マッターホルンリハビリテーション病院倫理委員会の承認を得て行った(承認番号MRH120015)。【結果】 それぞれの方法の実施前後での各評価項目について、ホットパックおよびINDIBA activでは3項目全てにおいて実施前後で有意に改善がみられた(p<0.01)。コントロールでは筋硬度およびVASにて有意に変化がみられ(p<0.05)、SLRは変化がみられなかった。変化率について、筋硬度ではINDIBA activがホットパックおよびコントロールに比べて有意な低下がみられた(p<0.01)。またホットパックがコントロールと比較して有意に低下した(p<0.05)。SLRでも同様にINDIBA activがホットパックおよびコントロールに比べて有意な改善がみられ(p<0.01)、ホットパックがコントロールと比較して改善がみられた(p<0.01)。VASについて、INDIBA activがコントロールと比較して有意に改善がみられたが(p<0.01)、INDIBA activとホットパックおよびホットパックとコントロールでは差はみられなかった。【考察】 本研究では、2種類の方法による筋硬度および筋伸張性の即時効果の比較を行った。温熱療法によって軟部組織の温度が上昇すると粘弾性が低下し、軟部組織の伸張性が増加することから(鳥野、2012)、今回の結果より大腿二頭筋に対して十分な温熱刺激を与えることができたと考える。特にINDIBA activでは筋硬度およびSLRがホットパックとコントロールと比較し、有意に改善した。このことからINDIBA activ は2種類のモードを組み合わせて温熱刺激を加えることで、ホットパックと比較して筋硬度および筋伸張性が改善したことが考えられた。【理学療法学研究としての意義】 臨床で各種物理療法を行う際は、即時的な効果が期待できることが重要である。今回の研究よりINDIBA activが一般的に温熱療法として多用されているホットパックに比べ、筋硬度およびSLRを有意に改善させることが示されたことから、特に筋緊張の軽減やストレッチの前処置などに有用な手段の一つになると考える。
著者
奥村 太朗 加藤木 丈英 小谷 俊明 川合 慶 白井 智裕 赤澤 努 佐久間 毅 南 昌平
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0528, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】思春期特発性側弯症(以下:AIS)は思春期に誘因なく発症する側弯症である。運動が盛んに行われる時期に進行し,不良例は手術に至る。脊柱の側弯が運動能力に及ぼす影響はほとんど明らかにされておらず,AIS患者と健常者の運動能力差に関しても明らかになっていない。そこで本研究の目的は,新体力テスト結果を用い健常者と比較し,AIS患者の運動能力を明らかにすることである。【方法】対象者はAIS患者17例(男性2例,女性15例),手術時平均年齢14.5±1.6歳とした。全例胸椎右凸カーブで,平均Cobb角は53.3±9.6であった。検討項目は,手術前の新体力テストの種目別記録(上体起こし,長座体前屈,反復横跳び,20mシャトルラン,50m走,立ち幅跳び,ハンドボール投げ,握力)と総合得点とし,文部科学省の発表する同年代の健常者標準値と比較した。なお種目別記録は年齢別平均値より偏差値を算出し正規化した。統計処理は,AIS患者と健常者における各種目別の偏差値と総合得点を対応のないt検定で比較し,有意水準を5%以下とした。【結果】AIS患者の新体力テストの種目別記録において,上体起こし41.6±10.2(p=0.005),長座体前屈44.7±8.9(p=0.03),ハンドボール投げ42.6±7.4(p=0.001),総合評価45.1±5.4(p=0.002)で健常者と比較し有意に低下していた。【考察】本研究により筋持久力を表す上体起こし,柔軟性を表す長座体前屈,巧緻性を表すハンドボール投げが健常者と比較し有意に低下していた。上体起こしは,AIS患者はCobb角の進行を抑えるために長期間のコルセット着用が義務付けられる。コルセットは体幹を前後左右から締め付けて体幹を支持する。その影響により体幹の可動性が減少し,腹筋群や背筋群などの体幹筋力の低下を惹起すると考える。さらに,Cobb角の進行とともに体幹筋力が低下するという報告もあり,双方の関与が示唆される。長座体前屈は,長期間のコルセット着用により胸椎・腰椎の可動性が制限されたことも原因の一つであると考える。また,側弯症は脊柱が捻じれを伴いながら曲がっていく疾患であり,傍脊柱起立筋にも左右差が出現するという報告があり,筋の伸張性の左右差や椎間関節の左右の可動性の違いの関与も示唆される。ハンドボール投げは,凹側に比べて凸側の肩関節に不安定性が強く,肩甲胸郭関節の動きが制限されるとの報告があり,その関与が示唆される。また,小学校時代からコルセット療法が開始されている患者も多く,ボールを投げる等の運動経験自体が少ない可能性も示唆される。さらに,総合得点が有意に低下していることから,AIS患者は同年代の健常者よりも総合的に運動能力が劣っていることが明らかとなった。この結果は脊柱側弯が運動能力に何らかの影響を与えている可能性を示唆させるものであった。しかし,今回は運動部所属の有無や運動習慣歴などを考慮しておらず,AIS患者の日常生活と運動能力との関係性を明らかに出来ないことは,本研究の限界であると考える。【理学療法学研究としての意義】AIS患者は健常者より運動能力が劣っており,脊柱側弯が運動能力に少なからず影響していることが示唆された。この時期の運動能力低下は,今後成人を迎えていくAIS患者のライフスタイルに大きく影響する可能性がある。側弯症を有していても高いレベルの競技者も大きくいるため,AIS患者の運動に対する意識を高めて運動を推奨していく必要があると考える。
著者
坂本 雄司 白井 良成 高田 敏弘 片桐 滋 大崎 美穂
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.1-4, 2012
参考文献数
3

探索目標に関する映像中の位置情報を用いて録画データからインタラクティブに目標を探索する手法を提案する.手法の考え方は発掘作業になぞらえることができる.地層を掘り下げるように,利用者はスコップのような道具と目標位置に関する補助情報を用いて過去映像を掘り下げ,目標映像を探す.手法を実装したシステムの詳細とその評価実験の結果を紹介する.
著者
白田 剛 高柳 友子 水上 言 佐藤 江利子 石垣 千秋
出版者
日本身体障害者補助犬学会
雑誌
日本補助犬科学研究 (ISSN:18818978)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.38-45, 2007-07-01 (Released:2007-10-12)
参考文献数
3
被引用文献数
1 3

目的 : 良質な介助犬を安定的に育成するためには、使用者の障害・疾患ごとにどのような費用がどの程度発生するのかの予測は重要である。本研究は、介助犬にかかる費用の使用者の障害・疾患別の推計を目的とする。方法 : 胸腰髄損傷、頚髄損傷、リウマチの3つの障害・疾患について、それぞれモデルケースを設定し、介助犬訓練事業者を対象としたアンケート調査および聞き取り調査をもとに、介助犬の一生にかかる費用項目を積算し、推計した。結果 : 各モデルケースごとの介助犬の一生にかかる費用は、胸腰髄損傷 : 約388万円~458万円、頚髄損傷 : 約411万円~481万円、リウマチ : 約470万円~539万円と推計された (非適性犬にかかった費用を含まない)。考察 : 障害・疾患によって費用が変化する要因としては、訓練期間の長期化、自助具の作成費用、継続指導の頻度の相違などがあげられる。今後、使用者のニーズごとの訓練メニューを整備していくことが重要になると考えられる。
著者
小出 瑞康 関崎 敬広 山田 修一 高橋 勉 白樫 正高
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集B編 (ISSN:18848346)
巻号頁・発行日
vol.77, no.775, pp.702-714, 2011 (Released:2011-03-25)
参考文献数
11
被引用文献数
5 4

The target of this research is to develop a micro electric power generator for a low cost small river monitoring device. First, the power generation by VIVs, its efficiency coefficient and the optimum condition of the generator were estimated from energy balance analysis based on the assumption that VIVs can be regarded as a resonance oscillation of a linear system. Second, water tunnel experiments were carried out and it was confirmed that the trailing vortex induced vibration (TVIV) occurs on a cruciform circular-cylinder/strip-plate system over a velocity range about 15 times wider than that of Karman vortex induced vibration (KVIV). Finally, power generation experiments were carried out by utilizing TVIV. The generator circuit consists of coils mounted on the circular cylinder vibrated by TVIV and magnets fixed on rigid supports. The generator is shown to extract energy from the water flow in the same way as a viscous damper over the expected velocity range. Although the efficiency coefficient of TVIV is lower than that of KVIV, it is more appropriate for natural rivers of which flow velocity changes greatly.