著者
若菜 勇 佐野 修 新井 章吾 羽生田 岳昭 副島 顕子 植田 邦彦 横浜 康継
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.51, pp.517, 2004

淡水緑藻の一種マリモは,環境省のレッドデータブックで絶滅危惧I類に指定される絶滅危惧種で,日本では十数湖沼に分布しているといわれている。しかし,生育実態はその多くで明らかではなかったため,過去にマリモの生育が知られていた国内の湖沼のすべてで潜水調査を行い,生育状況と生育環境の現状を2000年に取りまとめた(第47回日本生態学会大会講演要旨集,p.241)。その中で,絶滅危惧リスクを評価する基準や方法について検討したが,新規に生育が確認された阿寒パンケ湖(北海道),西湖(山梨県),琵琶湖(滋賀県)ではマリモの生育に関する文献資料がなく,また調査も1度しか行うことができなかったため,個体群や生育環境の変化を過去のそれと比較しないまま評価せざるを得なかった。一方で2000年以降,阿寒ペンケ湖(北海道)ならびに小川原湖(青森県)でも新たにマリモの生育が確認されたことから,今回は,過去の生育状況に関する記録のないチミケップ湖を加えた6湖沼で複数回の調査を実施して,個体群や生育環境の継時的な変化を絶滅危惧リスクの評価に反映させるとともに,より客観的な評価ができるよう評価基準についても見直しを行った。その結果,マリモの生育面積や生育量が著しく減少している達古武沼(北海道)および左京沼・市柳沼・田面木沼(青森県)の危急度は極めて高いことが改めて示された。また、1970年代はじめから人工マリモの原料として浮遊性のマリモが採取されているシラルトロ湖(北海道)では,1990年代半ばに47-70tの現存量(湿重量)があったと推定された。同湖における年間採取量は2-2.5tで,これはこの推定現存量の3-5%に相当する。補償深度の推算結果から判断して,現在のシラルトロ湖における資源量の回復はほとんど期待できず,同湖においては採取圧が危急度を上昇させる主要因になっている実態が明らかになった。
著者
本間 亮平 若杉 貴志 小高 賢二
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.127-132, 2017

レベル3自動運転において,システム機能限界に伴う権限委譲時のドライバ対応行動を調べた.運転以外の作業として,ラジオ聴き取りタスクとテキスト入力タスクを設け,DS実験を実施した.テキスト入力条件下では,他の条件より対応の遅れる傾向がみられたものの,本実験設定において,ほとんどのドライバが対応できた.
著者
松永 要一 若山 彩 小澤 賢二郎 鳴本 敬一郎 杉村 基
出版者
静岡産科婦人科学会
雑誌
静岡産科婦人科学会雑誌 (ISSN:21871914)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.30-35, 2015-10

子宮の大きさ(子宮サイズ)を評価する指標として、Ellips 法を用いた子宮最大矢状面における近似楕円面積値の有用性はこれまでに評価されていない。また、子宮サイズが正常範囲内かどうかを判断するための基準となる、指標計測値の年齢別分布の報告は乏しい。本研究の目的は、Ellips 法による子宮近似楕円面積の年齢別分布を作成し、子宮サイズを評価する有用性について検討することである。 検診施設や産婦人科施設へ受診した患者の経腟超音波検査3789 画像のうち、妊娠子宮および子宮異常を除いた2099 画像を分析対象とした。Ellips 法による近似楕円面積値と子宮長径、短径の年齢別分布図を作成し、それらの変動係数を分析した。 近似楕円面積、子宮長径、短径いずれの計測値も閉経後に縮小傾向がみられた。近似楕円面積測定は子宮長径や短径と比較して変動係数が大きく、測定値の収斂性が低い可能性が示唆された。
著者
若井 絹夫 富山 栄子
出版者
事業創造大学院大学事業創造研究科事業創造専攻
雑誌
事業創造大学院大学紀要 (ISSN:21854769)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.99-114, 2021-04

国内の地域通貨は、町井・矢作[2018]によれば、地域商店街の活性化の方策として各地で取り組まれるようになった経済的効果を目的とするものとコミュニティの再生や人のつながりを目的に市民団体が主体となって取り組んだものの2つの流れがある。2005年から新たな発行主体による電子地域通貨の発行が増えている。本稿では飛騨信用組合の導入した「さるぼぼコイン」と気仙沼地域戦略の「気仙沼クルーカード」の事例から地域の課題と密接に関連する事業主体が導入した電子地域通貨の目的と運営及び機能の変化を明らかにし、2 つの地域社会の資金流通と電子地域通貨の役割について考察した。その結果、金融機関と地方自治体が発行主体となることで、地域の課題解決が地域通貨の目的となり独自の工夫や顧客情報の活用を行っていることを確認できた。さらに地域の資金流通の構造と電子地域通貨の運営に整合性があること、利用者数と利用額の推移から電子地域通貨の効果について確認した。
著者
若槻 敬佐
出版者
Japanische Gesellschaft für Germanistik
雑誌
ドイツ文學 (ISSN:03872831)
巻号頁・発行日
vol.75, pp.87-96, 1985-10-01 (Released:2008-03-28)

Als die Bewegung des Expressionismus auch in den Bereich der Literatur einzudringen anfing, hatte Thomas Mann, seiner kritischen Lage in der ganzen Situation der deutschen Literatur bewußt, nach einem Ausbruch gesucht. Gerade damals, , nach der Zurücklegung von "Königliche Hoheit“‘, begann Thomas Mann die "Bekenntnisse des Hochstaplers Felix Krull“ zu schreiben, indem er diesen Plan allen anderen vorzog, was übri-gens andeutet, wieviel Gewicht er auf diesen Entwurf gelegt hatte. Er mußte die Arbeit jedoch schon gleich nach dem Beginn des öfteren unter-brechen. Die längste Unterbrechungszeit geht sogar über die beiden Weltkriege hinaus, und erst nach fast vierzig Jahren hat Thomas Mann das Fragment wieder aufgenommen, es aber nicht vollendet, sondern nur erweitert.In der Fortsetzung des Fragments ist zwar in Bezug auf die Handlung noch eine Kontinuität gewahrt. Aber man könnte kaum sagen, es gäbe hier, wie erwartet werden sollte, eine konsequent durchgeführte Gesamt-konzeption. Eher fällt uns eine Art Diskontinuität auf, und zwar in dem anscheinend wesentlichen Punkt des eigentlichen Entwurfs, eben in der Existenzform unseres Helden Felix Krull, oder in seiner Beziehung zur Wirklichen Welt.Bei dem, sonderbaren Entwurf‘, auf den Thomas Mann durch die Lektüre der Memoiren Manolescu's gebracht worden war, habe es sich um eine, neue Wendung des Kunst- und Künstlermotivs‘, um die, Psychologie der unwirklich-illusionären Existenzform‘ gehandelt. Jedenfalls ist Krull kein einfacher Hochstapler, sondern ein durch die Sprache sorgfältig gestaltetes Gebilde, das man verschieden deuten könnte. Hans Mayer z.B. spricht von der, ästhetischen Existent‘ und sieht darin die Verkörperung der Schillerschen Utopie von der Erkenntnis des Wirklichen durch den Schein; für V. Lange ist Krull, im Unterschied zum Künstler, der die Welt in ein Bild verwandelt, eher ein Zauberer, der durch die Manipulation der Formen dem Bild Wirklichkeit verschafft; Hermsdorf will da hauptsächlich nach den Eigenschaften des Schelmenromans suchen; und B. v. Wiese sieht eine utopische Existenzform, bei der sich die Realität in Illusion verwandelt hat; usw.Aber trotz mancher konsequenten Deutungen scheint uns die Diskontinuität wichtiger, zumal wenn wir an eine merkwürdig bewußte Gleichgültigkeit denken, mit der sich die deutschen Schriftsteller der Gegenwart diesem, Repräsentanten‘ der bürgerlichen Bildung gegenüber verhalten.Für den Krull im "Fragment“ vor dem 1. Weltkrieg gibt es keine feste Grenze zwischen dem Wirklichen und dem Illusionären. Auch seine positive Weltanschauung, die auf der Überzeugung beruht, daß er ein Sonntagskind sei, berührt eigentlich, beinahe in fließendem Übergang, Leiden und Qual seines wirklichen Lebens. In dieser doppeldeutigen, im Grunde negativen Beziehung zur Wirklichkeit, wie bei einem Bajazzo, geht er mit der Welt um, was ihn, aufgrund seiner Einsicht, daß die Existenzweise eines Individuums davon abhängig ist, ob es die Welt klein sehe oder groß, zu ihrer Wahrheit führen soll.In der "Fortsetzung“ nach dem 2. Weltkrieg dagegen befindet er sich nicht mehr in der Spannung der Doppeldeutigkeit, sondern in der Welt des reinen Scheins, die der wirklichen scharf gegenübersteht, und aus der alles Reale abgestrichen ist. Der Grund, warum wir these Veränderung inkonsequent finden, liegt vielleicht darin, daß sie von dem gründlichen Wandel des Gesichtspunktes des Erzählers herrührt. Denn der erzählende, bekennende Krull läßt uns schon am Anfang erwarten, daß er das Ganze aus ennem einheitlichen Gesichtspunkt erzählen würde,
著者
若井 一樹 佐々木 良一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.1817-1825, 2015-09-15

Twitterにおけるスパム行為となりすまし行為の検知手法を提案する.これらの検知手法はスパム行為となりすまし行為の様々な特徴から検知対象であるか判定する項目を複数個作成し,それらの項目を数量化理論の適用によって最適な項目の組合せを選定することによって検知するものである.またこれらの手法を実装するとともに,検知結果をユーザに分かりやすく提示するようTwitterの表示系を強化したアプリケーションLookUpperの開発と評価を行った.この結果,本検知手法ではスパム行為となりすまし行為どちらも90%以上の的中率で検知することが可能であった.LookUpperの開発と評価について,本検知手法を実装し検知結果を分かりやすく表示する機能を開発し,被験者10人によってなされたLookUpperのユーザビリティに関する実験結果から全体的に高い評価を得るとともに,今後LookUpperの改良を行っていくためのアイディアを導く種々のコメントが寄せられた.
著者
平 雅之 若狹 邦男 山木 昌雄 松井 昌
出版者
日本歯科理工学会
雑誌
Dental Materials Journal (ISSN:02874547)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.26-34,122, 1989
被引用文献数
7

日常の歯科臨床における切削機械として広く普及しているエアータービンは,軸受け機構の違いから2種類に大別されている。本研究では,まず,これらの無負荷時回転数を空気圧との関係で調べ,次いで,切削実習用に新たに開発されたガラス・セラミックス素材を用いて定荷重切削実験を行ないトルク性能と切削効率について比較検討を加えた。<br>エアーベアリング式タービンはより高速(48&times;10<sup>4</sup>rpm)で回転するものの常に一定の高い空気圧を必要とした。一方,ボールベアリング式タービンは空気圧を調整することで回転数を15&times;10<sup>4</sup>rpmから32&times;10<sup>4</sup>rpmに可変させ使用することができた。<br>エアーベアリング式タービンは負荷をかけると回転数が低下しやすくより低いトルク性能を示したが,切削効率はより大きかった。ボールベアリング式タービンは逆に,より高いトルク性能とより小さな切削効率を示した。<br>歯科切削においては,このようなエアータービンの特長に十分留意すべきことが示唆された。
著者
若木 重行 川合 達也 永石 一弥 石川 剛志
出版者
国立研究開発法人海洋研究開発機構
雑誌
JAMSTEC Report of Research and Development (ISSN:18801153)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.1-12, 2018-09-01 (Released:2018-11-06)
参考文献数
22
被引用文献数
2

本研究では,同位体分析を行うために単一の試料溶液からSr・Nd・Pbの3元素を分離する湿式化学分離法を開発した.新手法では,元素選択制の高い3種類の抽出樹脂(Sr樹脂・TRU樹脂・Ln樹脂)と陽イオン交換樹脂を用いた4段の小型カラムクロマトグラフィーを採用し,低ブランク・高時間効率のもとにこれら3元素を逐次分離することが可能になった.新手法においてTRU樹脂は,試料溶液から選択的にNdを含む希土類元素を分離するために用いられるが,TRU樹脂のNd保持率はカラムに導入された試料溶液中のFe量に依存して大きく変化することが明らかになった.本研究では,分析試料のタイプに応じて樹脂容量の異なる3種類のカラムを用意し,それぞれの樹脂容量ごとにNd保持率の低下を起こすFe量の上限値を明らかにした.適切なNd分離を行うためには,試料中のFe濃度をあらかじめ測定し,カラムに導入する試料量をコントロールすることが必要となる.新手法によって,単一試料溶液からの3元素逐次分離を低ブランク下で行うことが可能になったため,今後,掘削試料より分離した少量の有孔虫や,岩石薄片よりマイクロドリリングで分離した極微小量の珪酸塩試料などの微小量試料に対するマルチ同位体分析への応用が期待される.
著者
前澤 知輝 宮崎 由樹 松長 芳織 若杉 慶 柴田 彰 河原 純一郎
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.29-33, 2020-02-15 (Released:2021-02-18)
参考文献数
7

本研究では,花粉症対策に衛生マスクを持続的に着用する日常生活場面において,鼻の不快感に対するマスクへの着香効果を経時的に測定した.花粉症をもつ40名の被験者が2種の衛生マスク(ミント着香,または統制として無香マスク)をそれぞれ6時間着用し,携帯機器を通じて鼻の不快感について定期的に回答した.実験の結果,着香マスクは無香マスクに比べて装着直後に鼻の不快感の低減が強く生じた.しかし,香りの有無にかかわらず,マスク着用後,30分程度で不快感の低減効果は飽和状態となった.このことは,着香マスクの着用が鼻の不快感を低減させる効果は,着用を始めてから30分までの香りの印象が大きく影響することを示している.
著者
若林 由羽 荒井 朗 宇津木 笑香 篠崎 陽一 白井 貴之 竹内 良太 平林 克仁 真壁 理沙 新谷 益巳
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C-49_2, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに、目的】日本人のストレスについて国民生活基礎調査(厚生労働省2016年)では、国民(12歳以上)の47.7%の人が日常生活でストレスを感じていると報告されている。ストレスは蓄積されることで生体防御機構である内分泌系、免疫系、自律神経系のバランスが崩れ、ストレス性疾患を発症する可能性がある。そこで、このストレスを軽減する試みの1つとして運動によるストレス軽減効果の検証が進められている。本研究では、ストレス軽減効果を目的とした運動処方において、運動習慣形成因子に着目し、この因子が運動強度の決定に影響を及ぼすか検証を行った。 【方法】A大学健常男子学生6名を被験者とし、厚生労働省の基準に基づき運動習慣の有無によって2群(運動習慣群3名・非運動習慣群3名)に設定した。運動強度は、6分間運動負荷試験を実施し、Astrand-Ryhmingノモグラム変法を用いて推定VO2max算出した。被験者には中3日空けた2日間を設定し、推定VO2max40%(1日目)と推定VO2max70%(2日目)の運動強度で自転車エルゴメータを使用した20分間の定負荷運動を実施した。この定負荷運動によってストレス軽減効果が得られているかを判定する指標には、POMS2(Profile of Mood States Second Edition)日本語版(以下:POMS2)を用いた。POMS2は「AH-怒り・敵意」「CB-混乱・当惑」「DD-抑うつ・落ち込み」「FI-疲労・無気力」「TA-緊張・不安」「VA-活気・活力」「F-友好」の7尺度とネガティブな気分状態を総合的に表す「TMD-総合的気分状態」から被験者の気分状態を評価することができる。また、統計はSPSS(.Ver22)を用いて「運動習慣群」と「非運動習慣群」の2群間の比較においてt検定を使用した。各群の運動強度別の比較及び運動強度別の運動前後の比較においてrepeated measuer ANOVAを使用した。 【結果】「運動習慣群」と「非運動習慣群」の2群間の比較においてPOMS2の結果に有意差は認められなかった。「運動習慣群」では推定VO2max40%の運動前後でTAに有意差を認め、運動後に減少した。「非運動習慣群」では、推定VO2max40%と推定VO2max70%の運動後を比較したところ、VA、TMDに有意差を認め、VAは推定VO2max40%の運動で高値を示し、TMDは推定VO2max70%の運動で高値を示した。また、推定VO2max70%の運動前後のVAで有意差を認め、運動後で減少した。その他の統計結果からは運動習慣形成因子が運動強度別のストレス軽減効果に影響を及ぼすことを示唆する結果は得られなかった。 【結論】「運動習慣群」と「非運動習慣群」は双方とも推定VO2max40%の運動の方が、ストレス軽減効果が大きく、運動習慣形成因子が運動強度別のストレス軽減効果に影響を及ぼす可能性は低いことが示唆された。このことから、新たに運動習慣の有無ではなく個人の身体的能力因子が運動強度別のストレス軽減効果に影響を及ぼす可能性が考えられた。 【倫理的配慮,説明と同意】本研究は群馬医療福祉大学の倫理委員会の承認を得て行なわれた(承認番号 16B-10)。被験者には、研究内容を口頭と書面にて十分に説明をし、同意書に同意を得た上で実施した。
著者
滝沢 一泰 亀山 仁史 若井 俊文 土田 正則 木下 義晶
出版者
新潟医学会
雑誌
新潟医学会雑誌 = Niigata medical journal (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.134, no.4, pp.113-117, 2020-04

2017年度の医学部定員は過去最多となったが,新潟県は都道府県別にみた医療施設に従事する人口10万対外科専門性資格保持医師数はワースト2位であり,将来必要とされる外科医師数を達成するためには年間40人の外科医を育成しなければならない.この度,日本専門医機構により新専門医制度が確立され,2018年度から外科新専門医制度は開始されたが,専攻医の募集定員は全国204プログラムで計2,061人でありそのうち採用されたのは805人であった.新潟県では2プログラムで計8名を採用した.新潟大学外科専門医プログラムでは2018年4月から6名の専攻医が,2019年4月から8名の専攻医が研修を開始した.卒後臨床研修2年間と専攻医としての3年間(1~3年次)規定の手術数を経験する必要があるが,すでに1年次の段階で各分野別の必須手術経験数のほとんどを経験することができた.手術総数350例および術者数120例以外は,すべて新潟大学外科専門医プログラム1年次で経験できる見込みであり,2年次および3年次は大学病院以外の関連病院で術者として手術を経験することになる.サブスペシャルティ領域がすでに決まっているのであれば,2年次3年次の研修はサブスペシャルティ領域を意識してその領域を専門的に研修できる.我々のプログラムにおける連携施設は新潟県でのhigh volume centerが中心となったが,これはプログラムの整備基準により手術症例数や指導医数に応じて,募集できる専攻医数が決まってしまうことによる.これにより集約化がさらに進んでいくものと考えられるが,新潟県は広い医療圏を持つため集約できない地域も存在するので,そういった地域での医療をどのように行っていくかが喫緊の課題である.また,いわゆる「地域枠」あるいは新潟県の修学賓金を受けていた卒後医師は,地域での指定勤務が義務付けられるのであるが,そのために専門医取得が不利にならないように留意して制度づくりを行った.これまで新潟大学外科学教室は「3科1つ屋根の下に」という理念の下,教育指導を行ってきた.今後とも3科で協力体制をとりながら,教育指導にあたっていきたい.