著者
堀江 翔太 水池 千尋 水島 健太郎 三宅 崇史 稲葉 将史 久須美 雄矢 石原 康成 立原 久義 山本 昌樹
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0411, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに】足部の動的アライメントの異常は,有痛性下肢疾患の原因の1つとされている。足部アライメント異常によるToe Outの蹴り出しでは,上行性運動連鎖により膝がKnee Inを呈することが知られている。このようなアライメントを呈する症例への理学療法に対して,体幹や股関節筋力の強化によって治療効果が得られた先行研究も散見される。しかし,日常診療においては,足部筋力が低下している症例を多く経験する。我々が渉猟した限りでは,足部の動的アライメント異常と母趾筋力の関係について不明な点が多い。そこで本研究の目的は,足部の動的アライメント異常と母趾筋力の関係を明らかにすることである。【方法】対象は,下肢に整形外科的疾患を有さない健常成人17人33足を,立脚後期にToe Outで蹴り出しを行う群(以下,TO群)14人14足(男性:7人7足,女性7人7足,平均年齢:33.3±5.2歳)と,立脚後期にToe Outで蹴り出しを行わない群(以下,C群)19人19足(男性:12人12足,女性:7人7足,平均年齢:29.5±5.3歳)の2群とした。これら2群は,動的アライメントで分類し,対象者の裸足歩行をデジタルビデオカメラで撮影し,立脚後期での蹴り出し時の足部の状態で判断した。除外条件は膝伸展位での足関節背屈角度が5°以下,フットプリントより外反母趾,扁平足や凹足などのアライメントを呈する者とした。筋力の測定肢位は,端坐位で股関節と膝関節を90°屈曲位とし,母趾屈曲および母趾外転筋力をハンドヘルドダイナモメーター(マイクロFET2,日本メディック社製)を用いて測定した。母趾屈曲筋力は,足関節底背屈中間位と最大底屈位での2条件とし,母趾外転筋力が足関節底背屈中間位で測定した。対象者に方法を十分に習得させた後,3秒間の最大努力で2回測定し,平均値を体重で除した値を採用した。統計処理には,足部の動的アライメントによる比較を対応のないt検定を用いて行った。なお,有意水準は危険率5%未満とした。【結果】足関節底背屈中間位での母趾屈曲筋力は,TO群が0.08±0.03kgF/kg,C群が0.11±0.03kgF/kgであり,TO群が有意に低値を示した(p<0.05)。足関節底屈位での母趾屈曲筋力は,TO群が0.04±0.01kgF/kg,C群が0.06±0.02kgF/kgであり,TO群が有意に低値を示した(p<0.05)。母趾外転筋力はTO群が0.03±0.01kgF/kg,C群が0.04±0.02kgF/kgであり,2群間に差を認めなかった。【考察】足部の動的アライメント異常の原因は,局所や全身の問題など様々な要因がある。本研究の結果,TO群の母趾屈曲筋力は,足関節底背屈中間位と足関節底屈位の両条件において低値を示した。TO群では,デジタルビデオカメラで撮影した歩行において蹴り出し時の母趾伸展が少ないことが確認できた。歩行では,蹴り出し時に強制的に母趾が伸展されるため,母趾屈筋力が必要となる。Toe Outの蹴り出しでは,母趾の伸展角度が少なくなることから,母趾屈筋群の活動が低下することが予想される。すなわち,母趾屈筋群の筋力低下がある場合,Toe Outによる代償的な蹴り出しを行う可能性がある。また,TO群における長母趾屈筋や短母趾屈筋の筋力低下は,これを反映した結果であると考えられる。母趾外転筋の筋力は,動的アライメントによる差を認めなかった。これは,Toe outによる母趾外転筋の活動に与える影響が少ないことを示唆しているものと考えられた。本研究は,母趾のみを対象とした研究であり,足趾および足部の筋力や機能,脛骨の外捻角度や体幹・股関節機能など,動的アライメント異常を呈するその他の要因との関連性は不明である。今後,これらについても検討していく予定である。【理学療法学研究としての意義】立脚後期にToe Outでの蹴り出しを行っている例では,母趾機能が低下していた。すなわち,足部の動的アライメントの異常は,足部機能の低下が原因の一つとなっている可能性が示唆された。このことから,足部の動的アライメント異常に対する理学療法において,足部の局所的な評価や治療の必要性を示したものと考えられる。
著者
稲葉 愛美
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

水中の腸管系ウイルスの感染リスクの評価を確立させるために、感染性ウイルスの存在を評価する必要がある。そのためには、水環境中に存在するウイルスの不活化に影響する要因を正確に解明する必要がある。これまでは、UVや消毒など、物理的、化学的要因に着目し、ウイルスの不活化を評価したものに限られていた。しかし、水環境中のウイルス不活化要因に細胞外タンパク質分解酵素が関与している可能性が予測されるが、不活化に影響する酵素の種類や放出する微生物に関する知見はない。ウイルスの不活化に影響する酵素活性の種類、その様な活性をもつ酵素を放出する細菌、水環境、季節性などの差異によるウイルス不活化の違いなどを明らかにする必要がある。そこで本研究では、市販、細菌株由来、環境水中に存在するタンパク質分解酵素に着目し、対象とした腸管系ウイルスの不活化影響を評価する。そこで、実際の酵素反応による不活化実験を行う前に、in silicoによる解析を行った。データベース上に既に報告されている対象ウイルスのアミノ酸配列情報に対し、既存のエンドペプチダーゼの切断活性による切断部位が存在するかの解析を行った。ExPASyのPeptideCutter(https://web.expasy.org/peptide_cutter/)による解析の結果、多いものでは数百の切断部位が検出された。このことから、既存のタンパク質分解酵素の活性により、カプシドタンパク質が分解される可能性が高いことが示唆された。また、切断部位数の差から、ウイルス種ごとに酵素により不活化影響が異なる可能性が示唆された。
著者
稲葉 智之 高橋 和明
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.87-92, 1996 (Released:2018-05-05)
参考文献数
28
被引用文献数
5 7

ジャイアントパンダの疑似母指は"パンダの親指"として有名であるが, レッサーパンダの疑似母指骨格に関する報告はほとんどみられない。本報告では2例のレッサーパンダを用いて, 主要骨格の所見ならびに手根部骨格のひとつである橈側種子骨の形態とそれに付着する筋肉などについて調べた。手根部骨格は, 他の食肉目と同様に7種の骨からできており, 中間橈側手根骨の外側には1個または2個の種子骨がみられた。この橈側種子骨は第一中手骨の2分の1程度の長さがあった。2例から橈側種子骨の発生過程を考察すると, 初めから大きな種子骨ができるのではなく, 2種類の筋肉内で各々に発生, 成長した種子骨が合体して形成されると考えられた。橈側種子骨には, 短第一指外転筋と短第一指屈筋ならびに長第一指外転筋が付着していた。また, 橈側種子骨の外側を固定する靱帯としては, 手根種子骨外側靱帯と中手種子骨背側靱帯があり, 手掌側を固定する靱帯として手根横断靱帯と手根種子骨手掌靱帯が認められた。レッサーパンダの橈側種子骨は, ジャイアントパンダと同じように疑似母指として機能可能な運動性を有することが示唆された。
著者
呉羽 真 近藤 圭介 一方井 祐子 稲葉 振一郎 神崎 宣次 寺薗 淳也 吉永 大祐 伊勢田 哲治 磯部 洋明 玉澤 春史
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、宇宙科学技術の社会的インパクトを明らかにし、またその発展に伴って社会が直面する諸課題と対応策を特定することを通して、宇宙科学技術と社会の望ましい関係性を構想することに取り組む。このために、「宇宙文化」、「宇宙と持続可能性」、「宇宙科学技術コミュニケーション」、「宇宙開発に関する社会的意思決定」の4つのテーマに関する研究を実施する。
著者
稲葉 利江子
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.72-76, 2022-01-15

大学入試センターは,2021年3月24日に公表した2025年に実施する大学入学共通テストの教科・科目の再編案において,「情報」を新たに導入し,国語や数学などと並ぶ基礎教科とする方針を示した.これを受け,FIT2021(第20回情報科学技術フォーラム)において,日本学術会議情報学委員会情報学教育分科会,情報処理学会,電子情報通信学会が主催となり,公開シンポジウム「大学入学共通テスト『情報』が目指すもの」が,2021年8月26日にオンライン開催された.本稿では,公開シンポジウムの内容について報告するとともに,大学入学共通テスト「情報」の動向について述べる.
著者
小谷 斉之 大内 茂人 稲葉 毅
出版者
釧路工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本事業は災害現場等の危険領域探査や遠隔地への自律搬送への利用が期待できるCMG搭載型無人二輪車の開発を目的とし,CMGを疑似荷重移動装置として応用した高機動化制御の制御系設計と制御手法の確立および外界センサ測定による周囲環境に応じた自律走行制御を目指している。2輪バイクによる旋回走行では予め車体をバンクさせる必要があるため,適切なタイミングでCMGによる疑似荷重移動によって車体のバンク動作をさせながら滑らかな旋回走行が実現可能となる。そこで,適切なタイミングを図れるように,走行可能な領域と回避すべき障害物を事前に把握するための周囲環境測定を行う。昨年度の研究計画では,自律走行制御のための周囲環境測定手法としてステレオカメラを用いた自己位置推定を当初予定していたが,研究に遅れが出たため,膨大なデータ容量管理と構築に時間がかかる本方式から修正し,レーザー測域センサ方式を用いて処理を軽減した周囲環境構築を行うように研究計画を変更して実施した。しかしながら,コロナウィルス予防による度重なる自粛要請の影響によって実験機を用いた実験データを取得することができなかった。このため,十分な実験に基づいた有効性を検証できていないため,国内外での発表ができていない現状である。
著者
大森 正子 和田 雅子 西井 研治 中園 智昭 増山 英則 吉山 崇 稲葉 恵子 伊藤 邦彦 内村 和広 三枝 美穂子 御手洗 聡 木村 もりよ 下内 昭
出版者
一般社団法人 日本結核病学会
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.77, no.10, pp.647-658, 2002-10-15
参考文献数
15
被引用文献数
4

検診成績を利用し中高年齢者の結核発病予防の方法論と実行可能性を検討した。対象は50~79歳男女, 胸部X線で1年以上変化のない陳旧性結核に合致する陰影があった者 (440名) のうち, 住所の提供, 研究への同意, 事前の諸検査で問題のなかった29名となった。治験対象者を無作為に6カ月のINH服薬群 (14名), 経過観察のみの非服薬群 (15名) に分けた。服薬中副反応を訴えた者は6名 (42.9%), うち治療開始後2週以内に胃腸症状を訴えた2名 (14.3%) は肝酵素値に異常はみられなかったが服薬を中止した。副反応を訴えなかった者でも2名に肝酵素の上昇が認められた。その異常は服薬開始2カ月後から出現し, 長く継続した者でも服薬終了後には正常値に戻った。これまで追跡不能は3名, 1名は服薬終了時X線上活動性結核と診断, 1名は8カ月目に乳癌が再発, 1名は2.5年目に肺腺癌と診断。この他4例で陰影拡大が疑われたが結核発病は確認されていない。副反応, 偶然の事故等がかなり高率であり, 本事業を集団的に推進するには, 副作用の頻度とそれを上回る有効性を確認するより大規模な調査が必要である。それまでは個別の臨床ベースでの実施で対応し, 高齢者対策としては早期発見・治療に重点を置くべきだろう。
著者
稲葉 振一郎 保田 幸子
出版者
明治学院大学社会学部付属研究所
雑誌
明治学院大学社会学部付属研究所研究所年報 = Bulletin of Institute of Sociology and Social Work, Meiji Gakuin University (ISSN:09114831)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.135-148, 2016-01-06

【特別推進プロジェクト/The Research Project】「大災害と社会―東日本大震災の社会的影響と対策の課題」
著者
大河内 正一 石原 義正 稲葉 慎 上平 恒
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.68, no.8, pp.1215-1218, 1994-08-01 (Released:2008-02-14)
参考文献数
13
被引用文献数
4 5

The line width (full width at half maximum intenslty) of 170 nuclear magnetic resonance signals and the spin-lattice relaxation time, T1, of aged commerclal distilled spirits and aqueous ethanol solutions were measured at 298K. The values of T1 for the 17O nucleus of water (which reflects the mobility of the water molecule) in both kinds of preparations did not change over the pH range of 2 to 13, but the line width broadened at pH from 5 to 9, as did that of pure water. That the broadenlng, whlch reached about 1OO Hz at pH7.0, depended on pH seemed to be due to changes in the exchange rates of protons. The T1s of the aged commercial splrits and the ethanol solutions of the same concentration were almost the same. Therefore, when the line width of the 170-NMR signal is to be used as an index of the aging of spirits, it must be taken into account that the width depends on the pH of the materials.