著者
高柳 清美 金村 尚彦 国分 貴徳 西川 裕一 井原 秀俊
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Ca0252, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 ヒトを対象とした臨床研究および動物実験の結果より,膝前十字靭帯(以下ACL)は自己治癒能が低いとされてきた.ACLの治癒能力が低い根拠として,炎症細胞とその関連物質量(Akesonら1990),血行(Brayら19901991),一酸化窒素量(Caoら2000),コラーゲン線維の含有率(Amielら1990Brayら1991),αプロコラーゲンのRNA量(Wiigら1991),生体力学的負荷の相違(Viidikら1990Wooら1990),治療過程でのファイブロネクチン量(Almarzaら2006),マトリクスプロテアーゼの発現量(Zhangら2010),α平滑筋アクチン・トランスフォーミング成長因子の発現量(Menetreyら2010),幹細胞の治癒能力(Zhangら2011)などの報告がある.ラット,ウサギ,イヌのACLを切断し自由飼育すると,ACLの自然治癒は起こらず,切断後数日(5~7日)で靭帯の退縮と変形性膝関節症が発生する. しかし,完全断裂であっても関節運動を制動する特殊装具と早期からの運動療法によって,破断したACLは治癒する(井原ら1991,2006).我々はこれまでに,ACL損傷後に生じる膝関節の異常運動を制動する動物モデルを作製し,関節の制動と自然飼育により,完全切断したACLが自然治癒することを明らかにした. 本研究の目的は関節包外関節制動モデルを用いて,治癒したACLを組織学的に観察し,経時的に治癒靱帯の強度を検討することである.【方法】 Wistar系雄性ラット24匹の両後肢の膝関節を使用した.ラットの右膝関節に対してACL切断術を行い,8週間飼育後に12匹(8週群),40週間飼育後に12匹(40週群)屠殺した.手術側(右膝関節)を実験肢とし,非手術側(左膝関節)を対照肢とした.外科的手順は,ACLを切断後,人工靱帯を膝関節外側より大腿骨遠位部後方の,大腿骨頚部後面の弯曲に沿った中枢側の軟部組織に貫通させ,脛骨近位前方に作製した骨トンネルに通し,大腿骨遠位部後方に通して結んで固定した. ACL切断8週,40週経過後のラット3匹ずつを検体に供し,組織標本を作成し,HE染色で染色して組織学的観察を行った.力学的強度はラット9匹ずつの両下肢を採取,ACL以外の筋軟部組織を切除し,INSTRON社製の材料試験システム5567A型(ツインコラム卓上モデル)で,試験速度5mm/min,試験機容量100N,初期張力1.5Nで計測した.力学強度の統計処理には繰り返しのある二元配置分散分析,多重比較としてScheffe法を用いた.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は埼玉県立大学動物実験委員会の承認に基づいて行った.【結果】 (1) 肉眼的観察 力学的評価を行った8週群,40週群全例でACLの連続性を確認した.治癒靱帯の走行は正常に近似していたが,付着部にバラツキがあり,正常のACLに比べ太い線維束であった.関節表面の観察では軟骨面の粗雑化や嚢胞瘢痕組織骨棘などの膝OA的所見は確認されなかった.(2) 組織学的観察 8週群,40週群ともにコラーゲンによる連続性が認められた.治癒ACLは正常ACLに比べ,靱帯が太く関節顆間窩に瘢痕組織が増殖していた.(3) 治癒靱帯の強度 8週群と40週群の治癒した靱帯の強度はそれぞれ,10.2±4.2N,11.2±4.2N(平均±標準偏差)で,対照肢はそれぞれ,22.8±2.9N,24.2±4.0Nであった.切断肢と対照肢間に靱帯強度の差異が認められ(p<0.01),切断肢は対照肢に比べ,約40%から50%の強度で治癒していた.8週群と40週群の治癒靱帯強度に違いは認められなかった.【考察】 実験肢において全例にACLの連続性が認められ,正常靱帯と同等かより太い靱帯を認めた.関節の制動と運動を行わせる動物実験モデルによって,明らかに靱帯治癒が促進されることが証明された. 術後8週および40週後に膝OAの所見が確認されなかったことは,断裂後の継続した異常運動(過度なストレス)に対する関節制動がなされ,正常に近似した運動が維持された結果と考えられる. 8週後と40週後の治癒靱帯の強度に差異が認められなかったことより,靱帯強度に関わる修復は8週前後にほぼ終了していることが示唆された.靱帯強度が半減した要因を解明するには,(1)早期の靱帯治癒過程(炎症期増殖期,リモデリング期)における運動制限と積極的運動の力学的影響と,(2)炎症細胞,幹細胞,線維芽細胞などの靱帯修復に関わる細胞および炎症因子,増殖因子などのサイトカインや細胞外マトリクス,コラーゲンなどのタンパク質を分解する酵素の発現の生化学的解明,が今後の課題となった.【理学療法学研究としての意義】 関節制動と運動療法により,損傷ACLが充分な力学的強度と粘弾性を有するまで治癒すると,レクレーションレベルのスポーツ愛好家,骨成長が認められる青少年,高齢者あるいは外科的治療を望まないスポーツ選手に対する主たる治療法となることが期待でき,社会的・経済的・身体保護的に多大に益すると考えられる.
著者
森重 清利 岡部 道明 西川 泰治
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.265-270, 1997-04-05 (Released:2009-06-30)
参考文献数
10

佐賀県東松浦郡肥前町産の木村石[CaY2(CO3)4・6H2O]は紫外線照射により赤紅色の蛍光を発する.この発光は鉱物中に含まれるEu(III), Tb(III), Gd(III)及びDy(III)イオンの輝線スペクトルに起因することを明らかにした.これら発光性希土類金属(III)化合物の蛍光スペクトルの帰属とその分光特性を詳細に検討した結果,木村石の蛍光スペク.トルはそれぞれEu(III):Ex.395(7F6→5Le)/Em.615nm(5D0→7F2);Tb(III):Ex.380(7F6→5D3)/Em.545nm(5D4→7F5);Gd(III):Ex.275(8S7/2→6D3/2)/Em.312nm(6P7/2→8S7/2);Dy(III):Ex.352/Em.575 nm(4F9/2→6H13/2);の4f電子の許容遷移に基づく発光であることを明らかにした.
著者
西川 潤
出版者
京都大学学際融合教育研究推進センター地域連携教育研究推進ユニット
雑誌
地域連携教育研究 = Journal of Education and Research for Regional Alliances (ISSN:24332356)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.83-95, 2017-09-30

In recent years, as the smooth articulation of educational stages have been emphasized, kindergartens are required to strengthen their connection with primary schools. Some investigations suggest that although the importance of the articulation is recognized, the ambiguity of the idea makes the degree of implementation at kindergartens insufficient. While the elimination of the Grade 1 problem is in urgent need, the progress of "the articulation of learning" is relatively lagging. Some parents want early education and many kindergartens seem to have failed to explain the intention and sustainable effects of their childcare. In this paper, I compare the content of the Course of study for Kindergarten with the HighScope preschool Curriculum and point out that its goal setting lacks concreteness, making the consistency of learning between kindergartens and primary schools difficult to understand. HighScope curriculum align its contents according to the subjects of elementary and secondary education, but the idea itself has little discord with Japanese value since it considers the free play of children to be important. In conclusion, it is effective for the Japanese curriculum to appropriately incorporate the elements of the subjects centered curriculum without being bound by the experience centered curriculum.
著者
有川 健太郎 西川 禎一
出版者
Osaka Urban Living and Health Association
雑誌
生活衛生 (ISSN:05824176)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.15-22, 2011-03-10 (Released:2011-03-18)
参考文献数
38

Diarrheagenic Escherichia coli (DEC) is an important group of pathogens associated with enteric diseases. Diffusely adherent Escherichia coli (DAEC) strains are currently considered to constitute a sixth group of DEC. Although recent epidemiological studies have shown a high prevalence of DAEC strains among strains isolated from infant diarrheal stools, their involvement remains a matter of debate. Both commensal and pathogenic strains can be classified as Afa/Dr DAEC isolates since DAEC strains have been identified based on their diffuse adherence (DA) to cultured epithelial cells and on the detection of afa/dra/daa related operons encoding the DA phenotype. Measuring diffuse adhesion alone is insufficient to evaluate the diarrheagenicity of strains and other distinguishing characteristics are needed. In order to elucidate the pathophysiological processes by which Afa/Dr DAEC strains induce diarrhea, the present review focuses on the Afa/Dr adhesin and the various cell signaling events that occur after epithelial cells have been infected by Afa/Dr DAEC.
著者
西川 精宣
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.717-726, 2010 (Released:2010-12-24)
参考文献数
38

交感神経系は自律性生理機能に大きくかかわっているが,痛みの発生や持続にも関与しており,特に難治性疼痛の治療を考えるうえで検討すべき領域である.脊髄鎮痛,つまり薬剤の脊髄くも膜下投与と硬膜外投与を含んだ主として脊髄への直接効果による鎮痛法は,薬剤投与量の減量,副作用の軽減や作用時間の延長を期待できる.ネオスチグミンを除き,交感神経抑制が同時に生じる薬剤が多いが,少なくとも末梢交感神経遮断は痛覚過敏減弱にあまり影響していないようである.体内埋め込み型のくも膜下カテーテル注入装置は難治性疼痛治療の新たな展開をもたらす可能性があり,脊髄レベルでの交感神経遮断の役割を明らかにしていくことは意義があると考える.
著者
八島 不二彦 今井 優子 斎藤 清二 宮脇 利男 西川 友之 立浪 勝 松井 祥子 瀬尾 友徳 竹澤 みどり 酒井 渉 彦坂 伸一 野原 美幸 二上 千恵子 原澤 さゆみ
出版者
富山大学保健管理センター
雑誌
学園の臨床研究 (ISSN:13464213)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.13-18, 2013-03

富山大学では平成20年度に4人,平成21年度に3人の自殺が発生し,その対策として平成21年12月に富山大学自殺防止対策室が設置された。\富山大学自殺防止対策室は自殺者ゼロを目標に掲げ,約3年間さまざまな活動を行って来た。その結果,自殺防止対策室が本格的に活動を始めた平成22年度から平成24年12月現在までの自殺者は2人に止まっている。自殺者の減少という結果は出ているが,富山大学の自殺防止対策システムは本当に機能しているのか疑問が残る。\そこで本研究ではこれまでの富山大学自殺防止対策室の活動実績を分析し富山大学における自殺防止対策システムが有効に機能しているかについて検討する。
著者
西川祐信 画
出版者
菱屋治兵衛[ほか1名]
巻号頁・発行日
1748

西川祐信画、金吾作、女性風俗・教訓絵本。延享5年(1748)正月、江戸・鱗形屋孫兵衛、京都・菱屋治兵衛(板元)。半紙本3巻。墨摺。角書き(序題)「教訓注解」。広告「嗣出 貝歌仙後篇 絵本狂歌貝 全部三冊 西川氏画」とあるが、未刊。延享5年(1748)初春、作者金吾の序に「六々のかいあつめたる一箱を絵にうつしてといふより、歌の詞につれて注をくわゑつゝ、教訓の三巻となしぬ」とある。一例を挙げると、36首の貝の歌「貝歌仙」中の「梅の花貝 春風に浪やちりけん陸奥のまがきがしまの梅のはな貝」について、1首の通釈を試み、加えて「これをいましめとすれば、やさしき名にも似ず、女中のあら/\しきふるまひはあしゝとかや」と、教訓につなげて締めくくっている。祐信の絵は、二人の女性のうち、女中らしき一人が、梅の枝を折ろうということか、梯子を持って駆けつける様子で、教訓を含めた詞書きの趣旨を受け止めて描く。(鈴木淳)(2016.2)
著者
西川 純司
出版者
社会学研究会
雑誌
ソシオロジ (ISSN:05841380)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.53-66,127, 2014-02-28 (Released:2015-04-10)
参考文献数
27
被引用文献数
1

In the 1970s, many theories on the neighborhood protest movement reported negative effects from the development policy of the postwar period, and aimed to return to the value of life. They often criticized the Urban Planning Act of the prewar period and Hiroshi Ikeda, the Home Ministry bureaucrat who was its author, as the origin of development-oriented urban planning. However, we can find nowadays in the Anglo-Saxon world many govern mentality studies that are different from the conventional schema, “civil society / State (Capital)”.To understand better the characteristics of modern urban planning and its structure, we study Hiroshi Ikeda’s urban planning theory from the standpoint of govern mentality. Here we found that his theory was based on the practicalknowledge of trying to resolve hygiene issues in urban space, recognized asa social problem from the middle of Taisho period, by means of an adequate supply of sunlight. We show that he had great interest in the hygienic status of the residential environment, and considered promoting health by means of the regulation of the physical environment. In addition, we found that Ikeda’s urban planning focused on collective lives being objectified statistically, and that it had a structure which inevitably required aggressive intervention such as the restriction of individual freedom in order to reform sanitary conditions. These results indicate that the theories in the 70s on the neighborhood protest movement explain only one aspect of the problem of the city and its environment, and that therefore they overlook the problem concerning governmentality that mobilizes the resources to reduce the risk to society.
著者
平山 三智子 西川 光一
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.32, no.7, pp.943-947, 2012 (Released:2013-02-12)
参考文献数
10

頚椎後方手術後に,脳神経麻痺による嚥下および構音障害を生じた3症例を経験した.3症例とも術後に舌偏位が認められ,末梢性の舌下神経麻痺と診断された.1症例のみ迷走神経麻痺によるカーテン徴候を合併していた.嚥下および構音障害は術後2週間から3ヵ月間に改善し,以降も良好に経過している.脳神経麻痺の原因には,舌下,迷走神経を栄養する上行咽頭動脈の挿管チューブによる血流障害,術操作による直接障害,頚部の牽引に伴う神経の伸展による障害が疑われた.頚椎後方手術後の脳神経麻痺の発生はまれであるが,術後の嚥下障害や構音障害の原因となることを医療従事者が十分認識し,誤嚥の予防に取り組むことが必要である.
著者
西川 勝 砂連尾 理 樫本 直樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.455, pp.41-46, 2013-03-04

ダンサー・振り付け家として活動している砂連尾理と、臨床コミュニケーションの手法として哲学カフェを展開している西川勝は、特別養護老人ホームなどでダンスワークショップと哲学カフェを融合させた「身体コミュニケーションの言語化ワークショップ」を継続的に実施している。通常は意識されることの少ない身体コミュニケーションの微細な表現や意味について、対話を通して参加者が相互に確認し合うことによって、コミュニケーションの重層性に対する自覚が深まっていく。ダンスと対話を融合させたワークショップは、コミュニケーションの基盤となる身体への再考をうながし、言語的コミュニケーションに問題が生じてしまう高齢者介護などの現場において、新たなコミュニケーション回路を発見する入口になる可能性を有している。
著者
高山 直子 雨宮 俊彦 西川 一二 吉津 潤 有吉 浩美 洲崎 好香 中村 登志子
出版者
日本健康医学会
雑誌
日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.87-94, 2012-07-31 (Released:2017-12-28)
参考文献数
13

本研究では成人勤労者および青年期学生における,肥満におよぼす心理的要因の影響を明らかにするために,日本語版Dutch Eating Behavior Questionnaire(以後,DEBQ)を用いて食行動を調査した。DEBQはVan Strien, Frijters, Bergers, Defares(1986)によって開発された食行動尺度で,情動的摂食,抑制的摂食,外発的摂食の3尺度で構成される。体格指数(BMI)を用い,BMIとDEBQ3尺度および性差との関連について検討した。調査対象は成人勤労者602人,平均年齢は32.9(SD7.48)歳青年期学生705人,平均年齢は174(SD1.56)歳であった。因子分析の結果,日本語版DEBQの下位尺度を構成する項目は,成人勤労者群においてオリジナルと完全に一致,青年期学生群においてはほぼ一致し,情動的摂食,抑制的摂食,外発的摂食の3尺度が確認された。DEBQ3尺度とBMIとの関連では,肥満の成人勤労者群は抑制的摂食,また,肥満の青年期学生群は抑制的摂食に加え,外発的摂食では尺度値が低いことを示した。成人勤労者群および青年期学生群のBMIとDEBQの性別比較では,BMIは男性の方が高く,外発的摂食,抑制的摂食,情動的摂食は女性の方が高かった。
著者
遠藤 裕子 斉藤 洋子 新山 泰子 吉田 ふみ子 新井 せつ子 久富 恵子 元村 千佳 西川 久美子 藤倉 良裕 宍戸 洋 吉田 太一 関野 宏 浅木 茂
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
人工透析研究会会誌 (ISSN:02887045)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.115-121, 1984-04-30 (Released:2010-03-16)
参考文献数
3

便秘は精神的, 肉体的に不快なものである. 食生活を制限されている透析患者では, 従来より便秘を訴えることが多く下剤服用者も多い. 私達は当院患者124名 (男70名, 女54名) を対象とし, 排便の状況, 下剤の使用状況などについて調査を行い, 「透析患者と便秘-現状と対策-」について検討した.下剤服用者と排便困難者を併せて便秘群とすると, 便秘群は52名 (男23名, 女29名) で全体の42%を占めた. 透析導入とともに便秘に陥った患者が多く, 水分制限, 除水等の影響が大きいものと思われる. 下剤は刺激性下剤の服用者が多く, 実際効果的であった. 下剤使用が常用量を越す人に対して, 偽薬を処方することにより服薬量の減量が可能であった. また, 便秘解消法のパンフレットを作成し, 社会活動の勧め, 生活指導, 腹部マッサージや指圧, 繊維性食品の食事指導などを行った. その結果, 下剤服薬が必要でなくなった人が13名, 減量できた人が21名みられた. 透析患者の便秘には除水, 水分制限, 消化管運動機能低下, 薬物および精神的要因など複合的成因の関与が考えられる.
著者
大野 恭子 浦上 郁子 渡辺 真理 西川 隆 田伏 薫 柏木 敏宏
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.243-250, 1987 (Released:2006-11-10)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

失語症者を対象に, (1) 動物や物品の名称とそれに対応する擬音語の聴覚理解・語想起を比較し,更に, (2) 実際の音響 (環境音) の認知ならびに環境音からの擬音語・名称の想起を調べた.擬音語と名称の成績の間には,聴覚理解・想起とも正の相関が認められた.聴覚理解には失語症型による有意な差はなかったが,想起については, Fluent 群は Nonfluent 群に比べ擬音語が名称より有意に困難であった.また,環境音の認知に障害を示す症例があり,環境音と言語音の認知の成績の間には正の相関が認められた.擬音語が音と意味の繋がりがより直接的であるという特性にもかかわらず名称よりかえって想起が困難な傾向を示した要因として,擬音語も社会的な記号体系である言語の一部で,普通の名称と共通の音韻処理過程を経ること,擬音語の使用頻度の問題,及び失語症者は環境音とその対象との意味的連合に障害が及いでいる可能性があることを考えた.
著者
西川 輝彦 港 隆史 荻野 正樹 浅田 稔
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集 2011 (ISSN:24243124)
巻号頁・発行日
pp._2P2-M02_1-_2P2-M02_4, 2011-05-26 (Released:2017-06-19)

This paper proposes a hierarchical model which is composed of a slow feature analysis (SFA) network to extract multi-modal representation of a humanoid robot. The experiment with humanoid robot shows that the network can integrate multi-modal information and detect semantic features by the extraction of the slowly varying features from the high-dimensional input sensory signal, and it shows that the multi-modal representation is useful as state representation for reinforcement learning compared with using state representation without the integration of the multi-modal information.
著者
西川 潔 堀田 千絵 馬野 範雄 宮野 安治
出版者
人間環境学研究会
雑誌
人間環境学研究 (ISSN:13485253)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.3-10, 2019 (Released:2019-08-05)

The aim of this study was to find the main learning ability in teaching practice at elementary school. Especially, considered the previous research, we focused on the claim advanced by the school teachers, compared to more reports toward students or university educators. We conducted the mail-in survey and asked the elementary school teachers to answer the two type’s questions. The first question was consisted of eighteen learning contents in teaching practice. As a second question, we asked them to write to-be-learned contents in teaching practice freely apart from the first question. As a result, the five hundred-twenty nine valid answers were obtained. Eighteen items by first question consisted of 5 factors: (1) school management; (2) class management; (3) lesson practice abilities; (4) the understanding for special need education; (5) the qualifications as a teacher. All these factors had a high degree of internal consistency for Cronbach’s alpha reliability for the scale. Moreover, the independence of categories was rated as the most significant learning content. Furthermore, in free descriptions, it seemed that thirty-two percent of teachers insisted on the significance of the positivity and motivation for learning. Our findings corresponded to previous studies for each type of school. For future direction, we need to examine how to cultivate the abilities as an acceptable member of society during a four-year university education.
著者
西川 武志 松岡 聡
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.48, no.13, pp.117-126, 2007-08-15
参考文献数
12
被引用文献数
3

デジタル時刻認証はデジタルデータがある時点で『存在していた』、『改竄されていない』ということを証明する手段である。現在メインストリームである集中型タイムスタンプ手法は多数のタイムスタンプ要求が集中することに耐えることができない性能スケーラビリティ上の問題がある。したがって集中型タイムスタンプ手法は分散 DoS 攻撃に弱い。集中型タイムスタンプ手法の性能スケーラビリティ上の問題や分散 DoS 攻撃耐性がないという問題を解決するために分散時刻認証法が提唱されている。しかしながら原子時計のような高価な時刻源を用いることや信頼できる第三者による監査に由来する高コスト性は解決されていない。本論文では我々は (N,K = L+M,G) 手法を用いた TSA Grid と名付けた信頼できる高性能で頑強で安価な分散時刻認証法を提唱する。それは独立の主体によって管理されている peer-to-peer 型の時刻認証プログラムに基づいており、既存の分散時刻認証法のコストの問題を解決する。(N,K = L+M,G) 手法では、N 個の Time Stamping Units (TSU) に G 世代にわたってタイムスタンプ要求が伝搬される。各世代では L 個の信頼できる TSU と M 個のランダムに選んだ TSU からタイムスタンプが要求・応答される。G と L と行ったパラメータの導入により TSU が相互に自律的に監査すること、時刻認証の期待値の推測を可能にしている。また本論文で TSA Grid の基本的なパラメータ依存性について報告する。Digital time stamping is a technique to prove the existence of a digital data prior to a specific point in time. The centralized time-stamping scheme which is the main stream at present can not stand up to the concentration of numerous time-stamping requests. So, the centralized time-stamping scheme has vulnerability to the distributed DoS (DDoS) attack. Distributed time stamping schemes have been proposed to solve a performance scalability problem such as tolerance to DDoS attack. They still have high cost problems which are caused by a utilization of atomic clock and by audit of trusted third party. In this paper, we define a reliable, a high-performance, a robust, and inexpensive distributed time stamping scheme. It is named "TSA Grid" with (N, K = L + M, G) scheme and its scheme is based on a network of peer-to-peer time-stamping programs managed by administratively independent entities. It solves the cost problem of proposed distributed time stamping schemes. In (N, K = L + M, G) scheme, one time stamp request propagates for G generation to N Time Stamping Units (TSU). In each generation, L time stamps replies from reliable TSU and M time stamps replies from randomly chosen TSU. The G and the L parameters enabled us to expect authorized time of time-stamping. And they also enabled TSU to audit TSU themselves mutually and automatically. We also investigate basic characterisitic of parameter dependencies of the TSA Grid.
著者
西川 武二 稲田 めぐみ 高 理佳 赤尾 信明
出版者
医学書院
雑誌
臨床皮膚科 (ISSN:00214973)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.14-17, 2000-01-01

46歳,女性.初診の2週間前から躯幹に軽度の痒みと違和感を伴う爬行性線状皮疹が出現した.好酸球数,IgE値は正常.8種類の寄生虫抗原(宮崎肺吸虫,ウエステルマン肺吸虫,アニサキス1型幼虫,ブタ蛔虫,イヌ糸状虫,イヌ蛔虫,ネコ蛔虫,マンソン裂頭条虫プレロセルコイド)を用いたELISAはいずれも陰性,ドロレス顎口虫抗原を用いたELISA,寒天ゲル内二重免疫拡散法も陰性であった.線状皮疹の終点とその遠方を含めて外科的に切除後,皮疹と自覚症状は消失した.脂肪組織内に虫体断片があり,腸管断面の形態より有棘顎口虫の幼虫と同定した.摂食歴とあわせ,自験例はウナギの肝吸いから感染した可能性が高いと考えられた.今後creeping-diseaseの感染源としてウナギの生食あるいは肝吸いも念頭におく必要があると思われる.
著者
小山 倫史 高橋 健二 西川 啓一 大西 有三
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.61-67, 2010-03-26 (Released:2010-03-26)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

近年多発しているゲリラ豪雨では,極めて短時間に降雨量が変化するため,斜面表層部の湿潤履歴によっては,数秒単位で多量の雨水浸透が発生し,斜面安定性を著しく低下させ,斜面崩壊を誘発する.したがって,数秒単位の鋭敏な雨水浸透現象を評価する必要性があり,そのためには,まず,降雨量を数秒単位で精度よく計測する必要がある.本研究では,超音波レベル計を用いてリアルタイム雨量計の開発を行った.本雨量計は,超音波により円筒形の雨受けに溜まった水位(降雨量)を1秒ごとに計測することで,従来の転倒枡型雨量計を用いた場合に生じるタイムラグを生じることなく,リアルタイムで精度よい計測が可能である.また,雨量計測の結果を1次元の飽和–不飽和浸透流解析に用い,従来の降雨強度として用いられる時間降雨量(あるいは10分毎降雨量)を入力値とした場合と比較し,降雨境界条件の入力方法の相違が降雨の浸透特性に与える影響について調べた.