著者
原田 敦 松井 康素 竹村 真里枝 伊藤 全哉 若尾 典充 太田 壽城
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.596-608, 2005-11-25 (Released:2011-03-02)
参考文献数
67
被引用文献数
7 8

老年病の需要増加に対する有限の医療・介護資源をいかに合理的に活用するかが問われている. 本稿では, 骨粗鬆症・骨折の疫学と費用を述べ, 次いで費用対効果の研究を介入法別に総説した. 骨粗鬆症性骨折による生命予後及び機能予後の悪化, 並びにQOL低下の存在は多くの研究から明らかで, 骨粗鬆症治療の効果はQOLを考慮した質調整生存年 (QALY) によって測定され, 費用・効用分析にて解析されるべきである. 従って, その費用対効果は, 単なる得られた生存年ではなく, 獲得されたQALY当たりの費用で評価されるのが適正で, QALYも得られ, 費用も節減が最も望ましいが, 妥当な費用閾値を越えなければ費用対効果は良好とされる.骨粗鬆症・骨折における治療の費用対効果は, 対象の有する骨粗鬆症性骨折リスクと介入法の効果及び費用に依存しており, 特に骨折リスクとしての年齢と介入費用の影響が強かった. 高価な治療であっても高齢であれば, 平均骨折リスクの女性では合理的費用対効果が認められ, 安価で効果のある治療なら, 閉経直後の正常女性でも合理的費用対効果が得られる. さらに介入効果として薬剤中止後の効果残存にも費用対効果は大きく左右され, 効果残存のない薬剤では, 最も安価でかつ最大の効果のある場合以外は, 費用対効果を得るのは困難とする報告もあった.介入法ごとの費用対効果を現時点の文献をもとに検討すると, HRTに関しては, 有益作用を有害作用が上回った最近の報告を元にした検討はまだ発表されていない. アレンドロネートは既存脊椎骨折のある高齢骨粗鬆症女性で十分な費用対効果が認められ, 効果は対象が高齢の方が優れており, 既存脊椎骨折を有する方が脊椎骨折のない場合より優れていた. リセドロネートも65歳以上の骨粗鬆症女性では既存骨折にかかわらず, 良好な費用対効果を示し, 既存骨折があれば70歳以上ですべて費用節減に至った. カルシウムとビタミンD併用は大腿骨頸部骨折リスクを減少し, 高齢女性で費用節減に到達した. ラロキシフェンは乳癌抑制作用も合わせると, 既存骨折の有無にかかわらず, 骨粗鬆症女性における費用対効果はどの年代でも良好であった. ヒッププロテクターは, 高齢者においては男女とも費用節減で, 特に高齢女性では大きい費用節減とQALY獲得が予測された.このように骨折リスクの高い高齢者にも費用対効果が十分期待できる介入法がいくつかあり, それらによる積極的な治療は医療経済的にも大いに有意義であると考えられる.
著者
若井 勲夫
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 人文科学系列 (ISSN:02879727)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.172-147, 2008-03

唱歌・童謡・わらべ歌など、広く童歌、子ども歌と称せられる歌謡は、長年にわたって歌い継がれ、親しまれてきているのに、それらの歌詞の内容や言葉の意味についてはそれほど注意されずに過ぎてきた。その要因の一つはこれらは幼少の子が歌うものであって、本格的な研究対象にし難く、一部の音楽に関心のある者が総括的に取上げて一般書として公刊される程度であった。最近は、興味本位の、根拠のない思いつきの論も世に出ている。そこで、本稿では今までいろいろな解釈が提示され、なお決着がつかず、諸説のある童謡・わらべ歌について、国文学だけでなく、国語学の研究に基づいて、歌詞の言葉や表現を精しく分析し、考証し、言語主体の言語意識や表現意識を考究し、作品全体の構想や主題を明らかにして、その歌の意味づけを定めようとした。 本稿では四編を取上げ、まず「赤蜻蛉」は「負はれて見た」「小籠に摘んだ」と「お里のたより」の照応に着眼して、表面的には姐やを歌うが根底に母への思いがあることを一部の説を評価した上で論じ、その上に、最後の連を故郷の原風景として捉え直した。「七つの子」の「七つ」は七羽という数を示すのではなく、七歳という年齢を表すことを、国語学、国文学、民俗学などの面から究明し、ここに日本人の根本的な意識・感情があることを論じた。「雪」はわらべ歌の「雪やこんこん」を取り入れたもので、この「こんこん」は「来む来む」であるという説を多くの用例を挙げて補強し、併せて、命令表現の意味をも考えた。「背くらべ」は「羽織の紐のたけ」は長さではなく、高さであることを語源、原義から明らかにし、「何のこと」「やっと」に込めた言語主体の表現意識を探った上で、第二連との対応も考え合せ、新しい説を提起した。なお、次号(下)では「かごめかごめ」と「通りゃんせ」について論究する。
著者
及川 哲郎 米田 吉位 玄 世鋒 小田口 浩 若杉 安希乃 猪 健志 橋口 一弘 滝口 洋一郎 花輪 壽彦
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.615-620, 2011 (Released:2011-12-27)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

沢瀉湯は,水毒徴候を目標としてめまいに用いられる。しかし,水毒徴候の改善が沢瀉湯の臨床効果に繋がっているか,未だ明確ではない。そこで,沢瀉湯投与症例における症状などの改善度と,水毒徴候の改善度との関連について検討した。沢瀉湯を4週間投与しためまい患者20名に対し,自覚症状に関するアンケート調査や水滞スコア判定,各種平衡機能検査を施行,これらをスコア化したのち,投与前後における各項目間の関連につき統計学的に解析した。その結果沢瀉湯投与後において,めまいと随伴症状を合わせた全自覚症状の改善度は,水滞スコア改善度と有意に相関した。平衡機能検査改善度に関しては,水滞スコア改善度と関連する傾向が認められた。これは,沢瀉湯の臨床効果と水毒徴候の改善がある程度関連することを示唆し,条文の記載を裏付ける知見である。従って,水毒徴候の存在は沢瀉湯の使用目標として一定の妥当性を有すると考えられる。
著者
猪 健志 小田口 浩 若杉 安希乃 及川 哲郎 花輪 壽彦
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.86-92, 2013 (Released:2013-09-13)
参考文献数
27
被引用文献数
1 4

耳鳴は現代医学ではしばしば治療に難渋する。漢方薬の有効例の報告がいくつかあり,漢方薬が耳鳴の治療法として期待される。今回我々は,慢性耳鳴患者に対する漢方随証治療の有用性についてカルテを後ろ向きに検討した。対象は331例(男性114例,女性217例)であり,平均年齢は57.8歳であった。耳鳴に対する有効率は38.4%であり,随伴症状(めまい,不眠,頭痛等)に対する効果も含めると有効率は64.6%であった。半夏厚朴湯が最も多く処方されており,耳鳴に対する有効率は32.1%であった。また,釣藤鈎を加味することで有意に有効率が高くなった(p < 0.05, Fisher's exact test)。釣藤鈎は,その効能や現代薬理作用から考えて,耳鳴に有効である可能性がある。対象の84%が当院受診前に治療を受けており,前治療に効果のない難治例が多かったと考えると,漢方治療は相当程度有効である可能性がある。
著者
若林 玲奈 宮腰 尚久 土江 博幸 永澤 博幸 島田 洋一
出版者
東日本整形災害外科学会
雑誌
東日本整形災害外科学会雑誌 (ISSN:13427784)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.483-486, 2019 (Released:2020-01-29)
参考文献数
14

BCG接種後の副反応に関してはさまざまな報告がある.今回BCG接種後に右肋骨骨髄炎を生じた症例を報告する.症例は1歳9ヵ月,男児.生後5ヵ月でBCGを接種し,1歳8ヵ月で右前胸部の腫瘤を触知した.切開生検による病理組織学的検査にて,乾酪壊死と多核巨細胞の出現を伴う類上皮細胞肉芽腫を認め,BCG接種後骨髄炎と診断した.イソニアジドとリファンピシンを内服することにより治癒している.
著者
若井 明彦 佐藤 真吾 三辻 和弥 森 友宏 風間 基樹 古関 潤一
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.79-90, 2012 (Released:2012-03-28)
参考文献数
9
被引用文献数
5 7

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震,およびそれに伴う余震によって,東北地方は甚大な被害を受けた。本稿では,宮城県仙台市周辺の丘陵地におけるいくつかの造成宅地の被害状況について,JGS東北支部・関東支部合同第一次調査団が実施した調査結果をまとめる。まず,これまで仙台市内に造成されてきた宅地群の分布や造成年代を俯瞰し,既往の地震での被害有無との相関性や現象把握の留意点を整理する。続いて,今回の地震で深刻な被害を受けた4つの造成宅地の被災事例を順に報告する。一連の事例紹介に先立ち,1978年宮城県沖地震による同様な宅地被害の後に復旧および地すべり対策工のなされた仙台市太白区緑ヶ丘3丁目地区を取り上げ,同対策工特に地すべり抑止杭の存在と今回の被害箇所との関係について検討するとともに,今後の造成宅地の耐震性向上のための技術上の教訓を取りまとめる。
著者
奥松 功基 辻本 健彦 若葉 京良 関 晶南 固武 利奈 山内 照夫 平山 智志 小林 裕幸 坂東 裕子 山内 英子 田中 喜代次
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.169-176, 2018-04-01 (Released:2018-03-16)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

It has been reported that physical fitness of breast cancer patients is relatively lower due to the cancer treatment such as surgery, chemotherapy, or endocrine therapy. Previous studies have revealed that not only cardiorespiratory fitness but also muscle strength is lower among breast cancer patients than no disease women and these symptoms may aggravate the health-related quality of life. However, there is no study which has focused the physical fitness level in Japanese breast cancer survivors. The purpose of this study was to investigate the physical fitness level and the relationship between exercise habituation and physical fitness level in Japanese breast cancer survivors. Fifty breast cancer survivors participated in this study. Participants were assigned to either exercise habituation group (n=25) or non-exercise group (n=25). We evaluated exercise habituation using an original questionnaire and examined various physical fitness level. Body weight, body mass index, and percent body fat were significantly lower in the exercise habituation group than non-exercise group. T-score of cardiorespiratory fitness was significantly higher in the exercise habituation group than average Japanese women. These results suggested that exercise habituation is relative to body weight and cardiorespiratory fitness level in Japanese breast cancer survivors.
著者
広野 巌 大場 茂 斉藤 喜彦 丹羽 治樹 小鹿 一 若松 一雅 山田 静之 松下 和弘
出版者
天然有機化合物討論会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
no.26, pp.9-15, 1983-09-15

We have examined the constituents of bracken fern, Pteridium aquilinum var. latiusculum and performed fractionation of the boiling water extracts by means of the assay based on carcinogenicity to rats. From the fraction exhibiting carcinogenicity, we have isolated an unstable norsesquiterpene glucoside of illudane type named ptaquiloside (1). The planar structure of (1) has been established on the basis of spectral and chemical means. The carcinogenicity of (1) to rats is currently under investigation.
著者
宮本 直和 川上 泰雄 若原 卓
出版者
鹿屋体育大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

二関節筋である大腿直筋は、解剖学的に遠位と近位の二箇所で大腿神経の支配を受けているが、この二箇所が随意収縮中に別々に制御されているのか否か、また、別々に制御されている場合、それは二関節筋特有のものであるのかについては不明である。本研究で、膝関節伸展および股関節屈曲筋力発揮中に外側広筋・内側広筋・大腿直筋の複数箇所から筋電図信号を導出したところ、膝関節伸展筋力発揮時にはいずれの筋でも筋内で均一に、股関節屈曲筋力発揮時には大腿直筋の筋活動は遠位と近位で別々に制御されていることが明らかとなった。この結果は、二関節筋である大腿直筋内に機能的コンパートメントが存在することを示唆している。
著者
若松市立図書館 編
出版者
若松市立図書館
巻号頁・発行日
vol.昭和13年(昭和12年5月30日現在), 1938

2 0 0 0 OA 郊外論の地平

著者
若林 幹夫
出版者
日本都市社会学会
雑誌
日本都市社会学会年報 (ISSN:13414585)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.19, pp.39-54, 2001-07-07 (Released:2011-02-07)
参考文献数
36
著者
若宮 由美 Yumi WAKAMIYA
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 人間学部篇 (ISSN:13470515)
巻号頁・発行日
no.15, pp.151-163, 2015-12

The piano socre of a potpourri based on Abert's opera "Astorga" that was arranged by Josef Strauss was published as No.105 of the series named 'Anthologie Musicale' by the Viennese publisher C.A. Spina. The original German opera "Astorga" by J.J. Abert was premiered in Stuttgart on May 27, 1866, and was performed in Vienna on July 30, 1870. This opera was praised in Germany, but wasn't accepted in Vienna. Although Josef Strauss with the Strauss-Orchestre performed fragments from "Astorga" on June 18 and 21, 1867 in Viennese Volksgarten, there is no evidence that Josef's potpourri based on "Astorga" was played. The potpourri was constructed by motifs of six numbers in the first and second acts of the opera, and the motifs from third act were not citied. It is unclear why did Josef Strauss arrange this potpourri, and the publication process of this potpourri was very peculiar in the series of 'Anthologie Musicale' which handled popular and famous works.
著者
若林 三千男 大場 秀章
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類,地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.1-27, 1995
参考文献数
16
被引用文献数
4

ホクリクネコノメの仲間(ホクリクネコノメ群)のホクリクネコノメとボタンネコノメソウは深山の渓流沿いなどの湿った場所に生え, 春先に花を咲かせる多年性草本で, 主として本州の日本海側寄りに分布している。ボタンネコノメソウはホクリクネコノメの分布域よりやや南側に生育し, 大井次三郎博士によって1933年, 種として記載されたが, 現在ホクリクネコノメの変種として扱われている。両者は主に, 花柱と雄しべが萼片より超出するか, またはそれより短いかで識別されるが, それらの変異についてはまだ詳しい解析はなされておらず, 変種関係とする理由も明らかにされていない。また両者の分布についても, 原(1957)および原と金井(1959)によって当時点での概略が示されているが, その後の詳しい研究はなされていない。最近, 岐阜県高山市在住の長瀬秀雄氏は, 飛騨地方一帯に変わったボタンネコノメソウがあることを発見された。私達はその実態を把握するため, 氏の案内で現地調査をする機会を得た。その結果, 花柱や雄しべが萼片より超出しない点はボタンネコノメソウに似ているが, 花はそれよりかなり大きく, 葯は赤色で萼が黄色を帝びるなとボタンネコノメソウとはかなり異なる特徴を示すことが確認された。さらにこの植物の分類学的位置づけを明確にするため, ホクリクネコノメ群全般にわたり, 花, 〓果, 種子表面の形態, 及び核型の変異を解析するとともに, 詳細な分布調査を行った。その結果, 上記の植物は, ホクリクネコノメとボタンネコノメソウと同様に2倍体(2n=22)で倍数性の変化はみられなかったが, 核型では一対の次端部動原体型染色体に付随体がある点でそれらと異なっていた(Fig.7)。また形態的には雌しべの形状や長さ, 雄しべの長さや葯と花糸の長さの比率など(Figs.1-3)でホクリクネコノメやボタンネコノメソウと明確なギャップがあり, 新分類群と認められた。特に〓果の形態では, 宿存する花糸は萼片と同長かわずかに短い点(Fig.4)で乾燥標本でも容易に識別できる。私達はこれにヒダボタンという和名をつけた。ヒダボタンのこれらの特徴はこれまで見過ごされてきたもので, ボタンネコノメソウと混同されていたと考えられる。また, ホクリクネコノメとボタンネコノメソウの間には上記の特徴では著しい差異があり, それぞれを変種関係とする形態学的証拠は見当たらなかった。さらに両者は異所的な分布圏をもち, まれにそれらが接する所では同所的に生育していることが分かった。これは生殖的隔離の存在を示唆するもので, 形態的ギャップと考え合わせると両者は既に種レベルまで十分分化したものと考えられる。ボタンネコノメソウは種として扱うべきだろう。これに伴い, ヒダボタンも種として扱うのが自然である。ヒダボタンも, ボタンネコノメソウとまれに混在して生育している所があり, まれに雑種と思われるものがあってもその花粉稔性は低い。ホクリクネコノメと同所的に生育している所でもそれぞれの種の特徴ははっきり維持されている。生殖的隔離が存在していると考えられる。最初に発見した長瀬氏の名にちなみ, ヒダボタンを新種Chrysosplenium nagaseiと命名・記載した。ヒダボタンは地域によって変異がみられるが, 種としては岐阜県中部を中心にした地域及び伊吹・鈴鹿山地に沿って南は三重県の野登山まで生育しており, 中国地方の山地にも散在的に分布する(Fig.8b)。岐阜県の西北部や滋賀県東北部(伊吹山地の西麓)には, 葯が黄色で萼も黄色または黄緑色で, 外観はボタンネコノメソウの品種キンシベボタンネコノメソウに似ているが, はっきりとしたヒダボタンの仲間が分布する。ヒダボタンより花がやや小さく, 分布的にもまとまっているのでこれを新変種ヒメヒダボタンvar.luteoflorumとした。また, 岐阜県西部の伊吹山地東麓, 養老山地, および霊山から野登山までの鈴鹿山地に分布しているものは, 外観は典型的なボタンネコノメソウとよく似るが, これもはっきりとしたヒダボタンの仲間である。ヒダボタンとは萼が赤褐色で花はそれよりずっと小さい点で異なっており, 新変種アカヒダボタンvar.porphyranthesと命名・記載した。中国地方に散在的に分布しているヒダボタンは, 現時点では標本によってのみ検討されたものなので, その実態については今後の調査を待ちたい。ヒダボタンの花や〓果は, ボタンネコノメソウとホクリクネコノメのものとの中間的な形態である。また, ヒダボタンは, ボタンネコノメソウとホクリクネコノメの分布域の間に位置するような分布をしている。これは, ヒダボタンがボタンネコノメソウとホクリクネコノメの間の雑種起源であるという可能性を示唆するものであるが, このことについてはさらに詳細な遺伝的解析が必要である。今回の研究でボタンネコノメソウとホクリクネコノメについても従来より詳細な分布状況を把握することができた。ボタンネコノメ
著者
若宮 由美 Yumi WAKAMIYA
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 人間学部篇 = Bulletin of Saitama Gakuen University. Faculty of Humanities (ISSN:13470515)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.151-163, 2015-12-01

The piano socre of a potpourri based on Abert’s opera “Astorga” that was arranged by Josef Strauss was published as No.105 of the series named ‘Anthologie Musicale’ by the Viennese publisher C.A. Spina. The original German opera “Astorga” by J.J. Abert was premiered in Stuttgart on May 27, 1866, and was performed in Vienna on July 30, 1870. This opera was praised in Germany, but wasn't accepted in Vienna. Although Josef Strauss with the Strauss-Orchestre performed fragments from “Astorga” on June 18 and 21, 1867 in Viennese Volksgarten, there is no evidence that Josef’s potpourri based on “Astorga” was played. The potpourri was constructed by motifs of six numbers in the first and second acts of the opera, and the motifs from third act were not citied. It is unclear why did Josef Strauss arrange this potpourri, and the publication process of this potpourri was very peculiar in the series of ‘Anthologie Musicale’ which handled popular and famous works.
著者
清水 沙也加 林 恵美子 若林 綾
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.24, pp.73-77, 2014 (Released:2014-05-30)
参考文献数
8

この研究の目的は,近代日本で文化的テクストが読者/オーディエンスによってどのように生産され,翻訳されていたかについて考察することである.とりわけ文化産業が発展した近現代では,文学テクストとメディアの関係はより錯綜し,多様な問題系を生み出している.文学テクストは,新聞や雑誌の記事の一つとして,美しくデザインされた本として,受け取られる.ときには,映画やマンガ,アニメーションに移植されることもある.そこに注目すると,文学テクストは,メディアや読者との協働を通じて,さまざまに変化していると言えるのだ.私たちは,資本主義と文化との関わりに注目しながら,メディアの中で作り上げられたイメージが,文学作品の受容にどんな影響を与えるかを検討した.