著者
前谷 俊三 大林 準 西川 俊邦 小野寺 久
出版者
公益財団法人 天理よろづ相談所 医学研究所
雑誌
天理医学紀要 (ISSN:13441817)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.90-96, 2014-12-25 (Released:2014-12-25)
参考文献数
21

癌治療の進歩に伴い,その有効性や有益性を評価する尺度の妥当性を検証する必要性が高まっている.評価尺度としては,古くは5年生存率があり,最近では米国食品医薬品局(FDA)の推奨するエンドポイントがある.本稿ではそれぞれの評価尺度を簡単にレビューし,主として患者の立場から何が望ましい尺度かを再検討する.  対象とした尺度は,5年生存率,全治率(Boagモデル),生存期間の中央値と平均,log-rank統計量,ハザード比,FDAのエンドポイントである.各尺度を比較した結果; 1)5年生存率は患者や非専門家にとってわかりやすい尺度であるが,癌の全治率を過大視する傾向がある; 2)全治例は延命例に比べて一般に生存期間が長く,かつその間のQOLも優れている.更に全治例が増加している現今,全治の可能性がある患者集団が解析の対象であれば,評価尺度として延命期間よりも全治率を優先すべきである; 3)もし患者の延命期間が長ければQOLが逆に低下し,患者の希望に反する結果となる恐れもある.結論として,今後,癌治療の評価尺度は更に改善の余地がある.癌の性質や,治療法および患者の希望に応じて最適の癌治療を選択する必要がある.
著者
原口 友也 中島 敦 木村 志穂 伊藤 晴倫 小坂 周平 松木 秀多 西川 晋平 板本 和仁
出版者
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1+2, pp.8-13, 2018 (Released:2018-12-08)
参考文献数
16

腹腔鏡・内視鏡合同手術(Laparoscopy and endoscopy cooperative surgery:LECS)は、ヒト早期胃粘膜下腫瘍に対する胃局所切除術のための新しい術式として考案され有用性が認められているが、獣医療においては一般的な手術法ではない。本検討では、健常ビーグル犬を用いLECS予防的胃固定術の有用性を評価した。LECS予防的胃固定術は他の胃固定術と比較して、よりシンプルで容易な術式であり、周術期合併症も認められなかった。そのためLECSは、安全性が高く侵襲度が低く、予防的胃固定術の術式として有用性が高いと考えられた。しかし、本検討は実験動物を用いて行っているため、今後は症例において有用性を評価する必要があると考えられた。
著者
三浦 京夏 原口 友也 小田 康喬 西川 晋平 谷 健二 下川 孝子 下山 由美子 板本 和仁
出版者
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1+2, pp.14-19, 2018 (Released:2018-12-08)
参考文献数
12

被嚢性腹膜硬化症(Encapsulating peritoneal sclerosis:EPS)とは、腹腔内臓器周囲の線維性硬化と癒着を特徴とする稀な疾患である。今回、我々はEPSを疑うイヌ3症例において画像診断を実施したところ、ヒトと同様に臓器を被覆する肥厚した被膜や、消化管の集束などの特徴的な所見が得られた。また、各症例に外科的/内科的な治療を実施した結果、その予後はヒトと同様、外科的整復の成績に左右される可能性が示唆された。
著者
西川寧 長澤規矩也編
出版者
汲古書院
巻号頁・発行日
1975
著者
生冨 公明 西川 武二 中山 秀夫
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:05830516)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.184-187, 1980
被引用文献数
1

著者らは最近, <i>Microsporum audouinii</i> によるケルズス禿瘡の6歳外国人男子例 (スーダン国籍) を経験した. 患者は大使館員家族で, 原因菌は外国由来と考えられた. 本邦報告例を検討したがいずれも菌学的記載に乏しく, 著者らの例が <i>Microsporum audouinii</i> によるケルズス禿瘡の本邦第1例と考えた.
著者
西川 寿勝
出版者
一般社団法人 日本考古学協会
雑誌
日本考古学 (ISSN:13408488)
巻号頁・発行日
vol.6, no.8, pp.87-99, 1999-10-09 (Released:2009-02-16)
参考文献数
44

弥生時代の墳墓や古墳から発見される舶載鏡は大陸のどこからもたらされたのか。私は中国出土鏡について,地域ごとに鏡式と組成(発見頻度)を分析した。その結果,わが国出土の鏡群は中国のどの地域から発見される鏡群とも合致しなかった。しかし,楽浪郡地域(北朝鮮平壌付近)発見の鏡にかぎり,鏡式と組成ともにほぼ合致した。鏡は楽浪郡など辺境の地でも製作されたのだろうか。後漢~魏の都だった洛陽を分布の中心にもつ四鳳鏡を例に,分布の中心地域で発見される四鳳鏡と分布の辺縁部で発見される四鳳鏡を比較した。すると,分布の中心で発見される鏡は典型的な紋様や構成要素をもっ典型種鏡であることに対し,分布の辺縁部には紋様や構成要素に欠落や変更のある亜種鏡が多数存在した。四鳳鏡に限らず他の鏡式にもそれぞれの亜種鏡が抽出できる。このことは中国各地に鏡工人が存在し,鏡をつくっていた可能性を示す。楽浪郡地域発見の鏡にも中国に典型種鏡をもつ亜種鏡が多く存在した。この地でも活発な鏡生産があったことを解き,楽浪鏡を設定した。楽浪鏡はわが国に多数舶載され,一部は紋様や銘文が同一の鏡もみられた。次に,正倉院の鏡を中心に唐式鏡を概観した。そして,金銀の平脱・象嵌や螺鈿などによる宝飾鏡,貼金・鍍金の宝飾鏡,精緻な紋様の大型鏡,踏み返しにより量産される中・小型鏡など,鏡は格付けできることを示した。最上位に格付けできる宝飾鏡は戦国・前漢時代の王墓をはじめ,各時期のものがある。鏡の格付けは鏡の普及段階から成立していたことがわかる。最上位の鏡が王の鏡として格付けできるなら,魏王から邪馬台国女王に下賜された鏡にも最上位の鏡が含まれていた可能性がある。しかし,卑弥呼の銅鏡と推定される三角縁神獣鏡は宝飾がなくつくりも粗い。私は卑弥呼に下賜された銅鏡はすべての鏡が等質に作られたとは考えず,卑弥呼の手元に残すべき最上位に格付けできる宝飾鏡がいくつか存在したと推定する。この宝飾鏡は都洛陽で製作されたものである。しかし,宝飾鏡を見本にして配布用の三角縁神獣鏡が量産されたとすれば,その製作地は洛陽に限る必要はない。一部の三角縁神獣鏡は紋様や技法に楽浪鏡と極めて深い関係がある。私は三角縁神獣鏡が楽浪郡で創出されたと推測する。そして,三角縁神獣鏡は卑弥呼からさらに下位のものに分配されたと考える。
著者
藤井 節郎 奥田 拓道 赤沢 明 安田 行寛 川口 安郎 福永 育史 西川 栄郎
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
薬学雑誌 (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.95, no.6, pp.732-740, 1975
被引用文献数
5

In order to investigate the fate of 1-(2-tetrahydrofuryl)-5-fluorouracil (FT-207) in comparison with that of 5-fluorouracil tritiated FT-207 (<SUP>3</SUP>H-FT-207) and 5-fluovouracil (<SUP>3</SUP>H-5-fluorouracil)were administered from the rectum in normal and AH-130 tumor-bearing rats, and rapid absorption of <SUP>3</SUP>H-FT-207 or <SUP>3</SUP>H-5-fluorouracil, was observed. Blood level of radioactivity after rectal administration of <SUP>3</SUP>H-FT-207 was higher and more continuous than that of <SUP>3</SUP>H-5-fluorouracil. Although the radioactivity after rectal administration of <SUP>3</SUP>H-FT-207 and <SUP>3</SUP>H-5-fluovouracil was widely distributed in the various tissues of the animal with or without tumor, the highest concentration of the radioactivity was observed in the kidneys, and higher in tumor. The radioactivity in lymphatic gland reached a maximum level within 2-4 hr after the rectal administration of <SUP>3</SUP>H-FT-207 and declined very slowly. The urinary excretion of radioactivity within 24 hr was about 30% of the administered dose of <SUP>3</SUP>H-FT-207. More than 85% of the excreted radioactivity accounted for FT-207 and its metabolite, &alpha;-fluoro-&beta;-alanine. Other metabolites such as 5-fluorouracil, &alpha;-fluoro-&beta;-ureidopropionic acid and tritiated water were detected in small amounts in rat urine. The radioactivity in blood and tumor, 4 hr after rectal administration of <SUP>3</SUP>H-FT-207, was found to represent FT-207. However, the radioactivity in liver was due to the presence of &alpha;-fluoro-&beta;-alanine. About 90% radioactivity in lymphatic gland within 2-6 hr after rectal administration of <SUP>3</SUP>H-FT-207 was detected as FT-207.
著者
西川自得叟祐信 畫圖
出版者
菊屋喜兵衛
巻号頁・発行日
1750

西川祐信画、通俗教訓絵本。大本3巻合1冊。寛延3年(1750)正月、京都・菊屋喜兵衛版。墨摺り。序文中に、「絵本つれ/\草世にひろまりぬるとて又も書林の需しきりなれば」云々と、前作『絵本徒然草』の好評を当て込んだ書林の求めによって執筆した由をいう。題簽の下部に「徒然草/後篇」の割書の存する本もある。書名(上巻題簽)の「垣衣艸」の用字は、『和名抄』に「垣衣 之乃布久佐」と見える。『徒然草』から本文を抄出して見開きの上方に置き、それに取材した絵と組み合わせるという体裁で、文章の占める比重が、一般的な絵本より大きい。絵は、本文に合わせながら、中世の絵巻に見られるような貴賤男女の風俗をよく学んでいる。当館所蔵のもう一本(請求記号:か-50)は、菱屋治兵衛による求板本で、下巻末の2丁を欠く。(鈴木淳)
著者
竹石 敏治 大土井 智 西川 正史
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.45, no.9, pp.537-544, 1996-09-15 (Released:2010-09-07)
参考文献数
7
被引用文献数
1

現在のところ, トリチウム取扱施設において室内空気中に放出されたトリチウムを回収するたあに, 加熱された貴金属触媒塔およびその後段の冷却された吸着塔で構成されるトリチウム回収装置が用いられている。しかしこの方式では, トリチウムと同時に空気中に含まれる大量の水蒸気も同時に回収されるため, 吸着塔が大きくなり, 触媒塔の加熱装置や吸着塔の冷却装置の故障の際には, トリチウムの回収性能が低下するなどの欠点がある。本報告では, 冷却装置を設けない吸着塔と, その後段に加熱装置を設けない触媒塔により構成されたトリチウム回収システムを提案する。この方式では, 前置吸着塔において処理ガス中の水蒸気が, 触媒の酸化性能を阻害しない程度まで捕捉されることにより, 触媒の活性が維持される。またトリチウムが貴金属触媒の親水性担体に酸化された後に, 吸着や同位体交換反応によって, 入口ガスよりも高いT/H比で捕捉できる。
著者
田嶋 磨美 天谷 美里 杉田 隆 西川 朱實 坪井 良治
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.193-196, 2005
被引用文献数
7

<i>Malassezia</i>は脂質要求性の皮膚常在菌で,癜風,脂漏性皮膚炎やアトピー性皮膚炎などの皮膚疾患の発症に関与していることが指摘されている.今回,我々はアカツキ病の3例を経験したので,その鱗屑痂皮に含まれる<i>Malassezia</i>の菌相を解析し,健常人,アトピー性皮膚炎患者と比較検討した.症例1は,両上下眼瞼部,症例2は左鼠径ヘルニア手術瘢痕部,症例3は頭頂部のアカツキ病であった.それぞれ,病変部鱗屑からNested PCRを用いた非培養法にて<i>Malassezia</i> DNAを検出した.症例1及び3はともに,<i>M.obtusa</i>と<i>M.slooffiae</i>が検出され,症例2は<i>M.slooffiae</i>のみが検出された.健常人皮膚からは,<i>M.globosa</i>,<i>M.restricta</i>および<i>M.sympodialis</i>が高頻度に検出されのに対し,今回アカツキ病で分離された2菌種は比較的稀で,病態との関連性が示唆された.
著者
西川 尚男 菅原 俊一 栗原 塁 青木 努 小上 泰司
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌B(電力・エネルギー部門誌) (ISSN:03854213)
巻号頁・発行日
vol.125, no.7, pp.680-686, 2005 (Released:2005-10-01)
参考文献数
20
被引用文献数
4 3

It is well known that the operation with low humidified reactants accelerates cell voltage loss of PEFC. On the other hand, the mechanism of the voltage loss is not clear. On this study, two kinds of cells which have different thickness membrane (15 and 30μm) were evaluated under operation with low humidified reactants to clarify the voltage loss mode. The study indicates that there are two different cell voltage loss modes. For 15μm cell (a thin membrane cell), the cell voltage decayed along with open circuit voltage decrease with H2 crossover increase. It is the case that H2 crossover depresses cell voltage. For 30μm cell (a thick membrane cell), the cell voltage decayed along with open circuit voltage decrease without H2 crossover increase. This decay mechanism of voltage loss without H2 crossover was focused to study. New methods for measuring humidity distribution and current distribution in a cell were introduced for further analyze. It is found that effective catalyst area loss in cathode catalyst layer could depress cell voltage.
著者
福田 健志 太田原 康成 西川 泰正 遠藤 英彦 佐藤 直也 山野目 辰味 小川 彰
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.11, pp.745-747, 2003-11-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
10

A 38-year-old man complained of headache and nausea after traveling by aeroplane. On physical examination, high fever and nuchal rigidity were found. Computed tomography showed pneumocephalus. Magnetic resonance imaging showed sphenoid sinusitis. Cerebrospinal fluid examination revealed purulent meningitis. The patient was medically treated using antibiotic agents. The pneumocephalus disappeared and the purulent meningitis was resolved. We suggest that the barotrauma resulted in the pneumocephalus and purulent meningitis. Barotrauma is a potential cause of pneumocephalus, especially if the patient has parasinusitis.
著者
永田 基樹 藤原 直哉 西川 功 田中 剛平 鈴木 秀幸 合原 一幸
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.295-299, 2013-05-01 (Released:2013-09-06)
参考文献数
16

東日本大震災以降,電力の安定供給は重要な課題として注目を集めている.安定性の理解のためには数理モデルの解析が必要であるが,詳細なモデルは数理的な解析が容易ではないため,現象の本質を抽出した簡潔なモデルが必要である.本研究では,東日本の送電網の接続関係を用いて,周波数同期のダイナミクスを位相モデルによって記述した.本モデルにおいて,安定供給のためには同期した定常状態の実現が必要であるが,そのための結合強度の閾値を求めた.また,周波数同期に寄与している送電線を特定し,同期への寄与の大きさについて考察した.
著者
鷲家 勇紀 西川 友章 藤野 槌美
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.394-404, 2016-09-15 (Released:2016-11-30)
参考文献数
16
被引用文献数
1

市販のコーヒー焙煎豆には,通常エージング処理が施されており,この処理によって,コーヒー抽出液中の多くの香気成分が減少するだけでなく,機能性にも影響することが明らかになってきている.そこで本研究ではマウスにエージング処理をしていないコーヒー焙煎豆,または28°C,96時間エージング処理したコーヒー焙煎豆からそれぞれ抽出したコーヒー抽出液投与による抗不安効果を検証した.高架式十字迷路試験における抗不安効果を検証した結果,エージング処理をしていないコーヒー焙煎豆の抽出液の飲用は不安様行動を有意に減少することが示唆された.この抗不安効果には,硫黄化合物2成分,pyrolle類1成分,およびpyrazine類4成分がそれぞれ関与し,何れもエージング処理によって減少する成分であった.以上の結果から,焙煎直後のコーヒー焙煎豆の抽出液に認められた高い抗不安効果は,焙煎豆のエージング処理によって消失することが分かった.さらに,エージング処理していないコーヒーの抗不安作用に関するメディエーターを検証した結果,GABAA受容体,ドーパミンD1受容体の関与が示唆された.