著者
近藤 夕騎 望月 久 加藤 太郎 鈴木 一平 板東 杏太 滝澤 玲花 吉田 純一朗 西田 大輔 水野 勝広
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
pp.20012, (Released:2020-10-30)
参考文献数
8

目的:Ehgoetz Martensらが開発したすくみ足の詳細を把握できる質問紙Characterizing Freezing of Gait questionnaire(C-FOGQ)の日本語版を作成し,患者による回答時間などの予備調査を行うこと.方法:日本語版C-FOGQは,原著者から許可を得た後,異文化適応に関する国際的ガイドラインに準じて,①順翻訳,②逆翻訳,③予備調査のプロセスを経て作成した.予備調査では,すくみ足を訴えるパーキンソン病関連疾患患者39名から日本語版C-FOGQによる回答を得て,回答時間,誤回答・無回答率を調査した.結果:英語原版から日本語への順翻訳ならびに英語への逆翻訳過程において,重大な言語的問題は生じなかった.予備調査の結果,平均回答時間は526.8秒であり,誤回答・無回答率は1%未満であった.SectionⅡにおける総合得点の平均は20.0点であった.結論:作成した日本語版C-FOGQは言語的妥当性を有し,10分程度で回答でき,誤回答や無回答率も少ないため,本邦でもすくみ足の評価として使用可能と思われる.
著者
近藤 耕人
出版者
日本映像学会
雑誌
映像学 (ISSN:02860279)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.5-17,145, 1994-11-25 (Released:2019-07-25)
参考文献数
15

The chinese characters for "Eizo" which we Japanese use to mean visual image have a hard and mechanical impression, compared to "image" which means both inner and visual images. Its double meaning enables the word "image" to approach the subject from both the sides of our being, internal and external.  J.-D. Nasio witnessed the separation of eyes and manazashi with one of her patients in Les yeux de Laure. Jacque Lacan, following J.P.Sartre, argued that eyes and manazashi do not coexist but hide each other. Lacan saw the embodyment of the invisible power of manazashi in the symbolic object flying in air in the middle space of the tableau, "The Ambassadors" by Hans Holbein the younger. He regards it as the expression of the hidden male desire incarnated in a skull=phallus image.  The image as the projection of manazashi reflects the spirit of the viewer as well as his or her figure.
著者
藤野 英己 近藤 浩代 植村 弥希子 中西 亮介
出版者
神戸大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
巻号頁・発行日
2020-10-27

再生医療は幹細胞を患部に移植をすることで完了するのではなく,移植後の微小環境が重要であり,再生を促進するための微小環境の管理が必須である.本研究では微小環境形成に関与すると考えられるエクソソームに焦点を絞り,骨格筋に対する物理的刺激で放出されるエクソソームがニューロン再生を促進させ脊髄損傷後の運動機能回復に有効であるかを検証するのが目的である.特に再生微小環境の形成には毛細血管ネットワークの退行予防と血管新生促進が不可欠であると考え,骨格筋から放出されエクソソームが脊髄の毛細血管網の構築に関与するかを検証し,再生医療における神経再生の管理のためのリハビリテーションを開発する.
著者
土居 寿之 近藤 しおり 八島 千恵 鈴木 将史 吉田 沙希子 山本 晋 福岡 富和 岡田 貴典
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.111, no.2, pp.283-289, 2022-02-10 (Released:2023-02-10)
参考文献数
6

50歳代の女性,抗GAD(glutamic acid decarboxylase)抗体陽性インスリン依存状態の1型糖尿病に対し,持続皮下インスリン注入療法を行っていた.糖尿病発症前からの肥満が問題であり,1年前よりSGLT2(sodium/glucose cotransporter 2)阻害薬の内服を開始した.数日前より感冒症状があり,食事は摂取できなかったが,少しずつ経口摂取していたためSGLT2阻害薬内服は継続していた.嘔気と倦怠感が増悪し受診,血糖269 mg/dlであったが,ケトアシドーシスを認め入院,ブドウ糖とインスリンを同時に持続静注開始.速やかに症状が改善し翌日退院した.SGLT2阻害薬内服中,インスリン依存状態では,経口摂取量減少時に正常血糖ケトアシドーシス(euglycemic diabetic ketoacidosis:euDKA)を起こす可能性があることを念頭に置く必要がある.
著者
遠藤 邦彦 石綿 しげ子 堀 伸三郎 上杉 陽 杉中 佑輔 須貝 俊彦 鈴木 毅彦 中山 俊雄 大里 重人 野口 真利江 近藤 玲介 竹村 貴人
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

近年誰でも使うことができる地下データ(=ボーリング柱状図)が多数公開されるようになった.そのデータの密度は数年前とは比較にならない.またそれらを解析するツールも整っている.本研究は,東京23区内を中心に数万本余のボーリングデータを活用しつつ,その上に多くの地形・地質データなどアナログのデータを重ね合わせ,従来の点の情報を線,面に発展させることを目指す.地形の解析についても,国土地理院の5mのDEMを活用してQ-GISによって解析し,1mコンターのレベルで地形区分を見直した.こうした様々な情報を総合して,主に東京の台地部の中・後期更新世以降の地下構造を解明し,従来の諸知見(貝塚,1964;植木・酒井,2007ほか)を発展させることを目的とする.ボーリング資料の解析は,一定の深度を持つボーリング地点が集中する主要道路路線沿いに検討を進めた.環状路線:環八(笹目通り)・中杉通りと延長・環七・環六(山手通り)・環五(明治通り)・不忍通り、王子-中野通り,外苑西・東通り.放射状路線:桜田通り・目黒通り・首都高3号線(玉川通り)・青梅街道・新青梅街道・甲州街道(晴海通り)・川越街道・春日通り17号・小田急線-千代田線・世田谷通り・舎人ライナー・新幹線・ほかの合計30路線余について断面図を作成した.さらに,東京港地区(オールコア検討地区),中央区-港区沿岸低地,多摩川河口-羽田周辺,板橋区北部,赤羽台地~上野-本郷に伏在する化石谷などは短い多数の断面図を作成して,詳細な検討を加えた.以上の検討から見えてくるものは以下の通りである.遠藤(2017)は東京の台地部の従来の武蔵野面の範囲に,淀橋台と同様の残丘が存在するため、板橋区南部に大山面の存在を提唱した.その後の検討では大山面以外にも同様の残丘が和光市(加藤,1993)など各所に存在する.東京層は淀橋台や荏原台をはじめとし上記残丘のS面全域と,武蔵野扇状地面(M1,M2,M3面) の地下全域に存在し,基底部に東京礫層を持ちN値4~10程度の海成泥層が卓越する谷埋め状の下部層と,海成砂層を主体に泥質部を挟む上部層からなり,その中間付近に中間礫層を持つ.中間礫層は北部ほど発達がよい.さらに,埋積谷の周辺では広い波食面を形成し,貝殻混じりの砂礫層が波食面を覆うことが少なくない.基底礫と波食礫では年代を異にすると考えられるが,谷底か波食面上かに関わらず便宜的に基底部に存在する礫・砂礫層を東京礫層と呼ぶ.東京層はMIS6からMIS5.5に至るものと考えている.また,沿岸部の築地一帯~皇居・六本木周辺には東京層の1つ前のサイクルの築地層が高まりをなしており,東京層の谷はこれを挟んで、北側(神田~春日)と南側(品川~大井町)に分かれる.これらはほぼ現在の神田川の谷や目黒川の谷に沿う傾向がある.なお,大山面の地下に伏在する埋積谷は池袋付近から北に向かい,荒川低地付近では-20m以下となる.荏原台など,東京の南部では上総層群の泥岩が東京礫層の直下にみられることが多い.礫層は薄くなる傾向がある.東京最南部の東京層に相当する世田谷層(東京都,1999;村田ほか,2007)の谷は多摩川の低地に続く.東京層の泥層の分布はMIS5.5の時代にどこまで海進が達したかの参考になる.甲州街道沿いでは桜上水~八幡山あたりで武蔵野礫層によって切られて不明となる.青梅街道沿いでは荻窪のやや東方で武蔵野礫層によって切られているが,ともに旧汀線に近いものと予想できる.淀橋台相当面やその残丘の分布は,武蔵野扇状地の発達過程で重要な役割を果たしてきた.武蔵野扇状地の本体をなすM1a(小平)面(岡ほか,1971;植木・酒井,2007)は淀橋台と大山残丘群の間を抜けて東に向かった.目黒台(M1b面)は以前から指摘されている通り,淀橋台と荏原台の間を通り抜けた.現在の石神井川に沿ってM1a面の北側に分布するM2a(石神井)面は大山面と,赤塚~成増~和光付近の残丘群の間をぬけて東に流れた.M1a面の南側に分布するM2a(仙川)面は荏原台と田園調布台の間を通りぬけ流下した.北側の黒目川沿いのM2c, d面は,赤塚~成増~和光の残丘群を避けるように北向きに流れた.さらにM3面が多摩川下流部や赤羽台付近に形成された.M2,M3面は海水準の低下に応答したものと思われる.引用文献:貝塚(1964)東京の自然史.;植木・酒井(2007)青梅図幅;遠藤(2017)日本の沖積層:改訂版,冨山房インターナショナル;加藤(1993)関東の四紀18;東京都(1999)大深度地下地盤図;村田ほか(2007)地学雑誌,116;岡・ほか(1971)地質ニュース,206
著者
門脇 一真 木村 泰知 加藤 誠 近藤 隆史 乙武 北斗
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.FIN-030, pp.100-105, 2023-03-04 (Released:2023-03-04)

我々は,有価証券報告書(有報)に含まれるさまざまなタイプの表の理解を目的に,表構造解析を行うタスクを計画している.有報にはタクソノミがテキストブロックとして定義された箇所があり,特に非財務情報を表現する表には様々なタイプが含まれる.既存研究を参考に有報の表の各セルをヘッダ,属性,データといったクラスに分類した結果,既存研究で分類された関係表,エンティティ表,行列表などのいずれのパターンにも分類されない複雑な構造の表が見られ,さらにそれらの構造がいくつかのパターンに分類できた.本稿ではまず,各セルの分類方法と,その結果発見された表構造のパターンについて報告する.これらのうちセルが正しく分類できた表については,NTCIR-17 UFOタスクの表データ抽出(TDE)サブタスクでアノテーションデータを公開し,評価型ワークショップとして取り組めるようにする予定である.本稿ではこのタスクのデータ形式,評価方法についても取り上げる.
著者
近藤 祐磨
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.94, no.5, pp.291-312, 2021-09-01 (Released:2023-02-19)
参考文献数
49
被引用文献数
4

本稿は,基礎自治体の範囲を越えた3つの市民・住民団体が,身近な海岸林を保全する複数の住民団体を包摂したネットワークを各々形成した過程と意義を,環境運動における空間スケール戦略に着目して検討した.その結果,ネットワーク形成を主導する団体は,行政と協調的・補完的な関係ではあるが,同時に行政に対する不満を抱き,活動地域・内容の拡大や,逆に特定地域に限定した活動の集約化といった戦略によって,行政の政策に影響を与えうる独自性を発揮していた.一方で,ネットワークに参加する住民団体は,ネットワーク形成を主導する団体との利害や従前の関係性を考慮して,ネットワークへの関わり方を戦略的に選択していた.本事例からは,ローカルの内部でもさらにスケールが重層化してスケール戦略が展開される実態が浮き彫りとなり,環境運動・環境ガバナンスの研究において,ミクロレベルでのスケールの変容にも着目する重要性が示された.
著者
飯野 秋成 近藤 拓也
出版者
新潟工科大学
雑誌
新潟工科大学研究紀要 (ISSN:1342792X)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.23-30, 2017-03

In this study an ability to improve thermal insulation properties of steel shutters installed at factories was considered.At the first stage heat transmission coefficient of a steel shutter with inward air layer constructed using thin vinyl sheet, were calculated with measured data of air temperatures in and around a steel storeroom and amount of heat flow.And also the effect of inward air layer to prevent the dew condensation on metal components’ surfaces in a factory was verified with measured data of winter thermal environment.
著者
近藤 拓也 飯野 秋成
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.23, no.54, pp.539-543, 2017 (Released:2017-06-20)
参考文献数
4

In this study an ability to improve thermal insulation properties of steel shutters installed at factories was considered. At the first stage heat transmission coefficient of a steel shutter with inward air layer constructed using thin vinyl sheet, were calculated with measured data of air temperatures in and around a steel storeroom and amount of heat flow. And also the effect of inward air layer to prevent the dew condensation on metal components’ surfaces in a factory was verified with measured data of winter thermal environment.
著者
近藤 誠司
出版者
防災教育学会
雑誌
防災教育学研究 (ISSN:24359556)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.31-41, 2020 (Released:2021-10-19)

日本社会では今、多種多様な防災教育がおこなわれており、まさに活況を呈しているかに見える。しかしこれは、間歇的に盛り上がりをみせる単なる社会の要請に過ぎず、喉元を過ぎればすぐに停滞してしまう危険性もある。こうした情況をふまえたときに、われわれはなぜ防災教育に注力するのか、その根拠を理論的に探究しておく必要がある。そこで本研究では、偶有性に根拠をもつ「倫理の虚構性」に限界や制約をみるのではなく、偶有性を倫理の土台に据えることによって防災教育実践のアドバンテージを見出す理論構築をおこなった。さらに、未定の価値を生み出すポテンシャリティを孕んだ防災教育実践こそが、まずもって現前の取り組み自体を賦活し、防災教育以上の価値あるアクションとなり得ることを示した。そしてさいごに、合理性・効率性を重視する道具主義的な防災教育観を超克しようとする最新の議論―“ コンサマトリーな防災” や“ すごす関係”―との接続を検討した。
著者
近藤 友佳 金築 智美 根建 金男
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.273-284, 2008-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究では、大学生のシャイネスに対する自己教示訓練(SIT)の有効性を確認し、教示文の組み合わせ方および訓練の回数や長さがSITの効果に及ぼす影響を検討した。シャイネスの認知・行動の両側面の得点が高かった27名を実験参加者とし、認知焦点型教示文のみを用いる(SIT-C)群、認知焦点型教示文と行動焦点型教示文の両方を用いる(SIT-CB)群、統制(NTC)群の3群に振り分けた。3週間のトリートメント期間中、SIT群は計10回のトレーニングを行った。一方、NTC群は特別な訓練は行わなかった。その結果、統制群と比較してSIT-C群とSIT-CB群は特性シャイネスが有意に改善され、その効果は約6か月後のフォローアップ時でも維持されていた。また、特にSIT-C群のほうが総合的な効果は顕著であることが示された。本研究より、SITの効果性を高める要因として、用いる教示文や訓練の回数や長さが示唆された。
著者
近藤 浩章
雑誌
国際研究論叢 : 大阪国際大学紀要 = OIU journal of international studies (ISSN:09153586)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.117-132, 2023-01-31

In order to develop the next generation, PBL (Project-based learning) iswidely adopted in higher education as an effective method of active learning. InPBL, it is important to manage the learning process of the skills in addition tothe result of the project. In this article, the author examines the three issues forthe development of“ Essential competencies for the 100-year life” presented bythe Ministry of Economy, Trade, and Industry, then discusses the role of thelecturer. Consequently, the lecturer’s ability to set and adapt goals to thestudents’ learning level, the flexibility of the lecturer to support or instructaccording to the demands of the project and the inclusion of consecutive PBLprograms in the regular curriculum are suggested as important issues.
著者
近藤 史孝 藪下 良樹 渡邊 俊彦
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第26回ファジィシステムシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.111, 2010 (Released:2010-11-05)

近年,大規模最適化問題の有効な近似解法として遺伝的アルゴリズム(GA)が研究されている。しかしGAには、計算負荷が高い、母集団内の個体の早期収束による局所解への収束、局所探索が不得手である、パラメータの設定が複雑であり多大な試行錯誤を必要とするといった問題が存在する。これらの問題への対処方法としてパラメータ不要の遺伝的アルゴリズム(PfGA)、分散型遺伝的アルゴリズム(DGA)などが提案されている。本研究ではPfGAのパラメータ設定が不要であるという特徴を生かしつつ最適化性能を更に改善するために、進化の過程で子個体の生成数を生成された個体の適応度の順番に応じて適応的に変化させることによって探索能力を向上させる手法を提案するとともに、PfGAの分散化を行い、代表的な最適化問題の一つである巡回セールスマン問題(TSP)を対象とした数値実験結果を通して、提案手法の有効性を示した。
著者
桑形 恒男 住岡 昌俊 益子 直文 近藤 純正
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.625-638, 1990 (Released:2007-10-19)
参考文献数
24
被引用文献数
23 25

ルーチン観測データから複雑地形上における大気一地表面問の熱収支を見積る新しい解析方法を開発した。この解析手法を用いて、春期の弱風晴天日の中部日本域(東北•関東•中部地方)の気象官署55地点における日中の大気境界層(下層大気)の熱収支を評価した。弱風晴天条件においては、中部日本全域で熱的な局地風が発達し、下層大気の熱収支はそれら局地風系によって支配される。地形的な特徴に応じて各気象官署を岬、浩岸平野(海岸から20km以内)、内陸平野、内陸盆地(盆底)、山岳の5つのカテゴリーに分類し、地形別に下層大気の昇温がどのように異なるかを調べた。その結果、内陸盆地と内陸平野で下層大気の昇温量が大きく、岬と沿岸平野および山岳で昇温量が小さいという結果が得られた。内陸盆地や内陸平野で昇温量が大きくなるのは、局地的な沈降流による断熱昇温が原因である。この沈降流は、側斜面で発生した斜面上昇風(谷風)による大気流出の補償流として生じたものである。逆に、山岳では顕熱によって暖められた空気が谷風によって流出し、昇温量が小さくなる。一方、岬や浩岸平野などでは海風によって海上の寒冷気塊が侵入し、昇温量が抑えられる。この効果は海岸に近い地点ほど顕著である。このように日中の下層大気の昇温量は、局地循環による局所的な移流によって大きく左右される。そして、この昇温量に比例して地上気圧の低下がひきおこされ、昇温量が大きな内陸部を中心として日中に熱的な低気圧が形成されることになる。